#900 新婚の朝と新しい魔導書作り
日曜日の朝、俺にとってはゲームの中とはいえ新婚の朝だ。その朝はアーレイからの下らないメールで始まった。
『やっちまったのか?』
『ふ』
出来るはずがないとわかってて、送ってきているから、お返しのメールを送った。
そしたら、朝食の間にメールラッシュ。アーレイから姫委員長、佳代姉たちに連絡が回ったようだ。あんにゃろ。
メールを無視して、ログインする。目を開けるとリリーとイオンのどアップの顔が映った。
「あ、目が覚めた? タクト…お、お父さん? …無理!」
リリーが恥ずかしさの余り、顔を布団に突っ込んだ。
「固いですよ。リリー。ここは普通に…し、新婚の朝ですよ。あ、あなた」
「イオンちゃんにだけは固いって言われたくない」
「聞こえてますよ! リリー!」
二人がじゃれ出したので、落ち着かせる。呼び方についてはいつも通りにした。お父さんは伊雪と被るし、あなたはちょっと距離を感じてしまった。
下に降りると二人が料理を作る。新婚として譲れないそうだ。
その間に俺は依頼が空いたみんなに依頼をする。
和狐とパンドラに恋火の甲冑、セチアとヘーパイストスにリビナの鞭、アラネアには俺の星熊童子の毛皮を使った手袋と靴を依頼した。そして今日の予定を話す。
「午前中は新しい魔導書作りとイクスの新装備を作る予定だ」
「遂にこの時が来ましたか」
「あぁ。随分長く待たせちゃったけど、生産ラインは完全に軌道に乗ったから、ここからどんどん作製していくことになるだろうな。ただ一つ問題がある」
「それはなんですか? マスター」
「メテオライトだ。あれは宇宙金属だから島で生産出来ないんだよな。他にも星核とかあるんだけど、これは今はまだいい。イクス、何か手はないか? イクスの星に大量にあるとか」
星核はとりあえず俺が作りたい武器の分はサバ缶さんたちから貰っていて足りている。しかしメテオライトだけは打つ手がユウェルとヴェルンドの指輪しかない。この二つを使っても一日生産出来るのは二個ずつ。全然数が足りない。
「私の星にも探せばあるとは思いますが、それよりも宇宙の小惑星から採掘した方が遥かに効率的です」
「それは俺たちでも可能か?」
「可能です。今のマスターならマントの効果もありますので、宇宙でも問題なく行動出来るでしょう」
なんだって?あ、星間行動が宇宙に関わるスキルだったのか。だとするとサフィも行けそうだ。他にも魔力で生きているエクスマキナやゴーレムは問題ないとのこと。ただしスラスターなどの推進装置がないと宇宙を漂い何処かに行ってしまうので、大変らしい。
「それじゃあ、メテオライト採掘をするか。あ、それと宇宙に生物はいるのか?」
「います。サフィはいい例ですね」
ごもっとも。つまり第五進化レベルの敵に遭遇する可能性があるわけね。まぁ、こちらにはマザーシップがあるから大丈夫だろう。油断は禁物だけどね。
「その後は精霊門を試してみようと思う」
「遂に精霊の世界に殴り込みを仕掛けてしまうのね。タクト」
「言い方が酷いぞ。ファリーダ。精霊の世界に冒険に行くと言ってくれ」
「同じ意味よ。絶対に戦闘になるし、強さはこの世界にいる敵より一段上の敵ばかりいるから気を付けないといけないわ」
問題はどのくらいのレベルの敵が来るかだよな。フェンリルがいるって話だし、出会うのは勘弁したいところだ。
「ま、これは時間が余ったらの話だ。何せ魔導書を作るのは俺、リビナ、セフォネ、ルーナ、伊雪の予定だからな」
「やったね! これはボクが物凄く強くなるんじゃないかな?」
「私も負けませんよ! リビナお姉様!」
「ふふ。楽しみですね」
二人のご飯を食べて、早速魔導書の作成に入る。基本となる素材はゴフェルの木で作った紙と魔法のインク。後はそれぞれにあった羽ペンと革を選ぶことになる。
