#831 谷の砦防衛戦
俺たちが転移するといきなり謎の鎧を来ている暗い朱色のドラゴンが口を開けて飛び込んで来た。
ヘル・フレアドラゴン?
? ? ?
ヘル・フレアドラゴンをブランがパッラースの盾で止める。
「主を食べようとはいい度胸です。は!」
ブランが気合を入れて押すとヘル・フレアドラゴンがぶっ飛んでいった。そしてブランは地面に槍を突き刺すと手に眩く輝く槍を作り出す。
「天槍!」
天槍を投げるとヘル・フレアドラゴンに刺さり、ヘル・フレアドラゴンに白い稲妻が発生し、消え去る。すると乗っていたマールス・ドラグーンが斬りかかって来た。
「神水! 海流操作!」
リアンが槍を振るうと光る水が発生し、海流操作で大量の神水がマールス・ドラグーンを呑み込むとマールス・ドラグーンが煙を上げて苦しむ。それでも死なないところは流石と言うべきか。しかしリアンは容赦しなかった。
「水圧操作!」
マールス・ドラグーンは水圧に潰されて、死んだ。これを見ていたリリーとイオンが顔を見合わせる。
「「負けられない!」」
二人は飛び出していった。やれやれだ。俺はグレイ、コノハ、虎徹、チェス、ロコモコ、エアリー、ぷよ助、狐子、伊雪、ヒクス、ストラ、スピカ、サフィ、クリュス、蒼穹、コーラル、ジーク、千影、リオーネ、ルミを召喚する。ゲイルたちを召喚しなかったのはレベルが進化に到達するかも知れないからだ。
どうせ最終戦でレベルが上がると思うから、進化する可能性がある者と進化に到達しない者を今回の戦いでは選ぶべきと判断した。恋火たちは選ばないと拗ねるから選んだ。
「俺は話を聞いてくるから暴れて来ていいぞ」
「いえ、私は主のそばにいます。ユウェル、行ってきていいですよ」
「本当か! なら行ってくる!」
ユウェルに続いたのは恋火、イクス、リビナ、リアン、セフォネ、ファリーダ、アリナ、グレイ、虎徹、チェス、狐子、伊雪、ヒクス、ストラ、スピカ、サフィ、クリュス、蒼穹、コーラル、ジーク、千影だ。俺はセチア、ノワ、和狐、ブラン、コノハ、ロコモコ、エアリー、ぷよ助、リオーネ、ルミを連れて、谷の砦の作戦司令室に向かっていると空から襲撃を受ける。
「星矢!」
セチアが手に星の矢を作るとウルイチイボウで連射する。次々落下するがヘル・フレアドラゴンが炎ブレスを放ってくる。
「…黒霧、冥府鎖」
ノワがヘル・フレアドラゴンの炎ブレスをガードするとノワの影から漆黒の鎖がヘル・フレアドラゴンとマールス・ドラグーンに襲いかかる。
これにやばさを感じたのかヘル・フレアドラゴンとマールスドラグーンが逃げ出すが冥府鎖は追尾し、拘束する。するとヘル・フレアドラゴンとマールス・ドラグーンが消え去った。
ノワに説明を聞いてみた。
「…冥府鎖は死者を拘束する鎖。これに縛られると現実にいる死者は強制的に死者の世界に行くことになる。更にこれで死者の世界に行った奴は蘇生出来ない」
ノワはアンデットに滅法強くなったみたいだ。アンデットの蘇生や復活スキルを無効化する即死の鎖。しかも追尾する。これは限定能力だがかなり強力だな。更に三匹のヘル・フレアドラゴンが向かってきた。これもノワが対処する。
「…影創造」
ノワが影から巨大な影の大鎌を取り出した。影を使って、好きな武器を作れるのか…凄いな。
「…瘴気! ん!」
ノワが振り下ろすが巨大な影の鎌では空飛ぶドラゴンは簡単に避けてしまうが鎌から発生した黒い気に触れたドラゴンたちが苦しんで墜落する。ノワが説明をする。
「…この瘴気に触れると致死毒と拘束になる」
動きまで封じるのか…これも酷いな。そんな苦しんでいる奴をリオーネとルミが止めを刺していた。
「それにしても敵が多いな」
「先に黄龍様を呼んでみたら、どうですか? タクト様」
