#949 ウィザードオーブ侵攻会議と玄武の王
まずは皆の解体結果が報告された。とはいえかなり逃げられたから多くはないし、ほとんどがウィザードオーブの騎士の装備だ。これは俺たちの装備よりも遥かに弱いからディアドラ姫たちに渡す。ウィザードオーブがディアドラ姫の元、復活する時が来たなら必要になるだろう。
ということでいい物だけピックアップする。最初はメルたちが倒したフェル・ディアドの装備だ。
フェル・ディアドの鎧:レア度9 防具 品質S
重さ:100 耐久値:1500 防御力:700
効果:絶対防御、物理耐性、魔法耐性、黄金障壁、英雄障壁、英気、黄金の加護
英雄フェル・ディアドが着ていた鎧。全身黄金の鎧で圧倒的な防御力を誇っている。見た目の派手ささえ何とか出来れば、優秀な鎧。
メルたちは誰が装備するか揉めている。ただし奪い合いのではなく、鎧の押し付け合いだ。まぁ、この鎧が似合う人はなかなかいないだろう。装備することになったケーゴには頑張って貰いたい。
次はゴモラの解体結果だ。
ウラン鉱石:レア度10 素材 品質S
核分裂を起こさせることで膨大なエネルギーを生み出す鉱石。極めて危険な鉱石で使用するためには錬金術ギルドから許可を得る必要がある。
遂に来た。核燃料として有名な鉱石だ。もちろん核兵器の素材でもある。
「頑張った甲斐があったな」
「「「「はい(おう)!」」」」
みんなの姿はボロボロだ。ユウェルたち地上組も結構ダメージを受けているからあの後、相当な戦いがあったんだろう。帰ったら、みんなで洞窟の温泉だな。ユウェルたちも頑張ったので、俺も一つウラン鉱石を貰った。
ただ説明通りなら俺は使えないからサバ缶さんたちに売ることになるだろう。俺もゴモラと戦車の解体結果を報告する。
魔炎の戦車の残骸:レア度9 素材 品質D
魔炎の戦車の残骸で30個集めると魔炎の戦車を作ることが出来る。
残念ながら数が足りない。まぁ、次の戦いで解体できれば集まるだろう。
「ゴモラはコロナサイトでした」
これで解体報告は終わり。いよいよ本題に入る。俺がまずブラスさんについて報告する。
「「「「はぁ?」」」」
全員が同じリアクションをした。そして詳しく状況を説明するとシルフィ姫様が頭を抱える。
「生きていることは嬉しいですけど、何やっているですか…ブラスさん」
「タクトさんの説明の通りなら人間と悪魔のキメラのようなものでしょうか? わざわざ魂を戻した挙句に操るとは、悪魔の所業ですね」
「私たちもキメラを召喚しているから人の事は言えないわよ。ネフィ」
「そうですね…しかしキメラから元の召喚獣に戻す方法は恐らくありません」
やっぱりないんだ。
「タクト様たちに何か心当たりはありませんか?」
俺たちは首を振るとメルが質問する。
「もし悪魔状態のブラスさんを倒した後に蘇生させるとどうなるんでしょうか?」
「そのままの状態で蘇生しますね。キメラに蘇生魔法をかけるのと同じことですから」
理屈ではそうなるか。ここでスキルに詳しいサバ缶が質問する。
「神官の悪霊祓いを使うとこの場合はどうなるんでしょうか?」
「それは…悪魔の肉体はそのままでブラスの魂とくっついている悪魔の魂を祓うことになるんじゃないかしら。ねぇ?」
「そうなると思います! サバ缶様にはなまるを上げます!」
これでブラスさんを操ることからは解放することが出来る。後の問題は体の方だ。アーレイが恐ろしいことを言う。
「斬って繋げばいいんじゃね?」
「そうだな。ならアーレイを半分に斬って繋げられるか試して見るか」
「なぜそうなる!?」
そもそもブラスさんの下半身が無いから出来たとしてもこの案は現時点では出来ない。因みにこれは部位破損になるからナノマシンでワンチャンあるんじゃないかと思った。しかしこれはイクスに反対される。やはりバトルシップの施設レベルが必要らしい。
「ダメか…」
「タクト様にははなまるはあげれませんね」
