#920 異星神の代行者と異星獣
謎の敵の出現に反応した与一さんたちが攻撃を加えるが銃弾が当たる前に塵となる。あのスキルはユウェルの試練の時にクルが使っていた灰燼スキルか。厄介なスキルを持っているな。あの時はクルが攻めてこなかったから良かったけど、こいつは攻撃してくる。さて、どうしたものかな。
「この星の生物は実に面白い。強大な力を見せると欲しがり、力を持つものはこの私に攻撃をしている。あぁ…なんて醜く浅はかな生物なのだろう。そうは思いませんか? デウスエクスマキナ」
イクスが完全に怯えた状態で武器を構える。こんなイクスは初めて見たな。
「イクスに」
「私の話に割り込むな」
俺は攻撃を近衛でガードしたがぶっ飛ばされる。やばい…つい近衛でガードしてしまった。
「マスター!」
「マスターだと? この星の生物と主従関係を結んだのか…やれやれ。エクスマキナも落ちたものだ。しかし私の攻撃を防ぐとは驚いた。デウスエクスマキナのマスターだけはあるということか」
「よくもタクトを! 聖櫃!」
「よくも先輩を! ペネトレーター!」
ナイアーラトテップがリリーの聖櫃が決まり、リアンの槍が胸を貫く。しかし聖櫃の効果もダメージも発動しない。
「こんなものが異星の存在である私に通用するとでも? ふ」
ただの息でリリーの聖櫃が消し飛び、リアンのルナティックミスリルトライデントが耐久値を失い、塵になる。
「な…神障壁!」
「無駄だ」
「きゃあああああ!?」
「リアン!? くぅうう!」
ぶっ飛ばれたリアンをイオンがなんとかキャッチする。
「大丈夫ですか? リアン? リアン!? 体が石に」
「支援要請! ナノエクスマキナ!」
イクスが呼んだナノエクスマキナがナノマシンをリアンにかけるとリアンの石化は治った。
「あ、ありがとうございます。イクスお姉様」
「なんなんですか。あいつは」
「分かりません。でも私の神障壁で全く防げませんでした」
「それは当たり前なのです。彼らは異星の神。この星の神々にとって、最悪の天敵。その能力は神の力の無効化。それが異星の存在共通の能力です」
なんじゃそりゃ!このゲームにおいて、最終到達点は神の力のはずだ。その力が異星の存在に通用しないとかいじめか!そしてイクスは更にナイアーラトテップの能力を話す。
「そしてあのナイアーラトテップは異星の土の力を持っていて、あらゆる物質を塵にしてしまうんです。この能力のせいで当時いた全エクスマキナのおよそ七割は塵にされてしまいました」
俺は近衛を確認すると耐久値はかなり減らされているが持ちこたえていた。
「マスターのその刀はこの星の神の金属から作られた刀なので持ちこたえることが出来たのでしょう」
緋緋色金さまさまだよ。それにしても神の力と武器などの物質に対する絶対的な有利性を持っているのがナイアーラトテップということか。そりゃ、エクスマキナの天敵だろう。するとリリーと戦っていたナイアーラトテップが手を止めて言う。
「今回の私はお手伝いなので、皆さんに相応しい相手を呼んで差し上げましょう。さぁ、来るがいい。異星獣クリード!」
ナイアーラトテップがそういうとそいつは空間をぶっ壊して現れた。
異星獣クリード?
? ? ?
そいつは二足歩行の紅色の海竜だった。他のドラゴンと違うところは全身に紅の棘が存在し、頭には大きな紅の角がある。
俺はクリードという名前をよく知っている。何せこいつの頭蓋からゲイボルグが作られているのだ。しかし俺はクトゥルフ神話との繋がりを知らない。
「ふふ。さぁ、クリード! あなたの棘で血の雨を降らせなさない!」
「グォオオオオオ!」
クリードの全身の棘が空に撃つ上がる。まずい!効果がゲイボルグと同じだとすればあれは必中即死の攻撃だ。
『全員集まれ! ぷよ助!』
俺たちはぷよ助に守ってもらうがクリードにはぷよ助の煽動が通用せず、フリーティアの艦隊に無数の棘が降り注ぎ、次々心臓を貫かれる。
そしてそれはスクナビコナも例外ではなく、エーテルシールドが全く歯が立たず、ボロボロにされてしまった。
『全員生きているか!』
『生きてます。戦う前にアマルテイアのクッキーを食べたおかげですね』
あぁ…不死でみんな生き残ったのか。良かった。するとノアから緊急事態が告げられる。
『大変だよ! タクト! さっきの攻撃でスクナビコナの魔導エンジンがやられて暴走しちゃってる!』
『何!?』
俺はみんなにクリードへの攻撃を指示し、スクナビコナに転移する。すると甲板などはボロボロなっていった。
「ノア!」
「タクト! もうスクナビコナはダメだ! 船員に退艦を指示しておくれ」
「爆発するのか?」