「そうするか」
俺は黄龍の杖を取り出す。
「封印石召喚!」
黄龍が降臨する。
「黄龍! ここを敵から守ってくれ」
『任せよ! 黄金障壁!』
砦全体に黄金の障壁が貼られて、敵がぶつかったり、攻撃するがびくともしない。これで安心して話を聞ける。司令室で話を聞く。
「敵軍を率いているのはパロミデス、カラドック! 編成は地上部隊はマールス・パラディンに騎乗している馬がゲヘナホース。これにヘル・アイアンライダーのみですが凄い数で、現在防衛部隊が戦闘中です」
円卓の騎士が二人も来たのか。編成は正しく騎士の部隊だな。
「後、リサさんがカラドックと一騎打ちをしていますね」
リサはずっとカラドックと戦いたがっていたからな。みんなも譲ってくれたんだろう。メルが頭を下げている様子が想像出来る。
「次に飛行部隊ですが、既に確認されていると思いますが新しい敵にヘル・フレアドラゴン。まだ未確認ですが、このドラゴンに騎乗しているのは全てマールス・ドラグーンと思われます」
なんか円卓の騎士としてのこだわりを感じるな。流石にドラゴンに騎乗して戦闘した記述はないけど、ドラゴンとは縁があるからな。それにしても全てがマールス・ドラグーンなら砦に攻め込まれているのも納得する。進化したリリーたちでも苦戦するからな。
そう思って空を見ると巨大な竜巻に巻き込まれている哀れなヘル・フレアドラゴンたちがいた。リアンとイオンの天候操作みたいだな。更にリアンが槍を天に掲げる。
「雷轟!」
竜巻に巻き込まれている敵全てに強烈な雷が降り注いだ。というか雷を受けた敵が木っ端微塵になっている。容赦ない。しかし味方のそんな様子に関係なくリアンに襲いかかってくるドラゴン部隊は楽な敵じゃないな。
俺がどうするか考えていると黄龍から提案される。
『我が召喚師よ。少しそなたの四神の力を借りて良いか?』
「え? 何かするつもりなのか?」
『悪龍の奴に「お前は守ることしか出来んのか?」と言われたものでな…実力を見せてやりたいのだ』
アジ・ダハーカが煽ったようだ。これは流石にカチンと来るだろうな。
「別にいいけど、力を貸すとどうなるんだ?」
『四神たちはこの戦いには参加出来なくなるだろう。その代わりにこの戦いの勝敗を決定づける事を約束しよう』
凄い自信だ。
「わかった。やってくれ」
『感謝する。それと黄金障壁を貼ることが出来なくなり、発動まで少し時間がかかる。悪いが時間稼ぎと守りを頼む』
まぁ、大技ならそう言う事になるよな。俺はみんなに黄龍の護衛を頼むと黄龍が言う。
『四神たちよ! 我に力を!』
蒼穹、コーラルが召喚石に戻り、白夜、夕凪の召喚石と共に黄龍の体に吸収される。俺が四人の事を心配していると危険を察知したのか。敵が黄龍を狙い出す。
「攻撃させるな!」
「俺たちに攻撃を向けさせろ!」
「俺たちが飛び込む! 満月、帝。防衛ラインを任せるぞ! 全員、構えろ!」
マグラスさんたちの部隊が一斉に盾を構える。
「突撃!」
「「「「スチールアサルトダイブ!」」」」
マグラスさんたちの部隊が一斉にオーラを纏うと敵部隊に向けて突進した。これで地上の敵部隊が崩れる。これにメルたちがすぐさま反応した。
「敵部隊が崩れた! みんな、突撃!」
「マグラスさんに続きます!」
地上戦は大乱戦だ。一方空では召喚師たちとリリーたちが大苦戦していた。マールス・ドラグーンだけでも脅威な上に乗っているヘル・フレアドラゴンの鎧が苦戦の一つの理由だ。
リアンたちみたいに大技で決めたいところだが、戦闘中に平気で横槍をして来るため、戦いにくそうにしている。それにマールス・ドラグーンによって、ストラやディアンの首が斬られている。ジークは堂々と接近戦でぶつかり合っている。
