#822 巨鬼の武者VS超新星と深淵のドラゴン
俺たちが菅原道真がいる建物に向かって、走っていると砦内のあちこちで巨大な火柱が発生する。
武者童子?
? ? ?
現れたのは鎧武者姿の巨大な鬼だ。武器は巨大な太刀。中には二刀流の奴までいる。当然俺たちの周囲にも現れる。左右に一体、前後に二体だ。このまま挟み撃ちにするつもりだな。
「タクト、どうするの!?」
「狙われてますよ!?」
「リリー、イオンは前の奴らを止めてくれ」
「わかった! イオンちゃん、左の奴をお願い!」
「わかりました!」
二人が一瞬で武者童子に襲いかかると二人の動きに対応して来た。
「ん! ぎぎぎ~!」
「甘いです! 氷雪刃!」
リリーは武者童子の太刀とぶつかり合う。こちらは互角だ。今のリリーと互角の筋力なんてシャレにならないぞ。
イオンは武者童子の二刀流の攻撃をあっさり躱して、氷雪刃で凍らせると強引に氷結を解除して、口から火炎を吐いてくるがイオンは躱す。かなり強そうだな。
「ここで俺とマヤさんで足止めする。メルたちは先に行って、安全エリアを確保してからリリーたちの援護をしてくれ」
「え…それでいいの?」
シフォンは困惑するがメルが言う。
「タクト君の判断は正しいよ。私たちの最優先事項は菅原道真の建物にたどり着いて、挑むための安全エリアを確保すること。先に安全エリアさえ抑えたら、タクト君たちが逃げ込むための援護も出来る」
「メルさんの言うとおりよ。それに心配するだけ無駄だと思うわ」
「同感だ。寧ろ俺たちが安全エリアに行く前に倒される危険があるから急ごうぜ」
「う、うん。気をつけてね。タクト君」
「あぁ」
みんなが先に行くと俺は役割分担を決める。
「左後ろの敵と左の敵をお願い出来ますか?」
「任せて! みんな行くよ! えーっと、編成は」
俺も編成を決めようと思った瞬間、第六感が発動する。
「グレイ! メルたちを頼む! 虎徹、俺はいい!」
「「ガウ!」」
俺たちは奇襲を受ける。メルたちを襲った一団はグレイが群狼で攻撃を阻止して、虎徹はマヤさんを襲おうとした敵を虎徹が刀で吹っ飛ばす。そして俺は攻撃を慧眼で躱す。
「クロスカウンター!」
敵の顔面にカウンターのパンチが入ったかに見えたが首を捻り、躱された。強いな。
鬼中忍?
? ? ?
鬼上忍?
? ? ?
面倒臭いタイミングで厄介そうな奴らが出てきたな。しかも結構な数だ。
「タクトお兄ちゃん! はぁああ!」
「マスター、こいつらの相手はわたしたちに任せてください」
「タクトの指示出しの時間ぐらいは稼いであげるよ」
「うむ! ゆくぞ!」
恋火、イクス、リビナ、セフォネが鬼忍部隊の対処に動いてくれた。マヤさんには虎徹が付いているし、ユウェルの先輩の土のドラゴニュートがいるから多分大丈夫だろう。
「右後ろの敵はノワ、ファリーダ、ユウェル、白夜、黒鉄、ヒクス、ディアン、スピカ、蒼穹、コーラル、夕凪」
メンバーを決めていると第六感が発動する。すると反応が全方向から来る。なんの攻撃だ!?
