#946 燃えるエルフの森
俺は三人と夕飯を食べながら、ゲームの話をする。
「ペルセウスに勝ったのかよ…」
「あら? アーレイでも知っているのね?」
「お前、俺を馬鹿にしすぎだろ? それぐらいゲームで知っている」
あくまでゲームでなんだな。しかもアーレイの場合、メデューサの話しか知らなかった。アーレイにしては知っていた方だな。姫委員長が聞いてくる。
「強かったのかな?」
「ラッキーも重なっての勝利だった。それが無かったら、負けてたな」
「どんな勝負をしていたのか見たかったな~」
「それを言うならお互い様だ。みんなとアーサー王やギルガメッシュ王との勝負を見たかったぞ」
アーサー王が手加減していたら、文句言ってやる。俺は遅くなったからお詫びを兼ねて一人で片付けをする。その後、ログインしてギルドで異変が無いか聞いてみるが異変は無かった。
するとナオさんがセチアと恋火のマリッジリングを持ってきてくれた。
「すみません。お店が燃えちゃって、ごたごたして遅くなりました」
「大丈夫ですよ。まだウェディングドレスも用意してませんし、この状況じゃあどうせ出来ませんから」
「そうですけど…ダメですよ。ウェディングドレスは早めに用意をして結婚式の日を決めないと。私たちの用意もありますし、何よりセチアちゃんたちは結婚式を楽しみにしているんですから」
あぁ…もしかして不安にさせちゃっている可能性があるのか。これは配慮が足りなかった。すると話を聞いていたミュウさんが話に加わって来る。
「ウェディングドレスは任せて! セチアちゃんと恋火ちゃんのデザインはもう考えてあるから! 最高の物を作るよ! 素材さえあればね!」
「はいはい。頑張りますよ」
俺たちが会話しているとギルドにエルフィーナが飛び込んで来た。どうやらサバ缶さんの予想が的中したみたいだ。
「た、大変です! 私たちの森が! 人間の手によって、燃やされています!」
「なんだって!?」
どうやらエルフの村の位置が分からないウィザードオーブは最悪の手段を取ったようだ。即ち、森ごと焼き払ってエルフの村を見つけるつもりらしい。
俺にとっては最悪のタイミングでの火計だ。何せイオンたちがダウン中だからな。エアリーが作り出しているソーマ酒を使った料理を使う手もあるが、ここまで我慢した以上、使うのは惜しい。
「現在エルフはウィザードオーブの軍勢と戦闘中ですが、押されています。救援をお願いできますか?」
インフォが来る。
『特殊イベント『燃えるエルフの森』が発生しました』
特殊イベント『燃えるエルフの森』:難易度SSS
報酬:結果により変動、エルフのワールドイベント『ウィザードオーブ戦争』に参戦
参加条件:ワールドイベント『ウィザードオーブ戦争』の参加プレイヤー、NPC参加可能
エルフの森に進軍したウィザードオーブからエルフの森を守れ。
全員を見ると頷く。みんな準備は出来ている。
「分かりました。すぐに向かいます」
「ありがとうございます! 行ったことが無い人がいれば私が送りますので、声を掛けてください」
これを聞いた全員がそれぞれ声を掛け合い動き出す。
「フリーティア城には私が行ってくるよん。今回はあまり斥候として活躍できていないからねん!」
「私たちは町中のプレイヤーに声を掛けるわよ!」
「俺はディアドラ姫に声を掛けてから向かいます。あ、ナオさん。燎刃のエンゲージリングを出来れば最終決戦前までにお願いできますか?」
「任せてください」
「後、遅れても構いませんので、ルーナの分もお願いします。では、失礼します」
俺はホームに転移する。
「「「「(さらっと指輪を注文した…しかも妖精ちゃんの分まで!)」」」」
全員の心で叫んでいることを知らない俺たちは皆に話をする。これを聞いたイオンたちが当然参加を願い出る。
「私の力が必要なはずです! タクトさん!」
イオンがそう言っていると珍しくリリーが寝ているイオンの頭を優しく撫でる。
「イオンちゃんはこの前の戦いで頑張ったんだから、大人しく寝ていようね」
「私を参加させたくないだけでしょう! リリー!」
リリーが顔を反らす。
「そそ、そんなことをないよー」
「分かり安すぎます! あう」