俺が選んだのは智天使の羽ペンと魔獣母の革。そして文字を書くがその前に覗いている全員を下がらせて、体で隠す。これで見れないはず。
『みんなを守れるように』
文字が変換されて、魔導書を完成させる。後は名前だ。ファミーユの名前を継承させたいな。
エンゼルファミーユ:レア度10 魔導書 品質S+
重さ:40 耐久値:300 魔力:200
効果:無詠唱、複合詠唱、火属性魔法効果アップ(究)、土属性魔法効果アップ(究)、水属性魔法効果アップ(究)、光属性魔法効果アップ(究)、闇属性魔法効果アップ(究)、木属性魔法効果アップ(究)、召喚獣魔力アップ(究)、神撃、聖療、天鎖、石化光線、暗黒波動、大天使の加護、女神の加護、巨人の加護、楽園の加護
智天使とエキドナ、楽園の力がある天使の羽が生えている緑色の魔導書。エキドナの力で召喚獣を強化する力を持っている。更に楽園の加護であらゆる状態異常を受け付けず、魔力を回復しながら魔法やスキルを使用することが出来る。
つえー。でも守りというより攻撃特化の魔導書だな。まぁ、いいか。強いことで守れることがたくさんあるだろう。するとみんなの温かい笑顔を受けられていた。
「…なんだよ」
「「「「べっつに~」」」」
これは俺の真似だな。そして絶対に他心通を使っただろう。これはお仕置きが必要…あ、思い出した。昨日ユウェルが言ったことを問い詰めるのをすっかり忘れていたぜ。
「お、思い出さなくていいんだよ? タクト」
「え? 問い詰めるってなんのことですか? ユウェル」
「実は昨日主の弱点について、私たちが話し合っていたことが主にバレまして」
イオンたちの顔が真っ青になる。
「そういうわけだ」
「わ、私は魚料理をしないと」
「私たちも先程の作業に戻りましょうか」
全員が逃げようとする。こういうところの連携は本当に息ぴったりなんだよな。
「別にいいぞ。作業が終わった順番に一人ずつ聞かせて貰うからな。今、ここで全員一緒に叱られるか好きな方を選ぶといい」
リリーたちの選択は全員一緒。個人だと長時間叱られるからこちらを選択することは分かっていた。まぁ、叱られるときは聞かれたことに素直に答えるところがリリーたちのいいところだ。
叱った後に魔導書作りを再開する。次はリビナは選んだ素材は堕天女神の羽ペンとリュカーオーンの毛革。名前は俺がつけることになった。リビナはどうしても俺の名前を付けることを条件に言ってきたので、即決した。
リリンタクト:レア度10 魔導書 品質S+
重さ:40 耐久値:300 魔力:250
効果:無詠唱、複合詠唱、闇属性魔法効果アップ(究)、雷属性魔法効果アップ(究)、木属性魔法効果アップ(究)、時空魔法効果アップ(究)、紫電槍、刑罰、冥府鎖、餓狼、蘇生、堕天使の加護、女神の加護、楽園の加護
堕天した女神と狼、楽園の力がある紫の羽が生えている黒色の魔導書。狼の力であらゆるものを吸い込み、持ち主を蘇生させる力を持っている。更に楽園の加護であらゆる状態異常を受け付けず、魔力を回復しながら魔法やスキルを使用することが出来る。
リリンはサキュバスがリリンデーモンと呼ばれるところから名付けてみた。
これで大体の素材効果が見えてきた。リュカーオーンの毛革で餓狼と蘇生。堕天女神の羽ペンで紫電槍、刑罰、冥府鎖だと思う。木属性魔法効果アップと楽園の加護はゴフェルの木の効果っぽいな。この結果を受けてセフォネが悩む。
「むぅ…どれがいいと思う? タクトよ」
「セフォネだったら、堕天女神の羽ペンは確定だと思う。後は革素材だな。氷は現状ないし、見た目で選んだら、どうだ? 別に属性アップが無くても魔法を使えるんだからさ」
「そうじゃな! なら魔獣母の革にするのじゃ!」
俺は素材を渡し、セフォネが文字を書いたのちに魔導書を完成させると名前を考える。やはり俺の名前は必須でこれはもう全員がそういう流れだ。
