#852 リーゼの預かりと星獅子の試練
やってきたのはハンズさんとリーゼだった。
「今日はどうしたんですか?」
「実は折り入って、君に頼みがあってね。暫くの間、リーゼを預かって欲しいのだ」
「それは構いませんが、どうかしたんですか?」
「これから私は暗黒大陸の魔王たちのことで各国を回ることになった」
グラン国王様が言っていた同盟の話かな?
「いつもはオリヴィエがおるので問題はないが、今は旧友のためにいなくてな。流石にこの状況で留守には出来ず、城も今は慌ただしく動いている。そこで他に一番安全なところと考えたら、こことなったわけだ」
「ここが一番安全なんですか?」
「少なくとも私なら絶対にここだけには手を出しはしないね。この巨大な金属の船と神をも滅ぼす兵器を向けられたくはないだろう」
それはそうだけど、今は簡単に使えない状況なんだけど…でも、ここは引き受けたほうが良さそうだな。なんか襲撃されそうな流れだけど、ここに侵入すると言うなら容赦はしない。一応みんなに話しておこう。
「わかりました。それじゃあ、暫くリーゼを預かりますね」
「ありがとう。代わりと言っては君たちの食費を含めて、私が負担しよう」
マジで!?それは凄い助かるけど、一応言っておこう。
「いいんですか? うちの子たちの食費はかなりしますけど」
「はは! 君たちの食べっぷりならもう見ているから分かっているとも。安心してくれ。これでも王族の関係者だ。お金ならたくさんあるから問題はない」
イベントで一緒に食事をしていたから想定内だったか。変な質問をして損した。ということで暫くの間、リーゼを預かることが決まった。
俺はルインさんとサバ缶さんに報告して、リリーたちにも話して、一応警戒してもらうことにした。
その後、俺は聖域の島に行き、生産をしてから獣魔ギルドに向くとゲイルの宝珠クエストに挑む。もう一度、確認するとこちら。
ギルドクエスト『星獅子の試練』:難易度S
報酬:星獅子の宝珠
星となった獅子の試練をクリアせよ。
この試練の内容から俺は既に嫌な予感を感じている。だって、星になった獅子はそのまんまネメアの獅子のことだ。それの試練なんてチェスのようなパターンかコノハのように直接試練を告げられる二通りのパターンがある。俺は最悪を想像して、装備を確認すると気合を入れるとクエストを受けた。
転移した先は巨木がたくさんある森の中。隣にはゲイルがいる。俺たちが警戒していると巨大な足音がした。俺たちが視線を向けると森の奥から巨木を破壊しながら、黄金の獅子が歩いてきた。殺気はないな。黄金の獅子が口を開く。
『我は獅子の神レオン。天空に上げられし、ネメアの獅子だ』
レオンはギリシャ語で獅子宮のことだ。ラテン語のレオのほうが有名だと思うがギリシャ神話系だからわざわざギリシャ語を選んだのかな?そして俺の最悪の予想に一歩近づいた。
『汝ら、我が試練を受けるか?』
「はい」
「ガウ!」
『良い返事だ。我が試練は単純明快。我がネメアの時代に負かした人間と戦い、勝てば試練をクリアとする。汝ら二人のどちらかが戦闘不能で試練は失格だ』
はい。最悪の予想的中です!俺たちから離れた所に星が集まり、人の形を成していく。現れたのは上半身裸の大男。ボディビルダーのような筋肉に手には大きな棍棒を持っている。識別しなくても正体は分かるが一応する。
ヘラクレス?
? ? ?
