#907 負けたスカアハとコーラルの試練
俺は傷だらけのスカアハ師匠とクーフーリンを治療をしているセチアたちに質問する。
「今、帰った。二人はどうしたんだ?」
「わかりません。突然スピカさんの影に魔方陣が描かれると二人が現れて、倒れてしまったんです。あ、命の心配はありません」
「そうか…よかった。二人を動かして大丈夫か?」
「はい。私たちは女性の方を運びますから。タクト様は男性の方をお願い致します」
わざわざ指示されなくてもそうするよ。俺たちは二人を空いている部屋のベッドに寝かせる。一応ヒポクラテスさんに見て貰うと命に別条はなく、気を失っているだけなんだそうだ。
ホッとしたところで二人と親しいノイシュさんと関わりがありそうなブリュンヒルデさんに連絡を入れると二人はそれぞれシグルドさんとディアドラ姫を連れてやって来た。
「まさか師匠とクーフーリンのこんな姿を見る日が来るとはな。命は大丈夫なのか?」
「俺のエルフとフリーティアの凄腕の医者に見て貰いましたから大丈夫のはずです」
「それならば大丈夫だな」
ノイシュさんは本当にホッとした様子だ。
「それにしてもスカアハ殿がここまでの手傷をおうとは、正直信じられないですね」
「それについてはブリュンヒルデと同意見だ。彼女の武芸はウィザードオーブでは知らぬ者がいないほど有名で正直彼女を襲った者がいること事態が驚きと言っていい。その彼女にここまでの手傷を負わせるとなると余程の手練れだぞ」
俺もそう思う。ましてやゲイ・ボルグを持っているクーフーリンまでいるのだ。この二人を負かす勢力がウィザードオーブの中にいるのか?俺にはとても信じられないが目の前の現実こそが事実だ。
「俺はギルドに行ってきます。ノイシュさんとディアドラ姫には悪いですけど、状況がわかるまでは、この家に滞在していただけませんか?」
「それはいい案だ。ディアドラ姫はウィザードオーブに狙われる可能性が高い。そしてここは城や獣魔ギルドを除くとフリーティア内で一番安全なところだろうからな」
「そうですね。タクトさん、私たちもディアドラ姫の護衛についてよろしいでしょうか?」
「是非お願いします。部屋についてはキキに聞いてください。みんなはもし敵襲とかあったら、頼むな?」
「「「「はーい!」」」」
俺は護衛役を買って出たイオン、恋火、イクス、ノワ、セフォネを連れてギルドに向かう。
「スカアハとクーフーリンが瀕死の状態で転移してきたですって!?」
「これは既にクエストが動いていますね。私は銀たちと連絡を取ってきます。掲示板の方もメンバーに頼んで情報を集めてもらいますね」
流石サバ缶さんは行動が速い。俺がルインさんに現在の状況を報告し、みんなの状況を教えてもらうとメルたちや満月さん、与一さん、鉄心さんなど続々とクラスチェンジをしているようだ。これを聞いた俺はホッとした。これが戦争イベント前のフラグだとするならみんなの進化が間に合ったことは滅茶苦茶大きいはずだ。因みに召喚師では未だにクラスチェンジはおらず、召喚獣の第五進化がちらほら出てきているみたい。
するとここでサバ缶さんが再び入って来た。
「銀たちと連絡を取ったところ町に異変はないようです」
「スカアハとクーフーリンだけが謎の敵に襲われたということ? タクト君、何かイベントのトリガーを引いたかしら?」
「いえ、最近は二人の所には行っていないですね」
「そう…それならやっぱり自然発生したイベントと考えるのが普通ね。ここで自然発生するクエストなんて戦争クエスト以外ありえないと思うけど」
これにはその場にいたみんなが賛成する。
「クエストが更に動くとしたら、今夜が濃厚ですね」
「みんなに準備をするように伝えましょう。タクト君はスカアハが目を覚ましたら、急いで情報を伝えてちょうだい」
「はい。では夜はホームにいますね」
俺はイオンたちに中断したクッキーの素材の買い出しを頼み、獣魔ギルドに向かう。まだ近衛とブリューナクの修復が終わっていないけど、戦争イベント前までに少しでも戦力を増やしたい。
