#911 ウィザードオーブ戦争開戦とスカアハの妹
空の画面には見たくもないウィザードオーブの国王の姿が映し出された。
『私はウィザードオーブの王である。我々、ウィザードオーブは魔物と仲良くするフリーティアをこれ以上野放しには出来ないと判断し、宣戦布告する! これは人類を守るための聖戦である!』
宣戦布告を受けたことでインフォが来る。
『ワールドイベント『ウィザードオーブ戦争』が発生しました』
『ウィザードオーブ戦争』:難易度SSSS
参加プレイヤー:フリーティア、ウィザードオーブ所属のプレイヤー
敗北条件:ディアドラ姫の死亡、ノイシュの死亡、フリーティア城の陥落
勝利条件:ウィザードオーブ城の陥落
特殊条件:町内、建物内での戦闘あり、パーティー人数制限なし
ウィザードオーブとの戦争に勝利せよ。
敗北条件にディアドラ姫とノイシュさんの死亡が入るのか。俺はみんなに作ったクッキーを取り出す。
アマルテイアのバニラクッキー:レア度10 料理 品質S+
効果:満腹度10%回復、生命力全回復、魔力全回復、弱体化全解除、一時間全ステータスアップ(究)、一時間不死、一時間神の加護
アマルテイアバターで使ったバニラクッキー。最高級のバターで作られたクッキーで濃厚な味なのに胸やけせず、健康にもいいためどれだけでも食べられしまう。そのためすぐなくなるのが難点。
かなり悪魔的なクッキーを作ってしまった。どれだけでも食べられると大変なので、ここでは一人一枚。ただし後でロコモコのクッキーを作ることで納得させた。
さて、この演説には言いたいことがあるな。
「聖戦というなら魔王相手に戦えよ」
「流石ギルマス。見事なツッコミだねん」
銀がそういうとイクスが緊急事態を告げる。
「マスター! 高出力魔力がここに向かってきています!」
「何!?」
ウィザードオーブ方面からスクナビコナの魔導砲を遥かに超える魔導砲の攻撃がこちらに向かってきた。防御しないと!俺が黄龍の杖を取り出すとシルフィ姫様から通信が来た。
『私たちが受け止めます! アンリ!』
『はい! シルフィお姉様!』
『封印石召喚! いでよ! 麒麟!』
『行きますよ! 皆さん! オリジナル集団結界術! オクタフリーティア!』
麒麟が召喚され、更にフリーティアの都を覆うように八芒星が描かれ、結界が貼られる。この結界に魔導砲の攻撃がぶつかると徐々にひび割れる。すると麒麟がそこに加わり、安定する。
「ちょっと待ってよ。いきなりこんな攻撃してくるなんてあり!?」
「…これって、まさか召喚師たちが壊した魔導砲の攻撃?」
「いやいや。あれはちゃんと壊れていたはずだよん。ってまさか私たちを安心させるためにわざと壊れているのを見せていたってこと?」
銀たちがそう言っている間でも危機は続く。リリーが警告する。
「よく似た方向からもう一発来るよ! タクト」
「あぁ! 封印石」
『未来を信じちゃいけない』
俺の脳裏にカスバドの言葉が過った。
「どうしたの? タクト? 急がないとまずいよ!」
「リリー! ブラン! 強化を頼む!」
「「わかった(わかりました)!」」
リリーがドラゴニックブレッシング、ブランがエンジェリックシンフォニーを使う。
「イクス! 高魔力の方角を教えてくれ」
「イエス、マスター。高魔力を検知。サンドウォール砂漠の方角からです! マスター!」
「うそ!?」
やはりリリーが見た未来はブラフか!
