#91 タクトVS恋火
リリーとイオンの訓練を終わるとそわそわしている子が一人。恋火だ。
「あ、あの…あたしもタクトお兄ちゃんと戦いたい…です」
「いいよ。ちょうど木刀があるし、ガラスの剣を使ってみるかい?」
俺はそういうと木刀を取り出し、持っていたガラスの剣を恋火に渡す。恋火をガラスの剣を受け取ると感触を確かめる。それを見て、確信する。やはりこの子、強いな。純粋な剣道の戦い方をするみたいだ。この感じ、久々だな。楽しめそうだ。
決闘
対戦者:タクト、恋火
勝利条件:戦闘不能、タイムアップ
審判:イオン
リリーの時、同様に審判はイオンにお願いした。イオンなら安心だからね。
俺が木刀を抜き、戦闘準備完了だ。
「準備はいいですか?」
「あぁ」
「はい!」
「それでは始め!」
イオンの合図で同時に剣を構える。お互いに中段の構え。そこから足、体の動き、剣の動き、視線でお互いにフェイントをしながら、じわじわ距離を詰めていく。
そして至近距離。遂に俺と恋火の剣戟が始まる。
「やぁ!」
最初に仕掛けたのは恋火。鋭い突きを放つ。俺はそれを受け流し、懐に潜り込むと木刀を横薙ぎする。
「はぁ!」
俺の攻撃に対し、恋火は後ろに下がり、攻撃をかわす。そして上段からガラスの剣を振り下ろす。俺はそれは回転してかわし、その回転を利用して更に横薙ぎ。恋火はそれをガラスの剣でガードする。鍔迫り合いになり、お互い距離を取る。
やばい…楽しいな。やはり純粋な剣道。攻防共に優れている。そして何より、攻撃するイメージをこの子はしっかり持っている。突きをいなされ、懐に入られたらどうするか?後ろに下がり、攻撃をかわす。更に攻撃すると明確なイメージを持っている。
さて、それじゃあ、どれほどのものか見せてもらうとしようか。
再び、距離が縮まり、本物の剣戟が始まる。互いに剣戟をかわし、時に受け、時に流し、攻撃をしていく。それは純粋な剣道から来る美しい剣戟の応酬だった。
だが、このままでは訓練にならない。楽しい時間だったがそろそろ終わりにしよう。
俺は恋火の剣を強引に弾き、強引に懐に飛び込む。
「っ!?」
俺の突然のスタイル変化に恋火は対応出来なかった。懐にはいられまいと剣を振るうが力の入っていない剣では致命的だ。俺はその剣を弾き、懐に飛び込む。なんとかしようと後ろに下がる恋火だが、前に突っ込んでくる者と後ろに下がる者、それは決定的な差となる。俺は強引に恋火をフィールドの隅に追いやることに成功した。
だがここで俺は距離を取る。ここで攻め続ければ俺の勝ちだが、これは訓練だ。ここで攻め続けても意味がない。
俺の意図を察したのか、恋火は呼吸を整え、ゆっくりと構えを取る。剣を自分の体に隠す独特の構え。それは剣道とは異なる古武道にして、同じ刀から生まれた武術。その名を居合またの名を抜刀術と呼ぶ。
恋火の抜刀術の構えに対し、俺も抜刀術の構えを取る。どちらが上か試して見たかったのだ。俺の構えに驚く恋火だったがすぐに目に闘志が宿る。きっと気持ちは同じだろう。どちらの抜刀術が上か決める。それが全てだった。
互いに抜刀術の構えのまま、距離を詰めていく。そして必殺の間合いに入ると互いに踏み込み、渾身の抜刀術を放つ。
その一瞬の後、決闘のフィールドが静寂に包まれる。
そして俺達が言葉をかわす。
「…ここまでだな」
「…はい」
勝負は呆気ない。俺達の抜刀術が当たった瞬間、木刀が壊れてしまったのだ。これでは勝敗のつけようがない。
「イオン。この勝負、引き分けにしてくれ」
「えぇ!? いいんですか? だってタクトさんは一度追い込んでいましたよ」