「うん…魔力の制御系とエンジン本体がやられたんだけど、エンジン本体はアン女王の像の効果で修復された。だけど、制御系全てを直せなかったみたいだ。これだといつ爆発してもおかしくない。ボクはスクナビコナの最後を見届けるから早く退艦を」
「馬鹿なことを言うな!」
俺はノアを抱えて強引に機関室から連れ出した。
「な、何をするのさ! タクト! ボクがこの船を作ったんだ! 最後まで一緒にいるのがボクの義務なんだよ!」
「お前はスクナビコナの最後を親殺しで終わらせるつもりか!」
「っ!」
「スクナビコナは俺たちの船だ。そんなことは絶対にさせない! 全員に告ぐ! スクナビコナは爆発する! 直ちに他の船に移動せよ!」
俺の声を聞いて、みんなが退艦に動く。俺はノアをゴールデンハインド号に連れて行き、全艦隊に撤退を指示するとノアに質問する。
「ノア、最後に一つ聞く。スクナビコナは本当にもうダメなんだな?」
「うん…」
「そうか…わかった」
俺はノアの言葉を聞いて決断する。
『テレポート』
俺は機関室に転移するとスクナビコナのエンジンに触れる。
「スクナビコナ…このまま自爆するくらいならお前の最後の意地をあいつらに見せつけてやれ。爆発のルーン!」
エンジンに爆発のルーンを刻んだ俺は近衛の天候支配で強引にスクナビコナの向きを異星獣クリードに向ける。
『全員引け!』
イオンたちが引く。
「何をするつもり」
「風のルーン!」
スクナビコナの加速装置が発動し、クリードの体にぶつかる。
「グオ…グォオオオオオ!」
クリードの爪がスクナビコナの側部を破壊する。
「今までありがとう。スクナビコナ。お前は紛れもない俺たちの仲間だったよ。ナイアーラトテップにクリード! これが俺たちの仲間の最後の輝きだ! 受け取れ! 爆発のルーン!」
スクナビコナの超爆発にナイアーラトテップにクリードが巻き込まれる。
「タクトさん…大丈夫ですか?」
「あぁ。俺はスクナビコナの船長だからな。これできっと良かったんだ」
それでも自分の手でスクナビコナを爆発させたことは変わりはない。すると爆煙から無数の棘が飛んできた。俺たちが迎え撃つと弾かれた棘は俺たちではなく、下にいる艦隊に降り注いだ。そして爆煙が吹き飛ばれると体を払いながら、ナイアーラトテップが言う。
「やれやれ。とんだとばっちりを受けた物だ。おかげで体に灰が付きましたけど、いいでしょう。これでフリーティアの艦隊は全滅。後はあなた方を皆殺しにして終わりです」
グリードを見るとかなりのダメージを受けていた。スクナビコナの最後は決して無駄じゃない。
「スクナビコナのためにあいつだけは絶対に倒すぞ! イオン!」
「私ではダメです! タクトさん! ダメージが発生しませんでした! イクスとエンゲージバーストをしてください!」
あいつにダメージを与えることが出来たのはイクスだけだったのか。
「わかった。イクス!」
「はい! マスター!」
「「エンゲージバースト!」」
イクスの装備を身に着けた俺が降臨する。
「これは面白い。人間と機械人形の融合ですか。こんなのは初めて見ましたね。グリード」
「グォオオオオオ!」
クリードが無数の棘を飛ばして来る。
『DEMバースト。発動します』
俺たちの体から虹色の粒子が発生すると全ての棘の動きが止まって見れる。イクスは全てデウスエネルギーガンで撃ち落とすと武器をデウスツインエネルギーブレードに変えて、二つの剣を接続させて飛び込む。
『「はぁあああああ!」』
グリードの頭から横斬りに挑むが堅くて刃が届かない。
「ふふ。無駄ですよ。あなたたちではグリードには勝てな」
『『『『グラビティ』』』』
「魔力操作! おぉおお! イクス!」
『イエス! マスター! 加速!』
魔力操作で横から刃に重力を発生させ、イクスがイオンブースターやデウススラスターウイングのスラスターを噴かせると刃が入り、俺たちは横一閃に成功すると空に上げり、イクスとの超連携が発動する。
俺たちの前にレッドスプライトの四つの魔方陣が浮かび、俺たちの胸から神波動の砲身が現れる。
「『これで終わりだ(です)!』」
神波動の閃光がレッドスプライトの魔方陣に触れる度に神波動の閃光にレッドスプライトが宿り、クリードに直撃するとクリードは物凄い赤雷と共に爆散した。これでスクナビコナの仇はなんとか討てたか。
それを見ていたナイアーラトテップが拍手をする。
「素晴らしい。まさかクリードが倒されるとは思っていませんでしたよ。これはご褒美を上げないといけませんね。いでよ。異星獣コインヘン!」
空がひび割れると巨大な鯨が空をぶっ壊すかのように現れる。更に次々空をぶっ壊す形で巨大ウツボが現れる。どうやらこのウツボは巨大な鯨の体と繋がっており、胴体は触手となっているようだ。
異星獣コインヘン?