「わかった。封印石召喚! 守ってくれ! 黄龍!」
『任せよ!』
黄龍が魔導砲の守りに入る。すると今度はフリーティアの都の中で次々爆発が発生する。
「あぁ…フリーティアの町が…」
「許せない! みんな! 行こう!」
「待ってくれ! みんな! 闇雲に動かないほうがいい」
この襲撃はほぼ間違いなくオイフェの影の国の勇士たちによる襲撃と考えていいはず。そして宣戦布告と魔導砲の攻撃に合わせて襲撃してきたことを考えるとオイフェはウィザードオーブと手を組んでいると見ていいだろう。
ならば必ず奴らはここに来る。なぜならここには奴らが命を狙うディアドラ姫とノイシュさん、スカアハ師匠の三人がいるからだ。
するとサバ缶さんから連絡が来る。
『タクトさんが教えてくださった通り、影から敵が現れました。現在ギルド内で戦闘中でクラスチェンジをした人が中心となって迎撃中です』
フリーティアの城にはランスロットとモルドレッドがいるし、ガルーさんのフリーティア第一騎士団もいる。極めつけは警戒状態のシルフィ姫様の召喚獣たちもいるから大丈夫のはずだ。するとここでモッチさんから連絡が来る。
『お店で変な人たちが暴れているよ! タクト君! 従業員の亜人ちゃんたちが戦っているけど、やばそう!』
っ!?リープリッヒが狙われているのか!
「リリー、イオン、ノワ、リビナ、セフォネ。リープリッヒに行けるか?」
「もちろん行けるよ! タクト」
「まさかお店が襲われているんですか?」
「そうらしい。救援に向かってくれ。被害が出ているみたいだし、遠慮は無用だ。ただ町に被害が出る技は使わないでくれ」
リリーたちが空間転移、影移動、闇転移を使い、リープリッヒの救援に向かった。ここで魔導砲を防ぎ切った俺は倒れる。
しかし今の俺にはこれがある。俺がリリーたちのご褒美とは別に作ったソーマ酒のクッキーがこちら。
アマルテイアのソーマ酒クッキー:レア度10 料理 品質S+
効果:満腹度10%回復、生命力全回復、魔力全回復、弱体化全解除、一時間全ステータスアップ(究)、一時間不死、一時間神の加護、デメリット一日減少
アマルテイアバターとソーマ酒で使ったバニラクッキー。ソーマ酒の香りが加わり、少し大人向けのクッキーとなっている。
大さじ一でこの効果!しかもたくさん作ることが出来る。出来上がった瞬間、ソーマ酒のがぶ飲みを後悔したよ。
俺はこれを食べて、起き上がると襲撃者たちが向かってきていた。
影の国の勇士?
? ? ?
名前はそのまんまなんだな。それになんか胸辺りに変な黒いオーラが見える。心眼の効果か?
ここにいる全員が武器を構える。そして影の国の勇士たちがここの結界を手で触れるだけで破壊する。
「排除す」
「俺様の領域に何勝手に入りこんでやがるんだ? 人間」
九尾の結界を破壊したことで九尾が現れ、襲撃者の一人の頭を掴むと地面に叩きつけた。
「九尾か!」
「しかし今の俺たちの敵ではない!」
影の国の勇士たちが一斉に襲い掛かる。確かに速いけど、酒呑童子と比べると全然大したことない速度だ。案の定、九尾にあっさり避けられると九尾は影の国の勇士たちに手を向ける。
「因果律よ。回れ」
襲撃者たちが全員倒れた。
「な、なんだこれは!?」
「か、体に力が入らない!? ぐえ」