ギリシャ神話の大英雄様です。普通なら無理だと決め付けるがヘラクレスの武器が棍棒しかないようだ。これは恐らくヘラクレスがネメアの獅子と戦った時を再現しているからだろうか?それなら幾分難易度は下がっている気がする。
『準備は良いか?』
「ちょっと待ってください」
俺はゲイルにヘラクレスの注意事項を教える。ゲイルの電磁操作は基本的に通じないこと、防御を過信しないことを話した。恐らくこのヘラクレスは物理特化。近接戦はなるべく挑みたくはない。
「すみません。もう大丈夫です」
俺は神息と迅雷を構える。相手があれだけの筋肉の持ち主ならこちらは速さで勝負だ。
『では、試練を始める!』
レオンの姿が消えるとヘラクレスが突如俺の目の前に現れて、棍棒を振りかぶってくる。俺はそれを慧眼で回避するが空振で吹っ飛ばされ、巨木にぶつかった。
「かは…この筋肉で縮地を使えるのか…っ!?」
「おぉおお!」
ヘラクレスがまるでミサイルのような跳躍を見せて、俺に飛びかかって来た。俺は転瞬で攻撃を完全回避すると巨木がヘラクレスの棍棒の一撃で折れた。
「デタラメだな…」
「ガウ~」
「ん? あぁ…痛かったけど、平気だよ」
心配そうにやってきたゲイルを撫でる。さて、どうするかな。とにかく遠距離攻撃で攻めてみないことには始まらないか。
「やるぞ。ゲイル」
「ガウ!」
俺たちは二手に別れて、ヘラクレスに攻撃を仕掛ける。
「飛梅!」
俺が飛梅の斬撃を放つと太刀音のような音が聞こえて、攻撃が弾かれる。防御系のスキルを使った仕草はなかった。つまりさっきの音は斬撃がヘラクレスの筋肉に当たった音ということになる。これはない。
「ガァアア!」
ゲイルがサンダーヴォルテックスを使うと命中するが身体から白い煙が出るだけで終わった。俺とゲイルの攻撃でダメージが少しでもあったことは救いと思うべきかな?するとヘラクレスは今度はゲイルに襲いかかる。
ゲイルは俺の指示通り、近接戦は避けて、雷魔法で攻める。ダメージが与えられるならこのまま押し切れるか?そう思って俺たちはお互いにヘラクレスを引きつけ役と攻撃役を代わりながら攻撃をしているとだんだん攻撃が効き辛くなり、ヘラクレスの気が増大していくとヘラクレス自身も大きくなって行く。
肉体活性や戦闘高揚は予想していたけど、攻撃を受けることでその攻撃の耐性を得ていくスキルは完全に予想外だ。更に攻撃の速度も上がっていっている気がする。これがギリシャ神話が誇る大英雄の力か。
俺はファミーユで魔法攻撃を続けるとヘラクレスの攻略法を見つけた。最悪な方法だろうけど、恐らくこれが正解だ。しかしここまで強くなってしまったヘラクレスに勝つ手段がもうない。それなら最後に賭けをしてみたい。
「神息! 宝刀解放! 永劫回帰!」
俺が神息でヘラクレスに斬りかかると無情な太刀音が響いた。斬れてない。
「筋肉、嘘つかない~!」
巨大化したヘラクレスのカウンターパンチがリバーに決まり、俺はぶっ飛ばれると巨木を次々突き破り、最後は巨木にめり込んで死んだ。
ギルドに戻った俺は外に出ていく。
「おえ~」
身体から色々な物が飛び出たような感覚を味わった。落ち着くまでしばし時間が掛かり、再挑戦する。次はもう負けない。
俺はヘラクレスからすぐに逃げ出すとゲイルがマグネットサークルで動きを封じる。そして木魔法のポイズンでヘラクレスを毒の状態異常にする。これが俺が見つけたヘラクレスの攻略法。状態異常にヘラクレスは滅法弱いことが最初の戦いで確認出来た。
状態異常でのダメージなら肉体活性が発動することはない。あれの発動条件は攻撃によるダメージだから毒などのダメージは対象から外れている。これでヘラクレスが強くなることはない。
そしてヘラクレスの耐性能力は攻撃魔法限定であることが今、はっきりした。それもその筈、ヘラクレスの最後はヒュドラの毒に苦しみ、最後は自ら望んで焼かれて死んでいる。正確にはヒュドラの毒の成分がある血を浸した服を着たことが原因だ。伝説から見てもヘラクレスは状態異常に弱いことがわかるのだ。
後はルーンウェポンで棍棒を封じて、拘束をかけ続ければ俺たちの勝ちだ。
「う、うおぉおおおおお!」
「く…」
生命力を残り僅かなところまで追い込むとヘラクレスは狂戦士化を使い、大声で魔法の拘束を破り、ルーンアクション、ルーンウェポンの封印が解除された。やっぱりギリシャ神話の大英雄は簡単には勝たせてくれないか。
俺は迅雷と神息を構える。リベンジさせて貰うぞ。ヘラクレスが跳んでくる。
「神息! 宝刀解放! 永劫回帰!」
俺はヘラクレスより先に攻撃を当てる。太刀音がしたが今度は強化が発生していない状態での攻撃だからヘラクレスを空に打ち上げるとヘラクレスを吸い寄せると更に斬る。しかしここでヘラクレスが固くなっているのを感じる。
「ガァアア!」
ゲイルが雷化を使いヘラクレスの上を取ると閃電でヘラクレスの胸を角で貫こうとすると軽く刺さった。ここでヘラクレスがゲイルに攻撃をしようとしたがゲイルは避雷針で角を撃ちだし、攻撃を回避した。それでも空振でゲイルは吹っ飛ばされた。
「雷竜解放!」
雷竜が現れる。これで終わりだ!
