ストーカー
「先輩なんでまた、僕の家で何をやっているんですか」
僕、坂上朱里は一つの問題を抱えていた。
それは、現代の闇ともいえるストーカー被害だ。
いや、ストーカーと言う名称も烏滸がましいかもしれない。
なぜなら、そのストーカーは水着にエプロンと言う破廉恥な格好で、料理を作っているのだから。
「勿論、料理だ」
悪びれることも無く言っているストーカー事、青柳朱里先輩。
「それは見れは解ります。どうして家に侵入してとち狂った格好で料理しているかという理由が知りたいのです」
「なるほど。君は質問の意図を正確に相手に伝える練習をしたほうがいいようだ」
「指摘はごもっともですが、水着とエプロンしかつけていない不法侵入者には言われたくはないです」
「それでは、私がまるで変態みたいじゃないか」
先輩は頬を膨らませ拗ねた。
「変態みたいじゃなくて、変態です」
「何を言う私は、美人だぞ」
確かに、先輩は美人だ。
巨乳の上に、黒の長髪で大和撫子な雰囲気を醸し出しているお嬢様でルックスもよく。胸もでかい。
だが―――。
「美人を免罪符みたいに使うのはやめてください。どう言いつくろっても変態です」
「そんな、変態を連呼しないでくれ。さすがの私も傷つく」
しゅんと落ち込む先輩。
「わ、解りました。それについてはいったん置いときましょう」
慌てて話題を変える。
先輩を落ち込ませたなんてばれると、僕が社会的に殺される。
「格好の事は1000歩譲りましょう。しかし、どうやって家に入ったんですか」
鍵は掛かっており、僕は一人暮らしだ。
先輩が簡単に侵入できる余地はない。
「1000歩って全然歩み寄ってないじゃないか。まぁいい、私も君に言いたいことがあったのだ」
「な、なんですか」
「窓の戸締りはしっかりしないぞ」
「ここは三十階なので………」
僕はそう言いかけたところで、ハッと閃いた。
しかし、その閃きは到底信じられるものでは無い。
「もしかして窓から入ってきた訳では………ないですよね」
「窓から入ったぞ、屋上からロープを垂らしてな」
恐る恐るた尋ねた僕に悪びれる様子もなく答える先輩。
少しの間、思考が働かず絶句した。
「バカなんですか。死ぬ気ですか」
「こう見えても、私は鍛えてるからな」
「鍛えてるからって、先輩は特殊部隊の隊員か何かですか」
先輩は、僕の怒気と興奮が入り混じった声色で言い放った質問を聞くやいなや、ドヤ顔を浮かべる。
「私は、特殊部隊の隊員ではない。君のお嫁さんだ」
僕はその回答にいろいろな意味で頭を抱えた。
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