#841 サルガタナスの都、南城門の戦い
ここはサルガタナスの都の南側。ここに攻め込んでいるのはマグラスさんと帝さん、シリウスさんなどのライヒ連合だ。この部隊は他とは時間を遅らせて、突撃を開始した。
エステル騎士団とブリューナク、アスカロンがあるがこの部隊にはネクロオーガなどの大型の厄介な敵が多いため、他のところに戦力を移動させたタイミングで襲いかかるのがベストだと判断した。
「作戦通り行くぞ!」
「ライヒの重装歩兵が一番強いことをここで証明する! 絶対に引くな!」
「「「「おぉ!」」」」
ライヒ連合の陣形は魚鱗と呼ばれる三角型の陣形を組んでいる。この陣形は突撃に特化しており、後方からの攻撃に弱い陣形だが、重装歩兵が多いライヒ連合で作戦目的が城門にいるボスということもあり、この陣形を選んだ。
陣形の編成を説明すると側面をマグラスさんたちと帝さんたちの重装歩兵が固めて、内にはシリウスさんたちがいる。そしてマグラスさんたちは一斉に槍を構えて突撃する。
雑魚を蹴散らし、ネクロオーガなどの攻撃をガードした者はすぐさま下がり、後ろの人と入れ替わる。このコンビネーションこそ、ライヒプレイヤーの特徴と言える。何せローランと司馬懿に教えられて、ワントワークとの戦争で経験を積んできたのだ。これぐらいは出来て当然だと言えた。
この結果、城門にたどり着いた時間はどの城門より速かったがここには巨大な鬼が十体もいた。
獄卒鬼?
? ? ?
獄卒鬼は金棒装備だ。名前から恐らく日本の地獄に住んでいる鬼の事だと思う。
盾にとって、金棒はかなり不利な武器だ。その金棒が帝さんたちを襲おうとしたが当然無策ではない。金棒の攻撃は金色の尻尾によって、止められていた。
「やれやれ。桜花の地獄の鬼がこんなところで生きている奴に何をしているんだ? これがルール違反ってことはわかっているよな?」
九尾の登場に獄卒鬼たちは驚く。日本の地獄の鬼は地獄に落ちた亡者を苦しめる鬼として知られている。生きている者に手を出すことは完全にルール違反ということになる。
「閻魔のおっさんからの伝言だ。お前ら、クビだとよ。良かったな。これで今日俺様に殺されたら、晴れて別の獄卒鬼に責められる側になることが決まったぜ。それが嫌なら俺を殺してみるんだな」
「「「「グォオオオオ!」」」」
獄卒鬼たちは九尾に襲いかかる。すると九尾の尻尾に体を貫かれる。更に九尾は水薙刀で一匹の獄卒鬼の首を跳ね飛ばす。
「おぉ!? はは! なんじゃこりゃ! すげー妖気じゃねーか! いい妖刀持ってやがるな。お前、血が吸いてーんだな? いいぜ! 思う存分、食わせてやるよ! 行くぜ! 妖刀解放!」
まさかの共演がここに再現される。
九尾が暴れている間に帝さんたちはボスを視認する。
ファライ?
? ? ?
ファライはミノタウロスの悪魔バージョンと言った感じの悪魔だ。武器は宝石がたくさん付いている戦斧を持ち、宝石が付いている指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス、チャンピオンベルトを装備していた。なんとも派手な悪魔だ。
「モ~! 我こそはファライ! サルガタナス様より宝石チャンピオンと呼ばれし悪魔! この城門は決して通さないモ~!」
「貫け! ブリューナク!」
「全軍、陣形を変更!」
帝さんがブリューナクを投げる。容赦がないのには理由がある。速攻で来た分、敵が倒されていないから早めにボスを倒さなければ敵に袋叩きにされてしまう。
しかしブリューナクの一投で仕留められるとも思ってはない。そこでマグラスさんはファライと帝さんたちを覆う陣形を組む。内と外を二人の重装歩兵で固める特殊な陣形だ。
この結果、ファライと帝さんたちの対戦という形となったが、ブリューナクがあっさりファライに刺さるとファライは倒れる。
「「「「弱っ!?」」」」
「そんなはずがないでしょう…カルバリン砲、準備よし」
シリウスさんたちがてきぱき攻撃準備していく。戦争ばかりしていたことで今回の敵のレベルに中々ついていくことが出来なかったシリウスさんたちだったが、今回のイベントですっかり順応してしまった。
そしてシリウスさんたちの予想は的中し、ファライの指輪の宝石が砕けるとファライが復活した。これを見た全員がファライの能力の検討がついた。
「まさか宝石の数だけ、こいつは復活するのか?」
「モ~! その通りだ! 侵略者どモ!?」
シリウスさんのカルバリン砲が顔面に命中し、倒れる。シリウスさんたちはすっかり俺たちの影響を受けてしまったな。しかしファライは宝石が一つ砕けて蘇生する。
「モー! 容赦無さ過ぎるぞ! お前モ!?」
再びカルバリン砲が命中すると次はなんと無傷だった。
「モー! ただ復活するだけと思ったか! 我は死んだ攻撃に対して耐性を得るスキルを持っている! 更に!」
ファライから危険なオーラが湧き上がり、戦斧を構える。
