#884 天嵐の神刀
へーパイストスから連絡を受けた俺はみんなを連れて、桜花に急行した。すると宗次郎がいた。
「あ! タクトさん!」
「…何故いる?」
今までいなかった癖に。
「安綱さんが緋緋色金の刀を作っていると噂を聞いて」
「安綱さんじゃなくて、へーパイストスのはずだぞ。まぁ、教えては貰っているんだろうけどな」
「そうなんですね。ところでタクトさん、何か機嫌が悪かったりします」
「べっつに~」
「なんですか!? その言い方は! あ、待ってくださいよ!」
俺は安綱さんの所に入るとへーパイストスとパンドラがいた。
「完成しましたよ! タクトさん!」
「凄い武器だよ! おじ様!」
「二人とも、ありがとな。安綱さんもありがとうございます」
「俺は教えただけだ。それより出来上がった刀を見てみろ」
俺はへーパイストスから受け取る。鞘は神鹿の鹿角で作れており、天皇に献上されてもおかしくないほど、立派な作りだ。しっかりと鞘にリープリングのエンブレムが焼入れされているところは流石の一言。
いよいよ刀を抜くとそこから緋色の光りを放つ黄金の刀身が姿を見せた。刀の全体の作りは無銘と同じ作りで持ちやすい。
「これが緋緋色金で作った刀…」
「試し斬りをさせてやりたいが流石にここではさせられねぇ。家を跡形もなく消されたくはないからな」
試し斬りでそれぐらいの威力を誇るのか。
「大丈夫です。宗次郎、勝負だ!」
「ここで!? 僕、何かしましたか!? いじめですよ!」
「命の恩人に技を教えず、他の人に教えるのはいじめじゃないのか?」
宗次郎の動きが止まった。俺は全てを知っているのだよ。宗次郎君。
「わかったなら、付き合え。これでチャラにしてやる」
「いやいやいや! これには深いわけがあるんです! タクトさんとはライバル関係でいたいというかですね! 彼もタクトさんを目標にしていて、ほっとけなかったと言うか」
「はぁ…冗談だよ。でも、この刀は使わないから後で戦わせてくれ」
「そ、それなら喜んで」
さて、名前はもう決めてある。無銘と同じ作りのこの刀を名付けるならこれしかないだろう。
「この刀の名前は近衛だ」
今の俺の苗字を選んだ。無銘は御剣家の刀、この刀は今の俺の刀だ。ならば俺の中でこの刀の名前はこれしかない。鑑定してみる。
近衛:レア度10 刀 品質S+
重さ:100 耐久値:6000 攻撃力:3000
効果:神特攻(究)、破魔、万物切断、虚空切断、英気、神気、雷光刃、雷光、雷轟、浄火、空振、多乱刃、旋風刃、天候支配、重圧、烈日、後光、陽光、全滑走、蘇生、復活、加護無効、神刀解放、神威解放、太陽の加護、嵐神の加護
嵐の神スサノオの力が宿った神刀。刀には緋緋色金、鞘には神鹿の鹿角が使われている。一振りで雷嵐を呼び、緋緋色金の輝きは世界を明るく照らす。このことから天候を象徴する刀となっている。放たれる斬撃は上級神も斬り裂く斬れ味を誇る神魔殺しの神刀。
普通にレガメファミリア、ブリューナクを超えてきたな。まぁ、それぞれ武器の種類が違うから正しく評価出来ているのか謎だけどね。
説明から判断すると嵐と晴れで天候って感じかな。俺は外に出て、軽くスキルを使ってみた。
「陽光!」
近衛から温かい光りが放たれる。これを浴びたみんなに回復が発動する。回復能力まであるのか。
「雷光刃!」
近衛の刀身から稲妻が発生し、刀身が紫電の刃が発生すると同時に空気が一変した。
「「「「あわわわわわ」」」」
進化したリリーたちですらドン引きだ。流石にここで振るうのはやばいと感じて、スキルを解除すると元の姿に戻った。
「やばい刀だな」