「因果律でお前たちの体の筋力を赤ん坊時代に戻してやったのさ。悪魔に魂を売り、力を得たお前たちには相応しい最後だろう?」
「「「「ヒ」」」」
ひでー…まぁ、九尾に喧嘩を売ったこいつらの自業自得ではあるんだけどさ。それに悪魔に魂を売ったってことはあの胸の黒いオーラは悪魔のもので確定かな?ここで九尾が俺に念押しをしてくる。
「俺様が関われるのはここだけだ。人間の戦争には加担はしねーからな」
「ここを守ってくるだけで十分さ。な? 和狐」
「そうどすな。流石義理人情に厚い九尾様どす」
「ぐ…あーもう! さっさと暴れてこのくだらないいざこざを止めてこい。しっし」
どうやら九尾は進化した和狐が苦手みたいだ。
「九尾様は同じ領域の女性には弱いんどす」
「うるせーぞ! 和狐! それ以上言うと助けてやらねーからな!」
「ふふ。分かりました。タクトはん、ここは大丈夫やと思います」
九尾の圧倒的強さを見たからな。
「そうだな。俺たちは町中を歩けない者をここに残して敵の排除に向かいます。ここはお願いしていいですか?」
「あぁ。任せてくれ」
「タクトよ! 遠慮は無用じゃ! 突然の破壊兵器の使用にフリーティアの罪なき民に攻撃。決して許すことはできぬ!」
「分かっているよ。リーゼ。リアンとルーナはここでみんなのサポートを頼む。チェス、黒鉄、アラネア、ぷよ助、ディアン、月輝夜、サフィ、リオーネ、夕凪は二人を守ってあげてくれ」
みんなが返事を返す。このメンバーは町内戦闘はちょっと厳しい。町を壊していいなら出来るんだけどね。アラネア、ぷよ助、リオーネはお留守番。
「それじゃあ、私たちはギルドに行ってくるよん」
「いきなり襲われたお返しをしないといけないからね」
「あぁ。気を付けてな。行くぞ!」
「「「「おぉ!」」」」
俺たちは屋敷の外に出て、市街地に向かう。するとあちこちから俺たちに助けを求める声がして、俺が指示を出していると敵が来る。狙ったのは子供を回復させているエアリーだ。
「剣のルーン! 死ねぇええ!」
しかしエアリーの神鎧を突破出来ず、子供を狙う卑劣な敵にエアリーの怒りが爆発する。頭上から落ちて来た大気の壁で敵を潰し、角で敵を空に打ち上げると荷電光線で消し飛ばした。母親の怒りを感じた瞬間だった。
そして同じく治療をしていたロコモコも狙われる。
「影創造! はぁああ!」
「白熱刃!」
ドラゴニュート状態のダーレーがクルージーンの白熱刃で横薙ぎするとそれを敵は受け止める。
「へぇ…なかなかやるじゃねーか」
「化け物に褒められても嬉しくはないな」
「そうかよっと!」
ダーレーは鍔迫り合い状態から離れると敵の武器を蹴り上げ、流れるように体勢を整えるとクルージーンで敵を斬り裂いた。それを見ていた別の敵が狐子を狙う。
「くそ! 影呪縛!」
「あら? 私を縛ってどうするつもりなのかしら?」
「殺すに決まっている! 影創造! ペネトレイター!」
狐子に影の槍が迫るが霊化し、憑依する。霊には影がないから影呪縛の対象からは外れる。しかし狐子はすぐにそいつから出ていく。
「気持ち悪いわね…あなた」
「くく…どうした? 憑依し、ごほ!?」
