#827 恋火たちの試練内容と邪冥龍王の試練
俺が進化をさせようとすると恋火の気配が急に変化した。
「久方ぶりどすな? ちょいとこの子を貸してもらうえ?」
「空天狐様!?」
このタイミングで空天狐様が現れる理由は一つしかないな。
「お久しぶりです。空天狐様。用件は試練のことですか?」
「そうや。既に九尾から聞いとるかもしれへんけど、うちからの試練内容はうちがおるところへの到達や」
確かに試練は空天狐様がするとか言っていたし、空天狐様がいるところに送られてもいるがあそこの攻略が試練内容だとは初耳だな。
「その様子やとちゃんと伝えへんかったみたいやね」
「はい…その試練内容ですと恋火と和狐、二人と攻略しないといけない感じですか?」
「そうやね。ただし仲間の力を借りるのはええよ。それも立派なあんさんたちの力やからな」
それは有難いが仲間を使っても苦戦するから許可を出したんだろうな。それに絶対に恋火と和狐を試す何かがあるだろう。何せ二人の試練だからね。
「話はこれで終わりどす。あ、最後にあんさんたちの最後の戦いにうちと九尾もこの子たちを借りて参加させてもらうわ」
「え…それは心強いですがどうかしたんですか?」
「月詠や閻魔たちがうちのところに来てな。侵入してきた魔王にきっついお灸を据えるようにお願いして来たんどす。まぁ、うちもがしゃどくろとも縁があるし、今回引き受ける事にしたというわけや」
なるほど。そういう流れになりますか。まぁ、参加してくれるなら有難い。試練内容が空天狐様のところへの到達なら手の内を見せても問題ないだろうしな。
「わかりました。それでも戦う時はお力添え、どうかよろしくお願いいたします」
「任せとき。あんさんもあんじょうおきばりやす。ほなさいなら」
元の恋火に戻ると恋火が倒れる。
「うぅ…いきなり酷いです…空天狐様。刀…折角の新しい刀をもっと振れると思っていたのに~」
恋火の頭を撫でて慰めておいた。そして次のイクスだが、マザーシップに行くことが出来ず、断念。ということで進化させられるのはノワ、リアン、ブランとなった。先にアリナの成長をさせておく。
俺がアリナの成長を実行するとアリナが成長する。
『アリナが成長をしました。爆音、雷霆を取得しました』
『アリナが竜化の代償がなくなりました』
名前 アリナ ドラゴニュート・ストラトスフィアLv20
生命力 150→180
魔力 255→285
筋力 106→136
防御力 85→105
俊敏性 345→385
器用値 152→182
スキル
高飛翔Lv11 投擲操作Lv10 気流操作Lv3 回転角Lv4 激突Lv7
超感覚Lv10 竜眼Lv8 音響探知Lv5 疾駆Lv8 加速Lv5
旋風Lv5 鎌鼬Lv5 連撃Lv8 充電Lv4 放電Lv6
閃電Lv8 超低周波Lv6 爆音Lv1 防風壁Lv3 空気弾Lv5
風魔法Lv8 雷魔法Lv5 雷霆Lv1 衝撃波Lv3 集束Lv1
風波動Lv7 逆鱗Lv1 竜魔法Lv2 竜技Lv4 竜化Lv1
ドラゴンブレスLv6 起死回生Lv1 空竜の加護Lv6
「強くなったの! お兄様」
「なんか一気にここまで来たけど、戦闘はどうだ? アリナ」
「正直まだ自信がないの…」
「そっか」
俺はアリナの頭を撫でる。菅原道真に果敢に攻撃していたからだいぶ慣れてきたと思っていたけど、まだ数えるほどしか戦闘していないからな。
「焦らず、頑張ってくれ」
「うん…」
「「「「じー…」」」」
リリーたちからの視線攻撃だ。
「どうしたんだ?」
「なんかタクト、アリナに優しすぎる気がする」
「「「「うんうん」」」」
確かに甘いかも知れないけど、最初から戦闘が苦手な人に戦えと強要するのはきつい。それでも戦って貰わないと困るから、無理せず戦ってくれとしか言えないんだよね。
まぁ、これでアリナも進化前のリリーたちと同じ領域となったことだし、今までサポートばかりしていたけど、本格的な戦闘参加を頼んでみようかな。
気持ちを切り替えて次はノワの試練だ。
「準備はいいか? ノワ」
「…ん」
俺は試練を実行するとノワから黒い光が発生し、転移する。
俺たちは漆黒の世界に転移すると早速邪冥龍王様が現れる。
『よくぞここまで強くなった。さて、わしの試練だが、どうしてもお主たちと戦いたい者がおってな。そいつと戦い、見事に勝利出来れば試練クリアとする』
