#940 都市の安全を守る像
回復と休憩を終えた俺たちはリビナを戻して、再度攻略を開始する。
どうやら最初の戦闘がピークだったようだが、定期的にグラウクスたちが襲撃してくる。リリーたちの報告にあったように巧みな空中戦を披露した。これは勉強になる。ただ集団での戦いなので、俺だけ勉強してもあまり意味がないな。
そしてボロボロじゃないパルテノン神殿風の神殿前に到着すると最後の試練が立ちはだかった。神殿を守るように配置された四体の巨大な石像に雷が落ちると地震が発生し、石造の目に光が宿ると動き出した。
パラディオン?
? ? ?
パラディオンは木像だった気がするのだが?まぁ、いいか。隕石が止んでいるからこいつらとはリリーが大好きなガチンコ勝負となりそうだ。
武器は全員槍と盾で共通している。アテナを意識しているからだろうな。
「やるぞ。リリーと黒鉄で一体ずつ。アリナとゲイル、俺とコノハで分かれて戦おうか」
「任せてタクト!」
「し、心配なの…」
「戦闘が終わればそれぞれ参加すればいいさ。リリーとアリナ、ゲイルは奥を頼む」
右の敵が突っ込んできて、黒鉄が腕をドリルに変えて、回転する槍とぶつかり合う。すると火花が散り、競り合うとパラディンは槍をドリルの下に向け、流すことで黒鉄の懐に入ると回転する盾を黒鉄にぶつけて来た。
上手いな。それに結構な速さがある。しかし黒鉄は多重障壁で防いでおり、腕を棒にして、伸縮と変形を駆使して、パラディオンの側面から攻撃をするがこれは躱される。危険察知能力もかなり高いぞ。
その間に他のパラディオンたちがジャンプしてきた。
「やらせないよ! ゲイル!」
「ガウ!」
リリーとゲイルが体当たりをして撃ち落とした。更に二人は襲い掛かる。
「天涯両断!」
「ガァアア!」
リリーの天涯両断とゲイルの荷電爪で襲い掛かるがこれは盾でガードされる。
そして俺たちの相手のパラディオンは黒鉄と相手していたパラディオンが上にジャンプしたところに盾から神波動を黒鉄に向けて放っていた。
「ホー!」
これはコノハが空間歪曲で防ぎ、俺が斬りかかるふりをして構えられた盾を下から星震と共に蹴り上げた。
「雷光刃!」
英雄障壁でガードしつつ、後ろにジャンプするパラディオンだったが完全に防げず、両足を斬り裂いた。
更に追撃しようとしたが、ここで目から石化光線を放ってきて、俺は回避する。するとパラディオンに空間歪曲で吸い込んだ神波動が直撃。流石コノハだ。隙は逃さないな。
すると第六感が発動する。俺が上を見ると飛ばした盾がヨーヨーのように回転して落下してきた。
「おっと。ん? うおぉおお!?」
俺目掛けて落下してきた盾はタイヤのように地面を走り、俺を追いかけて来た。くそ!念動力で操っているからどこまでも追いかけて来る。
「ホー!」
その間にパラディオンの足は復活され、着地したところにコノハが魔法を撃ちまくる。しかしパラディオンは盾への念動力を解除しない。こういう時は相手に向かっていくに限る!
俺はパラディオンの足の下を通る。盾の大きさから考えて股間直撃だ。そう思っていると普通にパラディオンは手に装備した。
「上手くいかないものだなぁ…」
盾を装備出来たパラディオンは槍の石突で地面を叩くと大地操作を使って来た。地面から石の柱が次々勢いよく現れて、俺をぶっ飛ばさそうとするが俺は空に逃げる。
それを見たパラディオンは槍が回転し、旋風刃が俺に向かってくる。これをコノハが旋風雪を使い、互いの異なる竜巻がぶつかり、お互い弾けた。
「助かったよ。コノハ」
「ホー…」
「あぁ。どうしたもんかな」
コノハの魔法ラッシュを盾無しで受けたことで結構ダメージは入っている。だから魔法で攻めるべきなんだろうけど、魔法を果たして使わせてくれるかどうか。それにいい魔法があるのかな?
