伝説の中二病ニャンコ君特大サイズ
「本当に泊まるんですか」
「君もくどいな」
先輩が僕の部屋にお泊りすることが確定してからずっと言い続けている。
言った所で、部屋に先輩の寝具や家具が勝手に運び込まれている時点でどうにもならないが、言わずにはいられない。
「何度も言うようですが、僕たちは男女。異性ですよ」
「そうだな」
「そうだなって。もし過ちがあったどうするんですか」
先輩は無防備すぎる。気を付けないと危ない。
「話は変わるが」
先輩は、私物のベットへと腰を掛けた。
「話を変えないでください」
「これをどう思う」
僕の説教に耳も課さず、マイペースに掛布団の下から特大サイズのぬいぐるみを出してきた。
そんなもので、釣られ………釣られ。
「それは伝説の中二病ニャンコ君特大サイズ」
あの、憎たらしい表情と、過剰なくらいまかれた包帯。そして、何より小学生並みの大きさ
これは、まさしく伝説の中二病ニャンコ君特大サイズ。
ゲームセンターのクレーンゲームの景品に入っていた伝説のぬいぐるみだ。
取ろうと奮闘して1か月分のお小遣い丸まる投入しても、取れなかった伝説のぬいぐるみ。
次の週には無くなっていた伝説のぬいぐるみ。
それこそ伝説の中二病ニャンコ君特大サイズ。
「なんで、そのお方が」
「仕入れ値の十倍で買った」
「買った!?。悪魔だ。悪魔の取引だ」
さすが、お金持ち。さすが、小悪魔系、先輩。
ずるい。ずるい。ずっっっるるるい。
「それで、さっきの話だけど」
「先輩が小悪魔だってことですか」
「何の話だ。私が襲われないかと言う話だが―――」
あぁ、伝説の中二病ニャンコ君特大サイズと目があった。
もうだめだ。こうなると先輩が何か言っているが伝説の中二病ニャンコ君特大サイズにしか興味がわかない。
「ぬいぐるみ一つで、目を輝かせる純情少年は襲ってこれないだろう」
「そうですね」
「私が、襲うことがあるかも知れないが」
「そうですね」
「聞いてるのか」
「そうですね」
「結婚しようか」
「そうですね」
「いい加減。こちらの話を聞け」
先輩は伝説の中二病ニャンコ君特大サイズを自分の背に隠した。
「あっ」
「あっ。ではないちゃんと話を聞け」
意識を先輩に向けると、なぜか先輩はスマホを握りしていた。
「なんで、スマホを握りしめていのです」
「さてな。君を殴るためではないかな」
「暴力反対」
「なら、ちゃんと話を聞いてくれ」
うぅ。伝説の中二病ニャンコ君特大サイズ。
「君がこのぬいぐるみが好きなのは解った。でだ、取引をしないか」
「取引ですか」
僕が疑問に思っていると先輩は掛布団の中からもう一体のぬいぐるみを引っ張り出してきた。
それもまた、伝説の中二病ニャンコ君特大サイズだった。
「なんで、二対もいるの」
「そりゃあ、買い占めたからな」
「この、悪魔」
「ふふふ、なんとでも言うがいい。さて、取引内容だが私を快く此処に置いてくれたらこのぬいぐるみをやろう」
悪い笑顔で言ってくる。これは駄目だ。悪魔の誘惑だ。
だが、先輩が一泊すれば、この伝説の中二病ニャンコ君特大サイズが僕のものになる。
駄目だ理性が欲望を抑えきれない。
このままでは堕ちちゃう。
僕は、その悪魔の誘惑に乗ってしまうことになった。
お読みいただきありがとうございました。