#825 タクトVS菅原道真
動いたのはほぼ同時だった。
「「閃電!」」
刀と魔法剣がぶつかり合う。
「ぬぅ!」
「らぁ!」
これには俺が押し勝つ。リリーの筋力にコノハの加護も健在だ。これで勝てなかったら、菅原道真はきっと既に神の領域に入っていることだろう。
俺が追撃に動く。すると菅原道真が僅かに動いた。
「光閃!」
「ぬ!? 我が神息の居合い斬りを止めるか!」
もう菅原道真の居合い斬りの動作は見切っている。それなら例え見えなくても居合い斬りを止めることは十分可能だ。何せ居合い斬りは基本的に横斬りの技だからね。抜いた後の攻撃は対処出来ないが最初の攻撃だけは対処可能だ。
「はぁ!」
『天剣!』
『海錬刃!』
リリーたちの補助を受けた俺はレガメファミリアを振り下ろすと菅原道真は受けに入る。すると当たる瞬間、レガメファミリアが不自然にコースが変化する。これに菅原道真は後ろに跳んで下がることで回避するが刃は届いていた。
『光速激突!』
俺たちは更に空にいる菅原道真を追撃するが菅原道真は俺たちに刀を突き出す。
「空間歪曲!」
俺たちは空間歪曲に飛び込んでしまうと地面に着地する。地面にぶつけるのは既に知っているよ。
「飛梅!」
見えない斬撃が俺たちに使用される。見えないなら見えるようにして対処するまでだ!
『光閃!』
『時間遅延!』
『『『『…アクセラレーション』』』』
「百花繚乱!」
俺は全く見えなかった斬撃をイオンの時間遅延の効果で斬撃を見切り、百花繚乱で撃ち落とす。
「ぬ!? おぉおおおお!」
「はぁああああ!」
手数なら百花繚乱は負けない!そしてリリーたちが更に攻撃を担当する。
『天雨!』
『氷柱!』
『…影針!』
「く…!」
流石の菅原道真もリリーたちの広範囲攻撃からは逃れるしかない。すると俺の杖たちが一斉に菅原道真を向く。
『日光!』
『冷凍光線!』
『死滅光線!』
三つの光線が放たれる。進化した俺たちはこれだけでは終わらない。
『乱反射!』
『…変光』
リリーがそれぞれの光線が枝分かれさせると分岐した複数の光線をノワが全て変光で操り、菅原道真に襲いかかる。
「ぬう! はぁあああああ!」
これを菅原道真は全て斬り裂いた。そして刀を構えると刀に稲妻が走る。俺もレガメファミリアを構えると稲妻が走る。
「「覇撃!」」
互いの覇撃がぶつかり合う。お互いに吹っ飛ぶ。こっちは大剣の覇撃なのに互角かよ。
『神速による攻撃が来ます』
天言スキルが攻撃を教えてくれる。
「「神速! おぉおおおおお!」」
お互いに激しい剣戟とスキルの応酬となる。ぶつかっては互いのスキルを打ち合い、接近しては刀と魔法剣がぶつかり合う。この際にお互いの多乱刃が発生し、誰も手出し出来ない戦場と化している。
菅原道真が使っているスキルは俺が知っているスキルでは風輪、防風壁、旋風刃、雷放電、雷霆、黒雷、神雷、鎌鼬、鬼火、水圧切断。知らないのだと無数に放たれる水の弾丸と黒炎の上位スキルと思われる火炎を確認した。
そんな激しい戦闘中、俺はかつての爺さんとの訓練を思い出していた。菅原道真は俺の攻撃に全て対応し、俺にダメージを与えてくる。筋力とスピードでは俺たちのほうが上のはずだが、技量の差で圧倒されている。
『『『『アクセラレーション』』』』
それでも俺は止まらない。もっとこの美しい剣術を味わいたい!どうしてもそう思ってしまう。エンゲージバーストには時間制限があるからこの戦闘の時間は残りわずかしかない。それでも一秒よりも長く俺は攻め続けた。
一方俺を押している菅原道真は感じ取っていた。
「(まだ技量としては未熟だが、どんどん攻撃が鋭く、速くなっていく。それに何故止まらない? 何故ぶつかってくる? 召喚獣の信頼もあるだろうが、常人なら斬られた痛みで止まる。しかしこの男は止まらない。まるで痛さや怖さを知らぬ赤子のようだ)」
この声が思っきり、俺に聞こえていた。そして俺の心の高鳴りも菅原道真は聞こえていた。
「おぉおおおお! は!」
「はぁああああ! ら!」
誰だけ斬り合っていたか分からない剣戟の最後にぶつかり合い。お互いに弾け飛ぶ。
「ふぅ…ふふ」
