#927 妖精女王の試練
いつもEOを読んでくださりありがとうございます。
GWまで1週間となりましたので、GWの更新の予定をお知らせいたします。
1日2話更新をしようと頑張っていましたが、流石に厳しく4月29日~5月5日まで1日1話更新をすることにしました。更新時間はいつも通りの23時です。
俺は獣魔ギルドに行くとなんとかクエストは受けることが出来た。受ける試練はこちら。
ギルドクエスト『妖精女王の試練』:難易度SSS
報酬:妖精女王の宝珠
精霊神の試練をクリアせよ。
精霊の神様がいるんだ。俺が思い浮かべられるのは一人しかいないな。そして進化クエストの難易度の高さ記録を更新した。まぁ、通常進化ではないから当然なのかも知れない。とにかく挑むしかない。クエストを受けると転移する。
俺は目を開けるとそこは精霊界。地面には草原が広がっている。一緒にいるルーナが言う。
「パパ、私たちの神が降臨します」
空から青い光の柱が俺たちの目の前で落ちて、神が現れる。その神は青い服を着た男の神だった。
精霊神マナナーン・マク・リール?
? ? ?
やはりマナナーン・マク・リールが来るか。マナナーン・マク・リールはケルト神話に登場する海神で妖精の楽園ティル・ナ・ノーグで族長をしていたとされている。
海の神であり、妖精の楽園で王に君臨しているマナナーン・マク・リールを精霊の神様にこのゲームではしたようだ。マナナーンが話しかけて来た。
「私が名はマナナーン・マク・リール。ここティル・ナ・ノーグで妖精や精霊たちの神をしている。君たちはそこの妖精の試練を受けに来たかい?」
「はい。そうです」
結構優し気な神様だな。
「そうか。それなら盟約に従い、試練を行おう。試練の内容は簡単、彼女に勝つことだ」
相手は女性か。誰が来るのかな。すると黒い光が集まり、妖精の羽がある魔女が登場した。
妖精女帝モルガン?
? ? ?
オーマイガー!モルガンはモーガン・ル・フェイという名前でアーサー王伝説に登場する魔女だ。ケルト神話の女神モリガンと同一視されており、他にも色々な名前で登場している。
有名な話をいくつかするとモルガンはアヴァロン島でカムランの戦いで深い傷を負ったアーサー王を治療している話がある。
しかし別の話では、アーサー王の最強の敵として登場する。色々な話があるけど、一番有名なのはアーサー王からエクスカリバーの鞘を盗んだ話だと思う。これでアーサー王は不死性を失い、死ぬことになるんだ。
女神モリガンは破壊、殺戮、戦いに勝利をもたらす戦争の女神で夢魔の女王とも言われている。このことから難易度が高いのは当然だと思った。
「妾を呼び出すとは何用じゃ? マナナーン」
「彼と彼の妖精の試練のためですよ。モルガン」
「それは久方振りじゃな。む? ほぅ…随分愉快な召喚師が来たものじゃな。魔王にドラゴン、魔神、神を倒し、世界樹の祝福を得ておるとはな」
俺のプライバシーないな。
「しかもサキュバスを召喚しているな…これは久方振りに暴れられそうじゃ」
「ま、負けませんよ! あなたに勝って、私はもっとパパの役に立つんです!」
ルーナにそういわれると俺も本気にならないとな。俺は近衛と神息を装備する。
「ほぅ…召喚師なのに剣を使うのか! しかも雰囲気がだいぶ変わったな。面白い! 妾も久々に槍で戦ってやろう! ふぅー!」
モルガンが息を吐くと黒い霧が矛槍の形となり、両手にそれぞれ持ち、構える。やはり女神モリガンの要素もあるんだな。だとすると夢魔の能力も警戒しないと…大変だぞ。
『ルーナ、俺が最初に戦う。サポート頼むな』
『はい! パパ!』
「それでは試練を始めます。 では…始め!」
マナナーンの声と同時にモルガンを斬り裂く。すると斬られたモルガンは複数のカラスとなる。そのカラスたちに第六感が危険を知らせる。俺はバックステップで離れるが追ってくる。