「ホー!」
俺が警戒しながら獣魔魔法の一覧を出すとコノハが嘴で魔法を示す。
「これ使いたい」
俺がコノハに聞いた瞬間、パラディオンが槍を投げて攻撃を仕掛けて来る。本当に隙を逃してくれないな!でもこれで武器は盾のみだ!俺が攻めに出た瞬間だった。俺の背後から放射熱線が放たれた。これをコノハが体で止める。
「コノハ!?」
コノハは地面に墜落した。俺が見ると槍がこちらを狙っていた。更に空中を自在に動き回り、俺を突いて来る。盾を念動力で動かせるなら当然槍の動かせるか。くそ、勝機に捕らわれて簡単なことを見逃してしまった。
『ホー』
コノハが無事を知られせると同時に何かを訴えかけて来る。コノハが指示した魔法がヒントだ。
「任せろ! 雷光刃!」
俺は向かって来ていた槍を近衛の雷光刃で真っ二つにして、破壊する。するとパラディオンは新たな槍を作り出す。そこだ!
『『『『ディセラレーション』』』』
パラディオンの動きが遅くなる。これで時間が出来た。コノハが来て、獣魔魔法が発動する。俺がハイパースペース。コノハがチェーンエクスプロージョン。
「獣魔魔法! エクスプロージョンプリズン!」
異空間に囚われたパラディオンの周囲に無数の魔方陣が浮かび、ハイパースペース内で次々大爆発をする。
これを受けたパラディオンだったがボロボロになりながらも耐えて見せた。すると再びディセラレーションが発動し、再びエクスプロージョンプリズンを使う。この瞬間、パラディオンの死は確定した。
それでもエクスプロージョンプリズンを四回くらい耐えたことは流石と言うべきだな。一方みんなもなかなか白熱しているようだ。
「リリーはなんか楽しんでいるから俺は黒鉄の援護に向かう。コノハはアリナとゲイルを助けてあげてくれ」
「ホー!」
俺が黒鉄のところに行った理由はディセラレーションでパラディオンを遅くすれば黒鉄の有利は決定的となるからだ。俺の考えた通り、動きが遅くなったパラディオンは黒鉄にボコボコに殴られる。
これは楽勝だと思っていたらパラディオンの体から光が発生する。これを見た黒鉄はパラディオンを手で掴むと腕を伸ばす。そこでパラディオンは自爆し、黒鉄は片腕を失ってしまった。しかし超変形ですぐに元に戻す。
「自爆の速度がミスリルゴーレムより遥かに速かったな。守ってくれてありがとな。黒鉄」
黒鉄は俺が自爆に巻き込まれないようにパラディオンを遠のけた。黒鉄はだいぶ賢いゴーレムだと思う。
「アリナたちの援護、行けるな? 黒鉄」
黒鉄は両手を拳で合わせて行けることを伝える。これでアリナとゲイルが戦っていたパラディオンは五対一だ。最も既にボロボロでアリナとゲイルが決めるところだった。
パラディオンはコノハの氷獄で凍り付けにされたところにゲイルの地脈操作で貫かれていたところにアリナが竜魔法を発動させる。
「竜魔法! ドラゴントルネードなの!」
竜巻が直撃したパラディオンは体が砕けて空へと上がる。そして空には獅子座の魔方陣が描かれていた。
獅子座から現れたのは太陽の輝きを放つ光の獅子。その獅子がパラディオンに噛みつき、そのまま地面に激突すると超爆発を発生され、パラディオンは木っ端微塵となった。
どうやら星座魔法ブレイブレオは必中の高威力爆発魔法と言ったところかな?噛みついてからすぐに爆発していなかったから本来はある程度敵に噛みついてから爆発するんだろう。
さて、最後のリリーだが、お互いボロボロでド派手な物理戦闘をしていた。
「けほけほ! 煙たいの」
「だからって、俺を壁にしないでくれよ」
俺たちは手を出さずにリリーの戦闘を見守る。
「カラミティカリバー! カラミティカリバー! カラミティカリバー!」
リリーが槍と盾をぶっ壊し、パラディオンに止めを刺そうとしたところでパラディオンが自爆を発動させる。
「えぇ!?」
「どーんなの!」
カラミティカリバーを振りかぶっているリリーの背後からアリナがタックルしてリリーを強制的にその場から避難されたところでパラディオンは大爆発した。これでインフォが来る。
