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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
ウィザードオーブ戦争
973/1718

#926 ウィザードオーブ対策会議とノアの新しい船計画

夕飯を食べ終えた俺はゲームにログインするとメルたちと遭遇。リサに星熊のアリエスグローブが見つかった。


「格闘家の必殺技を覚えないでよ! 兄ちゃんばっかり強い武器を装備してずーるーいー!」


「リサもガントレットを持っているだろう?」


「…兄様、私は何も持ってないよ。だからアリエスのローブが欲しい」


確かにミライは伝説の武器は持ってない。


「ちょっと待って!? 揺れないで! ヒーラーが一番強い防具を装備するとか意味わからないよ!」


「姉様、ヒーラーはパーティーの生命線。防具が一番いいのはむしろ当然のことだと思う」


「うぅ…正論」


しかしここで話を聞きつけたリリーたちが参戦したことでミライの懇願は失敗した。


「まぁ、俺からは上げれないけど、ミュウさんにはロコモコの素材を少しだけ渡しているから注文したらどうだ?」


「兄様は自分がしている装備の金額を自覚すべき」


「「うんうん」」


ミライからおおよその金額を聞いて、ドン引きした。まぁ、性能は文句なしに最強クラスだ。そりゃあ、金額も桁が違ってくるだろう。


そんな話をしているうちに多くのプレイヤーが俺のホームに集まって来た。今後の話し合いをするためだ。まずは昨日の戦闘の話をそれぞれ行う。


「海での戦闘ではグリードは倒しましたが両軍の船が全滅という結果になりました。現在、対異星の存在用のゲイボルグを製作中です」


「流石に行動が速いですね」


「それは何本作れそうなのかな?」


これは聞いていなかったな。グリードの頭蓋は結構な大きさがあった。ヘーパイストスに確認してみると二本作れるそうだ。


「一本はギルドに納めますね。あの場にいたのは俺だけじゃありませんから」


これで誰がそれを装備するか揉めることになるが、俺はシャローさんを推薦した。当然反対意見が出る。しかし俺は譲らない。


「あの場で悔しい思いをしたのは俺だけじゃない。あの場で船を失った全員がそうです。だからこそ、ナイアーラトテップとコインヘンと決着を付けるのは俺たちであるべきだと思います。そしてあの場で一番槍スキルが高いのは銛突きをしているシャローさんですよね?」


「そうなりますね。でも」


「私はタクトさんの意見に賛成です。鯨の相手はやはり漁師が最適でしょう。別にシャローさんの物になるとは言っていないんですから今回の大役はシャローさんがやってもいいはずじゃありませんか?」


シャローさんもずっとゲームをしている。ぶっちゃけ通常時の俺より泳ぎが速いし、槍や投擲も俺よりスキルレベルは高い。任せて大丈夫なはずだ。こうしてシャローさんの大役が決定した。


もちろんフォロー出来るところは当然する。コインヘンは空を飛んでいたから必ず水中戦になるとは限らないからな。その場合の足を用意するのは俺たち召喚師と猛獣使いの仕事だ。


次にここにはいない砂漠組の話を俺が代表して話をして、ルークからベリアルの話を受ける。


「ベリアルは土と闇の能力がメインの悪魔でした。僕が確認できた能力は消滅弾、死滅光線、石化光線、石化の魔眼、大地操作、重力操作、地魔法、暗黒魔法です。恐らく戦闘高揚と肉体活性、神速もあると思います」


「よく頑張ったな」


「これぐらいしか引き出せませんでしたけど、やれるだけはやったつもりです。後、サラ姫はウィザードオーブのお城にいると言ってました。なんでも国王と仲良くしているとか」


「…嘘をついてきた悪魔だ。どこまで信用していいかわからないな」


全員が俺の怒りを察知したが、スルーする。


「そうだね。でもこれは本当の事じゃないかな? だって、他にサラ姫様がいそうな場所がないよ」


「あ! それなら教会とかありますよ」


ウィザードオーブのプレイヤーの一言で俺たちは見逃していた存在を思い出した。


「え? 何?」


「すみません。ウィザードオーブのワルキューレってどうなっていますか?」


「ゴンドゥルちゃんとスコグルちゃん、フロストちゃんですか? そう言えばここで見てな…あ」


「お、おい! もしかして彼女たちは敵として現れるのか!? 彼女たちは俺たちの癒しだったのに!」


ウィザードオーブのプレイヤーたちには悪いがウィザードオーブにいるならその可能性は十分にある。そしてブリュンヒルデさんに事情を説明すると一緒に聞いていたシグルドさんが言う。