「そうですか。それじゃあ、この件ははなまるを貰ったサバ缶さんに任せます。対策が決まったら、教えてください。戦闘職は集合。明日はウィザードオーブに侵攻する。その為の作戦と部隊の割り当てをとかを決めよう」
「「「「待ってました!」」」」
我関せずだった人たちが自然と分かれる。
「ちょ!? すねないでくださいよ! タクトさん! 私もそっちが」
「作戦会議の事は後で教えるから、頑張れよ。サバ缶!」
「俺たちには何も浮かばないからな。こっちは任せたぜ!」
「あなたたちも!?」
時間は有限だ。ここは別れた方がいいだろう。まずはウィザードオーブの地形から説明を受ける。
「陸路はトレントの森とフリーティアに似てますね」
エルフの森から途中に教会がある村があって、王都に続いている。ただし途中に出て来るモンスターはフリーティアより遥かに強い。まぁ、今回は大規模侵攻だ。恐れるに足りないだろう。
「陸路の先頭は我々が担当させてくれ。それが筋と言うものだ」
「なら俺たちもウィザードオーブの冒険者だからな。フェルグス団長と一緒に戦わせて貰う。それでいいか?」
「はい」
「よろしく頼む」
これで最前列はフェルグス団長率いるウィザードオーブ第一騎士団とウィザードオーブのプレイヤーに決まった。
「ならその後方はフリーティアの第一騎士団が務めます」
シルフィ姫様はこちらに来ていた。まぁ、フリーティアの代表のようなものだから、しょうがないか。
「それじゃあ、私たちはそこに加わる形だね」
「ギルマスはどうしますか?」
「俺は今回、後ろに下がってディアドラ姫たちの護衛を担当するよ」
全員が意外な顔をする。
「兄ちゃん、どうしたの? 悪い物でも食べた?」
「そ…むぐ!?」
シフォンが地雷を踏みそうなところをミランダが阻止した。ここでシフォンが否定したら、俺にご飯を作っていると言っているようなものだ。
「酷い言い草だな。さっきの戦闘でチロルたちに言われたからだよ。任せられるところはみんなに任せようと思う。ただ今回のラスボスは俺たちに任せてくれないか?」
スクナビコナの仇打ちはしたけど、ウィザードオーブ王とアモンにも支払って貰わないと困る。
「経験値は共通だから別にいいけど、ベリアルとサラ姫様はどうするの?」
「それは元々、俺の担当じゃない。そうですよね?」
鉄心さんたちが答える。
「あぁ。ベリアルの相手は私たちがしよう」
「サラ姫様の救出は俺たちに任せとけ。タクト」
「では、私も参加します。家出した妹を救うのも姉の仕事ですので」
「ボクらも参加します! ベリアルに一度負けましたから戦わせてください!」
ベリアルとサラ姫様の救出は砂漠に向かった鉄心さんたちとルークたち、シルフィ姫様がすることに決まった。
「影の国の勇士たちの相手は私たちに任せて貰おう。それでいいな? クーフーリン」
「おう! お前らは俺の弟子なんだから付き合えよ」
「「「「はい!」」」」
影の国の勇士たちにはクーフーリンに弟子入りしたレイジさんたちが相手をすることが決まった。
「我々も予定通り教会の村を担当しよう。ブリュンヒルデ」
「えぇ。ウィザードオーブの皆さんには申し訳ありませんが手を貸してください」
「「「「任せてください!」」」」
ここには更にうちから竜騎士たちと雷電さんたちドラゴンライダーたちの参戦が決まる。
「王都を守っているのはフィンの第二騎士団だろうな」
「そいつらの相手はわしらがするわい。女王を狙った輩じゃからな。悪いが命を取らせて貰うぞ」
「仕方ないだろうな。では、我々は他の敵が城に入らないようにしよう」
「私たちもそこに入ります」
フィンのウィザードオーブ第二騎士団の相手はメルたちが名乗りを上げた。更に今回は挟撃作戦となる。ノアズ・スクナに乗るのはサバ缶さんたちとシャローさん、与一さんたちで奇襲を担当することが決まった。
残りの細かいところを打ち合わせして、最後にプレイヤー同士で話し合う。俺がベリアルの去り際の言葉を聞いたみんなが話す。
「こうなるとサラ姫様が闇落ちして、敵になる可能性が高くなってきましたね」