俺のピンチに対応したのはアラネアだ。俺を襲おうとしたのは鬼上忍が使う糸だった。これが全方位から俺に襲いかかって来たのだが、アラネアが鋼線で鬼上忍の糸と絡ませることで俺を縛るのを阻止した。恐らくアラネアが対処してくれなかったら、今ので死んでいたな。
「この!」
恋火が斬り裂くが変わり身の術で回避されると鬼上忍が忍刀で斬りかかって来る。これをアラネアが鋼線で受け取ると至近距離から猛毒ブレスを浴びせて、横から千影が如意金剛錫杖で吹っ飛ばした。
「お館様、ここはアラネア殿とあたしに任せてくれませんか?」
「そうだな。恋火、右の敵に行ってくれ!」
「はい! アラネアさんと千影、お願いします!」
正直な恋火に鬼忍の相手はきつかったみたいだ。他の鬼忍との戦闘を見るとイクスは変わり身の術で攻撃を躱された瞬間、テイルエネルギーガンとレーザーフライヤーで狙い撃っていた。行動予測があるイクスはこいつらの天敵だろうな。
リビナとセフォネはお互いに騙し合いの戦闘を繰り返して互角な感じだ。ここは俺たちの安全のためにもう少し戦力を加えるべきだな。
「狐子と伊雪、悪いが鬼忍の相手を頼めるか?」
「もちろんよ」
「任せてください。お父さん」
これで鬼忍軍団の対処は大丈夫だろう。残りは右の戦力だ。
「リアン、アリナ、コノハ、ゲイル、優牙、ミール、ストラ、サフィ、月輝夜、クリュス、ジークは恋火と一緒に向かってくれ。セチア、和狐、ロコモコ、エアリー、ぷよ助、ダーレー、ルーナ、リオーネ、ルミは支援と俺たちの守りを頼む」
「はい。和狐さん、結界をお願いします。私は虎徹さんのところの鬼忍をなんとかします」
「わかりました。結界!」
和狐が結界を張ると俺とマヤさんを守るとセチアが弓を構える。
「アローレイン!」
矢の雨が鬼忍たちに降り注ぎ、全員が変わり身の術でこれを回避するが虎徹の前でそれを選択したのは間違いだな。逃げた先を虎徹は完全に見切り、五月雨斬りで鬼忍たちを一気に倒す。
すると鬼上忍は虎徹の目を盗んで俺たちに向かってくると土のドラゴニュートがガードする。
「ぬ!?」
鬼忍が閃光玉を落とし、炸裂する。そして煙遁の術で結界内に現れると俺たちに襲いかかろうとしたが動けなかった。俺たちが見るとぷよ助が鬼上忍の足にくっついていた。どうやら煙遁の術を使った時にぷよ助から挑発をくらい、ぷよ助の上に現れたようだ。
俺もスライムを相手にするときは気を付けないといけないと学んだ。そうしてないと今、まさに取り込まれそうになっているこいつと同じ目に合う。一生懸命忍刀を突き刺すが腐蝕して、ボロボロになるだけだった。すると今度は火遁の術を使うがぷよ助に通用しなかった。
別の忍術を使おうとするがエアリーの列石封印で忍術が封じられた。俺も鬼じゃない。このまま溶けて死ぬのは忍びないからしっかり止めを刺してあげよう。
「…プレゼント。プレゼント」
「「「ギルティソーン!」」」
『『『ルートスクイズ』』』
「ぷよ助、分裂しろ」
ルミがプレゼントをたくさん鬼上忍にあげて、マヤさんがギルティーソーンでプレゼントを固定するとそこからセチアがルートスクイズでギルティーソーンごとプレゼント箱を潰していく。その結果、プレゼントが起爆する。
そしてプレゼントの爆発でもびくともしないルートスクイズはそのままバラバラになったギルティーソーンごと鬼上忍を縛り上げてそのまま潰した。
俺たちが鬼上忍を倒している間に他の鬼忍たちも倒されていた。リビナの魅了で倒されている鬼忍たちの光景やセフォネに噛み付かれている鬼忍、狐子と伊雪の周囲に毒と魅了になった状態で凍りついている鬼忍が転がっているのはいつも通りだ。
悲惨なのがアラネアと千影が戦っていた糸使いの鬼上忍だ。何故か逆さ宙吊りにされて、アラネアの蜘蛛たちに群がられている。俺がそれを見ていると視線があった千影は首を慌てて横に振っていた。
