#929 異星人殺しの魔槍とアトランティスからの救援
翌日、学校で海斗からサンドウォール砂漠の現状を聞く。
「そっか。カロさんは無事に見つかったんだな」
「あぁ。どうやら町の異変には気が付いていたみたいで協力して貰えることになったぞ。とりあえずアラジンの情報を今日探ってもらう予定だ」
「大丈夫なのか?」
「俺たちは完全に関わらないから大丈夫だろうってさ。そのほうが俺たちにとっては都合がいいしな」
ここでみんなが考えた作戦を聞くことになった。
「かなりギャンブル性が高い作戦だけど、よくそんな作戦を考えたな」
「誰かさんの影響だと思うぞ。戦う前にしっかり作戦を考える流れが出来上がっているからな」
俺のせいなのか?戦う前に作戦を考えるのは普通だと思うんだけど?
今日は学校が終わるとスーパーで買い物をしてからゲームにログインする。今日の夜には大一番の勝負だ。俺は鍛冶場に向かう。
「どうだ? 間に合いそうか?」
「はい。力の撤去と槍への仕込みは終わっています。後は持ちやすいように削っていく作業です。夜までには二本とも完成しますよ」
「そうか…ありがとうな」
「これが僕らの仕事ですから」
それなら俺も生産作業をしてから、夜の作戦の説明をイオンたちにする。
「今回は水中戦闘になる。編成はイオン、イクス、リアン、チェス、黒鉄、ダーレー、ぷよ助、ルーナ、ディアン、サフィ、クリュス、蒼穹、夕凪だ。ナイアーラトテップの相手は俺とイクスがする。みんなはコインヘンの相手を頼む」
「「「「はい!」」」」
「恐らくアトランティスの軍勢に加勢することになる。それでも厳しい戦いになるだろう。そこでリアンにブリューナクを託そうと思う」
「え…あの私が持っていいんでしょうか?」
「あぁ。今回俺たちは別の槍を使うことになる。それにリアンなら俺よりブリューナクを使いこなせるはずだ。何せ女神だからな。ブリューナクの神威解放もデメリットは最小限になると思う」
今回の相手に神威解放がどこまで通用するか分からないが使わず負けるくらいなら可能性にかけてみたい。
「わ、わかりました! 頑張ります!」
「かなりの負担をかけることになるが」
「心配しなくても大丈夫ですよ。私の故郷とも呼べる場所が狙われているんです。寧ろ助ける力を託してくれてありがとうございます。先輩」
リアンはデメリットで暫く戦えなくなることを覚悟したみたいだ。そしてそれはリアンだけではない。
「タクトさん」
「あぁ。イオン、チェス、ダーレー、ルーナ、蒼穹。切り札の使用を許可する。どこで使うかは各自の判断に任せる。異星の存在だか知らないがみんなの本気の力を思い知らせてやれ」
「「「「はい!」」」」
そして俺は修練の塔か進化クエストか悩んだが、修練の塔を選択した。恐らく今日は今しか行く暇がないだろうからね。リアンが菅原道真を相手にブリューナクを使って戦闘するが敗北する。
「私…大丈夫でしょうか? 先輩」
「初めて使うんだ。そんなものだよ。大丈夫、ブリューナクの操作には慣れていたし、リアンも俺たちと一緒に戦って来たんだ。信じようぜ」
「そうですね!」
続く燎刃、千影も敗北し、虎徹が戦闘すると虎徹は多数の刀を自在に使いこなし、菅原道真に勝利した。
「むぅ…見事な腕前だな」
「ガゥ!」
「ふふ。お主に褒められるとは有り難いかぎりじゃな。ほれ、これが報酬じゃ。戦い、頑張るんじゃぞ」
「はい。ありがとうございます」
どうやら俺たちの様子から大一番の戦闘の気配を感じ取ったみたいだ。俺はここでログアウトし、夕飯を食べてからログインするとヘーパイストスとパンドラ、セチア、スカアハ師匠が完成させた新たなゲイボルグを持ってきてくれた。
ゼノ・ゲイボルグ:レア度10 槍 品質S+
重さ:80 耐久値:1500 攻撃力:600
効果:万物貫通、必中、即死、死棘、帰還、異星殺し、伝説解放
ルーン魔術:復活のルーン、破壊のルーン
グリードの頭蓋と魔王アザトースの力を取り除いたアザトースのかけらを槍の先端に仕込むことで異星の存在の心臓を正確に貫く魔槍となった。ゲイボルグの能力も健在で異星の存在を殺すことに特化している。