ということで俺が挑むクエストはコーラルの試練だ。これで現在可能な進化クエストは終わりとなる。クエストを見るとなんと二つもあった。凄く嫌な予感がする。
ギルドクエスト『不死鳥の試練』:難易度S+
報酬:不死鳥の宝珠
太陽神の試練をクリアせよ。
ギルドクエスト『朱雀の王の試練』:難易度S+
報酬:朱雀王の宝珠
四神の王から指示された試練をクリアせよ。
ここで不死鳥と分岐するの!?酷い!酷すぎる!でも強さ的にはそこまで変わらない感じか…だとすると朱雀は絶対光よりのはずだ。これに対して恐らくフェニックスだと思われる不死鳥は悪魔としても名前が挙がる鳥なんだよね。このことからこの分岐は光と闇系に分かれる分岐だと思う。
さて、どうしようかな。まさかこんなところで分岐するとは思ってなかった。物凄い未練はあるけど、ここはやはり黄龍の技のこともあるし、裏道に逸れることは許されないだろう。
さようなら!フェニックス!君のことはアルさんに託す!ということで『朱雀の王の試練』を受けた。
俺が転移した場所は火山フィールド。隣にコーラルがいる。俺の武器は聖剣グラムとグランアルヴリングを選んだ。今回はどんな敵が来るかな?白夜の時は縁があるゲームオリジナルキャラ、蒼穹の時は四凶、どれで来るかわからない。
すると天空から麒麟が現れた。
『三度目だな。黄龍と四神に認められし、召喚師よ』
「はい!」
『よい。返事だ。早速だが、試練を伝える。お前たちが戦ってもらう敵は善人を苦しめ、悪人を助ける魔獣だ』
あ、もう敵の事が分かっちゃった。蒼穹と同じ流れで来たか。こうなると白夜がちょっと可哀想だ。
『来るぞ』
上空から竜巻が発生し、吹き飛ぶと竜巻の中から現れたのは翼がある虎。体には日本の風神が持っている風袋と思われる装備があり、尻尾はクリュスのように刃が付いている。
窮奇?
? ? ?
中国の四凶の一体で説明はほぼ麒麟が言ってくれた。少し補足するとこの窮奇は風神や鎌鼬と関係があると言われており、それがこの姿に反映されているようだ。相手が虎ならなぜ白夜と戦わせなかったのか運営に言いたい。
『こいつに勝てば試練クリアだ』
麒麟はそう言うと姿を消した。
「ガァアア!」
先手を取ったのは窮奇。羽ばたくと無数の風の刃を飛ばしてきた。尻尾の刃を使わないんだ。
「コーラル!」
「きゅい!」
『フライト』
俺とコーラルは空に上がることで攻撃を回避した。すると窮奇は尻尾の刃を振るってくると神鎌鼬が放たれる。これも回避するが神鎌鼬で地面に地割れのような跡が残った。やはり四凶…それなりの強さは持っているか。
そこから俺とコーラルは遠距離で窮奇と攻撃を撃ち合う。聖剣グラムの多乱刃と窮奇の爪から放たれる多乱刃がぶつかり合い、コーラルの火雨や火ブレスは窮奇が起こす風に阻まれる。
それなら聖ブレスを使うわけだけど、これは暗黒ブレスで相殺された。ここまでお互いに完全に様子見をしている状態だ。
「きゅい」
「炎化で飛び込むのはちょっと待ってくれ。コーラル。あいつは何かを狙っている」
完全に窮奇は俺たちの近接戦を誘っている。窮奇の能力が風ならきっと死風を持っているはずだ。しかしそれだけはないように思える。
『俺が探りを入れる。危なくなったら、頼むな。コーラル』
『きゅい!』
「転瞬!」
さぁ、何が来る?俺の攻撃は尻尾の刃で防がれ、弾き飛ばされると装備されていた風袋の入り口がこちらを向く。すると俺は勢いよく吸い込まれる。見ると風袋の入り口がブラックホールのようになっていた。やばい!空だから踏ん張りが効かない!するとエンゼルファミーユが吸い込まれそうになり、念動力で粘る。
「空間歪曲!」
空間歪曲で生まれたワームホールが風袋の中に吸い込まれる。
「嘘だろ!?」
『テレポート』
俺に発生した魔方陣が壊され、風袋の中に吸い込まれる。魔法もダメ。どうする?これならどうだ!