? ? ?
クリードが来るならこいつも来るだろうな。コインヘンはケルト神話ではクリードと戦い、勝っている。その際にクリードの頭蓋は漂着したことでそこからゲイボルグが誕生することになるんだ。
つまりこいつはグリードより強いことを意味している。それもそのはず、大きさはマザーシップ並みだ。全身の色は紅で皮膚はごつごつしている。これでは空飛ぶ紅の大陸と言っていいかも知れない。最も大陸には触手は生えてないけどね。
「ふふ。この異星獣コインヘンは先程のまがい物の異星獣とは異なり、本物の異星獣です。先程のような爆発は私同様効きませんので、ご注意ください。さぁ、あなたたちにこの異星獣コインヘンを倒せますか?」
近衛やブリューナクの神威解放なら恐らくこの化け物を倒すことが出来る。ただ問題はイオンが言っていたダメージが通らないというところだ。もし近衛とかでもダメージが通らないなら神威解放を使っても意味がない。
俺が悩んでいると第六感が危険を知らせる。
「神バリア!」
全員が一斉に防御スキルを発動させるとウツボの口から謎のブレスが無数に放たれ、俺たちは一瞬で全滅する。しかし不死の効果で蘇生するわけだが、ブレスが放たれたところの海が割れていた。なんて力だよ。
すると異変を感じ取ったセチアたちが陸からコインヘンに一斉攻撃を仕掛けた。セチアは星座魔法、恋火と和狐は太極ブレス、エアリーは切り札の大雷霆を使う。
その結果、ユウェルのバズーカと一緒に無数の砲撃がコインヘンに浴びせられ、その後に太極ブレスを中心にしたブレス攻撃、そして空からかつてない規模の雷が落ちる。しかしこれだけしてもコインヘンは全くダメージが通っていない。
これでダメージが入らないということはやはりイクスかこの無敵を可能にしているスキルを破るしかない。そしてナイアーラトテップは攻撃を受けたのに俺たちを見る。
「ふむ。不死状態のあなたたちは倒せませんか。まぁ、今日は先程言ったように挨拶のようなものなので、この辺りにしておきましょう。行きますよ。コインヘン」
ナイアーラトテップがコインヘンに乗るとまた空間をぶち破るようにコインヘンはいなくなった。ここで戦闘終了を知らせるインフォが来る。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント3ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント3ptを獲得しました』
『燎刃のレベルが20に到達しました。成長を実行することが出来ます』
『燎刃の刀のレベルが20に到達しました。刀【居合斬り】を取得しました』
『燎刃の竜技のレベルが10に到達しました。竜技【ドラゴンテイル】を取得しました』
『スピカのレベルが30に到達しました。進化が可能です』
『リオーネのレベルが32に到達しました。進化が可能です』
『ルミのレベルが32に到達しました。進化が可能です』
全員がレベルアップした。かなり嬉しいインフォのはずなのに今はそれどころじゃない。
俺は海に投げ出されたみんなをサフィと夕凪で救出し、グリードを解体する。
グリードの頭蓋:レア度10 素材 品質S+
魔槍ゲイボルグの素材として使われた頭蓋。狙った相手の急所を狙う即死と必中の効果を持っている素材で絶滅種の素材として非常に貴重な素材。
アザトースのかけら:レア度10 素材 品質S
魔王アザトースの力が宿っている結晶。異星の力と魔王アザトースの力があり、直接触れると異星の存在に変異してしまう可能性がある呪われたアイテム。
まるでナイアーラトテップとコインヘンを倒すための武器素材として用意されたみたいだな。俺はアザトースのかけらを触れないように袋に包むとインベントリにしまった。これで大丈夫なはずだ。
俺たちは沈没していてしまった自分たちの船に敬礼をして、ブルーメンの港町に帰った。そこでステータスを操作する。
これで残りスキルポイントは114ptとなった。ステータスポイントはいつも通り俊敏値に回した。そこで俺はサバ缶さんからコインヘンについて、教えて貰った。
「コインヘンはクトゥルフ神話にも登場しているんです。あんな姿から分かりませんけどね」
つまりこのゲームのコインヘンはクトゥルフ神話に登場しているコインヘンなわけか。そんな話をしているとブルーメンの港町に到着した。
ウィザードオーブとの海戦の結果は両軍の艦隊が全滅。人的被害はウィザードオーブ軍の全滅でフリーティア側はプレイヤー及びフリーティアの騎士たちは全員が奇跡的に生き残るという結果に終わった。