それは今まで見て来たゲイボルグの先が紫色になっている槍だった。ここでスカアハ師匠が説明をしてくれる。
「これが新たなゲイボルグだ。ゲイボルグは元々心臓を貫くことで相手を即死させる槍なのだが、異星の存在には恐らくエクスマキナと同じように我々と同じ心臓はないと思われる。そこで奴らが異星獣グリードにしたことと同じことをすることにした」
「同じことですか?」
「奴らは船を沈没させるために狙いを心臓から急所に変更した可能性が高い。事実船のエンジンなどが狙われてたんだろう?」
「はい」
あれはグリードの能力では無かったのか。益々あいつらにお返しをしないといけないな。
「そこで私たちもゲイボルグに細工をすることにした。切っ先に奴らの心臓と思われるアザトースのかけらを使うことでアザトースのかけらを狙うゲイボルグに変えたのだ。しかしこれだけでは面白くないからな。私なりにルーン魔術を仕込ませて貰った」
まぁ、セチアや俺も知らないルーン魔術だからスカアハ師匠が仕込んだことは分かっていた。問題はその意図だ。
「恐らくお前が戦う敵はこのゲイボルグでは倒すことは出来ない。しかしそいつに一泡吹かせることはこれで可能なはずだ。よいか? まず手順だが…」
俺はスカアハ師匠が考えた作戦を聞いた。そしてもう一本のゼノ・ゲイボルグをシャローさんに届ける。これで後は待つばかりだ。時間前にユウェルが直してくれた武器を貰い、俺たちは時間を迎えたが何も来ない。
「おかしいですね…」
「アテナ様が教えてくれたのはアトランティスが攻撃を受ける時間ですから今頃攻撃を受けているということでは無いでしょうか?」
「そうでした。ということはインフォが来るのは三十分が妥当ですね」
サバ缶さんの言う通り、三十分が経過すると予想外の人物から連絡が来た。
『…こちらアトランティスのカリュブディス。聞こえますか?』
『聞こえている。どうかした?』
『…アトランティスが攻撃を受けて、町やみんなが大変なの。お願い! 助けて!』
インフォが来るが全て知っているだけに心が痛い!
『特殊イベント『アトランティスからの救援』が発生しました』
特殊イベント『アトランティスからの救援』:難易度SSSS
報酬:結果により、変動
パーティー制限:なし
異星の存在を撃退し、アトランティスを救え。
パーティー制限の文字に全員がガッツポーズをした。
『…相手は物凄く強い。戦力は集められるだけ集めて欲しい』
『分かった。とりあえずこの場にいるみんなを送ってくれ』
『…わかった』
俺たちはアトランティスの宮殿内に転移した。目の前にはカリュブディスがいる。
「…色々言いたいことがあるんだけど、今はお父様や妹たちの命が危ない。お願い! 私を救ってくれたようにみんなも救って! 私も出来る限り手助けするし、お礼も私がするから!」
「あぁ…任せてくれ」
「…ありがとう。地上の勇者たちに海の女神の加護を! えい!」
俺たち全員に人魚の加護が付与された。アイテムや魔法は必要無かったな。というかこれならリリーたちを召喚出来た。まぁ、今は急ぐとしよう。
「ありがとう。カリュブディス。みんな、行くぞ!」
「「「「おぉ!」」」」
俺たちは外に出るとアトランティスは既にボロボロになっており、その原因を作った異星獣コインヘンはポセイドンや人魚たち、更に複数のゴーレムと戦っていた。
オリハルコンゴーレム?
? ? ?
やっぱりあのゴーレムが図書館に乗っていたオリハルコンゴーレムなんだ!黒鉄よりも更に大きいぞ!おっと感動している場合じゃないか。
「イクス!」
「イエス! マスター!」
「「エンゲージバースト!」」
俺はイクスとエンゲージバーストした。
「指揮を頼むな。メル」
「任せて! みんな! 作戦通りにいくよ!」
『ミアたち』
『リンク正常。既に観測態勢をとっています。マスター』
うん。みんな優秀だ。これで後はこいつらを追い出せばマザーシップでボコボコすることが出来る。こいつらにきついお仕置きをするために全力で追い出されて貰う!