雷竜と共に俺がヘラクレスの背後から斬り裂くと雷竜はヘラクレスを飲み込み、避雷針を通じて感電する。
地面に落下したヘラクレスは光となり、棍棒だけ残して消えた。代わりにレオンが現れた。
『見事な戦闘であった。これが褒美だ。受け取るがいい』
俺は宝珠を受け取る。
『これで試練は終わりだ。新たな獅子と英雄の活躍を星空から楽しみに見させて貰う』
そう言うとレオンは姿を消し、俺たちは獣魔ギルドに戻る。屋敷に戻ってから報酬を確認する。
星獅子の宝珠:レア度10 重要アイテム 品質S
星獅子の力が封じ込められている宝珠。ネメアが進化するために必要なアイテム。
ヘラクレスの棍棒:レア度10 棍棒 品質S
重さ:400 耐久値:3000 攻撃力:2000
効果:万物破壊、英気、怪力、空振、覇撃、怯み、大物特攻(究)
ヘラクレスが使っていた棍棒。扱うためにはかなりの筋力が要求されるがこの棍棒の一撃は敵を怯ませる効果がある。固く大きな敵に有効な武器。
棍棒か…月輝夜が使えるかな?金砕棒を使っていたからいけるはずだ。ただ重さがギリギリだから他の装備は無理だな。鎖が結構強いからどうするべきか考えどころだ。
それじゃあ、早速進化させよう。進化先は一つ。
レグルス・ネメア
レグルスはしし座で最も明るい恒星の名前で王を意味している。説明を見てみよう。
レグルス・ネメア…神に認められ、天空に上がった獅子の王。黄金の身体を持ち、非常に強力な雷の能力に加えて太陽の能力を得ている。王家の紋章にも使われることがある偉大な獅子とされている。
獅子は確かに王の象徴として使われているね。何せ百獣の王とも呼ばれているぐらいだからね。さて、その獅子がどれだけ強いか確認するとしよう。
星獅子の宝珠をゲイルの前において、進化を実行する。
『ゲイルがレグルス・ネメアに進化しました』
『天耳通、堅牢、星読み、空間歪曲、強激突、紅炎、星鎧、星気、雷光刃、多乱刃、多連撃、魔力切断、魔法耐性、時空魔法、星座魔法、万雷、黒雷、雷雨、星雨、星虹、高速再生、守護結界、炎ブレス、雷ブレス、星ブレス、陽炎、烈日、荷電光線、全反射、神格覚醒、王の加護、黄金の加護、太陽の加護を取得しました』
『星座魔法【ブレイブレオ】を取得しました』
名前 ゲイル ネメアLv32→レグルス・ネメアLv1
生命力 84→124
魔力 190→240
筋力 155→205
防御力 134→184
俊敏性 278→328
器用値 80→120
スキル
噛み砕くLv33 疾駆Lv36 角撃Lv38→回転角Lv38 天耳通Lv1 堅牢Lv1
星読みLv1 空間歪曲Lv1 雷磁装甲Lv26 黄金装甲Lv32 強激突Lv1
紅炎Lv1 星鎧Lv1 物理破壊Lv32→万物破壊Lv32 雷爪Lv40→荷電爪Lv40 威圧Lv16→重圧Lv16
暗視Lv35→天眼通Lv35 挑発Lv36→煽動Lv36 星気Lv1 雷光刃Lv1 多乱刃Lv1
多連撃Lv1 魔力切断Lv1 魔法耐性Lv1 雷魔法Lv40 地魔法Lv6
時空魔法Lv35 星座魔法Lv1 電磁操作Lv26 地脈操作Lv11 充電Lv25
放電Lv35→雷放電Lv35 万雷Lv1 黒雷Lv1 閃電Lv34→雷光Lv34 雷の牙Lv28→荷電牙Lv28
避雷針Lv14→避雷刃Lv14 雷雨Lv1 星雨Lv1 星虹Lv1 高速再生Lv1
守護結界Lv1 炎ブレスLv1 雷ブレスLv1 星ブレスLv1 陽炎Lv1
烈日Lv1 荷電光線Lv1 全反射Lv1 狂戦士化Lv6 雷化Lv18
神格覚醒Lv1 王の加護Lv1 黄金の加護Lv21 太陽の加護Lv1
進化したゲイルは身体がウェルシュゴールドに変化した。そしてゲイルの鬣から左右に三枚ずつの黄金の刃があった。もしかしたらグレイのように乗れるかも知れないと思っていたが、それは叶わなかったが強そうだ。
特にやばそうなのが荷電爪と荷電牙。使ってもらうと粒子ビームの爪と牙が発生した。更に荷電光線は雷属性の光線。荷電粒子砲の弱いスキルなのかな?
左右の黄金の刃は外れて電磁操作で自在に空を飛び回ることが出来る事を確認した。ただフライヤーのようにビームを撃つのではなく、相手に突き刺し、雷を落とすことで相手の内側から感電させることが出来るようだ。
ここでログアウトして、テスト勉強をするとしよう。




