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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
自由の国フリーティア
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#90 リリーとイオンの特訓

ルインさんとの会話が終わり、しばらくすると魚醤の臭いが無くなった。リリーたちも復活する。全員が酷い目にあったというが俺は最初に警告したのだ。俺に非はない。


「これ、本当に使うんですか?」


イオンが聞いてくる。あれほど嫌な臭いを味わったのだ。食べる気がしないのだろう。だが俺の答えは決まっている。


「使うに決まっているだろ? なんのために作ったと思っているんだ?」


「そ、そうですよね…でも」


「とても美味しいとは思えません」


セチアがそういうと全員が頷く。ほほぅ。その言葉忘れるなよ?発酵製品を侮辱した人は発酵製品に泣くのだ!自分で言っといてなんだが、意味不明だな。


俺はへーパイストスに会いに行くと当然怒られた。うん。これは素直にごめんなさいだな。言わなかった俺に非がある。


許してもらうとへーパイストスから綺麗な剣を渡される。それはガラスで出来た剣だった。


ガラスの剣:レア度3 片手剣 品質E+

重さ:10 耐久値:35 攻撃力:20

追加效果:パリィ時、耐久値軽減(小)

ガラスで作れた剣。戦闘で使うよりも芸術品としての価値がある。

軽く、斬ることに特化している。耐久値が低いので、扱うのには注意が必要。


「おぉ…作れたのか!?」


「はい! なんとか一本だけ完成しました」


その剣を見て、イオンが絶賛する。


「綺麗な剣ですね」


「ありがとうございます。自信作です」


いい仕事をした男の顔をしてますよ。さて、折角新しい剣が出来上がったのだ。試さない手はないな。


「これからリリーたちと特訓をするんだがへーパイストスも見に来るか? 新しい剣の出来を見たいだろ?」


「そうですね…ではお邪魔します」


こうして全員参加でリリーたちとの特訓を開始する。最初はリリーからだ。


決闘

対戦者:タクト、リリー

勝利条件:戦闘不能、タイムアップ

審判:イオン


今回は時間制限あり、最大30分出来るが長くても仕方ないので、5分にする。


「じゃあ、始めるか」


「うん! タクト、思いっきりやっていい?」


「擬似竜化は禁止。後は何を使ってもいいぞ」


「その言葉後悔しないでね」


是非後悔させて欲しいものだ。俺はガラスの剣を抜く。本来なら木刀を使うが今回はテストでガラスの剣を使うことにした。抜いてみて思ったが確かに軽いな。斬り裂くというより斬ることに特化というのも頷けるな。


「準備はいいですか?」


イオンが聞いてくる。


「いつでもいいよ!」


「俺もいいぞ」


「では始め!」


リリーが突っ込んでくる。そしてお決まりの展開。


「ヘビースラッシュ!」


リリーがヘビースラッシュを使ってくる。そんな無防備になったリリーに俺はデコピン。攻撃が当たったので、スキルはキャンセルさせる。そして硬直するので、もう一発デコピン。デコでダメージを負い、涙目のリリー。


「い、痛いよ…タクト」


そんなこと言われてもね。俺は大剣で斬られそうなったんだが…そんなことより、ここは心を鬼にしないとな。


「俺が剣を使っていたら、試合は終わっていたぞ? 遠慮は無用だ。こい」


「っ!?」


リリーは目を見開き、次の瞬間、目に闘志が宿る。それでいい。


戦いが再開される。リリーが大剣を振りまわすが俺はその大剣を全て弾く。アーサーが盾でやったように武器を弾かれると硬直して動けなくなる。よって、俺はリリーの大剣を弾く度にリリーの頭をガラスの剣の刃がない平面で叩く。スキルを使うと二回だ。叩かれるたびにあうあう言うリリー。