「俺はてっきり艦隊を率いていたのがディートリヒだと思っていたんだが、ブリュンヒルデの姉妹が敵の手に落ちているなら納得した。恐らくあいつは彼女たちと一緒にいるんだろう」


「私が彼女たちをほっとくことが出来ないからですか…」


「ブリュンヒルデよ。迷うことはない。目的地が同じになったのだ。共に行こうではないか」


「そうですね。ありがとう。シグルド。タクトさんに皆さん、妹たちが悪魔の手に落ちたと言うならそれを救うのは姉である私の仕事。もう二度と妹を失わないためにウィザードオーブ攻撃の際は連れて行ってください」


俺たちに反対する理由はない。これでブリュンヒルデさんとシグルドさんの参加が正式に決まった。そしてブリュンヒルデさんからそれぞれの能力が語られる。


「ゴンドゥルは魔法使いのワルキューレです。その魔力はワルキューレの中でも一番強く、多種多様な魔法を使います。戦場での戦いを考えると三人の中で一番厄介なワルキューレかも知れません」


単純な魔法使いだが、ブリュンヒルデさんより魔力が高いことを考えるとまず間違いなく上級魔法は使ってくる。最悪禁呪の可能性まで考えて動かないといけないな。


「スコグルは槍と盾を持っているワルキューレです。騎乗戦闘が得意で前線で戦うタイプの子ですね。厄介なのが彼女が持っているゲイルスコグルという槍です。空気を震わす風の槍で対策が必要だと思います」


ゲイルスコグルは槍の名前にしたんだな。現実の話ではゲイルスコグルは別のワルキューレとして登場している。一説には同一人物とするものもあるから恐らくその設定から槍の名前にしたんだろう。


空気を震わすということは空振の槍といったところか。俺には効かないが部隊に突っ込まれると厄介だろう。現れたら、真っ先に止めないといけないワルキューレだな。


「最後のフロストは格闘戦が得意の子でして、彼女の拳は星を震わすほどです。盾使いの私とは相性が悪い子と言えますね」


最後のワルキューレは星震使いの格闘家か。この子の相手はリサがすることに決まった。他の二人はウィザードオーブのプレイヤーたちが名乗りを上げた。かなり思い入れが強いらしく、彼らに任せることにした。これでワルキューレ対策は終わり、次にチロルたちが戦った相手の話をする。


「フィンとディルムッドの部隊がいたのか」


「うん。二人とも伝説の武器を持っていたよ」


「ディルムッドは両手に槍。両腰に剣を確認した。周りの敵が多い上に強くてな。剣を抜かせるところまでは行けなかった。ただ、槍の能力は大体判明したぜ。長い赤い槍が魔力切断と命中時に魔力を使うスキルの封印。短い黄色い槍は回復の無効化だ」


ある程度、伝説の通りだな。俺の記憶では赤い槍の方にも傷が治らない効果があったはずだけど、このゲームでは分けたんだな。


「フィンは手にも槍、腰に剣がありました。それぞれ一本ですが、同じく剣は使われませんでした。この槍が攻撃することなく、常時私たちの生命力を減らしてきました。このため、逃げていても勝ち目がなく、攻撃するしかなかった感じですね」


それは酷いな。フィンの槍は勝手に血を吸おうとする獰猛な槍とされる。勝手に血を吸おうとするところが常時敵の生命力を吸う設定になったんだな。随分な設定変更だ。


「これはフィンから先に潰さないとダメですね」


「私たちもそう思ったけど、周りの守りがしっかりしていたんですよ」


自分の能力を最大限に生かす布陣か。流石フィン・マックールと言ったところだな。フィン・マックールはクーフーリンと共にケルト神話を代表する大英雄だ。ただしクーフーリンは脳筋タイプでフィン・マックールは知恵者タイプと言える。これは苦戦しそうだ。


「こうなると効果範囲がネックになってきますかね?」


「ですね。最悪みんなで不死になって突っ込めば勝てるかな?」


メルの案は確かにそうかも知れないがきっとそれをすると戦争の後にはフリーティアはゾンビの騎士団とか言われるようになりそう。それは嫌だな。これで報告は終わり、今後の話になる。


「俺たちから仕掛けることは出来ない状況ですね」


「エルフの森から攻め込む手が使えなくなりましたね。海も無理となると残すはマザーズレイクを攻略して、直接攻め込むぐらいでしょうか」


「あそこってみんな死に戻っている所だよ。サバ缶さん」


「そうなんですよね」


折れたエクスカリバーの登場で交換できた上位プレイヤーたちは見事にマザーズレイクで死に戻りをしているようだ。


「タクト君が一緒に攻略してくれると楽なんだけどな」


「なら折れたエクスカリバーをくれ。最優先で攻略を進めるよ」


「出来上がったエクスカリバーをくれるならいいよ」


交渉決裂。それに俺がマザーズレイクを攻略する最短ルートは恐らく賢者の草原の攻略だ。敵は強いだろうが小舟で移動するリスクは存在していないからこちらの方が楽だろう。そうなるとアクアスルートを行ったみんなは一緒に攻略するために賢者の草原を攻略しないと行けなくなる。