俺たちと戦いたい奴?凄く嫌な予感がする。だって、俺たちが知り合った邪竜は多くない。その中でもカオスドラゴンは俺たちを待っている。流石にクロウ・クルワッハは来ないだろう。他のドラゴンもいるけど、一匹を除いてわざわざ戦ってくるとは思えない。そして俺の予想は見事に当たる。
漆黒の闇から黄金のドラゴンが現れる。
『久しいな』
現れたのは黄金邪竜ファフニールだ。まぁ、漢字付きの名前で俺たちと関わりがある邪竜となればファフニールはどうしても思いつく。
「指輪を返して以来だな」
『あぁ。ただずっと全力のお前たちと戦闘していないことが気になってな。我も邪竜だ。このまま一度も本気の戦闘をせぬままと言うわけにはいかん』
ファフニールから逃げた戦闘は本気だったんだけど、こいつが求める戦闘はそういう戦闘じゃないんだろうな。
「本気で戦って勝てばいいんだな?」
『あぁ。何を使っても構わん。その代わり俺もなんでも使うがな。我を完膚なきまで殺して見せるがいい!』
寸止め無しの本気の殺し合いがご所望らしい。それならこちらも遠慮はしない。
「ノワ!」
「…ん!」
「「エンゲージバースト!」」
漆黒の竜騎士となった俺が降臨する。手には聖剣グラムと聖剣アスカロンだ。そして後ろにはファミーユを展開している。
『竜殺しの聖剣の二刀流か! 面白い! ならば我も本来の姿で相手をしよう。擬人化!』
ファフニールがドラゴニュートの姿となった。装備はレイピアのような剣、恐らくフロッティだろう。防具は黄金の甲冑と兜を装備している。兜はエイギスヒャルムだな。どれもファフニールの報酬で出てきたものだ。
こうなると他の物が気になる。ファフニールの報酬の中にはタスラム、ラーンの網、リジルなどの厄介な物があった。これらを警戒しないわけには行かないだろうな。
『では、試練を始める。…始め!』
最初に仕掛けて来たのは、ファフニールだった。一瞬で俺たちとの距離を詰め、同時に突きを放ってきた。これを慧眼で回避して、聖剣グラムを振るうと竜鱗装甲をした手で聖剣グラムの刀身を下から殴りつけた。その結果、聖剣グラムが宙に飛んでいく。
それをファフニールは翼を広げ、取りに行くが俺がアスカロンで斬りかかると白羽取りをされる。更にファフニールの兜にある目のような装飾が赤く光り、寒気を感じたが着物の効果で状態異常にはならない。
「何?」
「おら!」
「ぬ!?」
俺はファフニールを蹴り飛ばすと聖剣グラムをキャッチする。
『…危なかった』
『だな』
最初の奇襲に自分の天敵の剣を斬られる前に殴りつけたり、受け止める度胸。簡単に出来るはずがない。これが邪竜ファフニールか。
「我から逃げていた頃と比べて、随分強くなったようだな。準備運動はこれくらいいいだろう。そろそろ本気で行くぞ」
「あぁ」
『『『『アクセラレーション』』』』
ファフニールと高速戦闘が始まった。俺はファフニールとフロッティの強さを実感した。ファフニールはフロッティで高速の突きを連続で放ってくる。この一撃一つ一つがどれも強力なのだ。これはファフニールの筋力のせいだと思う。
この筋力でレイピアのような細い剣を使ったら、普通なら折れてしまうはずだ。それが折れないのはフロッティだからこそだろう。ファフニールとフロッティの相性の良さを認識しつつ、対処していく。
というのもファフニールはさっきからずっと武器破壊を狙っている。剣の同じところばかり狙って来るのだ。それに対処していたら、手首の動きだけでこちらの剣をすり抜けて突いてくる。正しくフェンシングの動きだ。
はっきり言って、凄くやりづらい。俺がフェンシングを知らないこともあるが突いてはすぐに戻る動きをされるからこちらが剣を振っても間合いの外なのだ。多乱刃の攻撃は黄金の甲冑のせいで弾かれている。
ノワも一生懸命サポートして貰っているが得意の影呪縛や魔眼での妨害がファフニールには全く通用していない。影操作での攻撃は黄金の甲冑や竜鱗装甲に傷すら付けることが出来ていない。
『…にぃ、後は任せた』
『ここで諦めたら、俺たちは負けるぞ』
武器の耐久値が恐らく俺たちの方が先に尽きる上にダメージも俺たちのほうが食らっているからこのままだと負け確定だ。
『…それは嫌。どうすればいい?』
『とにかく魔法で俺のサポートをしてくれ』
『…ん』
俺はぶつかり続けて、作戦を組む。そしてノワが作戦準備を整えていく。
