#925 新たなゲイボルグ製作と星熊の防具
俺はスカアハ師匠、ヘーパイストスたちに昨日のことを話して、クリードの頭蓋を見せる。
「異星の存在か…道理で未来予知が機能しないわけだ」
「どういう事ですか?」
「私や恐らく他の未来を予知する者たちは手段や方法に違いはあるだろうがこの星を占うことで未来を見ている。しかしここにこの星にはいない異物が入ってくるといくらこの星を占っても、結果が分からなくなるのは当然のことだ」
なるほどね。しかもあいつの影響度を考えるとそりゃあ、未来を変えるぐらいの力は持っているだろう。
「その未来予知では異星の存在の動きを予知することは出来ないんですか?」
「無理だ。私はそいつらがどんな存在なのか全く知らないんだぞ? エクスマキナは行動原理がはっきりしているし、長くこの星にいるから予知は可能だがな」
どうやら知っているか知らないかが未来予知のポイントになるみたいだ。もし異星の存在たちを予知しようとした場合、全く新しい未来予知の術式を作る必要があるらしい。スカアハ師匠は彼らと出会っていないし、新しい術式を作るのにも時間が掛かるそうだ。するとイクスが話す。
「奴らの動きは予測不能ですがマザーシップの超次元レーダーを使えば捉えることは可能です。マスター」
「それは事前に探知することが出来るのか?」
「いいえ。奴らがどんな異次元を移動しているのか観測していなかったので、現時点では不可能です。しかし事前にマザーシップで奴らを補足出来れば今後逃すことはあり得ません」
マザーシップの謎のレーダーはこれを想定していたのか。
「イクス、マザーシップには確か異次元航行装置もあったよな?」
「はい」
「つまり異次元の中で戦闘をすることが出来るということでいいのか?」
「もちろんです」
この瞬間、マザーシップの初戦闘は宇宙ではなく、異次元空間に決まった。何故なら異次元内での戦闘なら国際法に触れることはないからだ。
「これで勝ち方が見えて来た。超次元レーダーはミアたちでも見ることは可能だよな?」
「はい。私が彼らと戦闘し、奴らを補足すれば捉えることが可能です」
つまり最低でもこの星でもう一度奴らと戦い、奴らを異次元に行かせないといけないわけだ。大変だけど、やるしかない。そしてその時の切り札となるかも知れないのがグリードの頭蓋とアザトースのかけらだ。
「グリードは異星獣などではない。ウィザードオーブの近海に生息していた海獣だ。私が持っていたゲイボルグは元々は私の弟子の一人が持っていた物でな。グリードさえいれば作ることは出来る。しかしそのグリードがいつの間にか姿を消していてな。今では絶滅した魔獣となっているはずだ」
「つまり異星の存在に捕まって、異星獣に改造か何かされたって事ですか?」
「そう考えるのが妥当だろうな。恐らくその時に使ったのがこのアザトースのかけらなのだろう。グリードが奴らの命令を聞いていた原因も恐らくこれだな」
「武器の素材として使うことが危険でしょうか?」
ここが一番のポイントだ。
「このまま使うことは間違いなく危険だ。やるとしたら、完全に溶かしてこの結晶に宿っている力を取り除くしかないだろうな。タクトの専属鍛冶師はどう思う?」
「同じ意見です。恐らく神火石を使えば完全に溶かすことが出来るでしょう。ただ問題はその取り出した力をどうするかだと思います」
「確かにそうだな。放置するわけにも行かんだろうし、力の取り出しと封印は私がしよう。オイフェたちがこの力に関わっていることは間違いないからな。出て来るまでに対策を考えるにはいい研究材料だ。それに新たなゲイボルグの誕生をこの目で見届けたいしな。いいだろう? タクト」
「はい。ただ気を付けてくださいね。力に捕らわれて師匠と戦うことになるのは勘弁してください」
「私を誰だと思っているんだ? それに戦うことがごめんなのは私の方だ。馬鹿者」
何故か叩かれた。なんという理不尽!
「俺の時と全然叩き方が違うじゃねーか!」
「タクトをお前のように叩けば死んでしまうだろう?」
「「えぇー…」」
「ぷ…はははは! 同じ顔をしているぞ! お前たち」
俺とクーフーリンが同じリアクションをしたことでスカアハ師匠は笑った。それを見て、俺とクーフーリンはホッとする。きっとスカアハ師匠はもう大丈夫だ。俺は俺でやることをしないといけない。
この武器はこの戦争の切り札になると考え、鍛冶師総出で作ることになった。するとこのタイミングで伊雪とアラネアが俺が楽しみにしている物を持ってきてくれた。
星熊のアリエスグローブ:レア度10 防具 品質S+
重さ:20 耐久値:400 防御力:250 攻撃力:50
効果:英雄の称号を持つ者に全耐性、神気、星気、英気、堅固、黄金障壁、英雄障壁、星鎧、全反射、後光、陽光、重圧、星拳、星震、寒無効、妨害無効、衝撃無効、圧力無効、星の加護、黄金の加護、太陽の加護
全体の素材にはゴッドウール、手の甲に星熊童子の毛皮を使った手袋。星熊童子の毛皮の効果で拳を放つと星が震える程の衝撃を発生させて、相手を吹っ飛ばす。格闘家はもちろん誰でも強力な格闘技が使えることで全ての職種に人気がある。
星熊のアリエスシューズ:レア度10 防具 品質S+
重さ:30 耐久値:400 防御力:250 攻撃力:50
効果:英雄の称号を持つ者に全耐性、脱出、神気、星気、英気、堅固、黄金障壁、星鎧、全反射、後光、陽光、神速、星震、全滑走、寒無効、妨害無効、衝撃無効、圧力無効、星の加護、黄金の加護、太陽の加護
内にはゴッドウール、外側に星熊童子の毛皮を使った靴。圧倒的な速度でどんな環境でも走ることが出来る夢の靴で放たれる蹴りは星が震える程の衝撃を発生させて、相手を吹っ飛ばす。格闘家はもちろん誰でも強力な格闘技が使えることで全ての職種に人気がある。
確かにこれは防具だから誰でも装備出来るものだ。誰でもこんな装備持っていたら、やばいだろうな。後衛が弱点だと思って突っ込んだら、全員から星震を放たれる光景を思い浮かべる。うん、悲惨だ。
それじゃあ、生産活動をしてから修練の塔で試すとしよう。
「…お主はどんどん召喚師では無くなっていくな」
見事に不意打ちの星震をくらい、大の字でダウンしている菅原道真に文句を言われた。
「一応俺の召喚獣の素材を使ってますよ」
「そういう意味で言ったわけではないわ。全く…これが報酬じゃ」
「ありがとうございます」
使ってみて、多少の使いにくさは感じたが問題がないレベル。ただ重さがまたネックになって来た。暫くレベルアップ時のステータスは筋力に回したほうが良さそうだ。
さて、夕飯を食べる前に俺はエクスマキナの母星に向かい、アポに異星の存在の報告をする。
「奴らが君たちの星にまで現れてしまったか」
「はい。出来ればお力を貸していただきたいのですが、そんな状況ではありませんよね」
「残念ながらな。しかし色々アドバイスをすることは出来る。私の提案を聞いてくれるなら話そう」
「お伺いします」
俺はアポの提案に協力することにして、異星の存在との戦い方を教えて貰うと夕飯のため、帰ってログアウトすることにした。