一方、武者童子は全員が大苦戦していた。巨体の癖に素早く、巨大な太刀のせいで中々接近戦を挑めないみたいだ。太刀を振るうたびに多乱刃が発生し、それを見切りなどで躱して、間合いを詰めると霊化して距離を取られる。
みんなが遠距離攻撃をすると黒霧と魔力切断で対処される。その隙に攻撃を仕掛けると角から赤雷を放ってくる。
この戦いを見ていた俺は素直な感想として召喚獣との戦いに慣れている感じがした。敵を囲んでボコボコにするのが召喚獣たちの一つの必勝パターンだ。それを見事に対処している。
ここで覚悟を決めたストラとディアンが噛み付きに掛かると首を切られながら、武者童子に噛み付くと甲冑がそれを阻んだ。噛めないと判断したストラとディアンはゼロ距離からのブレスを放つが甲冑にダメージを軽減されると武者童子の強烈な蹴りを放たれ、鎌鼬で首をまた斬られた。
「グォオオ!」
これに怒った月輝夜が襲いかかると武者童子は見切りで月輝夜の攻撃を躱すと月輝夜の片腕を下段から斬り飛ばすと更に刀を持ち替え、上段から斬り下ろす。
「ガァ!」
これに虎徹が割って入る。互いの力比べとなった結果、虎徹が負けて吹っ飛ばされる。そして武者童子が倒れている月輝夜を狙う。
「タクトはん!」
「シフトチェンジ!」
月輝夜と和狐の位置を入れ替えた結果、和狐に太刀が突き刺さったかに見えたが、和狐は幻影で躱していた。
「狐技! ハーミットテイル!」
和狐の尻尾が太刀を持っている武者童子の手を縛ると武者童子は紅炎の効果で燃え上がる。
「今どす!」
全員の攻撃が卒倒するが武者童子は無視して自由な腕に魔力を集めると真っ直ぐに和狐を見つめている。
「あ…」
魔拳が使われようとした瞬間、武者童子の腕が斬り飛ばされた。斬ったのは虎徹だ。虎徹は瞑想の効果で一撃の威力を上げて、見事に武者童子の腕を斬ってみせた。
すると武者童子は和狐の縛りをものともせず、太刀を地面から抜くとそのまま虎徹に向かって振ると虎徹は慧眼で回避し、斬り裂こうとしたところで魔素化して躱されると虎徹は魔素に捕まり、ビルに叩きつけられた。
「虎徹はん!?」
「精霊召喚!」
「植物召喚! いでよ! 噛み付き草!」
魔素化で縛り付けを解除させられた和狐が虎徹のところに向かう。そして援護するようにセチアが土の精霊、ミールが噛み付き草を召喚する。虎徹は気力装甲でのガードと内気功での回復をしており、無事だ。戦線に復帰した虎徹だが、斬り飛ばした腕は元通りとなっており、土の精霊と共に再びぶつかりあった。
後方の戦いでは、四神たちが見事なコンビネーションを見せた。陣形を整えた四人は最初に夕凪が回転激突で武者童子にぶつかる。これに武者童子は両手の太刀でガードするしかなかった。
太刀が封じられたことで背後から蒼穹が竜爪で腕を押さえ、夕凪の回転が遅くなったところで縛りにかかる。これを嫌う武者童子は蒼穹の押さえ込みをものともせず太刀を振るおうとした。
すると手に白夜が噛み付き、武者童子の目をコーラルが炎爪で潰した。これに怒った武者童子は腕を力強く振ると白夜を振り落とす。しかし地面への落下を白夜は霊化で回避し、力強く振った手は夕凪の蛇が巻き付き、蒼穹と共に縛り付けが決まると首を斬られたディアンが武者童子の拘束に加わり、白夜が森林操作で足の拘束に入る。
その後はノワたちが攻撃に加わり、ボコボコ状態になると思ったが全身から赤雷を発生させ、蒼穹たちがダメージを受けると霊化で拘束を抜け出す。
そして大声を上げて狂戦士化を使うと太刀を上段に構える。すると太刀に紫炎が宿る。
「…まずい」
「く…後ろにはタクトたちがいるわ! 迎え撃つわよ!」
「任せろ! うぐ!? 痺れる~」
迎撃しようとしたノワたちだが、さっきの赤雷で麻痺して動けない。そんな中、黒鉄が全員の前に出て、ガードの体勢になると強烈な紫炎の斬撃を受けて、黒鉄が吹っ飛ばされる。
「黒鉄!?」
「…よくも黒鉄を!」
黒鉄が吹っ飛ばされたことでノワの目に怒りが宿る。
「…コーラル、回復して。ユウェル、やる」
「うん! 黒鉄のお返しをするぞ! 竜化!」