魔法での解決は望み薄だし、どうしたもんか。
「気流操作なの!」
アリナが気流を操ることでヘル・フレアドラゴンの飛行を邪魔していた。さっきの天候操作も身動きを自由にさせていなかったな。これは行けるか?アリナに聞いてみる。
『アリナ、竜化したら、どのくらい気流を操れる?』
『え? 竜化したら、この辺りの気流ぐらいなら操れると思うの。ただこのドラゴンたちにどのくらい効果があるのか分からないの。お兄様』
うむ。流石にまだヘル・フレアドラゴン相手に自信がないみたいだな。しかし今やドラゴニュートを召喚している人は複数いて、その中には当然風のドラゴニュートが複数いる。
『一人ならな。複数いたら、どうだ?』
『あ…』
アリナは自分と一緒に飛んでいる多くのドラゴニュートに気づく。
『い、行けると思うの! お兄様!』
『そっか。それなら今から作戦を伝えて』
『その必要はないの』
『へ?』
俺がわけわからないでいるとアリナが言う。
「風のドラゴニュートのみんな! 竜化して、敵の動きを気流操作で止めるのに協力して欲しいの!」
アリナの声に遠く離れた風のドラゴニュートたちがアリナに返事を返す。なるほど…音響探知にはこういう使い道があるのか。地獄耳も捨てたもんじゃないね。
『みんな、協力してくれるみたいなの! お兄様』
『よし! 発案者は俺たちだ。俺たちが最初に竜化しよう。アリナ!』
『わかったの! 竜化!』
アリナから竜巻が発生するといたるところで竜巻が発生する。敵はそんなことお構いなしに黄龍を狙ってくる。この判断は正しいように思えるが、セチアとブランの遮断結界を突破出来ない。
更に敵の背後から容赦なくリリーたちが襲撃していた。ここでチェスがその力を見せつける。チェスの背中の星矢が自在に動き回ると敵を次々貫く。更に氷戦斧も投げつけるとこちらも自在に動き、背中から巨大な氷柱を放つとこれも動き回る。
ここにチェスはブレスに格闘戦も出来る。チェスは煽動の効果で地上の敵部隊を引き付ける。攻撃を魔氷装甲、星鎧でガードし、集まった敵にチェスパンチを放つ。これを敵はガードするが背後から攻撃が飛んで来る。
敵からしてみれば堪ったものじゃない。いつ襲いかかってくるかもわからない空を飛び回る攻撃に警戒しつつ、チェスに攻撃をしなければならないからな。集まった敵はチェスパンチで吹っ飛ばされた。
みんながしっかり時間を稼いだことで竜化したアリナが降臨した。
名前 アリナ ドラゴニュート・ストラトスフィアLv20→オゾンドラゴンLv20
生命力 180→260
魔力 285→375
筋力 136→216
防御力 105→175
俊敏性 385→585
器用値 182→262
スキル
高飛翔Lv11 投擲操作Lv10 気流操作Lv3 回転角Lv4 激突Lv7
超感覚Lv10 竜爪Lv2 竜尾Lv1 竜眼Lv8 音響探知Lv5
疾駆Lv8 加速Lv5→超加速Lv5 旋風Lv5→旋風刃Lv5 鎌鼬Lv5 連撃Lv8 充電Lv4
放電Lv6→雷放電Lv6 閃電Lv8 超低周波Lv6 爆音Lv1 防風壁Lv3→暴風壁Lv3
空気弾Lv5→空圧弾Lv5 風魔法Lv8 雷魔法Lv5 時空魔法Lv35 雷霆Lv1
衝撃波Lv3→空振Lv3 気圧操作Lv1 光吸収Lv1 残像Lv1 蜃気楼Lv1
集束Lv1 風波動Lv7 逆鱗Lv1 竜魔法Lv2 惑星魔法Lv1
ドラゴンブレスLv6 起死回生Lv1 空竜の加護Lv6
これが竜化したアリナか。俺もダーレーに乗って、戦闘に参加しようとすると第六感が発動する。ここで俺を狙ってくるか。俺は乗るのを諦めると空間跳躍で現れた騎士に攻撃されるが慧眼で躱す。
マールス・ロイヤルパラディン?