ニュクテリスタクト:レア度10 魔導書 品質S+
重さ:40 耐久値:300 魔力:300
効果:無詠唱、複合詠唱、土属性魔法効果アップ(究)、水属性魔法効果アップ(究)、闇属性魔法効果アップ(究)、雷属性魔法効果アップ(究)、木属性魔法効果アップ(究)、時空魔法効果アップ(究)、召喚獣魔力アップ(究)、紫電槍、刑罰、冥府鎖、天撃、石化光線、堕天使の加護、女神の加護、巨人の加護、楽園の加護
堕天した女神と堕天使、楽園の力がある紫の羽が生えている黒色の魔導書。エキドナの力で召喚獣を強化する力を持っている。更に楽園の加護であらゆる状態異常を受け付けず、魔力を回復しながら魔法やスキルを使用することが出来る。
ニュクテリスは蝙蝠のギリシャ語。かっこいいからずっと名付けるのを狙っていた。それにしてもエキドナ・リバースの素材を合わせているからやはり強いな。これで大体の素材の効果が見えた。
次はルーナだ。選んだ素材は智天使の羽ペンとネメアの毛革。これはちょっと意外だった。
「青龍の革を使わなくていいのか?」
「はい! 私は皆さんのサポートしていて、狙われ易いので、守りの魔導書が欲しかったんです」
「ルーナはちゃんと考えていて、偉いな」
「えへへ~」
ちょっと感動した。これに頬を膨らませるのがリビナとセフォネだ。
「ちょっとタクト。ボクらもちゃんと考えているよ」
「そうじゃそうじゃ! 妾を考えていないように言う出ない!」
「そうだな…悪かったよ」
二人に謝り、頭を撫でると許して貰ったところで魔導書を完成させる。
ティルタクト:レア度10 魔導書 品質S+
重さ:40 耐久値:300 魔力:180
効果:無詠唱、複合詠唱、火属性魔法効果アップ(究)、光属性魔法効果アップ(究)、雷属性魔法効果アップ(究)、木属性魔法効果アップ(究)、神撃、聖療、天鎖、黄金障壁、電磁操作、大天使の加護、星の加護、楽園の加護
智天使とネメア、楽園の力がある天使の羽が生えている黄金の魔導書。ネメアの毛革の効果で守りに特化した能力を持っている。更に楽園の加護であらゆる状態異常を受け付けず、魔力を回復しながら魔法やスキルを使用することが出来る。
ティルは妖精の国と言われているティル・ナ・ノーグから取った。このゲームでも登場しそうだけど、流石に俺の名前は入らないだろう。
最後はミールの魔導書。選んだ素材は智天使の羽ペンと白虎の毛革。これは不思議ではないけど、一応聞いてみる。
「カリュドーンの毛革を使わなくていいのか?」
「はい。ボアは木を傷つけますので、嫌いなんです」
なるほど。完全に好き嫌いで選んだのか。まぁ、気持ちは分からないでもない。ということで魔導書を作った。
ベチュラタクト:レア度10 魔導書 品質S+
重さ:40 耐久値:300 魔力:180
効果:無詠唱、複合詠唱、風属性魔法効果アップ(究)、火属性魔法効果アップ(究)、土属性魔法効果アップ(究)、光属性魔法効果アップ(究)、木属性魔法効果アップ(究)、神撃、聖療、天鎖、森林操作、地脈操作、大天使の加護、楽園の加護
智天使と白虎、楽園の力がある紫の羽が生えている黒色の魔導書。白虎の毛革の効果で地形を操る力を持っている。更に楽園の加護であらゆる状態異常を受け付けず、魔力を回復しながら魔法やスキルを使用することが出来る。
見た目が白い魔導書だったから白い木をイメージして白樺が浮かんでしまった。しかしそのままシラカバはかっこ悪いので、シラカバの学名であるベチュラ・プラティフィラから拝借した。
白虎の力は残念ながらミールと被っているけど、二つ使えることは利点にもなるだろう。これでとりあえず終わり。次は島で生産活動をしてからメテオライトの採掘に行くぞー!