コーラルの和魂を受けたノワとユウェルが竜化し、狂戦士化を使っている武者童子に襲いかかった。
俺がどうするか考えていると前方からエクスプロージョンが放たれた。そしてグレイがやってきた。どうやらメルたちは任務完了したみたいだな。天鎖で縛っているリリーと氷獄で凍らせているイオンの戦いに参加しているようだ。
しかし俺やグレイ、メルたちが加わっても恐らくそこまで状況が変化するとは思えない。それぐらいに武者童子は強い。
「ど、どうしよう…私の子たちも苦戦しているみたい」
巨人たちは鎧とか装備していないからな。鎧装備で太刀を装備している敵とは相性が悪いのかも知れない。
「ここは竜化で助けに」
「待ってください。俺が使います」
「えぇ!? もしかしてリリーちゃんたちの竜化を使うつもりですか!? だって、デメリットが」
「それはソーマ酒で回復出来ますから大丈夫です。今、必要なのはこの状況を一気にひっくり返すこと、リリーたちの竜化なら間違いなく可能でしょう。グレイも出来るとは思うけど、多分代償が大きいからリリーたちに任せてくれるか?」
マヤさんとグレイが納得したところでリリーたちに指示を出す。
『リリー、イオン! 竜化で一気に勝負を決めてくれ!』
『えぇ!? でもタクト、竜化使っちゃったら、動けなくなるよ』
『そうですよ! この後、戦えなくなります』
『ソーマ酒で回復させるから大丈夫だ。二人の本当の実力を俺に見せてくれ』
『『うん(はい)! 竜化!』』
二人が竜化を唱えると世界が黄金と美しい青色に染まる。そして天空から黄金のドラゴンとサファイヤのような輝きを放つドラゴンが自分たちの愛剣を巨大化した物を両手に持ち、降臨した。
名前 リリー ドラゴニュート・バースLv1→ヘブンズドラゴン・ノヴァLv1
生命力 260→320
魔力 286→346
筋力 480→540
防御力 200→260
俊敏性 242→302
器用値 209→269
スキル
天拳Lv31 飛翔Lv44 片手剣Lv50 二刀流Lv31 大剣Lv47
鎚Lv24 天竜牙Lv12 天竜爪Lv12 天鎖Lv2 指揮Lv1
空間跳躍Lv4 空間歪曲Lv1 光速激突Lv5 空振Lv4 暴風壁Lv1
第六感Lv37 神感覚Lv39 天竜眼Lv34 他心通Lv5 天言Lv41
万物破壊Lv36 虚空切断Lv5 天鎧Lv33 天壁Lv23 天鱗粉Lv1
黄金障壁Lv4 竜鱗装甲Lv4 天雨Lv33 聖櫃Lv8 天光Lv14
多連撃Lv35→無限連撃Lv35 超集束Lv20 瞬間再生Lv27 竜気Lv5 神気Lv43
英気Lv5 重圧Lv1 神聖魔法Lv1 時空魔法Lv35 守護結界Lv2→遮断結界Lv2
天波動Lv24 星間雲Lv10 流星群Lv10 星虹Lv7 彗星Lv1
光崩壊Lv1 全反射Lv12 乱反射Lv12 ガンマ線Lv2 天域Lv2
烈日Lv3 日光Lv2 星芒Lv2 聖療Lv2→天療Lv2 残像Lv4
迷彩Lv2 光閃Lv5 変光Lv2 光圧操作Lv2 後光Lv1
天変地異Lv1 光化Lv2 逆鱗Lv7 諸刃の一撃Lv2 覇撃Lv3
天撃Lv1 竜技Lv35 竜魔法Lv13 惑星魔法Lv3 光球Lv1
竜化Lv13 ドラゴンブレスLv22 起死回生Lv5 黄金の加護Lv1 王の加護Lv1
天竜の加護Lv27
名前 イオン ドラゴニュート・セレニティLv1→アビスドラゴン・ディザスターLv1
生命力 220→280
魔力 360→420
筋力 256→316
防御力 162→212
俊敏性 466→526
器用値 272→332
スキル
二刀流Lv50 槍Lv11 天竜牙Lv12 天竜爪Lv12 念動力Lv34
飛翔Lv40 指揮Lv1 第六感Lv4 神感覚Lv37 魔力支配Lv14
魔力切断Lv32 高速遊泳Lv39 空間跳躍Lv4 水鏡Lv2 水飛沫Lv1
透過Lv3 竜気Lv5 重圧Lv1 空振Lv4 暴風壁Lv1
