#880 星鯨と黄金の林檎
獣魔ギルドに戻ってきた俺は早速サフィを進化させる。進化先はもちろん一つ。
ケートス
予想通り。ケートスはギリシャ神話に登場する鯨だ。ポセイドンに作られた話やテューポーンとエキドナの間に生まれたなど伝承は色々ある。有名な伝説はアンドロメダとペルセウスの恋物語だろう。
軽く説明すると王妃カシオペアが自分の美貌を自慢し、怒ったポセイドンがケートスを仕向ける。このケートスを鎮めるために生贄とされたのがカシオペアの娘であるアンドロメダだ。海岸に鎖で縛られたアンドロメダをケートスは食べようとするわけだが、そこを救ったのがペルセウス。ペルセウスはケートスを倒し、アンドロメダを救うと妻にするという話だ。
ポセイドンが登場したことから恐らくこのゲームのケートスはこの神話がモデルになっていると思われる。説明を見てみよう。
ケートス…星の海を雄大に泳ぐ巨大な鯨。星が身体に当たってもびくともしない固い鱗と巨大な一角が特徴。泳ぎを邪魔しなければ無害な鯨だが、一度怒らすと国を丸ごと呑み込むこともある危険な鯨。
国を呑み込む?俺はこの瞬間、食費が凄く心配になったのは言うまでもない。ま、そんなことを心配していたら、進化は出来ない。ということで進化をさせる。
サフィの前に星鯨の宝珠を置いて、進化を実行する。星鯨の宝珠から星の光がサフィに流れて、サフィが進化する。お、大きいぞ。
『サフィがケートスに進化しました』
『空間歪曲、煽動、竜鱗装甲、星鎧、星気、肉体活性、星震、氷獄、多連撃、騎手強化、大噴火、流星群、超集束、ガンマ線、極光、星雨、星虹、天罰、天雷、守護結界、海流操作、天候支配、水圧操作、重圧、魔力吸収、星ブレス、瞬間再生、熱無効、寒無効、無我、逆鱗、戦闘高揚、宿泊、海神の加護を取得しました』
名前 サフィ モビーディックLv32→ケートスLv1
生命力 218→268
魔力 170→220
筋力 258→308
防御力 104→144
俊敏性 160→200
器用値 123→163
スキル
回転角Lv37→星角Lv37 遊泳行動Lv36 遊泳飛行Lv36→星間遊泳Lv36 ブリーチングLv14 水化の牙Lv11→竜牙Lv11
激突Lv37→強激突Lv37 空間歪曲Lv1 煽動Lv1 強襲Lv35 物理破壊Lv29→万物破壊Lv29
堅牢Lv30→堅固Lv30 竜鱗装甲Lv1 星鎧Lv1 星気Lv1 肉体活性Lv1
音響探知Lv26→探知波Lv26 妨害音波Lv14→妨害波Lv14 星震Lv1 氷獄Lv1 多連撃Lv1
氷刃Lv15→氷雪刃Lv15 疾走Lv33→神速Lv33 騎乗Lv33 騎手強化Lv1 神聖魔法Lv13
避雷針Lv10→避雷刃Lv10 白霧Lv26 津波Lv12→大津波Lv12 渦潮Lv15 潮吹きLv12
大噴火Lv1 流星群Lv1 超集束Lv1 ガンマ線Lv1 極光Lv1
星雨Lv1 星虹Lv1 天罰Lv1 黒雷Lv1 守護結界Lv1
海流操作Lv1 天候支配Lv1 水圧操作Lv1 重圧Lv1 魔力吸収Lv1
咆哮Lv18→ドラゴンブレスLv18 海ブレスLv18 極寒ブレスLv20 星ブレスLv1
瞬間再生Lv1 熱無効Lv1 寒無効Lv1 無我Lv1 逆鱗Lv1
戦闘高揚Lv1 宿泊Lv1 体格変化Lv30 海神の加護Lv1
進化したサフィは身体は鯨なんだけど、皮膚と牙がドラゴンのように変化し、更に体の見た目が星空のようになっている。これではバハムートと大差ないと思うけど、やはり鯨は鯨なんだろうな。
ステータスを見て、思ったことはサフィは宇宙戦艦になってしまったという感じだ。だって、宇宙に行けて攻撃、宿泊が出来たら、これはもう宇宙戦艦だろう。
「流石に目立つから小さくなってくれ。サフィ」
「ぼえ~!」
サフィが小さくなるといつものサフィになる。ただし身体が白から星空のようになっている。
「可愛」
「かわいい~!」
「ぽえ~!?」
サフィがネフィさんに拉致された。忘れてた…ネフィさんはサフィも好きなんだった。
「はぁ~…最高の抱き心地です」
「それは結構ですけど、ロコモコに言いますよ」
「なんて酷いことを!?」