途中で落ち合えるといいのだが、マザーズレイクは濃い霧が立ち込めている湖で落ち合うどころかぶつかって転覆。湖の中にいる第五進化相当のモンスターの群れに襲われることになる。それは嫌だろう。ルインさんが話を戻す。


「マザーズレイクを攻略出来ないとなるとやっぱり相手の出方待ちになるわね」


「エルフの森を狙っていることは判明していますし、何かしらのアクションはあるでしょう。これはナイアーラトテップも同様だと思います。読めないのはベリアルですが、魔導砲施設の破壊には成功しましたから動くにしてもどこかに同行する形でしょうね」


「なら俺たちはそれぞれ戦いに備えるとしましょう。他に何かある人はいますか?」


「はいはーい! ボクから報告がありまーす!」


俺たちが視線を送るとそこにはエアリーに乗っているアテナ様がいた。


「アテナ様…どうしてここに」


「よっと。実は緊急の用事があってね。君たちが戦った異星の存在はどうやらポセイドンのアトランティスを狙っているようなんだ」


これは予想外の報告だった。サバ缶さんが質問する


「それはいつか分かりますか?」


「クロノスの予想では明日の夜二十一時って話だったよ。ただポセイドンは自分たちの力で撃退する気満々でね。ポセイドンの関係者が動かない限り、手出し無用でお願い。ついでにボクがこの話を君たちに言ったことも内緒にしてほしい。これを知ったら、ポセイドンは怒るだろうからね」


「ちょっと待ってください。それってつまりアテナ様はポセイドンが負けると思っているんですか?」


「うん。ボクをはじめ、オリュンポスの神々はこの星の神々が相手ならポセイドンたちが勝つと思っている。けどね今回の敵はこの星とは異なる星の存在でボクらの天敵と言っていい存在だ。それなら最も勝つ可能性がある存在を頼るのは当然じゃないかな?」


アテナ様がイクスを見る。全て知っているんだな。流石知恵と戦略を司る女神と言ったところか。


「分かりました。元々あいつらは倒すつもりでしたから正直時間と現れる場所を教えてくださったことはありがたいです。ですがどうしてアトランティスを狙うんでしょうか?」


「うーん…まぁ、いいか。アトランティスにはボクらの天界と繋がるヘブンズゲートがあるんだよ。元々はポセイドンがボクらの天界に来る時に使っているものだけどね」


「つまりナイアーラトテップの狙いはアテナ様たちということですか?」


「そうなるね。ボクらは他の神より星との繋がりが強い神が多いから異星の存在にとってはボクらが邪魔なんだと思うよ」


確かにギリシャ神話は星座の神話と言っていいほど星との関わり合いが強い神話だ。ナイアーラトテップが目を付けるのは納得がいく。しかし俺は疑問に感じる。


「でも、今ここでアトランティスを攻めたら、ウィザードオーブにいる悪魔にはマイナスになりませんか?」


これでポセイドンたちが俺たちの味方となったら、ウィザードオーブは一気に不利になるだろう。


「そう見えるのも仕方ないね。余程攻め落とすのに自信があるように見えるかも知れないけど、話はもっと単純だと思うよ」


「どういうことでしょうか?」


「恐らく異星の存在と繋がっているのはサタンだと思う。サタンは彼らに君たちとの海での戦闘を指示した。彼らは指示通りに君たちの船を全滅させたわけだけど、そこでサタンの指示は終わり。彼らは独自に動く行動に出たんだと思うよ」


つまりナイアーラトテップはウィザードオーブの悪魔たちとは繋がりがほぼないわけか。ウィザードオーブの悪魔にとっては傍迷惑な話だな。


「納得できたかな?」


「はい」


「さっきも話したけど、異星の存在には異星の存在をぶつけるべきというのがボクらの結論。また君や君たちの仲間たちを頼って申し訳ないけど、お願いね」


そういうとアテナ様が消えた。これで明日の戦闘が決まったわけだけど、戦闘に参加したい人が続出する。理由はアトランティスに行けるチャンスな上にお礼が期待できるからだ。