「神刀の域の刀はどれもやばいもんだが、その中でもこの刀はやばい部類に入るだろうな。何せ気まぐれすぎる。嵐で人に恐怖を与えたと思ったら、日の光りで安心させる刀だからな。持ち主の力量が試される刀と言っていいだろう」
ここでリリーたちが素直な感想を言う。
「タクトそっくりの刀だね!」
「私もそう思いました。いつもは温かいのに戦いになると一変するところが似ている気がします」
「「「「確かに」」」」
全員に同意されると反論の余地はないな。
「相性がいいってことだな。これからよろしくな。近衛」
俺が近衛を仕舞うと流れて、宗次郎と戦うことになった。
「三段突き!」
「甘いわ!」
菅原道真の三段突き攻略を実行して、見事に勝利した。
「よし。満足した」
「酷い! もう一度勝負をしてください!」
「断る!」
「あぁ~! 勝ち逃げは狡いですよ! タクトさん!」
勝ち逃げが狡いというなら勝負事は成り立たないんだよ!宗次郎にぶーぶー言われながら、緋緋色金のことを聞く。
「片手剣や大剣は無理か」
「はい。金属自体が向いていません」
「剣を作るならお前さんがこの前持ってきた蛇の尻尾のほうが向いているだろうな」
なるほど。天叢雲剣は片手剣っぽいから緋緋色金で片手剣が作れると考えていたけど、そうきたか。実は八岐大蛟は聖域の島で出現させることが出来ることを確認している。でもあれと戦うのは厳しいな。
詳しく聞くと緋緋色金は刀や薙刀、弓矢、苦無、手裏剣、鉄扇、鎧、銃弾とは相性がいいみたいだ。恐らく他の武器はオリハルコンが適正なんだろう。
ここで問題となるのが、次の依頼だ。次は槍の依頼をするつもりだったのだが、完全に予定が狂ってしまった。
「恋火の刀かアリナの苦無、和狐の鉄扇ってことになるんだろうけど」
「「「え!」」」
三人が反応を示す。するとめげないリリーが言う。
「リリーの甲冑は?」
「リリーお姉様は鎧がもうあるではないですか。順番的に私か恋火ですよ」
リリーが肩を落とした。そして俺が見ていることを確認すると大袈裟に肩を落とす。変なアピールを覚えたな。
「パンドラ、長い棒は作れるか?」
「なーに? それ」
「変わった依頼ですね」
へーパイストスに事情を説明する。
「なるほど。ジャンヌさんの旗を再現ですか…それなら棒の部分は固い金剛石で作って、穂先はアダマントがいいと思います」
「太陽の木を使う手もありますよ。タクト様」
「その手があったか。ジャンヌの槍の再現なら金属だけど、ブランはどうする?」
「同じよりも私たちらしさを掲げたいです。主」
嬉しいことを言ってくれるね。
「それなら太陽の木だな」
「ですね。穂先は何がいいでしょうか?」
「太陽の木を使うならアダマントとサンストーン、楽園結晶の合金が一番いいと思います」
「どれくらいで完成できそうだ?」
「楽園結晶を使いますから戸惑うと思いますけど、穂先だけですからね。すぐに出来ますよ」
ということでまずはブランの旗を注文した。その後にリアンの魔法槍を作る予定。俺たちは安綱さんに感謝を伝えて、ホームに帰る。
その後、俺は魔導書の準備をする。ゴフェルの木からパルプを作り、紙を作る。
「これぐらいでいいかな?」
「もっとお願いします」
「うお!? ビックリした。どうしたんだ? セチア」
「タクト様が新しい魔導書を作ろうとしていることはわかっています」
セチアの視線を追うと魔導書が欲しいみんなが俺を見ていた。
「多いな…」
「お願いします」
「はいはい…でも流石に足りないから持ってない子を優先な」
「「「「はーい」」」」
準備を終えたところで最後に試練を受けるとしよう。




