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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
ウィザードオーブ戦争
995/1718

#948 不戦のゲッシュと蘇るオーディンの神剣

俺たちが火消し作業をしている間、俺はシルフィ姫様の愚痴をずっと聞く羽目になった。誰か助けて欲しかったけど、そんなものに首を突っ込む勇者はいない。


消火が終わり、エアリーやミールなどが豊穣を使い、森への対処は一時終わる。そして俺たちはエルフの森に集まるとエルフたちから感謝される。


そして代表者たちがイブリーフ様と面会する。やはり初めての人たちはイブリーフ様が放つ気配に圧倒されている。最初は俺もこんな感じだったな。


「まずは救援に答えてくれたことと森と村、そしてユグドラシルを助けてくれたことに感謝しよう。ただ全面的に感謝とは言い辛い。取り敢えずお前たちが知っていることを話してもらうぞ」


「はい。そういう事なら私よりタクト様のほうが詳しいので、お願い出来ますか?」


「分かりました」


もう慣れて来たな。俺はイブリーフ様たちに今までのことを説明した。


「なるほどな。それでウィザードオーブ軍と悪魔たちが一緒になって、攻めて来たのか。そして現在お前たちは悪魔に占拠されたウィザードオーブを奪還し、王女ディアドラを女王にするために動いているわけだな?」


「そういう事になります」


「事情は分かった。しかし我々エルフは戦いには参加は出来ん」


イブリーフ様の決断に全員が驚く。クエスト内容には確かにエルフの戦争参加が掛かれていたからだ。しかしその理由は当然と言えば当然だった。スカアハ師匠が言う。


「事情はどうあれウィザードオーブ軍に森を焼かれたからか?」


「そうじゃ。残念ながら例えお前たち側のウィザードオーブ軍に助けられたといって、共に戦えるかは別問題であろう? いつまた手のひらを返されるか分かった物ではないんじゃからな」


未遂とはいえ大量殺戮兵器をウィザードオーブはここに向けている過去がある。確かにこれで仲良く戦うことは不可能だ。するとブリュンヒルデさんが提案を出す。


「では、エルフの女王よ。ディアドラ姫とお互いに国の代表として不戦のゲッシュを結ぶと言うのはどうでしょうか?」


「「「「不戦のゲッシュ?」」」」


全員が知らない言葉だ。スカアハ師匠が説明してくれる。


「お前たちがゲッシュをどう思っているか知らないが、ゲッシュは呪いの一種と言える。簡単な物は自分が決めた決闘のルールを相手に強制させるものだ」


俺がクーフーリンとの決闘で受けたものだな。


「これは決闘が終われば消えるものだが、永続的な物も存在している。不戦のゲッシュがまさにこれに該当する。戦わないことを永遠に厳守することになるゲッシュだ。これを個人ではなく国単位ですればお互いの国は今後戦うことが出来なくなるのだ」


世界平和が実現出来そうな力だな。ただこれには当然リスクが存在している。ブリュンヒルデさんはそのリスクを知っているからお互いと言ったけど、片一方が結ぶだけだと大変なことになる。


もし戦争になったら、片方だけが一方的に攻めれる状況になるからだ。また両方が不戦のゲッシュを結んでも戦いでの解決が出来なくなる。どこまでが不戦のゲッシュに引っかかるかは設定次第らしいけど、戦うことが出来ないとなると窃盗や略奪が横行する危険があるそうだ。


過去には資源をお互いにただ奪い合い、結局両者の資源が無くなり、共倒れになるケースがあったらしい。


想像すると嫌な光景だと思う。泥棒を見つけても戦えないなら泥棒に奪われるのをただ見ることしか出来なくなる。もし奪い合いを戦いだとするなら盗んだもの勝ちになるだろう。当然泥棒も盗んだ物を盗まれる可能性もある。戦争はいけないことだけど、戦いが全く禁止された世界と言うのもカオスだと思い知った。