「あぁ。でも、俺の木刀はこの有様だ。だからこの勝負は引き分けにしたい。これで勝ちを貰うのは俺のプライドが許さない」
そもそも訓練で勝ち負け付けるのが間違いだが、勝敗をつけなければいけないなら、この勝負は引き分けだろう。俺の意志に従い、イオンが勝敗を告げる。
「この試合、引き分けです!」
そして決闘という訓練が終わる。そこで恋火がレベルアップです。ついでに俺の片手剣もレベルアップしている。
『片手剣のレベルが5に到達しました。武技【ヘビースラッシュ】を取得しました』
『恋火の刀のレベルが5に到達しました。武技【返し一閃】を取得しました』
おっと。リリー愛用の技を覚えました。恋火はレベル上がりすぎだね。俺ってそこまで経験値あるのかな?そして恋火の返し一閃はひょっとしなくても返し技だろうな。
返し技は剣道の技の1つ。相手の攻撃に対して攻撃を返す技のこと。つまりはカウンターの技だ。俺は普通に使っているがこれが武技で使えるとだいぶ変わりそうだ。
そんなことを考えながら俺は恋火に声をかける。
「お疲れ様。いい試合だったな」
「はい! でも、あんな剣術もあるんですね」
恋火が言っているのは俺の強引な剣術のことだ。これについては注意しないといけない。
「恋火は無理に真似するんじゃないぞ? 下手に真似をして自分の剣を見失う人がいるからな」
これはスポーツ界でよく聞く話だ。自分のスタイルを確立させ、更に上を目指すために新しいスタイルに挑戦すると自分のスタイルを見失ってしまって、自分の強さが崩れてしまうのだ。
これはよく荷物持ちに例えられる。人が一人で持てる経験という荷物は決まっているという話だ。しかし自分を鍛えることで持てる荷物を増やすことが出来る。逆に荷物の多さに耐えられないと潰れることになるという話だ。
恋火で言うと自分を鍛えるところはレベルアップだ。まだレベル6の恋火では持てる荷物の量は少ないという話だね。だから俺が求めるものを恋火に伝える。
「恋火は賢いし、戦闘の勘もいい。自分のスタイルのまま、俺の強引な剣術に対抗出来るはずさ」
「はい! 頑張ります!」
元気に返事をする恋火。うんうん。素直で飲み込みが早い。俺はいつかこの子に負けるな。この時、俺はそれを確信したのだった。
名前 タクト 中級召喚師Lv3
生命力 37
魔力 74
筋力 27
防御力 18
俊敏性 24
器用値 53
スキル
格闘Lv1 蹴り技Lv12 杖Lv15 片手剣Lv1→Lv6 投擲Lv1 召喚魔術Lv19
錬金Lv9 採掘Lv12 伐採Lv10 解体Lv14 鑑定Lv9 識別Lv15
風魔法Lv19 火魔法Lv19 土魔法Lv18 水魔法Lv19 闇魔法Lv18
光魔法Lv22 雷魔法Lv15 爆魔法Lv15 木魔法Lv15 氷魔法Lv15
時空魔法Lv13 読書Lv5 料理Lv18→Lv19 餌付けLv5 釣りLv5 シンクロLv2
名前 リリー ドラゴニュートLv21
生命力 36
魔力 26
筋力 67
防御力 25
俊敏性 20
器用値 16
スキル
素手Lv6 片手剣Lv17 大剣Lv2→Lv4 闘気Lv6 擬似竜化Lv1
名前 イオン ドラゴニュートLv20
生命力 35
魔力 45
筋力 30
防御力 20
俊敏性 65
器用値 55
スキル
二刀流Lv16→Lv17 投擲Lv1 水中行動Lv5 水刃Lv9 擬似竜化Lv2
名前 恋火 セリアンビーストLv1→Lv6
生命力 15→25
魔力 12→20
筋力 15→20
防御力 8→10
俊敏性 15→23
器用値 10→15
スキル
刀Lv1→Lv5 炎魔法Lv1 狐火Lv1 気配察知Lv1→Lv5