『…影召喚』
チビノワが召喚されて、フィールドに散っていく。
「ほぅ…そう来るか。だが、甘いぞ! 暴風壁!」
ファフニールは翼を羽ばたかせ、チビノワたちが飛ばされていく。その隙に俺はファフニールに斬りかかるが受け止められる。
「そのぐらいは分かって」
ファフニールは俺が目を瞑っていることに気が付いた。この時にはもう遅い。ノワが遅延魔術でストックした魔法を発動させる。
『…フラッシュバン』
俺たちとファフニールの至近距離で激しい閃光と爆音が発生する。俺たちも音のダメージを受けるが分かっててやっているから耐えれる。
「あぁああ!!」
「ぐ!?」
俺はアスカロンでフロッティを弾き飛ばすと聖剣グラムとアスカロンで連続で斬りまくる。
「おぉおおおおお! バスターカリバー! バスターカリバー!」
「ぐぁあああああ!?」
俺たちは連続で斬りまくった後に聖剣グラムとアスカロンのバスターカリバーでファフニールを吹っ飛ばした。すると地面に叩きつけたファフニールのところから黄金の輝きが発生し、竜の姿となった。
『見事だ。召喚師と影のドラゴニュートよ! 黄金邪竜ファフニールが認めよう! お前たちは我がこの姿で戦うことに値する! さぁ、貴様らもなるがいい! ドラゴンの姿で決しようぞ!』
ドラゴンの姿になると聖剣グラムとアスカロンが使えなくなるんだけどな。
『…にぃ、お願い』
ノワにお願いされたら、仕方ない。
『「竜化!」』
竜化した俺たちがファフニールと相対する。これにファフニールは歓喜する。
『これが我が求めた闘い! さぁ、思う存分殺し合おうぞ!』
ファフニールが巨大な爪を振りかぶってくる。これを俺たちは迎え撃つ。
『力は我の方が上!』
俺たちは吹っ飛ばされるが踏みとどまるとファフニールの追撃が来る。
力で負けるなら技で勝負するまでだ!俺はファフニールの爪を弾き、回転した勢いで爪と尻尾の同時攻撃をする。これにファフニールは爪の方には対処したが尻尾の方には対処出来ず、吹っ飛ばす。そして空を飛ぶと翼を広げる。
『…影針』
これに対してファフニールはドラゴンダイブで突っ込んできた。貰った!
『空間歪曲!』
ドラゴンダイブしたファフニールが地面に頭から激突した。
『『ドラゴンブレス!』』
更にファフニールの尻に容赦なく、ドラゴンブレスを放った。ドラゴンブレスの爆心地で赤雷が発生する。ファフニールの黄金の体に赤く染まる。逆鱗か!
高速で迫ったファフニールの爪が俺たちの腹に入る。すると俺たちの姿がチビノワに変化し、入れ替わった俺たちはファフニールの目の前にいる。チビノワがいたのは俺たちの背中。暴風で吹き飛ばされる前からずっと背中にくっついていたのだ。
俺たちは渾身の拳をファフニールに放つとファフニールはカウンターで俺たちの顔を狙ってきた。ファフニールの体に俺たちの爪は突き刺さり、ファフニールの凶悪な爪は俺たちの顔をぶっ飛ばした。しかし俺たちは起死回生で蘇生する。そして爪に魔力が集まっていく。
『見事だ』
『『冥波動!』』
体内からの冥波動がファフニールに決まり、ファフニールの身体を冥波動が貫いた。そしてファフニールは消えた。
『うむ。試練はこれで終わりとする。試練のクリアを認めよう』
俺たちは竜化とエンゲージバーストを解除して、倒れこむ。
「この試練、他の試練より厳しくないか?」
『邪竜の試練が優しいと思っておったのか?』
それを言われると返す言葉がない。邪冥龍王様がノワに問いかける。
『さて、既に知っているとは思うが、ノワよ。お前には神竜となる道とドラゴニュートのままでいる道がある。どちらを選ぶ?』
「…ノワはドラゴニュートのままがいい」
『何故だ?』
「…ドラゴンだとベッドで寝れないから」
そこか…そこが理由なのか…なんともノワらしい回答だが、ちょっと泣きたい。
『そ、そうか…しかし試練の前と後で少し以前と考え方が変わったようじゃな?』
「…ん。にぃをだらけさせるのはノワの役目だけど、これからはにぃをだらけさせつつ、支えて行きたい」
だらけさせつつ、支えるってどういうことなんだろう?意味がわからないがこの回答に邪冥龍王様は満足なようだ。
『そうか…戦った甲斐があったのではないか? ファフニールよ』
白いモヤが集まって、ファフニールが現れた。死んでないんかい!そういえばこいつは不死身みたいな設定だったな。
