#82 洞窟のボス戦
広い空間に出ると目の前には武装した俺より二倍近く背が高い亜人がいた。俺の識別スキルがその周りにいるやつらと一緒に正体を捉える。
コボルトLv7
共通モンスター 討伐対象 アクティブ
ハイオークLv?
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コボルトはゴブリンに似ている。違いがあるとしたら装備だ。コボルトは鎧を着ていて、メイスを持っている。これはゴブリンの亜種はコボルトで決まりかな。
目の前のボスっぽいハイオークだけレベルが見えてないところをみるとコボルトの進化先がオークで三回目の進化先かな?しかも装備が盾にサーベルだ。完全に鉄だ。しかも周りのコボルトもメイスは鉄に見える。マジかよ…
これは強敵だな。こいつらは闇雲に突っ込んでこない。こちらの様子を伺っているみたいだ。時間をくれるならありがたいがどう攻めるか…相手の数はこちらと同じ六体。虎徹、チェス、白夜ならコボルトに勝つことが出来るとは思う。だがリキュールとサビクはきついだろうな。
それに問題のハイオークの対処だ。見るからにパワータイプだが、盾があることからパワーに頼っては来ない気がする。虎徹たちに戦わせるには危険な敵かも知れない。ならば仕方ないか。俺は杖はしまい、リリーが使っていた石の剣を取り出し、ハイオークに構える。
それを見たハイオークが馬鹿にしたように笑う。どうやら装備を馬鹿にしているようだ。確かに石の剣と鉄のサーベルでは性能差は歴然だろうな。だけど、笑ってていいのか?
ハイオークの指示でコボルトたちが一斉に襲い掛かってくる。俺も指示を出す。
「リキュールとサビクは危ないから後ろに離れていてくれ」
リキュールが頷き、サビクを背中に乗せて後ろに下がる。そして虎徹たちにも簡潔に指示を出す。
「一匹ずつ倒せ。残りは俺がやる」
それだけで虎徹、チェス、白夜は頷く。コボルトたちがメイスを振りかぶりながら俺たちに飛び掛ってくる。あーあー、ジャンプしていいのか?逃げ場がないぜ。
虎徹と白夜が無防備なコボルトに飛び掛る。チェスは立ち上がり、氷のパンチをカウンターでコボルトにお見舞いする。壁にぶつかり動かなくなるコボルト、お見事。
そして俺は低姿勢となり、体を横に捻り、石の剣を自分の体に隠す。
そしてメイスが振るわれるのに合わせて、石の剣を抜き放つ。二体のコボルトの首が綺麗に切断された。そう、これは抜刀術。本来刀と鞘でやる技だが別に鞘がなくても使うことが出来る。もちろんあったほうがいいのは言うまでもないけどね。
さて、雑魚は片付いた。ハイオークが前に出て、サーベルと盾を構えた。さっきの戦闘を見て、余裕がなくなったみたいだ。面白い。
「あいつとは俺がやる。虎徹たちは見ててくれ」
虎徹たちが下がり、俺が前に出て剣を中段に構える。さて、このゲームの剣術どれほどのものか体験してみるとしよう!
俺とハイオークが同時に前に出る。そしてハイオークがスキルを発動させる。上段からのスラッシュだ。それに対して俺は地面を蹴り、ハイオークとの間合いを一瞬で詰め、横っ腹を切り裂く。そして体勢を整え、中段に構える。
それを見て取ったハイオークは盾を構え、こちらの様子を伺う。へー、リリーのようにがむしゃらにならないのか…だが俺はアーサーとリリーたちとの戦いを見ている。故にハイオークの狙いがわかる。そして今度は俺から仕掛ける。
俺が上段から切りかかる。それを見たハイオークは盾で俺の剣を弾こうとする。はい、予想通りだね。つまらないな。
俺の剣は軌道を変え、ハイオークの盾を滑るようにかわす。そして地面に当たる瞬間、剣を持ち替え、更に踏み込み、下段から盾を突き出して無防備になった腹を切り裂く。俺は冷静に中段に構える。
相手の実力の程度が知れた。悪いがお話にならないな。
だが、ウルフマンは叫び声で状態異常にしてきた。ハイオークにも何かあるかもしれない。警戒しながら確実にダメージを与えているとやはり変化があった。緑色だった体の色が赤に変化する。すると相手の攻撃の速度があがった。特殊攻撃じゃなくて、純粋に強化のようだ。
攻撃のパターンも増えたが叫び声のほうが厄介だったな。
その後、ハイオークは俺に一切のダメージを与えることが出来ないまま、ずたずたに斬り裂かれ続け、絶命した。
ま、緊張感はあったがそこまでだな。では解体の時間だ。こいつは何を落とすかな。オークは豚のイメージがあるがこいつは違うしな。ここで豚肉落とされてもこいつの肉のことを考えると食べる気失せるから出来れば外れて欲しいものだ。では、解体結果がこちら。
鉄のサーベル:レア度3 剣 品質E
重さ:20 耐久値:40 攻撃力:15
鉄で作られたサーベル。片刃の剣で普通の片手剣より軽く長いのが特徴。
曲刀で作ることで斬ることに特化している
火性石:レア度2 素材アイテム 品質E
火属性を宿した石。火山地帯や暑いところで取れる
おっと、これは魔石召喚案件だね。コボルトは何もなし。メイス落とさないのかよ。それにしてもこれからも剣を使う場面があるならスキルを取ったほうがいいなと思った。
ハイオーク戦でした。オークは豚のイメージがあったのですが、本来は人間に似た架空の生物らしいです。折角なのでこの小説では豚にはしませんでした。
次回は持ち越したリキュールとサビクの進化回です。お楽しみにです。