? ? ?
こんな奴がいたのか。躱した俺にマールス・ロイヤルパラディンは大剣を振りかぶる。これはカウンターを狙うとマールス・ロイヤルパラディンの背後からダーレーが強烈な蹴りをマールス・ロイヤルパラディンの尻に決めるとこっちに飛んできた。
やばい…カウンターを狙っていたからタイミングが完全にズレた。それでもやるしかない。俺のカウンターがラリアットとなって、マールス・ロイヤルパラディンに決まった。これを見ていたブランは感動する。
「さ、流石主とダーレーさんですね! この状況で新しい連携技を編み出すとは!」
「ま、まぁな」
完全に偶然なんだけど、こう言うしかない。すると第六感が次々反応する。
「来るぞ」
「「「はい!」」」
次々マールス・ロイヤルパラディンが現れては俺を狙ってくる。俺が攻撃を躱して、セチアたちが攻撃を加えているとロコモコ、リオーネ、ルミの攻撃には何故かマールス・ロイヤルパラディンは反応して、襲おうとしたが背後向いたら、尻を蹴ってやった。
「タクトお兄ちゃん!」
「助太刀するであります!」
恋火と虎徹、千影、神息を持った鉄心さんがマールス・ロイヤルパラディンに襲いかかった。
まず恋火が水薙刀を振るうとマールス・ロイヤルパラディンはこれを受け止めようとした瞬間、マールス・ロイヤルパラディンの大剣が粉々になる。これが武器破壊の効果か。更に圧縮された水の刀身がマールス・ロイヤルパラディンの胴体を真っ二つにする。そしてマールス・ロイヤルパラディンの魔素が水薙刀に吸収される。
「わわ!? ビリビリ来ます~!?」
恋火の綺麗な毛並みがボサボサになる。手入れが大変だぞ。俺が心配している一方で千影が天國を使う。
「お館様からいただいたこの刀、使わせて貰うであります! 神雷!」
上空から神雷が降り注ぎマールス・ロイヤルパラディンが消し飛ぶ。更に鉄心さんが続く。
「貸して貰ったこの刀、思う存分使わせてもらうよ。宝刀解放!」
鉄心さんが宝刀解放した神息を調べる。凍りついていて時間はたっぷりあるからね。そして勝負は一瞬で片付く。
「永劫回帰!」
凍りついたマールス・ロイヤルパラディンたちが一瞬で空をぶっ飛ぶ。この衝撃で氷結は解除されてしまったが、ぶっ飛んだマールス・ロイヤルパラディンたちが鉄心さんに吸い寄せられるとまた斬られて、空を飛ぶ。
それが死ぬまで続く。これは酷い技だぞ。正しく永劫回帰…無限ループ攻撃だな。というかこんな技を俺は使われたのか。俺は居合い斬りを止めるためにリビナの夢幻泡影を頼んだけど、それが大正解だったようだ。恐らくこの技は初撃を回避するしかない技なんだと思う。
倒されたマールス・ロイヤルパラディンたちはこのままだと蘇生してしまう。すると虎徹が宝刀解放を使い、数珠丸恒次の力を使い、数珠に拘束されたマールス・ロイヤルパラディンたちを消滅させる。まさかの共演だ。
一方城壁の上では誰にも気づかれないまま、これを邪魔しようとしている奴がいた。
「ジェラスカリ」
「させん!」
「く…ランスロット卿!?」
「騎士道に疎いのは、死んでも変わらないみたいだな? パロミデス卿」
俺たちを狙っていたのは黒人の騎士だった。
「まさか貴公がいるとはな…」
「アグラヴェイン卿やペリノア王から聞いてなかったのか?」
「…どうやらこちらの戦力は知っているようだな。お察しの通り、聞いていない。貴公なら分かるだろう?」
「そうだな…そして感謝するぞ。パロミデス卿。これでペリノア王がいることが確信できた」