『リリーの二刀流スキルのレベルが40に到達しました。二刀流【ミーティアエッジ】を取得しました』
遂に覚えたか。大剣のミーティアエッジはきっとえげつないことになると思うけど、問題はスピードだな。折角の高速連撃が大剣で台無しにならないかが心配。まぁ、リリーなら使いこなすだろう。
「お疲れ様、二人とも」
二人揃って土まみれになっていた。二人は顔を振り、土を落とす。
「酷いとばっちりを受けたの…リリーお姉様」
「だって、急に自爆されるんだもん。うぅ…ごめん」
アリナの非難の視線を受けて、リリーは謝る。俺はその間に解体する。
パラディウム:通常アイテム
効果:一定範囲内の味方にアテナの加護、守護結界
女神アテナが作ったとされているパラスの木像。一つの戦闘が終わるまで守護結界を貼り、守護結界内の味方にアテナの加護を付与する。
パラディウムはパラディオンと同じ言葉なのだが、このゲームではパラスの木像をパラディウム。石造の敵をパラディオンとしたようだ。
このパラディウムは魔法使いや召喚師が使用するべきアイテムだな。通常アイテムだから一回しか使えない。色々考えないとね。幸い全てのパラディオンから獲得出来たから良かった。
俺たちは神殿の中に入るとアテナ様が現れた。
「ようこそ。ボクの神殿へ。ここからは君がボクと契約する人間に相応しいか試練で試されてもらうよ」
インフォが来る。
特殊クエスト『アテナ神殿の試練』:難易度SSSS
報酬:女神アテナとの正式契約
挑戦条件:他の神と正式契約している場合は受けることが出来ない。また既に女神アテナとの契約者がいる場合も受けることが出来ない。
特殊条件:召喚獣や猛獣は一度の戦闘のみ使用可能。回復ポイントあり。途中ログアウト可能。
パーティー制限:最大十八人
プレイヤー条件:七人以上で挑んだ場合、戦闘出来るのは一人一回。
女神アテナが選んだ三人と戦い、勝利せよ。
女神アテナが選んだ三人か。誰だろう?女神アテナは結構色々な英雄に力を貸している。三人として名前を上げるならペルセウス、ヘラクレス、ベレロポーンだろうな。
ペルセウスにはメドゥーサ退治の際に使われる鏡のような盾を貸し与え、ヘラクレスにはヘーパイストスの作った青銅の鳴子、ベレロポーンには黄金のくつわを与えたことが有名だ。
ただ敵として戦うならペルセウスとベレロポーンはペガサスの乗り手として被っている。難易度から見ても俺にはベレロポーンが登場するとは思えないな。ヘラクレスも与えた物は鳥を驚かすだけの鳴子だ。パンチが弱い気がする。
「ふふふ。誰が現れるんだろうね?」
「アテナ様本人ということはないですよね?」
「それはないね。あ、ボクのもう一つの試練を受けたいなら歓迎するよ」
またインフォが来る。
特殊クエスト『女神アテナとの決闘』:難易度SSSSS
報酬:神盾アイギス
女神アテナと勝負し、勝利せよ。
これは見た俺は断言する。
「受けません」
「それは残念。で、このまま契約の試練を受けるのかな?」
「いえ、万全の状態で挑ませてください」
「えぇ~…」
リリーは残念そうな声を出すがアリナが言う。
「アリナは綺麗になりたいの」
「う…」
「あははは! うんうん。それがいいよ。女の子は身だしなみはしっかりしないとね。特に好きな男性の前では」
「ち、違うの!」
それを聞いたアリナは顔を赤くして、否定する。魅了を思い出したようだ。アリナを落ち着かせて一度帰る。そして温泉に向かうわけだけど、みんなの様子が変だった。アリナを警戒している。
不思議に思っているとノワの一言で謎が解けた。
「…アリナに襲われないなら一緒に行く」
「リ、リビナお姉様ーーー!」
「いつものお返しだよ~!」
二人が追いかけっこを始めたので、俺はユウェルに武器の修復を頼むとリリーの武器を見たユウェルはリリーを呼び出した。
「レガメファミリアもエストオラシオンも壊れる寸前だぞ! セチアと師匠が作った物なんだからもっと大切に使ってくれ!」
「ご、ごめーん!」
「やれやれ…いつになったら、温泉に行けるかな」
結局温泉に出た時にはお昼手前となっており、ログアウトすることにした。