「ふふ。逃げてていいのかしら?」
モルガンがルーナに向かう。
『大丈夫です。パパ。私にはパパたちと一緒に作った魔導書があります』
それを聞いて俺は目の前のカラスに集中する。
「天鎖!」
「っ!?」
ルーナのティルタクトから天鎖が飛び出し、モルガンを拘束する。更にルーナは手を空に掲げる。
「神撃!」
モルガンに神撃が直撃する。
「ふぅー…え? きゃぁあああ!?」
ルーナにダメージが入り、モルガンは俺の前に現れる。身代わりか。
「はぁああ!」
「ふふ!」
俺とモルガンがぶつかる。接近戦では俺の方が分があったが鱗粉を発生させ、第六感が発動したことで俺は距離を取る。
「ふふ。いい判断ね。旋風刃!」
槍から放たれた竜巻が鱗粉を巻き込み、こちらに向かって来た。こんなコンボまで使ってくるのか。
「旋風刃!」
俺も近衛の旋風刃でぶつかり合う。
「やるわね。でも魔導書を持っているのはあなたたちだけではないのよ」
『トルネード』
モルガンが魔導書を取り出すと竜巻を発生させる。ならばこちらも対抗しよう。
『トルネード』
竜巻がぶつかり合うかに思われたが、モルガンの竜巻に俺の竜巻が飲み込まれて、モルガンの竜巻が大きくなる。
しまった…魔力支配で俺の竜巻を操ったのか!俺も魔力操作を使うがレベルが違いすぎた。俺は逃げを選択する。
「逃がさぬ! はぁ!」
俺が逃げても巨大竜巻は追ってくる。空間歪曲や転移は恐らくモルガンには通用しない。どうする…切り札を使うか?いや、相手はまだ本気を出していない。何か突破口がないと…そうか!これがあった。対魔法使い戦最強の切り札を取り出す。
「ふむ…この程度か…む?」
巨大竜巻が一瞬で消え去る。
「な!? っ!?」
「居合斬り!」
俺は転瞬で間合いを詰め、モルガンを近衛で斬り裂く。そして追撃が発動するのだがその追撃でモルガンはダメージを受けなかった。恐らく魔女のローブの効果。やはりこのモルガンはアーサー王レベルの強敵だ。
「く! 妾に切り傷を…許さぬ!」
下がったモルガンが槍で地面を叩くが何も起きない。それが決定的な隙となった。
「神息! 宝刀解放! 永劫回帰!」
俺はモルガンを死ぬまで斬り裂き続けて、モルガンが倒される。するとルーナが来た。
「ふふ…見事にやってくれたものじゃ。まさかそんな忌々しい魔導書まで持っているとはな」
俺が使ったのは魔術殺しの魔導書だ。これでモルガンの魔法を封じさせて貰った。
「こうなっては仕方がない…妾も久方振りに本気になるとしよう」
モルガンからピンクのオーラが発生し、光の柱となる。これを見た俺は神息をしまう。恐らくこのまま神息を使うと壊されてしまうからだ。そしてモルガンのもう一つの顔の女神が降臨した。
妖精魔神モリガン?
? ? ?
魔女の姿からサキュバスの姿となり、髪も黒からピンクに変化していた。妖精の羽はそのままだが、頭から蝙蝠の羽が二つ生えた。しかしそんなことより、雰囲気が劇的に変化している。今までは魔女らしく妖艶な感じだったが、目の前の女神は殺気が半端じゃない。
「ふふ。妾の本気の姿を見ても欲情せぬとはな」
「そんな殺気をぶつけて来ておいて、よく言うな」
「ほとんどの人間はそれに気づくことなく欲情し、死んでいくものじゃがな」
まぁ、アーレイなら飛び込んで殺されるだろうな。
「折角本気の姿となったのだ。すぐに終わってくれるなよ!」
モリガンの姿が消え、槍が俺とルーナに向かってくる。俺は自分に放たれた攻撃を躱し、ルーナに放たれた攻撃をガードする。するとモリガンの眼がピンクに光るが俺に発生しているエンゼルファミーユの大天使の加護などで状態異常を無効化する。
「後光!」
「く!?」
「星震!」
アリエスの魔法ローブが輝き、モリガンの目を眩ませると俺は蹴りで星震を発動させ、ぶっ飛ばす。
「ぬぅ…妾の破壊の加護を無効化する武器に精神攻撃を無効にする加護か。しかしそれだけでは妾には勝てぬぞ!」