「ほら。大人しくしてろ。水を操るのはイオンたちだけじゃない。アトランティスでの報酬で第五進化したチロルたちもいるんだ。だから今回は休んでてくれ」
頷くリリーをイオンが睨むとリリーが俺の背に隠れる。いつになってもこれは変わらないな。ここでイオンは我慢する条件を言ってくる。
「分かりました。我慢します。でも代わりにタクトさんが貯めているリリーのスキルレベルを上げたアイテムを私に使ってください」
俺が密かに時空魔法のレベルを上げて、禁呪を狙っていたんだが、それはイオンというかみんな狙っていたんだな。こうなると皆に優先しないと納得しないだろう。
「それは別にいいが、イオンはどのスキルのレベルを上げたいんだ?」
候補は竜技と竜魔法。イオンは接近戦を得意としている。ドラゴンフォースとの相性はリリーと同じでかなりいいはずだ。しかしリリーが覚えているからエンゲージバーストでは被ることになる。俺としては竜魔法を選んで欲しいところだ。
「新しい竜技と竜魔法を一つずつ覚えたいです」
「あぁ~! イオンちゃん、ずるい!」
「ずるくはないだろ」
寧ろアイテムの消費が減るような気がする。リリーは二つ技を覚えているから二つ要求したんだろう。いや、イオンのことだ。後に続くみんなのことを考えて、遠慮したのかもしれない。
「それでいいんだな?」
「はい!」
「分かった。今は急いでいるから帰って来てからな」
イオンと約束を交わし、スカアハ師匠たちにもウィザードオーブの暴挙を話す。これを聞いたフェルグスは酷評する。
「なんと野蛮な作戦だ。指揮をしているのはフェルなのか?」
「恐らくは…ただエルフが苦戦するくらいなので、それだけとは思えません」
俺の意見にスカアハ師匠も賛同する。
「同感だ。エルフの森周辺全ての森を燃やそうとするならウィザードオーブの魔法使いの大半を導入しないと不可能だぞ。まぁ、悪魔がいるなら話は別だがな」
悪魔の話はエルフィーナからは聞いていないけど、ベリアルが関わっている可能性があるか。ルインさんの話によるとベリアルは火にも関係がある悪魔らしいからな。
「ま、たくさんいるならいいことじゃねーか。当然行くんだろ? 師匠」
「あぁ。そろそろ準備運動をしないとな。タクト」
「はい」
するとディアドラ姫も行くと言い出す。
「ディアドラ! 危険だ!」
「それぐらいは分かっている! だがな、ノイシュ。これはウィザードオーブがエルフにしでかしたことなのだ。私が動かねばウィザードオーブとエルフとの仲は完全に決裂するぞ」
「それは…」
「ディアドラ姫の言うことは事実だ。ならば戦いには私の部隊が参加する。ノイシュ様とディアドラ姫はエルフの女王と話をしてください」
つまり後ろにいて、戦闘には参加させないと言う事だな。脳筋とか聞いていたけど、フェルグスは第一騎士団団長だ。しっかりした物事を考えている。
「分かった。それなら良いな? ノイシュ」
「まぁ、それなら…」
ノイシュさんが国王になったら、大変だろうな。とにかくこれでメンバーを決まった。
俺は装備を更新して、スカアハ師匠にゼノ・ゲイボルグを預ける。オイフェと戦うと言うならきっと必要になるからだ。急いでエルフの森に向かうと煙と熱気に襲われた。しかしまだ村には火が来ていないようだ。
「ルインさん、状況は?」
「良くないわ。今、銀たちがウィザードオーブの魔法使い部隊を確認したところよ。そいつらが火魔法と風魔法を使っていて、火の手が物凄い勢いなの。しかも空から悪魔、地上にはウィザードオーブの騎士たちと怪獣がいて、ウィザードオーブの魔法使い部隊に攻め込めない状況よ。今、エルフに許可を貰って、ユグたちが木を切り倒しているわ」
「破壊消火ですか」
破壊消火とは火災の時に他の住宅に火が移らないように間に合わない建物を壊して、火が燃え移るのを阻止し、被害を最小限に抑える消火方法。消防士の最終手段の一つだ。
「えぇ。悪いんだけど全然手が足りてないわ。ユグたちの護衛と作業の手伝いもお願い出来るかしら?」
「分かりました」
俺たちが結界の外に出るとまずはリリーとブランに強化とセチアに水樹の精霊を頼む。そして状況を確認すると先に向かっていたルークたちが巨木を踏みつぶすほど巨大なドラゴンと戦っていた。
神罰炎竜ソドム?
