#917 サタンの幹部悪魔登場
一方ウィザードオーブ内の魔導砲施設の破壊に動くことになったルークたちはウィザードオーブ内の転移が出来ず、一番近いエルフの森から出陣することとなった。
チロルたちのエクスマキナシリーズのレーダーを頼りに魔導砲施設を発見した。
「タクトさんの予想通り、守りがガチガチみたいですね」
「何十ぐらいの結界を貼っているんだかな」
「とにかくまずは結界の破壊からですね。早速始めましょう!」
「「「「おぉ!」」」」
チロルたちが次々攻撃を加えて、結界を破っていく。
「面倒臭いな~もう」
「変じゃないか? 一向に攻撃をしてこねーぞ」
「結界が破れた瞬間に一斉攻撃されるとかそういう感じでしょうか?」
「警戒しながら攻撃するしかないですね」
チロルたちが結界を破るとウィザードオーブの魔法使い部隊が一斉に攻撃を仕掛けてきたがチロルたちの中にも第五進化と到達している召喚獣がいる。特に天女はイベント報酬で貰えるから多い。
結果はあっさり敵を倒してしまった。
「第五進化を出すまでもなかったな」
「そうですね。他の所もこれぐらい弱いんでしょうか?」
アルさんのみんなに向けた疑問に予期しない存在から答えが帰って来た。
「いいや。ここだけが特別に弱いんだよ」
召喚獣が一斉に魔導砲の上を見る。そこにはさっきまではいなかった金髪ロン毛の美形男子がいた。頭からは悪魔の角が生え、背には堕天使の翼がある。服装は胸板を見せるように開けている謎の服だった。
「おいおい。いくら俺が美しくても開けている胸板をそんなに見るなよ。恥ずかしい」
「「「「なら閉めろ!」」」」
全員からの総ツッコミだ。しかしこの悪魔はみんなの想像の上を行った。
「閉めろだと? 馬鹿を言うな。これを閉めたら、見られて興奮出来なくなっちまうだろう?」
「「「「変態だ!」」」」
「変態だと? ありがとう」
「「「「なぜお礼を言う!?」」」」
チロルたちはパニック状態だが、召喚獣たちはずっと警戒をしていた。そして天女たちが目の前の悪魔の危険性を伝える。この悪魔は自分たちでは手も足も出ない悪魔だと。そしてチロルたちは識別すると名前すら表示されなかった。
「さてと、そろそろ状況は飲み込めたか? ん!?」
悪魔が消えるとアロマの前に現れた。
「美人の堕天使ちゃんに可愛い天使ちゃんがいるじゃないか。今夜暇?」
「何ナンパしてやがるんだ! 花火!」
「任せて! はぁああ!」
花火ちゃんの大剣を悪魔は受けて、体が燃え上がる。
「あちちちち!? …あぁ~…気持ちいいぃいい! ヒャッハー!」
「な!? きゃ!?」
「花火!?」
花火ちゃんが蹴りを受けると次々木を貫通しながら、遥か遠くにぶっ飛んでいった。そして花火ちゃんの剣を悪魔が握ると武器が壊れる。
「あらら。せっかく返してあげてもう一回斬ってもらおうと思ったのに、俺が強すぎて悪かった」
「みんな! 切り札を全投入するよ! なんでここにいるか知らないけど、たぶんこいつがサラ姫様を誘拐した悪魔だと思う」
「お~! 賢いね。君! イグザクトリー! 俺が君たちの大切なお姫様を誘拐しちゃった悪魔ちゃんで~す」
「あなたはサンドウォール砂漠にいるはずではなかったのですか?」
アロマの質問に悪魔が答える。
「天使ちゃんの召喚師に聞かれたなら仕方ない。実は気が変わってね。一番弱い奴らを虐めてやろうと思って待ってたんだわ」
「そいつは聞き捨てならないな」
「全くです。確かにギルマスには及びませんがこれでもフリーティアの召喚師の中では上の方なんですよ」
「へぇ…なら俺を喜ばせて見ろよ」
「やるよ! みんな!」
チロルたちがエンゲージバーストなどの切り札を使い、コゼットたちは天使たちを召喚する。
「あん? おぉ! アリエルたちじゃねーか!」
「な!?」
「なぜあなたがここにいるんですか!? ベリアル!」
「「「「ベリアル!?」」」」
悪魔の正体に全員が驚く。
「あーあー…俺の名前を言うなよ。アズラーイール。こいつらがビビっちまうだろうが…」
「気をつけてください! こいつは最強の悪魔サタンの幹部です!」
「「「「サタンの幹部!?」」」」
悪魔ベリアルはサタンの別名として登場する悪魔だ。『ベリアルの書』という書物が有名でそこでベリアルは神に対してイエス・キリストを訴えるという行動を起こした悪魔として知られている。
『失楽園』ではベリアルは堕天使の中で最も淫らで悪を愛した不埒者と書かれている。このゲームでもこの設定が反映されているんだろう。
強さについては、『ゴエティア』によると強力な王であり、80軍団を率いているとされている。更にルシファーに次いで創造された天使であり、ミカエルよりも尊き位階にあったと自分で言っているとされる悪魔だ。
かなり変な悪魔だが、強さについては疑いようはないだろう。同時にこれを知ったチロルたちはサラ姫様たちが負けたことに納得がいった。
「ほら、見ろよ。戦意がなくなっちまったじゃねーか。折角興奮出来ると思ったのによ!」
「きゃ!?」
アリエルがベリアルに蹴られて落下すると封印石に戻される。
「貴様!」
「良くもアリエルを!」
アズライールが大鎌。カマエルが聖火が宿った拳を放つ。これをベリアルは受ける。