そしてイブリーフ様は決断する。


「私は一向に構わんぞ。元々我々は森と村、そして世界樹ユグドラシルが無事ならばそれでいいのだからな」


「妾もエルフと戦う気もない。此度の一件の罪滅ぼしの一つとしてもし妾が女王になることが出来たら、結ぶことをこの場にいる全員に誓おう」


ディアドラ姫がそういうとユグドラシルからとんでもない光が放たれ、世界が変化する。俺はその光景を知っていた。


「ここは精霊界?」


「その通りじゃ」


世界樹ユグドラシルから槍を持った魔法使いのような格好をした隻眼のお爺さんが現れた。もうこのお爺さんのことは分かる。ブリュンヒルデさんが叫ぶ。


「オーディン様!?」


やはり北欧神話の主神様だ。それじゃあ、手に持っている槍は有名なグングニルか。格好いい槍だな。


「ふぉっふぉ。そう身構えるでない。ブリュンヒルデ。お前が解放された時点でわしに逆らった罪は終わっておる」


「そ、そうですか…」


ブリュンヒルデさんはホッとする。するとオーディンがシグルドさんに話す。


「お主がシグムントの息子じゃな?」


「は…はい! そうです!」


「素晴らしい力を持っておるな。しかし女はしっかり選ぶべきじゃぞ? ブリュンヒルデはそれはもう頑固者でわしも随分手を焼いたものじゃ」


「オーディン様!」


おぉ。ブリュンヒルデさんが顔を真っ赤にしている。珍しい光景だ。


「怒られたので、そろそろ本題に入ろうかの。まずディアドラ姫よ。先程の誓いはこのわしにもして貰おう。それならばイブリーフも安心じゃろう?」


「それはもし破られればオーディン様が動くということでしょうか?」


「その通りじゃ」


「分かりました。オーディン様がそこまでおっしゃるなら彼女の誓いを信じましょう。フリーティアとウィザードオーブの姫よ。エルフは此度の戦い、お前たちの味方をしよう」


ここでインフォが来た。


『ワールドイベント『ウィザードオーブ戦争』にエルフが参戦しました』


これでウィザードオーブに攻め込む準備は整ったことになる。サバ缶さんの予想通り決戦は明日の日曜日で決まりだな。イブリース様が付け加える。


「ただしあやつらはエルフの森を焼いたのだ。手加減はせぬ。それで良いな?」


「…うむ。構わぬのじゃ。お力添え感謝するぞ。エルフの女王よ」


やはりウィザードオーブの騎士たちと戦うことはディアドラ姫にとって、辛いことなんだろう。それでもディアドラ姫は決断した。残酷な決断だけど、立派なことだと思う。


それにこれを残酷な決断にするかどうかはこれからの作戦会議で決めることだ。出来ればディアドラ姫たちにとって、良い方に向かえばいいと思う。


「ふぉっふぉ。いい光景じゃのぅ。さて、人間たちよ。此度の戦の報酬はわしらから授けようと思う」


オーディンからの報酬!全員の期待値が跳ね上がった。


「まずはお主たちの戦いを認め、精霊界に行くための力を授けてやろう」


俺たち、全員に木の鍵が配られる。


精霊門の鍵:重要アイテム

精霊門に必要な鍵。


俺やレッカたちが涙目。これがあるならセチアたちの精霊門いらないじゃん。


「その鍵さえあればどこでも精霊門を開くことが出来る。これでお主たち、全員がわしらの世界に来ることが出来るようになった。まぁ、来るのは相当大変じゃが、頑張るんじゃよ」


これはもうユグドラシルの前かエルフの森で精霊門を使えってことだな。俺はすぐには使わない。どうにも罠の気配がする。


「「「「はい! ありがとうございます!」」」


「うむ。よい返事じゃ。それではお待ちかねの報酬じゃ。この中から好きな物を一つ選ぶがよい」


バレている。流石はオーディンといったところかな?一覧を確認する。


ミストルティン

グリーザルヴォルル

ヤールングレイプル

メギンギョルズ

ヴィーザルサンダル

クラウテュール

シルトテュール

ブリーシンガメン

ユグドラシルロッド

世界樹の葉冠

世界樹の葉

世界樹の枝木

黄金の林檎の苗木

ロイヤルオーク

ヤドリギの種子

レージングル

ミームング

木竜の卵

ウェルシュゴールド


グリーザルヴォルルはオーディンの妻グリーズが持っている杖だ。このゲームでは雷属性の杖で俺が知っている上級の雷系のスキルはほぼ覚えている。流石に大雷霆は無かった。魔法使いはこれで決まりかな?