天竜眼Lv34 他心通Lv4 天言Lv5 水分身Lv23 神速Lv4
氷雪刃Lv40 蒼天雷Lv32 氷雷Lv16 黒雷Lv1 氷旋風Lv2
多連撃Lv34→無限連撃Lv34 多乱刃Lv5 海魔法Lv1 雷魔法Lv35 氷魔法Lv35
時空魔法Lv29 時間遅延Lv3 超集束Lv3 天候操作Lv3→天変地異Lv3 海流操作Lv15
荷重操作Lv1 大海波動Lv24 極寒波動Lv4 水圧操作Lv17 氷柱Lv24→氷山Lv24
天氷壁Lv3 天氷装甲Lv26 竜鱗装甲Lv3 氷牢Lv16 氷獄Lv3
津波Lv4 渦潮Lv4 海没Lv1 凪Lv1 閃電Lv6
冷凍光線Lv20→凍死光線Lv20 霧氷Lv6 夢幻Lv3 月海Lv2 聖水Lv3
天罰Lv1 天霧Lv1 瀑布Lv4→大瀑布Lv4 黒雨Lv1 逆鱗Lv6
竜技Lv33 竜化Lv12 水爆Lv1 竜魔法Lv13 惑星魔法Lv3
起死回生Lv5 ドラゴンブレスLv20 冥界の加護Lv1 王の加護Lv1 天海竜の加護Lv26
料理Lv33
はい。スキルに禁呪クラスのものが複数追加されているね。俺があまりの強さに絶句していると武者童子たちはとんでもない重圧によって、地面にめり込む。そしてリリーが発生させている黄金の光の粒を浴びた全ての敵が煙を上げてのたうち回る。
どうやらこれは天鱗粉の効果か。存在するだけで敵に常時ダメージを与えるスキル。これだけでも驚くが竜化したリリーとイオンの強さはこんなものじゃない。
二人は相手にしていた武者童子たちに自分たちの剣を投げると巨剣がそれぞれ突き刺さると消滅する。今まで戦っていたから一撃ではないんだけど、ただの攻撃だけでとんでもない威力なのは伝わった。
これを見た他の武者童子たちがリリーたちに武器を構えて、必殺技の体勢となる。諸刃の一撃を加えた必殺技を放つ武者童子たちだった。それは致命的なミスとなる。
『全反射!』
リリーによって全ての必殺技が返された結果、全員が諸刃の一撃の反動により動けず、必殺技を受けることとなった。諸刃の一撃の弱体化もあり、通常より大ダメージを受けたことで武者童子たちは仰向けで倒れる。
すると彼らは自分たちの頭上に巨大な氷塊が無数に作られていくのを目撃する。
『氷山! 荷重操作!』
自分たちより大きい氷山が通常では有り得ない重さとなった状態で武者童子たちに落下した。
『彗星!』
そして空から巨大隕石が落ちてくる。氷山に潰された武者童子たちは彗星に攻撃を放つが通用していない。このため、武者童子たちは逃げ出そうとするが動きが止まってしまう。
『…絶対に逃がさない。魔眼! 影呪縛!』
『竜魔法! ペトロイローション!』
ノワの魔眼と影呪縛で動きが止まり、ユウェルの石化魔法で足から石化していく。この動きにみんなが足止めに動く。月輝夜が片腕でレージングルを投げて拘束し、ブランとスピカが光鎖、ジークが聖鎖で逃げる武者童子たちの拘束する。
そして攻略本隊の方でも動き出す。最初に指示したのは満月さんだ。
「敵を巨大隕石のところまで押すぞ!」
「っ! なるほどな! 重装歩兵部隊! ファランクスガードを使って、敵を巨大隕石のところまで強引に押すぞ!」
「「「「おぉ! ファランクスガード!」」」」
武者童子たちがファランクスガードの壁に押される。攻撃してファランクスガードを解除すると次のファランクスガードを使った人が武者童子を押す。この辺りの連携は流石だ。
そして仕上げは忍者たちだ。
「「「「影縫い!」」」」
「「「「影呪縛!」」」」
これで勝負ありだと思ったが武者童子たちは力尽くでノワたちの拘束を解除し、逃げ出す。しかしノワたちが止めていた武者童子はペトロイローションで足が石化している。これではもう逃げられないがノワがしつこく魔眼と影呪縛で動きを止める。まさかの追い打ちだ。
『…絶対に許さない』
ノワの怒りを証明するかのように巨大隕石が武者童子たちのところに落下し、纏めて吹き飛ばした。
『わわ! 遮断結界! ごめーん。タクト、みんな。大丈夫だった?』