『我は戦いたかったからそうしただけだ』
『やれやれ。わしの眷属はどうしてこうも素直は奴がおらんのか…』
『「邪冥龍王様(お前)のせい(だろ)」』
ノワとファフニールの意見が一致した。
『んん! ノワよ。進化を始めるぞ』
『話を強引に変えすぎだろう。だから俺たちが!?』
『黙れ』
邪冥龍王様の尻尾にファフニールが締め付けられる。やっぱり邪冥龍王様はかなり強いみたいだな。
「…ん。よろしくお願いします」
『…』
『爺がデレるなよ。気色悪』
『完全消滅したいのか?』
邪冥龍王様の本気の殺気を感じて、エデンの園で出会った災厄の獣アポカリプスビーストと同レベルのものを感じた。二人の喧嘩が終わったところで仕切り直す。
『盟約に従い、ノワを進化させよう!』
ノワに冥界の光が集まり、進化が始まる。
『光と闇。全てを受け入れ、支えると言ったお主にこの名前を送ろう。ノワよ、お主は今日からドラゴニュート・アセプトじゃ』
ノワが進化した。そしてインフォが来る。
『ノワがドラゴニュート・アセプトに進化しました。影召喚【ドッペルゲンガー】を取得しました』
『影分身、魔障壁、空間歪曲、他心通、第六感、神感覚、堕落、魅了吸収、竜鱗装甲、氷魔法、時空魔法、譲渡、瘴気、夢幻、冥府鎖、黒雷、黒雨、死滅光線、牢獄、斥力操作、重力操作、刑罰、死風、消滅弾、魔素解放、惑星魔法を獲得しました』
『惑星魔法【プルート】を取得しました』
『竜化のデメリットが一日となりました』
名前 ノワ ドラゴニュート・ディペンデンスLv30→ドラゴニュート・アセプトLv1
生命力 205→255
魔力 400→450
筋力 160→210
防御力 130→180
俊敏性 192→242
器用値 304→354
スキル
影操作Lv34→影創造Lv34 飛翔Lv40 呪滅擊Lv28→呪滅殺Lv28 影探知Lv30 影移動Lv21
影棘Lv25→死針Lv25 影潜伏Lv38 影呪縛Lv31→影封陣Lv31 影召喚Lv24 影分身Lv1
魔障壁Lv1 空間歪曲Lv1 他心通Lv1 第六感Lv1 神感覚Lv1
気配遮断Lv27→空虚Lv27 擬態Lv15→迷彩Lv15 暗視Lv35→神瞳Lv35 魔眼Lv22→魔竜眼Lv22 堕落Lv1
魅了吸収Lv1 冥波動Lv28 竜鱗装甲Lv1 暗黒魔法Lv5 氷魔法Lv35
時空魔法Lv35 譲渡Lv1 超再生Lv26→高速再生Lv26 黒炎Lv11→獄炎Lv11 集束Lv13→超集束Lv13
邪気Lv26→冥気Lv26 竜気Lv1 瘴気Lv1 蘇生Lv5→復活Lv5 夢幻Lv1
冥府鎖Lv1 黒霧Lv31 黒雷Lv1 黒雨Lv1 死滅光線Lv1
牢獄Lv1 霊化Lv10→魔素化Lv10 身代わりLv16 斥力操作Lv1 引力操作Lv13
重力操作Lv1 吸収Lv14 黒死病Lv18 超感覚Lv30→神感覚Lv30 死の宣告Lv8
刑罰Lv1 死風Lv1 消滅弾Lv1 魔素解放Lv1 逆鱗Lv5
竜技Lv24 ドラゴンブレスLv25 竜魔法Lv13 惑星魔法Lv1 竜化Lv12
料理Lv19 邪竜の加護Lv25→冥邪竜の加護Lv25
進化したノワはリリーたちとは比べ物にならないくらい女性らしく成長した。
「…にぃ、たぷんたぷん」
ノワがジャンプして胸を自慢する。
「分かったから飛び跳ねるのはやめてくれ」
「…ん」
イオンがノワの変貌を見たら、闇落ちしそうだ。
『やはりいい女となったな』
「こうなることがわかっていたんですか?」
『うむ。邪竜の女性の傾向としては戦士タイプの物は鍛え抜かれた身体となり、戦闘が苦手なタイプは女性らしさが際立つ傾向があるな』
そういうものなんだな。
『これで試練は終わりだが、ファフニールよ。何か伝えることがあったのではないか?』
『あぁ。最近死の気配が強くなってきている。もうどうすることも出来ないかもしれんが気をつけることだな』
「それって、ウィザードオーブで何か起きて」
『サービスはこれで終わりだ。爺』
『うむ。まぁ、がんばることじゃ』
俺たちは元の場所に戻される。すると早速ノワがリリーとイオンに自慢しに向かった。俺はそれどころじゃない。ファフニールの言葉が事実だとすれば既にウィザードオーブで何かが起きているということになる。ふと、時間を確認すると夕飯の時刻になっていたので、ログアウトすることにした。