俺も気にはなっている。俺は使わなくてもセチアや他の杖持ちに装備させるには十分強力な武器だからだ。しかしここは次を見て行こう。


ヤールングレイプルはトールが雷鎚ミョルニルを握るために作られた鉄の手袋。このゲームでは雷属性のガントレットのようだ。能力には雷属性のスキルの威力の倍化と雷系のスキルがある。リサと同じ格闘家は欲しいだろうな。


俺もこれは例外ではない。近衛の威力が倍になることを考えると全然ありだ。ただ星震が使えなくなるのは痛い。保留しよう。


メギンギョルズはトールの帯の名前だ。北欧神話ではトールの帯はトールの力を倍にする魔法の帯として登場している。このゲームでは筋力を倍化と巨人の加護に雷系のスキルがあった。リサは頭を抱えることになる。そしてまだ続く。


ヴィーザルサンダルはヴィーザルが履いている鋼鉄のサンダルのことのようだ。この靴はフェンリルの牙に耐え、ヴィーザルはフェンリルの討伐に成功している。このゲームでは耐久値が存在していなかった。即ち壊れることがない靴のようだ。しかも巨人の加護と蹴り技の威力倍化もある。


流石トールに次ぐ実力者と言われているヴィーザルだ。フェンリル討伐に大活躍しそうだからこれが俺の第一候補に浮上したな。


クラウテュールとシルトテュールはこのゲームオリジナルの軍神テュールの剣と盾の名前のようだ。クラウテュールは勝利のルーンがあり、これを使って相手を斬ると必ず勝利する剣みたいだ。


欠点は勝利のルーンが使えるのは二回の制限があることとルーン魔術を覚えていないとそもそも発動させることが出来ない点がある。もっと恐ろしいことを言うと勝利のルーンを発動させても相手を斬ることが出来なければ不発に終わる。切り札としては十分な剣だけど、北欧神話には同じ勝利の剣としてシルフィ姫様が契約しているフレイの剣が存在している。恐らくこれと差をつけるためにこんな性能になってしまったんだろう。不憫だ。


シルトテュールは絶対防御を一度の戦いで二回使用できる盾。地味な能力だけど、俺は絶対防御は一回しか使えないという前提で戦いを組み立てている。これが二回になると決定的な攻撃を最低三回はしないといけないことになる。これが地味に嫌なことなんだよね。


新しい武器としては次が最後となるユグドラシルロッド。世界樹の枝木から作られた杖らしい。これが世界樹の枝木の武器の参考になるだろう。全属性アップに世界樹の加護、妖精と精霊の全ステータスアップ、無限のルーン残りは魔法使いをサポート系スキルが勢ぞろいと言った感じだ。


世界樹の葉は薬の素材。説明によると葉の中で最高峰の素材との事。これはとんでもない薬が誕生する予感だ。次のロイヤルオークとヤドリギの種子はセットで使う素材のようだ。


ロイヤルオークはオークの木の最高峰の木でこれにヤドリギの種子を使うとミストルティンの素材が手に入るとオーディンに教えて貰った。この瞬間にミストルティンを交換する人はいなくなった。ルインさんたちには頑張って貰いたい。


後はウェルシュゴールドと猛獣使い用の卵を含む各種鉱石や宝石だ。レッカはブリーシンガメンの登場に固まってしまった。そんな中、雫ちゃんはブリーシンガメンを交換する。レッカにかける言葉が見つからない。


俺は悩んだけど、ヴィーザルサンダルを選んだ。


ヴィーザルサンダル:レア度10 防具 品質S+

重さ:10 耐久値:なし 防御力:5000

効果:蹴り技の威力二倍アップ、魔獣殺し、無我、破壊無効、全耐性、神速、先制、神足通、空振、荷重操作、全滑走、全反射、神装甲、万物破壊、大地支配、神威解放、巨人の加護、神の加護