? ? ?
神罰爆竜ゴモラ?
? ? ?
ソドムは二足歩行の赤竜でゴモラは四足歩行の赤竜だ。どちらも翼は無い。ルインさんの言うように怪獣って感じだ。
ソドムの体は固まりかけている溶岩のような体をしている。ゴモラは背中が赤い鉱石でごつごつしているドラゴンだった。
二匹の由来は神の裁きによって滅びた町の名前だ。確かその町の人たちはみだらな行為にふけり、それを見た神が天から硫黄と火を降らせて滅ぼしたという話だったはず。この事件に関わっていたのがベリアルという話がある。つまりこの戦場にはベリアルがいる可能性が高い。
それを証明するように空にはグレーターデーモンたちとマールスゲニウム、ベリアルの代名詞の一つが飛び回っている。
グレーターデーモンライダー?
? ? ?
魔炎の戦車?
? ? ?
ルインさんの話ではベリアルは火のチャリオットに乗っているとされている。こいつらの相手はアルさんたちと雷電さんたちに加えて、太陽神のチャリオットに乗っているゼノ・ゲイボルグを装備しているレイジさんがしているようだ。
更に竜騎士たちもいた。これで今回の事件にベリアルとディートリヒが関わっていることはほぼ間違いないと思う。シグルドさんが言う。
「どうやらディートリヒの部隊が参加しているようだな。竜騎士の相手は私がしよう」
「ワルキューレは参加していないみたいですね。まぁ、当然といえば当然ですが」
「どういうことですか?」
「エルフの森にある世界樹ユグドラシルは私たちが仕えていた神様たちの聖域です。もし彼女たちがここに攻め込めば、オーディン様が動くと思います。それは奴らにとっては不都合でしょう」
確かにオーディンが敵として登場したら、全滅してもおかしくはない。というか世界樹ユグドラシルが聖域なら早く出て来いよと言いたいところだ。そして今回の事で北欧神話の報酬の期待値が上がった。
シグルドさんとブリュンヒルデさんは空に上がり、戦いに参戦した。戦場を観察していた俺たちは役割分担を決める。
「ノワ、リビナ、セフォネ、ユウェル、アラネア、狐子でウィザードオーブの魔法使い部隊に奇襲を仕掛けてくれ。指揮はアリナに任せる」
「アリナにお任せなの! あっちにいるの!」
「…ん」
「ちゃっちゃと仕留めに行こうか」
「そうじゃな」
ノワたちがいなくなる。次はユグたちだ。こちらは護衛と木を取り壊す人、そして消火作業の最前線でもある。
「グレイ、虎徹、白夜、優牙、黒鉄、ロコモコ、エアリー、ぷよ助、ルーナ、伊雪、ミール、月輝夜、千影、ハーベラスはユグさんたちと合流して護衛と消火、伐採の手伝いを頼む」
「「「「はい!」」」」
「メ!」
俺が指示するとロコモコがローブを引いて、アピールしてくる。どうやら何か考えがあるようだ。すると夜空に牡羊座が描かれるが不発する。簡単には使わせてくれないよな。
「メ~…」
ロコモコががっかりしてしまった。
「あ~…グレイ、虎徹、白夜、優牙。ロコモコに星座魔法を使わせてあげてくれ」
「「「「ガウ!」」」」
グレイたちがいなくなる。俺は次の指示を出す。
「和狐、ブラン、ディアン、リオーネ、ルミ、夕凪はここでセチアとこの森の結界を守ってやってくれ。攻撃の判断は任せる。残りは俺と空に上がるぞ」
「「「「おぉ~!」」」」
ここでフェグルスさんが言う。
「あの火の戦車は厄介だな。どれだけ消火してもあちこちで火の手を挙げている。早めに潰したほうがいいな」
「そうだな。火を消すにしてもある程度、火を放つ敵を潰さないと意味がないだろう。タクトよ。まずは…む!?」
光速で森の中から俺に何かが突っ込んで来た。
「敵将! その首、貰い受け」
「タクトはやらせないよ!」
「ぐ!?」
突っ込んで来た者はリリーのエストオラシオンでぶっ飛ばされるが踏みとどまる。
ディルムッド?
? ? ?