ランスロットのまさかのカマかけにパロミデスは驚愕する。
「私を騙したのか!」
「騙したとは人聞きが悪い。話したのは貴公だ」
「く…」
モルドレットが現れると城壁の部隊を下がらせる。
「すっかりタクトの奴の影響を受けちまっているな。ランスロット」
「否定はしない。昔の私ならまずこんなことはしなかっただろうからな」
そこは否定して欲しい俺である。
「モルドレット卿までいたか…しかし、今の私を倒すのは至難の技だぞ。はぁああああ!」
パロミデスから邪悪のオーラが噴出し、円卓の騎士の鎧が漆黒に染まるとパロミデスは暗黒騎士となる。
「くはははは! 力が! 漲る! まずはランスロット卿! 私は貴公に一騎打ちを申し出る! まさか断ったりしないでしょうね?」
「…いいでしょう。モルドレット」
「あぁ…一騎打ちなら仕方ねーな。んじゃ、俺はカラドックのところに…って向こうも戦闘中かよ。はぁ…それじゃあ、邪魔が入らねーよにするか」
こうしてランスロットとパロミデスの戦いが勃発した。そしてカラドックは報告通りリサと格闘戦の真っ最中だ。
「気力解放! アームドクラッシャー!」
「気力解放! 破拳!」
二人の拳がぶつかり合い、周囲が衝撃波で吹き飛ぶ。
「ぬぅうう…いい拳だ!」
「ぐぎぎ~…そっちこそ。はぁ!」
リサは拳を弾くと蹴りを放つ。
「ふん! ぬぇい!」
リサの蹴りはガードされて、拳が放たれる。
「見切り! 頂肘! 発勁!」
リサはこれを見切りで躱し、八極拳の肘打ちをカラドックの腹に決めると発勁で吹っ飛ばす。
「ぐ…やるな!」
「やぁああ!」
「はぁああ!」
二人の拳のラッシュが激しくぶつかりあった。そんな中、空では竜化したアリナたちが空中戦の戦況を劇的に変化させる。
『『『『気流操作!』』』』
アリナたちの気流操作によって、ヘル・フレアドラゴンたちは空の自由を失った。これは空中戦では致命的な状況だ。
「チャンスだよ! みんな!」
「連携で確実に一体ずつ仕留めます!」
「行くぞ!」
「「「「おぉ!」」」」
ヘル・フレアドラゴンたちがチロルたちの突撃を受ける。自由に動けないからやられ放題だ。こうなるとヘル・フレアドラゴンたちはアリナたちを狙うが風を操るアリナたちにまず炎ブレスや火山弾は届かない。ドラゴンブレスを放つがアリナたちが速すぎる上に下に回られるとヘル・フレアドラゴンたちに攻撃手段がなかった。
これが空を司るドラゴンの力か。ドラゴンの中で空中戦最強と言われるわけだよ。するとヘル・フレアドラゴンに乗っているマールス・ドラグーンたちが大剣を振り回しだした。これにより多乱刃がアリナたちを襲う。
「やらせない! 全反射!」
リリーが全反射で多乱刃を弾くが次の乱刃にぶつかるだけだ。
「う…このままじゃ」
「リリー、全反射をやめてはダメです! 防げているんですよ!」
「そ、そっか! でも、イオンちゃん」
「私がなんとかします! 水鏡!」
イオンが薄い水面を出現させると水面に敵の姿が映る。多乱刃が水鏡に触れた瞬間、水鏡に映った敵が多乱刃を受ける。そしてイオンは水鏡の向きを変えることで別の敵を映し出し、多乱刃を食らわせる。
チロルたちは真上と真下から攻撃をすることで多乱刃を避けて攻撃を加えている。こうしてそれぞれが戦っていると黄龍の準備が整った。
『準備が整ったぞ』
「頼む」