無口の神ヴィーザルが履いている靴。決して壊すことが出来ない鋼鉄の硬さを誇る靴でその硬さとは裏腹に軽く履きやすい。靴の中では最高峰の靴でこれで放たれる蹴り技は地を割るほどの威力を誇ると言われている。


少しでもフェンリルとの勝負が有利に動くなら俺はこれを選ぶ。するとオーディンが俺のところにやって来た。


「お主が魔剣に落ちたグラムを聖剣に戻した者じゃな?」


「俺だけと言うのは語弊がありますけど、一応そうです」


「正直じゃな。その聖剣グラムをわしに少し貸してくれんかの?」


「え? はい。どうぞ」


俺が聖剣グラムをオーディンに渡す。


「懐かしいのぅ。よく作られておる。腕がよい鍛冶師に直して貰ったようじゃな」


ギリシャ神話の神様ですけどね!


「じゃが、これが本来の姿ではない。この戦いでシグルドにこの剣を預けるならわしが本来の姿に戻してやってよい。どうじゃ?」


え?それはもしかして神剣になるってこと!?


「是非お願いします!」


「ふぉっふぉ。即答じゃな! では」


「お、お待ちください! オーディン様! なぜ俺のような男にそこまでしてくださるのですか!」


やめて!シグルドさん!止めないで!俺が心から絶叫しているとオーディンが話す。


「お主もわかっていよう。このままお主が戦えば間違いなく負ける」


「そ、それは…」


俺のこの時、初めてシグルドさんがディートリヒに苦戦したことを知った。


「お主が負けるとわしのワルキューレたちも救われることはない。もちろんお主が負ければブリュンヒルデもただでは済まんじゃろ。それはわしが望んでおることでは無い。まぁ、年寄りのお節介とでも思えばよい」


「は、はぁ…」


シグルドさんが何とも言えない顔をしているけど、結局はワルキューレたちをオーディンは心配していると言う事だろう。オーディンからは強い後悔も感じられた。きっとアンラマンユの時に死んでしまったワルキューレを救えなかったことを後悔しているのかも知れない。


「理解したならゆくぞ」


オーディンが自分の槍を地面に突き刺すと聖剣グラムを構えて、手を添える。


「グラムよ。お主が浴びた血と呪いの全てをここに浄化する。再びわしの光を浴びて、真の姿を取り戻すがよい。むん!」


グラムからとんでもない光が発生し、周囲が光に包まれた。光が収まり、目を開けるとそこには七色の輝きとルーン文字が刀身に浮かび上がった生まれ変わったグラムの姿があった。


「これがグラム本来の姿じゃ。受け取るがいい」


俺はオーディンから受け取る。


神剣グラム:レア度10 剣 品質S+

重さ:150 耐久値:3000 攻撃力:4500

効果:魔王殺し、竜殺し、人特攻(究)、全属性アップ(究)、魔力吸収、多乱刃、神聖属性ダメージ(究)、白熱刃、空振、爆風波、神波動、神障壁、暴風壁、後光、神気、英気、天言、時空切断、時空支配、無限のルーン、神剣解放、神威解放、巨人の加護、勝利の加護、王の加護、神の加護

英雄シグムントがオーディンの試練の果てに手に入れた常勝不敗の神剣。ノルン三女神の加護も宿っており、どんなものでも斬り裂く切れ味を誇る。魔剣グラムの力も受け継ぎ、シグムントが使っていた時よりも強くなっている。


グラムがエクスカリバー、デュランダルクラスの剣になった!色々頑張って作った甲斐があったよ!


「約束は守るようにな。では、さらばじゃ」


そういうとオーディンが消えて、俺たちは元の場所に戻る。俺は早速神剣グラムをシグルドさんに預けた。


「済まないな。君の物を何度も使わせて貰って」


「いいですよ。この剣でブリュンヒルデさんの仲間を救ってあげてください」


「あぁ。この父の剣とオーディン様に誓おう。必ずディートリヒに勝利し、ブリュンヒルデの仲間を助け出すと!」


さて、ここからは明日の作戦会議だ。作戦を煮詰めて挑むとしよう。

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最新作『動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います』を連載開始しました。
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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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