「うがー! 頭に来た! 闘気!」


闘気を使い、剣を振るってくるが全て弾き、お仕置きチョップした。そしてタイムアップでダメージを与えた俺の勝利となった。


決闘が終わるとその場に座り込むリリー。


「な、なんで~」


と情けない声を出す。戦闘自体の流れはイオンと戦った時と大差ない。決定的な違いは俺は戦闘開始してから一歩も動いていない点だ。リリーからしたら意味不明だろう。


「凄いですね」


「タクト様の剣での戦闘は初めて見ましたけど、別格の強さです」


イオンとセチアはショッキングだったみたいだ。だが一人リアクションが違う子がいる。恋火だ。


「凄いです! タクトお兄ちゃん! 姿勢と剣の使い方がとても綺麗でした! 感動です!」


恋火は剣のことになると性格変わるのか?やけに熱く語っている。だけどそれを言えるということは俺が何をしたのか理解できているんだな。


「恋火は俺が何をしたのかわかったのかな?」


「はい! 剣をいなして弾いていました!」


「うん。正解だ」


俺がなでなですると目を細める恋火。三人娘は不満げです。あまりやるとダメなので本題に入ろう。


「さて、まずリリーは大技に頼りすぎだ。大技を使うと俺が二回叩いたから、わかるだろう?」


「…あれ、そういう意味でしてたんだ…」


当然だ。そしてここからが重要。


「俺がリリーの剣を弾いたとき、自分が無防備になったことはわかるか?」


「うん。体が動かなかった」


「そう。つまり剣を弾いた後なら大技が必ず当たるってことなんだ」


「え!?」


リリーが目を見開く。リリーにとってその言葉はとても魅力的なことだろう。


「だからこれからの訓練は剣の弾き方を教えて行こうと思う。これが出来るようになればとりあえずアーサーと同じレベルになるだろう。やるか?」


「もちろん! それじゃあ、早速」


「やる気は買うが、イオンとチェンジだ」


「えぇ…」


「何がえぇ…ですか! 代わるのは当然でしょう!」


そう言いながらイオンが短剣を抜き、ステップを踏む。戦闘準備はいいみたいだな。だが戦う前にヘーパイストスにガラスの剣を修復して貰う。やはりこの武器の耐久値の低さは問題だな。それはヘーパイストスも感じているそうで何かいい手がないか考えてくれるみたいだ。期待して待つとしよう。


ガラスの剣の修復が済み、準備完了。それじゃあ、イオンの訓練を始めるか。


決闘

対戦者:タクト、イオン

勝利条件:戦闘不能、タイムアップ

審判:恋火


なぜリリーが審判じゃないか?リリーに出来るか不安だからだ。それなら剣に詳しい恋火にお願いした。


「それでは初めて下さい!」


恋火の合図で始まる。俺はガラスの剣を中段に構えたまま、動かない。イオンは俺の周囲を走り、攻め時を伺う。そしてイオンが攻めようした瞬間、俺が突きを放つ。


イオンは辛うじてかわすが攻撃に繋げることは出来なかった。再び様子を伺い攻めてくる。右、後ろ、斜め右、前、左と攻めてくるが俺の突きがその度に正確に放たれ、イオンの攻めを妨害する。


そしてイオンは俺の剣を弾こうとした。うん、そうやってすぐに真似るのはいいことだ。


だが俺はその上を行く。イオンが弾こうとした剣を引っ込め、イオンの剣弾きを空振りさせる。そして再度突きを放つ。イオンは辛うじて短剣でガードする。


そして距離を取り、再度攻撃に来る。今度は俺の突きを想定して、カウンターを狙おうとするイオンだが、その度に剣を引っ込め、二回目の突きがイオンを襲う。


だがそれにもイオンは対応し始めたので、俺は動くことにした。イオンも俺が動いたことに警戒する。だが残念ながら警戒しすぎだ。


俺と一定距離を保とうした結果、決闘フィールドの隅にイオンは追い込まれる。イオンに逃げ場が無くなり、動けなくなったイオンに俺が攻め込む。


必死に捌こうとするが足が止まってしまったイオンに勝機はなかった。


「な、なんで…」


試合が終わり、リリーと同じ事を言うイオン。さて、反省タイムです。


「イオンはやっぱり頭がいいな。俺が見せた剣弾きをやろうとしたところはよかったぞ」


「ありがとうございます。でも何がいけなかったのですか?」


「イオンに目立ったのは戦術の甘さだな。自分がぐるぐる回っているとき、どこから攻めようか考えてから来るだろ?」


「はい。それがダメなんですか?」


「ダメじゃない。寧ろ利点だ。だが問題はそれしか考えていないことだ」


「っ!?」


俺の指摘に目を見開くイオン。図星だと分かったみたいだな。


「最初、俺の予期せぬ突きに対応出来なかったのはそれを想定していないからだ。ましてや俺が動くとは想定していなかっただろ?」


「…はい。でも最後、私はいつの間に角に行ったのですか?」


「よく考えてみろ。俺が前に進んでいるんだぞ?その俺の動きに合わせて同じ距離をグルグル回っていたら、どうなると思う?」


「え…あ。最後は隅にぶつかる」


うん。よく気づけました。


「そう。俺を警戒するあまりに周りが見えていなかった。これは減点だな」


「うぅ…では、どうすればいいんですか?」


「簡単さ。あくまで距離を大切にしたいなら一定距離で止まればいい」


「確かにそうですけど…」


イオンは納得が行かない様子。それもそのはず。ちゃんとした原因がある。


「イオン、実は接近戦苦手だろ?」


「っ!?」


完全に図星な指摘をする。実は今までイオンはカウンターやすれ違いざまに斬ったりして来たが、立ち止まって連続攻撃した試しがない。武技やスキルを使っているときだけは違うけどね。


「そ、そんなことは…」


「ないと言うなら問題ないな。これからの訓練は俺と接近戦をしてもらう。その際にリリーと一緒で剣弾きのやり方を教えるよ」


「は、はい…」


イオンは最後の俺との接近戦を思い出しているのだろう。だけど頭の賢いイオンに足りないのは戦闘の勘だ。こればっかりは実戦で磨くしかない。


逆にリリーは戦闘の勘があって、頭を使わない宝の持ち腐れタイプだ。これは二回目のウルフマン戦の時に感じたこと。リリーはウルフマンの攻撃に対して完全に攻撃を合わせていた。しかも力で自分が勝てるとわかって挑んでいた。これはリリーの戦闘の勘が働いた結果だと思う。


だからリリーにはとりあえず技術を教えることにした。戦術を無理に教えなくてもリリーの戦闘の勘がどうすればいいか判断するはずだからだ。


こうして二人の訓練方針を決めたわけだが、改めてこの二人は本当に逆なタイプなんだと実感するね。

レベルアップは明日の更新で書きます。

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