「はぁ…はは」
互いに息を吐き、笑顔で剣を構える。
「…認めよう。お前たちは我が奥義を見せるに値する! 褒美だ。受け取るがいい!」
「そんなものはいらん! 全宝玉解放!」
『『『そんなものはいらない! 宝玉解放!』』』
フロストグレイザー(宝玉解放):レア度9 魔法剣 品質A
重さ:75 耐久値:1000 攻撃力:1100
魔法剣効果:氷属性アップ(究)、悪魔特攻(究)、万物切断、浄化、詠唱破棄
宝玉効果:暴風雪、魔法再時間短縮(超)、魔法剣技【オーロラオーバル】
刻印効果:魔力アップ(究)
フロストグレイザーが宝玉解放された真の姿。極寒の冷気が解放され、極光が集束されて放たれる光線はあらゆる存在を氷結させる。最高峰の氷の剣に引けを取らない。強大な武器なので使い手を選ぶ。
俺たちの最後の一撃の構えを取る。
『ガンマレイバースト!』
『オーロラオーバル!』
『…ドラゴンブレス』
「ホー!」
「超集束! 魔法剣技! アルティメットシャリオ!」
イオンが使ったオーロラオーバルとはオーロラがリング状に発生する現象だ。このゲームでは極光スキルの上位スキルらしい。リング状のオーロラが他のスキルと同様にグランアルヴリングとレガメファミリアに集まっていき、最後のコノハのレールガンを加えた攻撃を俺はぶちかます。
俺たちの攻撃に対して、菅原道真が言う。
「天國、宝剣解放! 神仏を恨み世界から天地がなくなった。この技、亡き阿満に捧げよう! 奥義! 三千大千世界!」
菅原道真がそう言うと天國から宇宙が広がっていく。そして俺たちがいる空間が完全に宇宙空間となると俺たちの渾身の技が一瞬で消し飛ばされて、俺たちもまた消し飛ぶ。
「若き竜騎士よ。安らかに眠れ」
菅原道真がそう言うと空間が元に戻る。この瞬間をメルたちは待っていた。
「「「「エンブレムブラスター!」」」」
「「「「ロードカリバー!」」」」
「「「「グランドサザンクロス!」」」」
「「「「ゲイアッサル!」」」」
「何!? ぐわぁあああ!」
完全に油断していた菅原道真は諸に攻撃を受けたかに見えたが菅原道真が帯に装備していた玉がみんなの攻撃をガードし、砕ける。
「不意打ちとはやってくれる。む!」
更にレッカたちの上級魔法が菅原道真を襲う。
「天候操作!」
暴風雨が吹き荒れ、上級魔法がかき消されてしまう。しかし天候を操れるのは菅原道真だけじゃない。
「ガゥ!」
菅原道真に操られた天候が正常に戻る。
「ぬ!? 何者だ!」
天候操作を使ったのはグレイだった。俺が戦っている間にチェスが月海でメルたちを氷結から解放し、決定的な隙が生じるのを待ってもらっていた。
「何故召喚」
「神刀滅却!」
「「「「カラミティカリバー!」」」」
「「ガァアア!」」
疑問に思っている余裕はない。鉄心さんの必殺技とユーコたち大剣持ち、チェスが以前クエストで見たカリストベアが使っていた氷戦斧の技、グランアックスを使用し、虎徹の全ての刀が振り下ろされるとそれを受け止める。こうなると背後がガラ空きだ。
「貰った! 崩拳!」
リサの拳が決まると菅原道真の体がボロボロになるがこいつはゾンビなんだよな。
「効かぬわ! ぐふ!?」
虎徹、リサ、ユーコたちの影から俺たちの剣が飛び出し、菅原道真を貫いた。この中には当然ルナティック武器が入っている。そして俺たちは影から出るとサポートした後にすぐに避難したコノハが肩に乗る。頭に乗らなかったことに感謝したい。
「きさ…ま…何故生きて…三千大千世界で死ねば蘇生スキルや魔法、加護での蘇生は不可能なはず」
「そんな技だったんだな。おっかない技を使ってくれる…でもその話の中には料理バフの蘇生が入ってないみたいだな?」
これには菅原道真は絶句する。まさか自分の必殺技がアップルパイで破られるとは思ってなかっただろう。流石に菅原道真が料理の勉強をしていたという話は聞かない。学問の神様だからやっていたかもしれないけどね。
「なるほど…私に一度殺されることを計算して、事前に作戦を決めていたか…」
