#92 リーゼの依頼と虫の狩人
恋火と話していると三人の視線が痛い。
「タクト…楽しそうだった」
「そうですね…私たちの時と反応が違ってました」
「今まであんなタクト様…見たことありませんでしたね」
仕方ないじゃないか。久しぶりに剣道の試合をしたのだ。楽しいに決まっている。この前の奴ら?話にならないね。俺がそんなことを思っていると不意に第三者の声がする。
「随分楽しそうなことをしておるな」
現れたのは公爵の娘さんだ。確か名前はリーゼって言ったっけ。あの時の執事さんも一緒だ。
「盗み見は感心しませんね」
「申し訳ございません。これは私の願いでして」
執事さんがお願いしたということか?どうしてだ?
「理由を聞いても?」
「えぇ。私も昔はこの国の騎士団に所属しておりました。それ故にあなたを見たときに只者じゃないと思い、実力を見てみたかったのですよ」
俺もこの執事さんは只者じゃないと感じたし、一応自分の主が関わった人間だ。調べるのは当然かもしれないな。
「なるほど。それでは仕方ないですね。それで満足いきましたか?」
「えぇ。あなたがまだ本気じゃないことがわかりましたゆえ」
「「「「えぇ!?」」」」
執事さんの言葉に驚く四人。まぁ、この四人を本気に殺しに行くわけにはいかないからな。
「なんと…あれで本気ではなかったのか?」
「間違いなく。力を制御しながら戦っているように見えましたので、違いますか?」
「正解です。でも恋火との勝負は真剣でしたよ」
「それはそうでしょうな。あんな楽しそうな姿を見せられてそこを否定することは出来ますまい」
この執事さんに言われると妙にくすぐったいな。
「それで今日はどのようなご用件で?」
「おぉ! そうじゃ。実はもっとあの飲み物が欲しいのじゃ。今すぐに作れるかの?」
前に振る舞ったハチミツジュースのことだな。これは困った。
「あー…蜂蜜が品切れでして、すぐには作れませんね」
「なんじゃ。そんなものわらわがすぐに用意を」
「それはなりません。お嬢様」
執事さんがリーゼを止める。だろうな。
「何故じゃ? 止めるでない」
「王族が一人の冒険者にのみえこ贔屓しては他の冒険者の怒りを買ってしまいます」
「ぬ…確かにそれはいかんな」
そこで俺が提案する。
「この辺りで蜂蜜は手に入りますか?」
「トレントの森にいるハニービーやキラービーなどから手に入りますな」
げ!?キラービー…つまり殺人蜂…スズメバチじゃないだろうな…もしそうならトラウマものだ。しかしやるしかないか…
「ならば正式に依頼して頂ければ問題ないのでは?」
「確かにそれならば問題ありますまい。いかがしますか? お嬢様」
「うむ! それでは早速そなたに依頼を出すぞ」
依頼クエスト『蜂蜜の獲得』:難易度E
報酬:2000G
トレントの森に出るハニービーなどから蜂蜜を10個ゲットせよ
などってことは蜂蜜なら何でもいいらしいが、ここはハニービーを解体してゲットしたいな。それに恋火のレベル上げと魔法の実力を見るにはうってつけかもしれない。
「謹んでお受けいたします」
「うむ! よろしく頼むのじゃ!」
リーゼ様とはここで別れる。そのまま行ってもいいと思うが先に今日の魔石召喚を終わらせよう。狙いは蜂が相手なら適任は蜘蛛かな?次に気になるのがシープだ。
では、獣魔ギルドでリスト召喚だ!魔石が魔法陣に吸い込まれ、現れたのは恋火と同サイズの蜘蛛。流石に迫力あるな。リリーは引いている。蜘蛛にはいい記憶ないだろうからな。さて、名前はどうするかな…こうしました。
名前 アラネア スパイダーLv1
生命力 10
魔力 8
筋力 5
防御力 5
俊敏性 5
器用値 20
スキル
噛み付きLv1 粘糸Lv1 罠設置Lv1
クモのラテン語アラーネアを言いやすくアラネアにした。流石にスパイダーと言っているんだ。別の呼び名は来ないだろう。スキルは3つと少ないが2つは初見だ。粘糸はクモの糸のことだろう。そして罠設置はクモの巣を設置するスキルかな。これ便利じゃないか?ハニービー狩りに活躍する予感大だ。
そして次の召喚はシープ狙い。2連続。来るか!
魔法陣無反応。虚しい…いいもんね。アラネア召喚出来たもんね。
嘘です。いいはず無い。召喚したかった。しかしなんとなくシープとゴートはホースクラスの召喚の難易度な気がするんだよな。こっちきてから見つけた奴らだし、逃げ足が尋常じゃなかったからな。ま、気長に狙っていきますか。