あれがディルムッド・オディナか。イケメンだな。
「ディルムッド! 貴様、一体何をしている!」
「フェルグス団長!? フリーティアめ! 偽物にカラドボルグまで持たせるとは卑劣な!」
「同じようなこと何度も言い出すなよ。面倒臭い。それに悪魔と手を組み、エルフの森を焼き払おうとしているお前たちはどうなんだよ?」
「ふん! これは偉大なウィザードオーブ王の決定」
「星震」
話の途中でディルムッドに不意打ちをした。俺のあんまりな仕打ちにフェルグスが言ってくる。
「流石にあれは酷いと思うぞ?」
「くだらない戯言を聞く時間は無いのでは?」
「まぁ、それはそうだが…」
ディルムッドが猛ダッシュで帰って来た。なんだろう?この残念なイケメンな感じは…俺のせいか。
「貴様! 話している最中に攻撃するとは騎士の風上にも置けない…どわ!?」
星震を放ったが槍を地面に突き立てて、耐えた。流石に何度も不意打ちは通用しないか。
「俺は召喚師だから最初から騎士じゃないぞ」
「く…それでも戦いの礼儀ぐらい」
「ならお前らはこの戦いに礼儀を尽くしたのか? どうせ警告もなくいきなり森を焼いたんだろ?」
もし事前に攻撃の事を伝えていたならその時点で援軍の要請が来るはずだ。
「…」
はい。答えない。そんな奴らに礼儀作法をどうこう言われたくはない。指摘するならまず自分が出来ていることを前提で話して欲しい。
「お前らのせいで時間が無いんだよ。相手をしてやるからとっと来い」
「言ったな! 我が槍、止めれる物なら止めて見ろ!」
ディルムッドが突っ込んで来ると俺とディルムッドの間に魔素が膨れ上がる。そしてその魔素にディルムッドは槍を突き立てるが弾かれる。
「何!?」
「シャー!」
「く!? ぶろは!?」
魔素から放たれた爪を槍でガードしようとするが擦り抜けて、ディルムッドはぶっ飛ばされた。
「これはキャスパリーグですか?」
シルフィ姫様がアウラたちを連れて、結界から現れた。
「はい。というか来ていいんですか?」
「私は一度エルフの森に来ていますからね。これは仕方が無いことなんです」
あぁ…確かにそうですね。という事はこの前の戦争の時点でフラグを踏んでいたのか。いや、シルフィ姫様のことだ。案外狙っていたのかも知れない。
俺が邪推していると俺たちの前に何かが落ちて来て、その衝撃で周辺の騎士たちがぶっ飛ばされた。
「ははは! やっと見つけたぜ!」
こいつがベリアルか。するとシルフィ姫様が前に出る。
「あなたが砦を襲った悪魔ですか…」
「ん? 砦? ははは。さぁな」
「レギオン」
「おっと。召喚していいのか? フリーティアの第一王女さんよ。お前の大切な妹の命は俺様が握っているんだぜ?」
「く!」
こういう流れになるのか…これはシルフィ姫様の後が怖いな。絶対に荒れるよ。そしてベリアルの発言は砦を襲った悪魔だと自供しているよね?
「まぁ、俺様の興味はお前たちにはない。俺が興味があるのはお前だよ」
ベリアルは俺を指差して来た。
「サタンに俺と戦うように言われたのか?」
「あん? まさか。お前の話を聞いて、俺が興味を持っただけだ」
それは戦いを誘導されたと言うんだよ。
「あ、そう。でも、俺はお前に興味はない。見逃してやるからとっとと帰れ」
「へぇ…言うじゃねーか!」
ベリアルが俺に向かって拳を突き出して来る。
「…雪だるまさん」
「あん?」
ベリアルの前にルミの進化した雪だるまさんが現れる。
「…パーパをいじめる奴は全員殺す」
ルミの一言に全員が凍り付いた。俺としては嬉しいんだけど、俺でも寒気が走ったぞ。ルミの言葉に従うように雪だるまさんが氷の爪でベリアルを潰した。
その間に俺はスピカに乗るとベリアルを無視して、魔炎の戦車に襲い掛かった。
「悪魔なんて無視して片っ端から戦車を落とすぞ。スピカ!」
「ヒヒーン!」
するとベリアルが雪だるまさんの爪を粉々にして、立ち上がると俺を見る。
「てめぇ…俺様を放置するとは…興奮するじゃねーか! ん?」
ここでロコモコの星座魔法クラウドイーオーが発動する。このフィールド上空が黄金の雲に包まれる。すると黄金の雲から黄金の雨が降り注ぐ。