「闇落ち?」
「堕天のようなものですよ。姫キャラってよく闇落ちするんですよね」
「因みにその場合は衣装がエロくなるのが決まり事だ」
アーレイが言う決まりはないと思うがサラ姫様が敵対する可能性が確かにある。
「その場合はたぶんタクト君が狙われるよ」
「悪いけど、無視するさ。さっきも言ったけど、俺の狙いはアモンとウィザードオーブ王だからな」
「まぁ、シルフィ姫様が戦う気満々ですから大丈夫でしょう。しかし今回は有名NPCは姉妹対決が多いですね」
そう言われるとそうだな。運営には姉妹対決ブームが来ているんだろうか?そしてこの後の話になる。アーレイたちはブラッティウォーズとの決戦になるようだ。
俺はホームに帰るとイオンが仁王立ちして待っていた。後ろにはダーレーもいる。回復したんだな。
「戦闘は楽しかったですか? リリー」
「えーっと…タクト! パス!」
「俺に渡すなよ」
また変なことを覚えたな。
「元気になったなら、約束のスキル上げをするか」
「はい!」
イオンに修練の宝玉を上げるとインフォが来る。
『イオンの竜技のレベルが40に到達しました。竜技【ドラゴンノヴァ】を取得しました』
『イオンの竜魔法のレベルが20に到達しました。竜魔法【ドラゴンコールドフロント】を取得しました』
これで良し。コールドフロントは日本語では寒冷前線だ。氷の魔法なのは確定したかな。次は夕凪の進化だ。島に向かって、進化させよう。進化先は一つ。
玄帝
やっぱりここで玄帝が来るんだ。こうなると進化はもう一つある。どうするんだろうね。とにかく説明を見てみよう。
玄帝…玄武の王。神通力を極め、水を守護している。北方の守護神獣であり、敵から都を守る最後の砦の一体。長寿の象徴として信仰されている。
やはり白夜たちと説明があまり変化していないな。それじゃあ、進化をさせよう。進化を実行すると夕凪が青い光を放ち、進化する。
『夕凪が玄帝に進化しました』
『天耳通、第六感、無視、天眼通、他心通、仙術、水圧操作、海流操作、地脈操作、黒雷、譲渡、慈雨、気力装甲、超装甲、光合成、復活、逆鱗、神の加護を取得しました』
名前 夕凪 玄武Lv30→玄帝Lv1
生命力 268→318
魔力 158→208
筋力 175→225
防御力 316→366
俊敏性 48→58
器用値 118→168
スキル
噛み砕くLv20 締め付けLv18 薙ぎ払いLv17 致死毒Lv13→神魔毒Lv13 遊泳行動Lv8
天耳通Lv1 第六感Lv1 無視Lv1 天眼通Lv1 他心通Lv1
堅牢Lv20 回転激突Lv5 霊気Lv14→仙気Lv14 霊力Lv5→念動力Lv5 仙術Lv1
猛毒ブレスLv10→神魔毒ブレスLv10 石ブレスLv11 海ブレスLv9 水圧切断Lv14 水圧弾Lv10
水圧操作Lv1 海流操作Lv1 地脈操作Lv1 黒雷Lv1 譲渡Lv1
連撃Lv15→多連撃Lv15 慈雨Lv1 気力装甲Lv1 超装甲Lv1 光合成Lv1
地魔法Lv1 海魔法Lv1 神聖魔法Lv1 雷魔法Lv10 土潜伏Lv5
熱探知Lv14 岩投擲Lv10→鉱石砲Lv10 守護結界Lv6 津波Lv2 渦潮Lv4
聖水Lv3 高速再生Lv17→超速再生Lv17 豪雨Lv5→天候操作Lv5 休憩Lv3 宿泊Lv1
和魂Lv1 復活Lv1 逆鱗Lv1 神の加護Lv1
進化した夕凪は一回り大きくなり、身体が更にごつくなった。しかし蒼穹たちよりまだ弱い印象だな。
そして進化した夕凪は仙術の空中浮遊で飛行出来るようになった。巨大な亀が空を飛行している光景はかなり異様だけど、同時に神秘的な印象も受けた。流石四神の一体と言ったところか。
「イオンが復活したことだし、最後のアテナ様の試練に挑むか。他のみんなは連戦になる。行けるか?」
俺が質問すると全員が返事を返す。何故か参加出来ないリリーたちまで返事をしたけど、まぁいいか。それじゃあ、最後のアテナ様の試練に挑むとしよう。