「ははは! 痛い痛い! あぁ…気持ちいいな! おい!」
「く!?」
「ぐあ!?」
光沢の表情を浮かべたベリアルは二人の頭を掴むとそのまま地面に叩きつけた。その結果、二人は封印石に戻された。
「ふぅ…で? お前たちは俺に何か用か? って、あぁ。そういうことか」
ベリアルの周囲には召喚獣が囲んでおり、チロルたちは撤退を選択した。しかしベリアルは空間転移でチロルたちの前に立ちふさがる。
「おいおい。つまらねーことを選択しているんじゃねーよ。あの魔導砲を破壊しなくていいのか?」
「私たちは破壊しなくていいんだよ」
「何?」
ベリアルが疑問に思っていると魔導砲施設が爆破される。
『ウィザードオーブの魔導砲を破壊することに成功しました』
「あぁ…やられちまった。そういうことかよ。こうなると俺はお前たちを見逃さないといけないだろうな」
ベリアルが爆破した犯人であるルークの前に現れる。ルークはダークエルフの隠れ蓑を装備したエルフと事前にエンゲージバーストを使った状態でここに入った。
そして結界をみんなが壊している間に森の中に潜んで爆破のチャンスを探っていたのだ。これはみんなの作戦勝ちと言っていいだろう。
「よくも壊してくれたな。ん?」
「な、なんですか?」
「よく見たら可愛い顔をしているな。お前。たっぷり可愛がってやるよ」
「ひぃ!? チロル! みんな! 助け」
ルーク以外の召喚獣がいなくなっており、遥か遠くに撤退するみんなの姿があった。ただしルークの召喚獣の数はいつもより少なかった。
「うん! そうなるよね! わかってた! 僕たちが相手だ! ベリアル!」
「ははは! お前、最高だよ! たっぷり楽しませてやるよ」
ルークは善戦したがルークの召喚獣たちは全員石に変えられて砕かれており、ルークも風前の灯火だ。
「お前はよく頑張ったよ。ご褒美にいいことを教えてやる。俺があいつらを逃がしたのはな。わざとだよ」
「どういう…こと…ですか?」
「いやな。情けない話だが、この国の人間はエルフの森の具体的な位置を知らなかったんだよ。けどなエルフと仲良くしているお前たちのことは知っていてな。お前たちに教えて貰おうと考えたわけだ」
「まさか…エルフの森を襲うつもりですか!?」
「正解だよ。最も俺が襲うわけじゃねーけどな」
ルークは最悪の考えが過る。もし自分たちが原因でエルフの森が襲われることになったら、エルフとの関係が悪くなるかも知れない。ここでルークはベリアルから情報を聞き出す選択をした。
「そう…です…か。ところでサラ姫様はどこに? 施設の中には…いませんでしたが」
「ん? あぁ、あの姫様なら今頃、ウィザードオーブの国王と仲良くしているじゃねーか?」
「ふふ…良かったですね…ベリアル」
「あん?」
ルークは断言する。
「あなたの言ったその言葉は…一番恐い人を怒らしてしまう…言葉です。もしここにいたら、あなたは…死んでいましたよ」
「へぇ…随分興奮する言葉を言ってくれるじゃねーか。それじゃあ、そいつが来るのを楽しみにしているとしようかね」
ベリアルが拳を構えるとルークは笑む。
「それと…全てがお前の思い通りになると思うな」
「何?」
「僕は召喚師の中で一番ギルマスと付き合いが長いプレイヤーなんですよ。色々迷走しちゃいましたけどね」
「てめぇ…何かしやがったな?」
「はい…先に逃げたみんなの中には僕のゴブリンがいたんですよ。今頃みんなに…あなたが得意げに話してくれた情報が…伝わっているはずです」
ベリアルは舌打ちをする。ベリアルはルークの時間稼ぎにまんまと引っかかったわけだ。
「下らねぇ真似してくるじゃねーか」
「そうでしょうね。でもその下らないことが次に繋がることを僕らは知っているんですよ」
「はっ!」
ルークはベリアルに体を貫かれ、死に戻った。そしてそれは撤退したチロルたちにゴブリンの消滅という形で知らされることになる。
「ルーク…死に戻っちゃったね」
「あいつは立派に仕事を果たした。次は俺たちの番だな」
「えぇ。ルーク君の頑張りに答えると致しましょう」
烈空さんとアルさんの言葉に全員が頷く。
「魔力レーダーに反応あり。結界と思われます」
みんなのエクスマキナが隠れてこちらを探っている敵を探し当てた。
「おし。それじゃあ、暴れるとしますか」
「えぇ。敵には恐らく伝説の英雄がいると思われますが恐れることはありません!」
「そうだよ! リープリングの召喚師部隊の底力、あいつらに見せてやろう!」
「「「「おぉ!」」」」
全員が作戦通りに動く。空で四方に分かれるとアルさんの部隊が敵の上空を通り、爆撃をした。それを確認したみんなが次々召喚獣と共に襲い掛かる。
しかしベリアルとの会合の時に切り札を使ってしまったみんなには勝機は限りなく少なかった。それでもみんなは暴れ続けて、敵部隊に多大な被害を出して、死に戻った。
「やれやれ。死に物狂いで襲い掛かってくる敵は恐ろしいものだな。ディルムッド」
「同意いたします。フィン団長」
「フィン団長、どういたしますか?」
「派手に暴れられてエルフたちがここに来るのも時間の問題だろう。今日は撤退する! 急いでここから離れるぞ」
「「「「は!」」」」
こうしてルークとみんなの活躍でエルフの森が襲われるという事態は回避されることとなった。