俺とモリガンがぶつかり合う。接近戦は僅かに俺が押している。武器での戦闘なら俺に分があるが槍を弾いてもモリガンは爪を伸ばしてきた。その上、弾いた槍を念動力で操り、新たな槍を作り出して見せた。
はっきり言って、このモリガンはスカアハ師匠の並みの身のこなしだ。俺が星震を使おうとすると拳や蹴りの向きを変えて攻撃を躱してきたし、影を使った攻撃など技が豊富だ。
ぶっちゃけ魔術殺しの魔導書が無ければ確実に負けていた。魔術殺しの魔導書があるお陰で難易度は体感ではS+ぐらいに落ちているだろう。
戦っているとモリガンの戦闘が本来の戦闘スタイルではないことがどうしても分かってしまう。その証拠に隙あらば、魔術殺しの魔導書を狙ってきている。
「天鎖! 私もいることを忘れて貰っては困ります!」
「ふふ。お馬鹿さん」
天鎖が念動力で操られ、俺に向かって来た。
「百花繚乱!」
花びらの斬撃が天鎖を弾くが技の終わりを見逃してくれる相手では無かった。
「残念だったわね。さようなら」
「絶対防御!」
「く!?」
『石化光線』
「閃影!」
アリエスの魔法ローブの絶対防御を発動させ、放たれた槍を止めるとエンゼルファミーユから石化光線が放たれ、モリガンの顔に命中。モリガンが顔を抑えたことでがら空きとなった胴を斬り裂いた。
「大丈夫ですか!? パパ!? すみません。私の判断ミスで。あう」
「俺を助けようとしてくれたんだろう? ありがとな。ルーナ」
「パパ…」
「よくも妾の顔を…許さぬ! 魔神の力を受けてその妖精共々消え去るがいい!」
モリガンの魔力が膨れ上がる。
「やれるな? ルーナ?」
「もちろんです! パパ!」
俺は近衛を腰にしまい、聖剣グラムを取り出すと超連携が発動する。
「聖剣グラム! 伝説解放!」
「聖剣解放!」
聖剣グラムとルーナの聖剣を合わせるとお互いの聖剣が共鳴し、眩い光を放つ。
「そんなもので止められるものか! 魔神技! モー・ル・フェイ!」
モリガンの両手の魔力から発生したピンクの妖精の大群が俺たちに向かってくる。
「「聖剣技! シュトルムヴォータン!」」
俺たちの超連携で放たれたシュトルムヴォータンが放たれるとピンクの妖精の大群とぶつかり合うと押される。
「顔を傷つけられた女性の怒りを思い知れ!」
俺とルーナが視線を合わせて、お互いに頷く。俺たちの魔導書同士が超連携を発動させる。
「「神撃!」」
「あぁあああああ!? お、おのれ…」
「「いけぇえええ!」」
「しまった!? ぎゃあああああ!?」
神撃を喰らったことで魔神技がキャンセルされ、モリガンは俺たちのシュトルムヴォータンが直撃する。
「やりましたね! パパ! パパ?」
「どうやらまだらしい」
俺が聖剣グラムをしまうと狂戦士化を使ったモリガンが現れる。
「あぁああああ!」
「く!」
「パパ!?」
俺はモリガンの爪で傷つきながら、彼女の目から涙が出ているのを見た。俺は腰の近衛を握る。
「…神刀解放!」
「っ!?」
「神刀技! 雷騰雲奔!」
俺はモリガンの顔を避けて斬り裂いた。
「顔を狙ったことは悪かったよ。けど、俺たちは強くなるために引けないんだよ」
「そう…ならマザーズレイクを目指しなさい。もし私たちの島に来れたら、その時は歓迎してあげるわ」
「それはいい歓迎でしょうか?」
「どうかしらね? その時の気分次第かしら? 何せ私は悪い魔女だから。そこの妖精ちゃんは私のようになってはダメよ」
「は、はい!」
ルーナの答えを聞いたモリガンは笑顔で消えた。するとマナナーンが来る。
「試練は終わりです。盟約に従い、あなたにこれを渡しましょう」
俺は妖精女王の宝珠を受け取る。
「ありがとうございます」
「いえいえ。あなたたちが私たちの楽園に来る日を楽しみにしていますよ」
マナナーンにそう言われ、俺たちは転移した。