「それはあなたのほうよ。お客様の接客中に飛び出すなんて何を考えているの! ほら、戻るわよ!」
ネフィさんとアウラさんの立場が完全に逆転したな。いや、ある意味アウラさんが姉のように見えているからこれが本来の姿なのかも知れない。それでも俺はネフィさんには冷静なネフィさんでいてほしいと思わずにはいられなかった。
俺は島でサフィの能力を確認する。最初は星角。角から星の光を放ち、磁気嵐と共に突進するスキル。この磁気嵐が魔力を乱すことで魔法や波動技などを無力化して、突進することが出来るみたい。魔力切断の能力もある角って感じだ。
次は探知波と妨害波。今までは一方向のみだったけど、これが全方向になった。範囲もかなり広いので、これだけでもかなり強いと言っていい。
次の星間遊泳はちょっと確かめられない。サフィに乗って、宇宙までいけばいいだろうけど、その結果、どんなモンスターが出てくるか分からないからな。
ということで次は黄袍怪が使っていた星震。一方向に強烈な振動波を放ち、相手を吹っ飛ばすスキル。これの強さは身を持って知っている。並みの防御スキルでは防げないかなり強力なスキルだ。
最後は大噴火。これは潮吹きと同じ鼻孔から無数の火山弾を周囲にばら蒔くスキル。バシロサウルス・ケトイデスが使っていたスキルが恐らくこれだ。
これで確認は終わり。このまま生産活動をする。ユウェルには指輪で作った神珍鉄を上げて、作って貰った。更に採掘をして、黒鉄には伐採を頼む。するとセチアが慌ててやってきた。
「タクト様! 黄金の林檎が実りました!」
「やったな! セチア! 今行く!」
ということで黄金の林檎をゲットした。
黄金の林檎:レア度10 食材 品質S+
効果:一時間経験値アップ(上)
天界に存在している黄金の林檎。食べることで数時間の間、得られる経験値が上昇する効果がある。
ここからはミールの腕の見せどころだ。
「豊穣!」
これでもう一つゲットした。
「「「「アップルパイ! アップルパイ!」」」」
リリーたちがテンション上がっているが俺はちょっと引っ掛かりを感じる。セチアが俺に聞いてくる。
「効果が低いことが気になりますか?」
「あぁ…悪いな」
「いいえ。私も気になりました。ただ現状でやれることはしています。それでこれですから、恐らくこれ以上の効果はもっとこの島の環境を良くしないと出来ないと思います」
なるほど。島の環境がダイレクトに影響を受けたのか。これで納得がいった。生産活動を終えた後は修練の塔に向かった。選んだメンバーは恋火、和狐、虎徹、ダーレー、千影を選んだ。
最初は千影が挑む。
「う…強い。でも! 影分身!」
押された千影は影分身で勝負に出る。
「天國! 宝剣解」
「甘い」
「あう…」
しっかり隙を作らないと菅原道真には通用しない。
「腕前は流石だが、まだまだ腕に自信がないようだな。もっとそなたらしく戦うといい」
「は、はいであります!」
次は恋火と和狐のコンビで挑んで貰った。やはりこの二人は連携が取れている。ただ未熟なところは菅原道真は見逃さない。
「やぁああ! お姉ちゃん!」
「いちいち呼ぶとは余裕じゃな!」
「あう!?」
「恋火!? くっ!?」
和狐が紅蓮の鉄扇で菅原道真の刀を受ける。
「ほぅ…鉄扇か。珍しい武器をもっておるな。しかし!」
「きゃ…あ」
紅蓮の鉄扇が弾かれてしまい、刀を突きつけられた。
「使い方がなっておらん。鉄扇は確かに攻撃を受けることが出来るが寧ろ攻撃を流して、バランスを崩させたところに攻撃を加えるのが基本だ。精進せよ」
「…はいな」
「では、勝負を続けようか」
「ま、負けません!」
恋火も頑張ったけど、負けてしまった。次はクルージーンを装備したダーレーだ。
「変わった構えだな」
「これが俺流なもんでな」
「我流か…面白い!」
二人がぶつかり合う。ここで初めてドラゴニュート状態のダーレーの戦闘を初めて見たが、武術と剣術を組み合わせた戦闘スタイルだ。俺とよく似ているが剣よりも武術メインの戦い方だな。
「変わった武術を使う!」
「おっと…そっちこそ変な剣術を使うじゃねーか!」
菅原道真はやりづらそうだな。俺の場合は映画やアニメなどで中国の剣術や武術を見ているからある程度、予測はしやすいが菅原道真は初見だ。そりゃ、苦戦するだろう。