とんでもない隕石の衝撃波に晒された俺たちだが、リリーの遮断結界で守られて無事だった。流石は最強の結界と言われているスキルだ。
『無事だが、どうやら勝負ありみたいだな。リリー、イオン。暴れ足りないだろうが戻ってくれ』
さっきのリリーの一撃で城門が完全に消し飛んだ。この結果、チロルたちが参加することになるだろう。
『『わかった(わかりました)!』』
すると外にいたラーヴァ・ゴライアスがリリーたちに槍を投げてきた。当然のように槍は弾かれる。
『『…タクト(さん)』』
『程々にな』
『『うん(はい)!』』
二人が軽く息を吸い込む。
『『ドラゴンブレス!』』
これをラーヴァ・ゴライアスは絶対防御でガードする。しかし今の二人はそれぐらいはわかっている。次は大きく息を吸い込む。
『『ドラゴンブレス!』』
先ほどより、遥かに巨大なドラゴンブレスがラーヴァ・ゴライアスに直撃し、木っ端微塵となった。そしてリリーとイオンが元に戻り、俺は二人を抱きとめる。
「「疲れた(ました)~」」
「お疲れ様。安全エリアで休憩しようか」
俺たちは安全エリアに向かっている最中と全員の無事を確認した。黒鉄は耐熱があったからあの攻撃に耐え切ったようだ。
「…ん。無事で良かった」
「あれ? もしかして、ノワってば照れてる?」
「…リビナが何を言っているのかわからない」
そう言うとノワが俺の影に潜った。完全に逃げたな。俺たちがノワの行動に笑みを浮かべつつ、安全エリアに向かった。リリーたちはソーマ酒を飲む。これで次の戦いも全力で挑めるはずだ。
「「ぷは~! ひっく」」
大丈夫だよな?ちょっと心配になる。
状況を見るとチロルたちが砦内に入ってきて、満月さんたちのところに現れた瀕死の武者童子たちと戦闘を開始した。どうやらリリーの彗星で太刀と甲冑を失ったようだ。あれじゃあ武者童子ではなく褌童子だな。
みんなが今までの鬱憤を晴らすかのように攻撃しているのが見えた。
「大丈夫そうだな」
俺の呟きにメルが反応する。
「そりゃあ、あれだけ大暴れしたら、大丈夫になるに決まっているよ」
「「えへへ~」」
「呆れているんだからね? リリーちゃんたち」
まぁ、劣勢を一気にひっくり返されたら、そう言う気持ちになるだろう。暫くすると戦闘が終わったため、インフォが来た。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント3ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント3ptを獲得しました』
『セチアのレベルが30に到達しました。特殊クエスト『世界樹の巨人』に挑むことが可能です』
『セチアの魔法弓のレベルが50に到達しました。魔法弓【サウザンドレイン】を取得しました』
『リビナの鞭のレベルが30に到達しました。鞭【グランドウィップ】を取得しました』
『和狐の狐技のレベルが30に到達しました。狐技【幻炎狐】を取得しました』
『チェスのレベルが32に到達しました。進化が可能です』
『ミールの植物召喚のレベルが20に到達しました。植物召喚【ホウセンカ】を取得しました』
『千影の仙術のレベルが20に到達しました。仙術【自己再生】を取得しました』
流石にレベルアップラッシュが来るよな。ほぼ全員参加で攻略しているからかなり経験値が減っているはずだけど、強い敵が多かった証拠だろう。
俺もクラスチェンジ後の初めてのレベルアップだ。やはりステータスポイントとスキルポイントが増えたな。更に通常のステータスアップも増えている。ステータスポイントは全て俊敏値にする。残りスキルポイントは87ptだ。
ルーナはレベル30を超えても進化無しか…もしかしたら進化してくれるかと思ったけど、これで合成召喚はレベル40での進化が確定したかな?
ステータス確認が終わったところで攻略部隊が集まる前にセチアとチェスの進化をさせるとしよう。