この結果、火の勢いが弱まり、雨を受けた悪魔たちは煙を上げて、森の中に逃げ込む。そしてこの雨を受けた味方に生命力と魔力を全回復させ、各種バフまで発生させる。これを受けたベリアルはご機嫌だ。
「あはははは! 気持ちいい~! 体中が燃え滾っているぜ!」
爪を再生させた雪だるまさんが再びベリアルに襲い掛かるがこれを躱して俺を追ってくる。よし、誘導成功。こいつに暴れられると味方の被害が多くなる。空で追いかけっこする方がいいだろう。その間に俺はリリーたちに敵の撃破をお願いした。
ここで完全に放置されたディルムットが叫ぶ。
「待て! そいつは私の獲物」
「お前の相手は私がしてやろう。ディルムット。偽物と言ったのだ。まさか断りはしないだろうな?」
「いいだろう。そのカラドボルグはウィザードオーブの物! 返して頂く!」
フェグルスとディルムットが激突する。一方エルフの村の中ではサバ缶さんやルインさんたちがみんなの戦況報告を聞いて、指示出しをしていた。他の生産職たちもここに回復アイテムや弾薬を運んでいた。
当然これを放置する敵はいない。森の影から敵が現れる。
「「「「敵!?」」」」
「その物資、奪わせて貰う!」
影の国の勇士たちが襲い掛かると光の刃が叩きつけられ、数人が犠牲になる。
「…負け犬風情がまた我々の邪魔をするか」
「あぁ。何でも邪魔してやるよ。お前らをこいつらの様にぶっ殺すまではな」
クーフーリンがゲイボルグとクルージーンを構える。それはもしかしたら、神話で語られるクーフーリンの全盛期の姿なのかも知れない。
そしてディアドラ姫の所にも敵が現れていた。オイフェだ。しかしスカアハ師匠が立ち塞がる。
「彼女たちをやらせる訳にはいかんな。オイフェよ」
「あら? 今日は弟子に隠れないのかしら?」
「あぁ。弟子にお膳立てまでされたからな。ここで負けると師匠としての威厳に関わる。悪いが本気で挑ませて貰うぞ! オイフェ!」
「上等よ! 私と国を捨てたあなたは今日ここで私が殺してあげるわ!」
スカアハ師匠がゼノ・ゲイボルグを構えて、オイフェとぶつかった。
その頃、メルたちも宿敵と遭遇していた。フェル・ディアドだ。
「見つけたぞ! よくも! よくもよくも! 私の経歴に傷をつけてくれたな! 貴様ら!」
「それをしたのは、タクトなんだがな」
「まぁ、いいじゃない。リベンジする機会が来たんだから」
「うん。今日は勝たせてもらうよ!」
それを聞いたフェル・ディアドは大笑いする。
「私に勝つ? 無駄だ! 私はお前たちの大量殺戮兵器にも無傷だった男だぞ! そう! 私は無敵のフェル・ディアド! 勝つことなど不可能だ!」
「分かってないね。お前は確かにタクトのとんでも攻撃を喰らって、無傷だったのかもしれない。だけど命が助かったのはタクトが見逃したからさ。それを僕が証明しよう。タクトから聞いた攻略法で癪だけどね」
レッカの言葉は勝利宣言だった。これを聞いたフェル・ディアドは黙っていられるはずがない。
「言ったな! 殺せるものなら殺してみろ!」
メルたちとフェル・ディアドが激突する。
折角やって来たシルフィ姫様たちはルークたちが戦っているソドムとゴモラとの戦いに加わる。
「みんなを召喚出来れば倒せるのに~!」
そう言いながらもシルフィ姫様は上級魔法を使っている。やはり個人でもシルフィ姫様は強い。
「シルフィ姫様、荒れてますね。ネフィさん」
「まぁ、可愛いものですよ。あれに比べたら」
ネフィさんが見つめる先にはかつてない形相でソドムに殴りかかっているアウラさんの姿があった。
「可愛いエルフが集まる森に何してくれているのよ! このドラゴンもどき! 竜穴!」
「…我々は召喚を禁止されていないのに、なんで殴りかかっているんですかね? しかも押しているし」
「私には頭に血が上っているとしか言えません。とにかくあの二匹を結界内に入れるわけには行かないわ。何としても止めますよ!」
「「「「はい! レギオン召喚!」」」」
こうして戦いは激しくなっていった。
 