「憑依したわよ? その時に気持ち悪い思いをさせられたからお礼に私の神魔毒で犯してあげたわ。いくら悪魔と契約しても人は人。神魔毒の優位性は変わらない。最後は私の炎で消し炭にしてあげる。焼失弾!」
狐子の宣言通り、黒焦げとなり死んだ。影の国の勇士というだけあって、影使いのようだ。それに加えてルーン魔術と各種魔法の強化に加えて、体術と槍や剣を使い戦闘するスタイルと言ったところか。
「どうしたんだ? 狐子?」
「憑依した瞬間、やばい未来が見えて逃げ出しちゃったわ。たぶん他の召喚獣たちや飯綱も同じ判断をするでしょうけど、警告しておいた方がいいわ」
「分かった。俺たちは先に進む。ダーレー、ミール、ヒクス、ストラ、クリュス、ハーベラスと一緒にロコモコ、エアリー、コーラルを守ってあげてくれ」
「了解よ」
俺たちが走っていると炎魔法を町に放とうとしている敵を見つけた。これに反応したのが優牙だ。
「ガァアア!」
「な!? 魔方陣が消えた!?」
優牙が魔力枯渇で魔法発動を防いだ。
「誰」
「白熱刃!」
「ヒヒーン!」
伊雪が白熱刃で敵を斬り裂き、スピカが空から回転角で貫き、外に放り出すと空に向けて、星雨を使う。しかし敵はまだまだいる。
「お父さん、ここは私と優牙さん、スピカさんに任せてください」
「分かった」
「あたしも残ります。燎刃、頑張るでありますよ」
「はい! 千影師匠!」
いつから師弟関係になったんだろう。まぁ、千影なら安心だからいっか。俺たちが市街地に入ると敵の強さが上がって来た。
グレイたちが対応したんだが、敵もグレイたちの攻撃を止めて見せた。聞いていた通り強いな。虎徹の攻撃を止めただけでも、大したものだ。
すると第六感が俺の影に反応する。ちょうど街灯のおかげで俺の影が前になっているところに現れるとは馬鹿なやつだ。現れた瞬間、俺は頭を踏みまくる。
「ノワには見せられない光景よ。それ。はぁ!」
ファリーダの影から現れた敵をファリーダは蹴り飛ばすと蹴られた敵は炎上する。それを見たセチアの反応は冷ややかなものだった。
「全く…女性の影から現れるなんてデリカシーの欠片もありませんね」
「全くよ。ウィザードオーブは聖戦でならこういう事もしていい国なのかしら?」
「つまりウィザードオーブは変態さんの国なの?」
「「「「なんだと!」」」」
これは怒って当然だけど、セチアたちの主張もわかるな。俺も影移動とかする時は気を付けよう。後でリリーたちに何を言われるのか分かったものではない。
ここで俺も初めて戦闘をしたけど、やはり強い。戦闘技術では俺は負けているだろうな。彼らのようなアクロバティックな動きは俺には出来ないからな。ただスキルの差がある。特に心眼のせいで動きが丸わかりとなっている。はっきり言うと話になっていない。
「ははは! どうした? フリーティアの英雄! 魔神を倒したとか聞いていたが大したことはないな! これで魔神に勝てるなら俺でも勝てるということか!」
「ビビッて戦いに参加しようともしなかった奴らがほざくなよ。みっともない。そういうことは魔神に勝ってから言え」
苦労も何も知らない人の言葉ほど、しょうもないものはない。
「な、なんだと!」
「言わせておけば!」
「こい、ブリューナク」
俺の手にブリューナクが現れる。喧嘩を売ったのはこいつらだ。ならば手加減は無用で使わせて貰う!