「人数については聞いての通り、決定権は俺たちにはない。それに水中戦闘になるけど、大丈夫なのか?」


「サブマリージを使えばなんとかなります!」


「私たちには人魚の雫石があるから水中戦闘は可能だよ!」


「分かった分かった。ただ俺ははっきり言って余裕がない。命の保証は出来ないからそこだけは理解してくれ」


これで希望者全員で挑めたら、挑むことが決まる。ここでサバ缶が話す。


「今のうちにやれることはやっておかないといけませんね。ということでタクトさんにお願いがあります」


「素材ですか?」


「はい。ただ私たちが欲しいのは鋼索と超鋼線です」


これは予想外の注文だ。別の研究員の人が説明してくれる。


「これで手持ちのハープーンガンを作れると思います。コインヘンの拘束やあの触手のようなものにも有効でしょう。いくらダメージを受けなくても実体がある動物ですから」


「そういう事なら私たちも欲しい! ワイヤーや超鋼線で拘束するなら一番動きが速い私たちの出番だよ!」


確かにチロルの言う通り、召喚師たちには配ったほうが良さそうだ。アラネアにお願いしよう。ここでサバ缶さんから驚きの報告を受ける。


「お礼というか代わりの物は既に贈ってあります」


「へ? 何か貰いましたか?」


「実はタクトさんから指定されていた新しいノアの船の素材なのですが、実は既に見つかっていまして、現在ノアとユグさんたちが新たな船を作っている最中です」


マジで!?これは酷い。見つかった報告すら受けてなかったぞ。


「いつの間に…というかあいつ…新しい船を作っているのに死のうとしていたのかよ」


「彼なりに思うところがあったのでしょうね。何せスクナビコナは彼がずっと作りたがっていた夢の船なのですから」


確かにそういう設定だったな。思い出したら、また気持ちが沈んで来た。


「んん! どんな船になるか分かりませんが切り札としては十分な物になるでしょう。恐らくこの戦争は短期決戦となると思いますから皆さん、頑張りましょう」


「「「「はい!」」」」


ここでみんなはそれぞれ分かれる。俺はサバ缶さんに短期決戦の理由を聞いてみた。


「もうすぐハロウィンですからね。ハロウィンにはハロウィンイベントがあるのがゲーム界の決まり事なのですよ」


まぁ、お祭りにはそういうイベントが絡んでくるだろうな。


「でも前回のイベントは停戦になりましたよね?」


「はい。ただ前回のイベントは悪魔が関係していない人間同士の戦争でしたからね。ましてや今回は停戦などお互いの王様がする状況下ではないでしょう」


確かにフリーティアはいつでも敵に襲われる状況下にあり、ウィザードオーブは悪魔の手に落ちている。この状況で停戦はあり得ないだろうな。つまり今回の戦争イベントはまた短期決戦になる可能性高いわけだ。


俺はサバ缶さんと共にお城に向かい、現状分かっていることの報告と俺が考えている対策の話をする。


「この星と異なる存在の襲撃か…和睦の可能性はあるとお主は思うか?」


「少なくとも現時点ではありませんね。どちらかと言うと暗黒大陸の魔王側についているんだと思います」


スカアハ師匠が言っていた未来予知の話にアテナ様の話があったから間違いない。


「それは残念なことですね」


「シルフィよ。タクト殿が倒すと言っているのだ。この国と城もいつ敵に狙われるのかわからぬ。くれぐれも戦いたいとか思わぬようにな」


「そんなことは言いません。本当にお父様は私をなんだと思っているんですか」


グラン国王様がそういったのは俺が異星獣の話をした時にシルフィ姫様が興味を持ったからだ。召喚師としては気になるところなんだろうけどね。


「それならよい。とにかく今は次の戦いに備えることが重要だ。急いで砦を直さねばな」


「お任せください。既に手配しております」


これでクロウさんたちに新たな仕事が増えることが決まった。最もクロウさんは緋緋色金の鍛冶が出来ることで現在引っ張りだこ状態だから他の鍛冶師たちがすることになるだろうな。ここで俺は気になっていることを聞く。


「ところで先程から悲鳴が聞こえるんですが」


「フェグルス殿がウィザードオーブの騎士たちを説得しておるのだ」


「肉体言語で語るのがウィザードオーブ流なのだそうですよ」


魔法使いの国なのにそれでいいのか?まぁ、ここはフェグルスに任せよう。これでとりあえずのやることべきは終わった。俺も明日の戦いに備えるとしよう。


現在俺は三つの試練を抱えている。難易度は一番高いだろうが優先すべきはルーナの試練だろう。ということで俺は獣魔ギルドに向かった。

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異世界転生した鼠小僧は義賊になる
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