『任せよ。四神の長たる黄龍がここに守護竜としての力を示す! 天の中心にして宇宙の始まり! ここに勝利の道を指し示そう! 太一封陣』
夜空の四方に四神の魔方陣が描かれると星が日周運動をしだす。その中で動かない星、即ち北極星から光が落ちてくると戦場の空で閃光を放つ。すると敵部隊殆どに影響が出る。
「これは…」
「敵部隊の動きが止まった? これは封印の状態異常か?」
太一封陣は敵全ての動きを止める封印の状態異常を与える技だった。
太一とは古代中国における宇宙の根元を表す哲学的概念のことであり、天の中心に位置する星座も指す言葉だ。中国から見える星座で中心となると北極星と考えたんだろうな。北極星は星座じゃないけどね。
北極星は不動の星だからそこから相手の動きを封じる技となったんだろう。黄龍の言うとおり、これで勝敗は決したな。
『すまんな。もう限界だ』
「十分だよ。ありがとう黄龍。新しい杖を楽しみにしていてくれ」
『あぁ。では、さらばだ』
黄龍が消えると白夜たちの召喚石も俺の手元に戻ってきた。死んでないか確認すると全員満腹度がなくなり、ぐったりしつつ、悲しい目で俺を見てくる。
「お疲れ様。帰ったら、美味しいご飯を作ってやるからな」
白夜たちは元気に返事をした。その頃、地上部隊はこの好機に攻勢に出る。
「一気に敵部隊を押しつぶすぞ!」
「必ずルナティック武器で止めをさせ!」
「全軍! 突撃せよ!」
「「「「おぉ!」」」」
地上部隊が一斉に動けない敵部隊に襲い掛かり、蹂躙していく。そして空の敵も動けなくなったことで墜落をするわけだが、アリナたちがそんなことを許してくれなかった。
『攻撃された恨みを晴らすの!』
まるでサッカーのリフティングのようにヘル・フレアドラゴンたちはアリナたちに激突を受けては空に打ち上げられる。これを見たリリーたちの反応は純粋なものだった。
「面白そう! リリーもやる!」
「では私も」
「…ん。ノワもやる」
純粋に面白いと思われるとはヘル・フレアドラゴンたちの今の気持ちを知りたい。きっと泣いていることだろう。
「む…惨い。けど、あたしたちもやろう!」
「やるんだ…」
「経験値は大切だからね!」
チロルに言いたいがそれなら早く倒してあげたらいいはずだ。打ち上げて遊ぶ必要はない。戦況が一方的な状態の中でパロミデス、カラドックは封印を受けていなかった。円卓の騎士は伊達ではないか。カラドックがリサに言う。
「どうやら勝敗は決したようだが、私の戦闘の乾きは未だに癒えていない! 我が渾身の聖拳! 受けてもらうぞ!」
「望むところだよ! 私も本気で放つから覚悟してね! おじさん!」
「お…おじさん!?」
戦う前にカラドックは心に深刻なダメージを受けた。
「気力爆発! 気力融合!」
リサが扱う闘気、練気、覇気、仙気が爆発的に増加し、その気の全てが混ざり合い、リサの拳に集まっていく。
「何!? くく…面白い! 我が聖なるガントレットよ! ここにその力を示せ! ギルダス・アガートラーム、聖籠手解放!」
輝く籠手をカラドックは構える。これに対してリサはまだ距離がある段階で必殺の一撃を放つ。
「正拳突き!」
リサが使ったのは空手などでよく使われる突き技の基本とされている技だ。当然これでは距離があるため、届かない。カラドックは疑問に思っているとそれが決定的な隙となってしまった。
「縮地!」
突き出した拳が縮地の加速により、カラドックの心臓に決まる。完全に俺のパクりだ。俺も格闘家の波動技の使用法をパクったりしているから人の事を言えない。