「ブ、ブリューナクだと!?」
「怯むな! そんなもの偽物に決まって」
俺が投擲したブリューナクが影の国の勇士の障壁をあっさり破壊し、そのまま顔を貫いた。更に念動力でブリューナクを操り、次々即死させていく。
「う、うわぁあああ!?」
「ほ、本物!?」
「に、逃げ」
グレイたちの獲物を除いて全滅させました。ブリューナクにビビっているようでは魔神に勝つことはできないだろう。何せブリューナクは神様の武器で神様ではないんだからな。
グレイたちの獲物もブリューナクの殺戮を目の当たりにして、隙だらけのところをグレイたちに襲われて、倒された。
「勇士が隙を見せるとは…まだまだだな」
「タクト殿の無双を見てしまうと仕方がないことだと思います」
「それについては燎刃と同意見なの。あ、また来るの。数は十八。前の横道から現れるの」
「セチア、イクス、ユウェル」
イクスがデウススナイパーエネルギーライフルを構える。
「十七、十六、十五、十四、十三、十二」
壁をすり抜けるデウススナイパーエネルギーライフルを前に次々影の国の勇士はヘッドショットされていく。
「イクスさん、倒しすぎです」
「うん。このままじゃあ、わたしたちの出番が無くなるぞ」
「そうだな。イクス、そこまでだ。二人がもしも逃した敵がいたら、撃ってくれ」
「イエス、マスター」
俺たちの前に影の国の勇士の一団が現れる瞬間、ユウェルがアサルトライフルを乱射すると数人倒した。
生き残った奴らは隠れるがセチアが使った矢舞雨に対応出来ず、倒される。
「こいつら、遠距離の物理攻撃に弱いな」
近接戦は強かった。魔法戦も恐らく強いと思われる。ただ弓矢や特に銃には滅法弱い気がする。その原因が防御手段の少なさだ。見たところ影の国の勇士たちはどれも回避に重きを置いている。
俺が確認した防御手段は影の盾と盾のルーン。この二つは防御手段としては結構弱い。それだけ回避には自信があるってことなんだろうけど、必中スキルや無数の攻撃には対応出来ていない。
まぁ、ケルト神話に銃は登場しないから仕方がないのかも知れないな。弱点が分かったから一網打尽にするか。
『サバ缶さん、タクトです。状況はどうですか?』
『かなりの被害が出てますけど、確実に押しています』
『そうですか…与一さんたちとトリスタンたちを中央広場の狙撃位置に待機させてくれませんか? ミールの花蜜で敵をそこに集めます』
『一網打尽の作戦ですね。分かりました。すぐに手配します』
これでよし。後は中央広場まで行くだけだ。
『リリー。そっちは大丈夫か?』
『大丈夫だけど怪我人がたくさん出ちゃったよ~。タクト』
『中には倒れて動かない人もいます…それに目に見える範囲の火事は消化しましたけど、リープリッヒが燃えちゃいました。タクトさん』
くそ!判断するのが遅かったか。ミライたちは戦闘中で余裕がないだろうし、直接薬を届ければ蘇生が間に合う…いや、もっといい手があるな。
「セチア、犠牲者がたくさん出ている。生命の木の精霊を頼めるか?」
「任せてください! 精霊召喚! 生命の木の精霊!」
生命の木の精霊が現れる。
「生命の木の精霊様、どうかフリーティアに住む優しい皆さんを助けてあげてください」
生命の木の精霊もにっこり笑うと夜空に手を上げると緑の光がフリーティアに降り注ぎ、それを浴びた全ての人の生命力が回復し、死んだ人も全回復で蘇生した。
『わ!? 倒れた人が起き上がったよ! タクト!?』
『ゾンビですか!?』
『…やっていい?』
『折角セチアと生命の木の精霊が蘇生させたんだからやめてくれ。みんなはこのことをギルドや町のみんなに教えてあげて欲しい』
リリーたちが元気に返事をすると急に声のトーンが落ちる。
『タクト~…リープリッヒはどうするの?』
やはりリープリッヒの焼失に結構ダメージを受けちゃっているな。
『燃えちゃったなら新しく建てればいいだけさ。そのためにもまずはみんなを守って、敵を倒さないとな』
『そうだね!』
『ボクらの前でリープリッヒを燃やしたんだからきついお仕置きをしないといけないね。シャドーコブラだけで終わらせてあげない。とびっきりの悪夢を見せて殺してあげようっと』
『妾たちを怒らせたことを後悔させてやるのじゃ!』
俺たちは敵を潰しながら中央広場まで辿り着くとグレイたちを攻撃位置に待機させてミール、ルミとユウェルに罠を設置して貰った。最後の仕上げにミールが花蜜を使う。すると魔法が四方八方が飛んできた。
「魔力支配」
ファリーダがこれらの魔法を魔力支配で潰した。魔法と魔力が効かない以上は恐らく近接戦しか出来ないだろう。俺の予想通り、敵が集まって来た。その場にいる全員が俺と触れ合う。
『テレポーテーション』
「「「「魔法阻害!」」」」
効かんわ!俺たちが転移すると襲い掛かって来た奴らの攻撃が空振りする。
「寄生種!」
「プレゼント!」
「宝石解放!」
敵はミールの寄生種に捕まったところでルミとユウェルの罠が炸裂し、敵が吹き飛ぶ。更にサバ缶さんの指揮の元、待機していた全員が一斉に攻撃を浴びせた。しかしまだインフォが来ない。
本来は結界とかでもっと敵を集めたかったんだけど、九尾の結界が破られたからどうしても使えなかった。
「一応作戦は成功しましたね。この後は町人を守りながら各個撃破でしょうか?」
「それが良さそうですね」
「マスター、屋敷の前に強い魔力が現れました」
お城の救援はサバ缶さんたちに任せて、俺は装備を近衛に変更してセチアたちと共にホームに転移すると目の前にショートカットのスカアハ師匠が九尾と戦っていた。
オイフェ?