剣で斬りかかったら、飛んで躱せて蹴りを貰うなんて日本ではありえないだろうからな。あ、剣を使う陰陽師とかならありえるか。
「く…そ…」
ダーレーの攻撃に菅原道真は対応し始め、追い込まれる。俺はそれを冷静に見ていた。ダーレーはまだ切り札を使っていない。そろそろ決着が付くな。俺のそう思った時にダーレーが仕掛けた。
「白熱刃! らぁああ!」
ダーレーはクルージーンを大きく振りかぶり、上段斜めから振り下ろした。それを菅原道真は足で滑りながら、仰け反った形で白熱刃を刀で流しつつ、突破した。いいな~…アクロバット。俺もやってみたい。
白熱刃を見事に対処した菅原道真はダーレーに斬りかかる。するとダーレーはクルージーンを手放し、後ろ回し蹴りで刀を躱し、カウンターを狙った。身体が柔らかいからこそ出来る芸当だな。
「発勁!」
決まったと思った瞬間、見切りで攻撃が躱される。
「惜しかーーっ!?」
「俺の勝ちだ。爺さん。太極波動!」
クルージーンを手放したのはこの太極波動を使うためだったようだ。太極波動は陰と陽の気を合わせて放つ技。両手に陰と陽の気を作らなければ合わせることが出来ない。これを後ろ回し蹴りの最中にダーレーはやってのけた。武技を使わずやったからこそ出来る芸当だ。
「ぬぅうううう…ぐぁああ!?」
至近距離からの太極波動を受け止めようとした菅原道真だが、流石に止めれずここで訓練は終了だ。
『恋火の刀のレベルが50に到達しました。刀【閃影】を取得しました』
『ダーレーの片手剣のレベルが5に到達しました。片手剣【ヘビースラッシュ】を取得しました』
『ダーレーの格闘のレベルが5に到達しました。格闘【フック】、【アッパー】を取得しました』
これで恋火の刀スキルはマックスに到達した。もしかしたら、太刀を覚えるかも知れないと思っていたがそれは無し。進化したら、覚えるのかな?ここで菅原道真が来る。
「ふ…見事な駆け引きじゃった。また戦いたいものじゃな。異国の技が実に興味を啜られる」
「俺はごめんだね。首を斬られる趣味はねーからな」
「俺たちが趣味があるように言わないでくれ。それに家にいるとリリーたちに捕まるぞ」
「ぐ…あー! もう! わかったよ! 訓練をすればいいだろう!」
ダーレーはリリーたちとの遊びよりも菅原道真との訓練を取った。
修練の塔から出た俺は恋火が覚えた閃影を受けることにした。
「こい!」
「ふー…行きます!」
構えは居合いだ。
「閃影!」
首を斬られました。
「やっぱり趣味があるんじゃーか」
「俺が頼んだら、ダーレーは断っただろうが!」
「だ、大丈夫ですか!? タクトお兄ちゃん」
「あぁ…決闘だから大丈夫だ。それにしても酷い技だな」
一瞬で間合いを詰められて、斬られるならまだ良かった。問題は構えていた剣をすり抜けて首を斬って来たことだ。しかも慧眼を発動していたのに斬られた。
「一瞬で間合いを詰めてからの高速の斬撃に加えて、防御の摺り抜けに回避不可ってところか。酷い技だな」
この技、考えたの絶対爺ちゃんだよ。一刀一殺を体現しているような技だからな。弱点は居合いの構えを取らなければならず、そこから技の発動まで時間がかかっていた。後は威力はそこまで高くない。だからこそ首などの急所を狙わなかればならない技で大きなモンスターには結構厳しいだろうな。対人戦を意識しているところにも爺ちゃんの影響を感じる。
「これを見るとやっぱり太刀が大きなモンスター専用になるのかな?」
「片手剣と同じようにですか?」
「あぁ。ただ片手剣より刀のほうが対人戦を意識している気がする。まぁ、これは仕方ないんだろうな」
刀は元々人との戦闘を意識して作られた武器だからな。その起源も平安時代後期の戦争とか聞いたことがある。
「対人戦でも強い技なのは間違いない。強くなったな。恋火!」
「はい! これでタクトお兄ちゃんも遠慮なく刀を使ってください! あたしに一番を譲ってくれたんですよね?」
「…それはどうかな~」
「えへへ~…ありがとうございます。タクトお兄ちゃん」
むぅ…恋火もやるようになってきたものだ。お兄ちゃん、ちょっと複雑。
気持ちを切り替えて、ここからはずっと待たせてしまっていた燎刃のレベル上げをするとしよう。