「が…!? な、何?」
「これで終わりだよ。発勁!」
融合された膨大な気が発勁により、カラドックに襲いかかった。至近距離から心臓に直接こんなものをぶつけられたカラドックは倒れると光りだす。
「かは! はぁ…はぁ…私の負けか」
「私のルナティックガントレットで倒したから蘇生はないよ」
「そのようだ。我が奥義を出せなかったのは無念だが、少女よ。私に勝った褒美だ。我が籠手ギルダス・アガートラーム。受け取るがいい」
「やった! ありがとう! おじさん! お姉ちゃんに自慢しにいこうっと」
「ふふ…最後までおじさんか…」
カラドックはそう言うと消滅した。これを見ていた周囲のプレイヤーたちは同情したのは言うまでもない。そして城門の上で戦っているランスロットとパロミデスも勝敗を決する時が来た。
「どうやら我々の勝ちのようですね」
「確かに俺たちの敗北だが、一騎打ちの決着はついていないぞ! ランスロット卿! クリムゾンサラセン! 魔剣解放!」
パロミデスが己の剣を構えると紫炎が燃え上がる。
「必殺技か。受けて立つ! アロンダイト、聖剣解放!」
これに対してランスロットもアロンダイトの力を解放するがアロンダイトからは黄金の聖水が湧き出す。
「我が嫉妬の炎よ! 敵を焼き尽くせ! 魔剣技! ジェラスカリバー!」
「湖の騎士ランスロットがここにその力を示そう! 聖剣技! スリン・オグウェン!」
「「おぉおおおおお!」」
紫炎と黄金の聖水の斬撃がぶつかり合うとランスロットが押していく。というより紫炎が黄金の聖水を受けて、消火されていく。
「く…そ…まだだ! まだ! 我が嫉妬はこんなもんではない! トリスタン卿への嫉妬は不滅だ!」
「もういいんです。パロミデス卿…私にも嫉妬の心がある。あなたの苦しみや憎しみの負の感情は幾分理解できるつもりだ」
「な…に?」
パロミデス卿にとって、この告白は予想外の物だった。
「私はアーサー王への嫉妬による心の闇を魔王たちに突かれて、アーサー王たちを裏切ってしまった。この罪を背負うのは私だけで十分! あなたはもう苦しまず、聖水に包まれて心安らかに眠るといい。はぁああああ!」
「ぐ…あぁあああああ!?」
黄金の聖水は更に勢いを増し、パロミデスを呑み込みとパロミデスは光と消えた。
スリン・オグウェンは諸説あるがアーサー王伝説でアーサー王の代理人であるベディヴィアがエクスカリバーを返した湖とされている。スリン・オグウェンの水を黄金の聖水と表現したのはここから来ているんだろう。
またランスロットを育てた湖の乙女とアーサー王にエクスカリバーを渡した湖の乙女を同一と考えるならランスロットにもスリン・オグウェンと関わりがある可能性が出てくる。まぁ、ここら辺はどうしても推理の域となる。
「こいつで最後だ! 勝鬨を上げろ! 防衛成功だ!」
「「「「おぉ!」」」」
最後の敵を満月さんが倒して、戦闘終了のインフォが来る。
『リビナのレベルが30に到達しました。特殊クエスト『夢魔魔王の試練』に挑むことが可能です』
『白夜のレベルが32に到達しました。進化が可能です』
白夜は最終戦、おやすみが決まった。そしてあのリリスとの試練か…嫌な予感がするが進化のためには挑むしかない。
今日はこれからヴィオレたちの助けを借りて、俺たちは敵の本拠地に侵入することになった。無事に到着し、透明テントの設置するとみんなにご飯を上げてログアウトした。