? ? ?
ま、そういう事になるだろうな。お互いに距離を取ったところでその人物がこちらを見る。
「何者だ」
「人の家に勝手に入って来た非常識な人の質問に答える義理はないな」
シルフィ姫様とか普通に許可なく入ってきているけどね!
「そうか…ここが貴様の家ということは貴様はスカアハの弟子だな? それならば手加減はせぬ! ゲイアイフェ!」
いきなりかよ。ゲイアイフェと呼ばれた槍が三十の鏃となって降り注いできた。俺は近衛を抜く。あの時はゲイボルグを前に何も出来なかったけど、今は違うぞ。
「百花繚乱!」
三十の鏃が百の花びらの斬撃に全て弾かれ、そのままオイフェと思われる女性に花びらが襲い掛かるが突如消える。セフォネと同じ闇転移だ。
「馬鹿な奴だ。ゲイアイフェは貴様の心臓を貫くまで止まることは決してないぞ」
「知っているよ」
『テレポート』
ぷよ助の前に転移する。俺が誇るゲイボルグ対策を思い知るがいい!
「ぷよ助! 全面防御!」
ぷよ助が俺を包み込むようにガード体制になるとゲイアイフェは当然ぷよ助の体内に入る。そして綺麗さっぱり消滅した。文明を消滅させるスライムが相手ではゲイボルグも形無しだな。
「な、何!?」
「消えてなくなったら、貫くことも出来ないよな?」
「お、おのれ!」
「あんたには聞きたいことが山ほどある。悪いがここで捕らえさせてもらうぞ。アラネア」
アラネアが鋼索で縛り上げようとしたがその前に影の中に逃げられた。厄介な技だな。影の転移術。
「完全にいなくなったか?」
「そのようです。マスター」
まぁ、武器を失ったんだ。撤退するのも当然か。
「これで良かったですか? 師匠」
窓から俺たちの戦いを見ていた師匠に声をかけた。
「あぁ。それにしてもゲイボルグを消滅させてしまうスライムを飼いならすとはな。私やクーフーリン対策か?」
「偶然ですよ」
「ふ…そういう事にしておいてやるか。どうやら他の奴も引いたようだな」
まぁ、オイフェが引いたなら当然そうなるか。スカアハ師匠の言う通り戦闘終了を告げるインフォが来た。
『アリナの竜技のレベルが10に到達しました。竜技【ドラゴンテイル】を取得しました』
『燎刃の刀のレベルが15に到達しました。刀【抜打】を取得しました』
『ダーレーの片手剣のレベルが5に到達しました。片手剣【ヘビースラッシュ】を取得しました』
『クリュスのレベルが30に到達しました。進化が可能です』
お!クリュスの進化が出来るようになったぞ!でも今はそれどころじゃないな。
これでひとまず最初のウィザードオーブの襲撃は防いだけど、被害は甚大だ。俺たちは町の救援に向かった。