「スキルで蘇生を想定していたけどな。奥義を使って、強い奴を倒した後が隙だらけになることを俺は経験からよく知っている。だから言っただろう? 品にかまけて殺されたくはないってさ」
イオンがドォルジナスの攻撃を受けた時とかまさにこれに該当する。たまにはやり返さないとな。
「くく…返す言葉もない。さぁ、止めを刺すがいい!」
『『『天波動!』』』
全ての武器から天波動が放たれて、菅原道真は光に包まれる。
「よくぞ私に勝利した。お前たちなら私の奥義書と刀を託すに値する。受け取るがいい」
俺は四本の刀と三つの奥義書を受け取ると菅原道真は消えた。そしてインフォが来る。
『おめでとうございます! 第二の砦を攻略しました!』
『第二の砦で防衛することが可能となります』
『恋火のレベルが30に到達しました。条件を満たしていないため、進化することが出来ません』
『イクスのレベルが30に到達しました。進化が可能です』
『ノワのレベルが30に到達しました。特殊クエスト『邪冥龍王の試練』に挑むことが可能です』
『リアンのレベルが30に到達しました。特殊クエスト『海神の試練』に挑むことが可能です』
『和狐のレベルが30に到達しました。条件を満たしていないため、進化することが出来ません』
『ブランのレベルが30に到達しました。特殊クエスト『天使長の試練』に挑むことが可能です』
『アリナのレベルが20に到達しました。成長が可能です』
俺はエンゲージバーストを解除すると大の字で倒れこむ。
「つっかれた~」
「リリーも疲れた~!」
「…ノワも~」
「こんなところで三人揃って寝転がらないでください! そもそもタクトさん、笑ってますよ?」
イオンに言われて気が付く。この感じも久々だな。すると鉄心さんが来た。
「あれだけの激しい戦闘をすればそういう顔になるものだよ。羨ましい限りだ」
「…菅原道真とは一度しか戦えないんですかね?」
「どうだろう? 死後の世界があるからね。案外黄泉の国かクエストで登場するかも知れないな」
そっか。そういう可能性があるんだな。
「クラスチェンジしたら、鉄心さんは挑みますか?」
「勿論。あんな戦いを見せられたら、自分も味わいたくなるものさ」
流石、鉄心さんだな。するとみんなはこれに反対する。こっちが普通なんだろうな。するとかなりの人数が少なくなっていることに気がついた。
「雪月花っていう技で結構やられたみたい」
「これは私たちの責任…ごめんなさい」
「いや、ミライ君たちに落ち度はなかった。いや、むしろ的確で素早い治療だったさ」
「そうさ。こういうのはどうしてもリーダーや強い人から回復させるものだ。ボス戦なら尚更さ。彼らも理解してくれるだろうし、恨まれ役は我々の役目だ」
こういうのは想定していなかったが作戦を考えたのは俺だ。当然俺にも責任があるだろう。後でしっかり話し合いをしよう。そう思っているとチロルたちが入ってきた。
「「「「ボス戦お疲れ様~!」」」」
「ここでみんなで祝うのもいいけど、早くルインさんたちに連絡しないと怒られるよ」
「だな…帰るか」
「「「「賛成!」」」」
ということで俺たちは先に砦に帰って、勝利の報告をする。もう時間は遅いから進化は明日することにした。ここでログアウトするんだが…問題が発生する。
「タクトお兄ちゃん、刀をどうするんですか?」
「凄く気になるであります!」
「わたしも気になるぞ!」
「ガウ~」
恋火、千影、ユウェル、虎徹に捕まった。宥めるのに凄く苦労して、俺はログアウトした。
偶然ですが菅原道真は来年の干支である牛と関わりがある人物です。各地の天満宮には狛犬のように牛が像があります。この牛の頭を撫でると賢くなり、自分の具合が悪いところを触った後に牛で同じ箇所を触れると治ると言われてます。肺を触った後に牛の肺を触れば、コロナが治る!…かも知れません。みんながするとコロナが伝染りそうでやめておいたほうがいいんでしょうね。
菅原道真の牛のエピソードで有名な話が山で子牛に懐かれて、道真は育てることにした話があります。この子牛が成長し、道真のピンチに駆けつけて、道真を救ったそうです。この小説でも書こうか凄く迷った話だったので、ここで紹介させて貰います。