「覇撃!」
「「「「ファランクスガード!」」」」
「モー! 中々やるな!」
ファライはどうやら宝石を壊した数だけ強くなる悪魔のようだ。しかも次々武器の耐性を得られるのはかなりきつい。
「初手でブリューナクを使ったのは失敗か…」
ブリューナクを使うなら強くなってからのほうが明らかに正解だっただろう。敵の能力を早めに知りたいこともあり、ブリューナクを使ったことが裏目に出た形だ。
「今はとにかく我々で削ります!」
「頼む!」
次々、ファライに槍が突き刺さり、矢や銃が使われるが宝石の数が圧倒的過ぎた。
「だー! あのベルトの宝石も対象なのかよ!」
「今度はパンツもか!?」
「ふざけるな! この変態野郎!」
「モー! 人間の罵詈雑言! 言いたければいくらでも言うがいい! お前たちの最後は我に傷一つ付けられず、殺されると知れ!」
アスカロンの聖剣解放が決まったところで手詰まりとなる。
「モー! もう終わりか? まだこんなに宝石があるモ?」
「「「「うっぜー!」」」」
「「「「このドМ野郎が!」」」」
全員がそういうがみんなには笑顔が浮かぶほどの余裕が感じられた。
「モ? どうしたモ? 気でも狂ったのかモ?」
後ろで待機していた帝さんがファライと相対する。
「モー! その槍は我にはもう効かないモ!」
「知っている。だから彼には申し訳ないが俺が最初に使わせてもらうことにした」
「モ?」
「お前にもこの城門を守る役目があるように俺も彼からここの攻略を託された。悪いがお前はここまでだ。その代わりに俺の攻略の時間をくれてやる! ブリューナク、神威解放!」
ブリューナクから太陽の光が発生し、周囲を真っ白に染める。光が収まると帝さんの隣には金髪の青年が立っていた。
『我が名は光の神ルー。その槍を使っていた者だ。戦士の強い決意の声に導かれ、ここに降臨させて貰った。君の願いに応え、ブリューナクの真の力を解放しよう。使い給え。これこそ魔神バロールを仕留めた神槍だ!』
ブリューナクが変形し、槍の先端から白い刃が発生する。
ブリューナク(神威解放):レア度10 槍 品質S+
重さ:150 耐久値:5000 攻撃力:2000
効果:神気、即死、万物貫通、必中、帰還、無限のルーン、光神の加護、スキル無効、烈日、日光、神波動、光熱刃、太陽風、後光、光合成、神域、魔神殺し、神槍技【ルー・シャナス】
ブリューナクの真の姿。魔神バロールを貫き倒した姿で、槍の武器の中でも特に魔神に強い槍。投げるだけで相手には回避、防御が不可能な即死の槍となるが遠距離攻撃も出来、発生している光熱刃を大きくすれば敵部隊を一気に薙ぎ払うことも可能となった。
ルーはここで姿を消すがファライの顔には絶望が浮かんでいる。スキル無効ということは回避スキルも防御スキルももちろん無敵の耐性スキルも全て無効化することを意味している。
「流石は必勝不敗の槍といわれているブリューナクだな。さて、覚悟はいいな?」
「ま!?」
当然待つはずもなく、帝さんが投げるとブリューナクが光速で動き回り、日光が次々ファライを貫く。帝さんの魔力が心配だが、神域を展開することで夜なのに日の光がある領域が展開され、ファライや取り巻きの雑魚たちに大ダメージを与えつつ、光合成の効果で帝さんの魔力が回復する。
日光に貫かれる度にファライは即死し、次々宝石が砕けていく。一応宝石が壊れることで強くなっているはずだが、そんなものは今のブリューナクにはなんの意味もない。
そして装飾を失い、パンツのみとなったファライに帝さんが構える。
「終わりだ。最後は必殺技で決めてやる。ルー・シャナス!」
ファライの胸を光輝く槍が貫くとファライの体中から光が放たれ、爆散する。更にそのまま飛んでいったブリューナクは地面に刺さるとそこから眩い閃光を放つと周囲の敵を消し飛ばした。そこでインフォが来る。
『ファライを討伐しました。南の城門の結界が解除されました。これにより全ての結界が解除され、サルガタナスの都に入る事が可能となりました』
インフォを確認した帝さんはブリューナクを手元に戻すとブリューナクが元の姿となり、帝さんは倒れこむ。それを仲間たちが支えた。
「お疲れさん」
「格好良かったぜ! 帝さん!」
「はは。それは嬉しいがこれはタクト君の戦果だ。我々もこのイベントが終わったら、クラスチェンジに伝説の武器集めをしないとな」
「今回のイベントで実感しましたからね。優先されるのはフィールドや特殊クエストの伝説の武器でしょうね。一個限定なものがあるみたいですから」
全員がお疲れ様モードだが、雑魚はまだいる。
「疲れているところ申し訳ないがまだポイントが残っているぞ」
「タクトさんが暴れだす前に仕留めますか」
「「「「賛成!」」」」
マグラスさんたちが粘っていると西側と東側にいた味方が敵の背後から強襲し、これでチェックメイトだ。残すはネビロスとサルガタナス、グラシャ・ラボラスとなった。