『神撃』
無防備な上から攻撃が窮奇に決まる。そしてコーラルが聖ブレスを放っている間に俺は窮奇から離れる。するとコーラルの聖ブレスも風袋に吸い込まれてしまった。
「厄介なものを持っているな…あれは人間や魔法、武器、ワームホールまで恐らくなんでも吸い込んでしまう武器なのか」
流石に風神の話でこれは聞かないな。似ているのだと西遊記に登場する瓢箪の紫金紅葫蘆かな?呼びかけた相手が返事をすると中に吸い込んで溶かしてしまう法宝だ。ま、あの風袋はそんな条件なく吸い込んで来たけどね。
すると風袋が再び俺たちに向く。
「またかよ。うお!?」
風袋から放たれたのはコーラルの聖ブレス。ただし威力が少し高かった。恐らく俺から吸い込んだ分の魔力が加算されていたんだろう。というか吸い込んだものを出せるのか。
これで下手に飛び込めなくなった。すると多乱刃と神鎌鼬を飛ばしてくる。俺は躱しながらあれの突破方法を考える。
あの風袋は入り口を向けないと吸い込むことが出来ない。一方向しか向けないからコーラルと別方向から攻撃すれば問題はない。ただ下手に接近戦をすると吸い込まれて終わってしまうかも知れない。
近衛があれば使われるより速くに攻撃が出来るんだけどな。今は別の方法を考えないと。やはりここはこれしかないな。俺はコーラルに作戦を説明する。
「伝説解放! 聖剣技! シュトルムヴォータン!」
シュトルムヴォータンの風を吸い込む。そして俺のほうに風袋を向けて、開く。
「きゅーーー!」
上空からコーラルが飛び込むと同時に俺にシュトルムヴォータンが飛んでくる。
「テレポート!」
俺は風袋の入り口とは逆の横に転移する。すると窮奇は爪で攻撃してきた。コーラルには尻尾で迎撃されている。しかしコーラルは炎化でこれを躱す。
するとコーラルのほうに風袋が向く。やらせるか。
『石化光線』
「ガァ!?」
窮奇の目にエンゼルファミーユから放たれた石化光線が命中する。そしてコーラルが炎爪で風袋を掴み、風袋が燃える。
「「「「アクセラレーション!」」」」
『『『『ディセラレーション』』』』
決まった!この勝負貰った!俺が斬り刻んでいると第六感が反応し、翼を示す。
「コーラル! 離れろ!」
『『『『アクセラレーション』』』』
コーラルが加速し、俺は転瞬で離れると窮奇は死風を発動させる。あっぶな。コーラルは蘇生は持ってないから今のが決まっていたら、終わってたぞ。
「ガァアアアア!」
ここで窮奇は逆鱗を発動させ、尻尾が三本に増えた。さっきより接近戦が厳しくなった。というか虎徹がこれを見たら、すぐに襲い掛かりそうだ。
コーラルは切り札を使ってしまった。さて、どうするかな。俺が悩んでいると窮奇が先に動く。しかし動きが遅い。まだディセラレーションの効果が切れてなかったのか。
「コーラル、援護頼む! 畳みかけるぞ!」
「きゅい!」
コーラルは火山弾を連射し、俺はアクセラレーションとディセラレーションで一気に勝負をかける。コーラルの火山弾の防御に動いた尻尾をすれ違いざまに弾き、窮奇の背後に回ると連続で斬りまくる。
コーラルの火山弾を迎撃に出ていた窮奇だったが、全てを迎撃できず、命中すると落下する。
「全宝玉解放! コーラル!」
「きゅーーー!」
コーラルとの超連携が発動し、コーラルの聖火がグランアルヴリングに宿る。
「魔法剣技! アルティメットシャリオ!」
アルティメットシャリオの周囲を巻くように宿った聖火が窮奇に直撃する。まだか…それなら最後は獣魔魔法で決めてやる!コーラルがヒートランス、俺がレッドスプライト。作り出せるのはプラズマの槍!
「獣魔魔法! プラズマストームランス!」
「ガァ!? ガァアアアアアア!?」
窮奇にプラズマの槍が刺さるとプラズマの槍から赤雷が解放され、窮奇は感電死した。そして勝利すると麒麟が俺たちの前に現れた。
『見事な勝利であったな。これが報酬だ。受け取るがいい』
俺は朱雀王の宝珠を受け取った。窮奇を解体すると外れ。四凶は何も落とさないのか?
『お主なら玄武の試練を挑むのであろうな』
「もちろんです」
フェニックスを捨てたのだ。ここで玄武の進化を諦めたら、フェニックスを諦めた意味がない。
『ならば最後の試練で会おうぞ。さらばだ』
そういうと麒麟は消え、俺たちはギルドに戻った。




