#821 谷の砦、交差点の戦い
最初にリリーがマールス・ドラグーンに襲いかかる。
「天剣!」
リリーのエストオラシオンが眩い閃光を放つと刀身が僅かに伸びる。それをマールス・ドラグーンは大剣で受けようとするが、星剣と同様に剣筋が急に変化する。それをマールス・ドラグーンは剣を傾け、器用に受けた。
「光閃!」
リリーすかさずレガメファミリアに光閃を使うとマールス・ドラグーンを吹っ飛ばした。するとマールス・ドラグーンが乗っていたラーヴァ・ドレイクの爪がリリーに襲いかかるとユウェルが大砲を取り出す。
「どどーん!」
ユウェルの大砲はラーヴァ・ドレイクの顔に命中すると爆発せずにラーヴァ・ドレイクを吹っ飛ばす。
「む? なんで爆発しないんだ?」
「え? そういうものじゃないんですか?」
「違うぞ? タク~。大砲が爆発しなかったぞ」
何?は!?そういえば大砲を作った達成感があって、鑑定スキルで出来栄えを確認していない!
「…今は戦闘中だからその話は後で聞かせてくれ」
「わかった!」
「誤魔化しましたね…タクトさん」
イオンのジト目が突き刺さっている。戦闘に集中。
「タクトお兄ちゃんにもミスはありますよ」
「わかってます。それをフォローするのも私たちです。行きましょう。恋火! 千影!」
「はい!」
「はいであります!」
三人とリリーがラーヴァ・ドレイクに向かい、虎徹がマールス・ドラグーンに向かうとラーヴァ・ドレイクが自分の顔に命中した大砲の弾を火の爪で踏み潰した。その結果、周囲が大爆発する。どうやら火薬を詰め込みすぎたらしい。
「な、何!? 何かの攻撃!?」
何も知らないリリーが慌てている。一方イオンたちはユウェルを見る。
「「「…」」」
「わ、わたしは何も知らないぞ? 爆発させたのはあいつだ!」
ユウェルの意見に全面的に賛成する!何故なら火薬を調子に乗って、作ったのは俺であり、ユウェルと一緒に大砲を作った責任が俺にはあると思うからだ。
「はぁ…とにかくユウェルは大砲を撃つのは禁止です。ッ!? リリー!」
「わっ!? とと! んん~! でや~!」
イオンの声にリリーが反応して、襲いかかってきたマールス・ドラグーンの攻撃をレガメファミリアで受け止めるとエストオラシオンで斬りかかるとマールス・ドラグーンは飛び逃げると大剣を構えて、魔素が大剣に宿る。
「竜技ドラゴンクロー!」
竜の爪のオーラが宿ったレガメファミリアと大量の魔素を集束させた大剣がぶつかりあう。
「む~! ぎぎぎ~! きゃ!?」
結果は互角で互いに弾け飛んだ。するとリリーと変わるようにイオンがマールス・ドラグーンに襲いかかろうとした瞬間、ラーヴァドレイクの炎ブレスがイオンを襲う。
「はぁああ! 流水乱舞!」
イオンは天海竜の加護の効果で炎ブレスを無効化し、安心しているマールス・ドラグーンに襲いかかった。イオンの流水乱舞を必死に受けようとするが手数が違いすぎた。イオンは大剣を弾き飛ばし、マールス・ドラグーンを連続で斬り裂くが氷結にはならず、また仕留めることも出来なかった。
「く…硬い! でも!」
「やぁああ!」
どうやらマールス・ドラグーンの鎧が守ったみたいだが、イオンが下がると恋火が斬りかかる。しかし恋火の聖火を宿した刀でもマールス・ドラグーンの鎧を突破出来ず、マールス・ドラグーンを地面に叩きつけると空脚で恋火が下がる。
恋火の上では満を持して虎徹が刀を構えていた。そして決して届かない突きを放つ。するとまるで弾丸のような斬撃がマールス・ドラグーンを貫いた。虎徹はそこから突きを連打し、弾丸の斬撃の雨がマールス・ドラグーンを襲った。
これが虎徹が覚えた多刀流武技の【時雨】だ。刀としては珍しい遠距離技でターゲットは個人ではなく間合いにいる全ての敵となる。今回はマールス・ドラグーンのみに虎徹は集中砲火した。虎徹がどれだけ怒っているが伝わる攻撃だ。
この攻撃をラーヴァ・ドレイクが止めるために虎徹に再び炎ブレスを放とうする。
「させないぞ! でやぁああ!」
ユウェルがルナティックモーニングスターでラーヴァ・ドレイクの顔面に横から星球をぶつけるとすぐさま星球を戻し、今度はラーヴァ・ドレイクの顎を狙い、星球を投げるとラーヴァ・ドレイクの顎に命中する。
「千影!」
「ぶっ飛ぶであります! 伸びよ! 如意金剛錫杖!」
顎を狙われ、顔が上がっているラーヴァドレイクの無防備な胸に如意金剛錫杖が命中し、マールス・ドラグーンと敵部隊を巻き込み、飛んでいく。既にリリーが止めの体勢だ。
「これで終わり! 天涯両断!」
リリーの光の巨剣がラーヴァ・ドレイクに振り下ろさせ、下敷きになっているマールス・ドラグーンや敵部隊もろとも両断した。
「やった~! 勝った! ととと!?」
「まだ終わってませんよ。雑魚を蹴散らして、皆さんの援護に向かいます!」
「「「おぉ~!」」」
イオンの指示でリリーたちが雑魚を掃討する。
リリーたちが戦っている頃、俺たちも敵部隊と戦っていた。最も戦いと言うより蹂躙に近い有様だけどね。
空ではヒクスたちが飛び立つとやはりあちこちから矢や銃で狙撃されるが俺が戦う前に忠告したことで残像や幻影での回避や防風壁や守護などのガードで対応して、自分たちを襲ってくる敵を蹂躙している。
そして地上では巨人や巨獣などのおこぼれしか俺たちのところに来ない有様だ。
するとマヤさんのベヒモスの足を潜り抜けた二人のマールス・ドラグーンがディアンとストラの首を飛ばして、俺たちに向かってきた。
「一人は私が相手をするわ! もう一体をお願い!」
「任せろ! 竜技ドラゴンアーマー! ぬん!」
ファリーダとマールス・ドラグーンがぶつかり合い、動きを止める。そしてもう一体はマヤさんの土のドラゴニュートがマールス・ドラグーンの巨剣をガントレットで受け止めた。
しかしマヤさんのドラゴニュートが押される。やはり竜騎士というだけあって、ドラゴニュートには強いみたいだな。しかし一人で飛び込んできたのはミスだ。
マールス・ドラグーンのガラ空きの腹にリビナの雷竜の鞭が巻きつくと感電し、そのままリビナは引きせるとマールス・ドラグーンに斬られてしまうが幻と消える。
「残念でした~。金縛!」
「ブランちゃん!」
「えぇ! 合わせます! リアンお姉様」
リアンとブランが槍を合わせる。
「天罰!」
「神罰!」
「メ~」
二人の攻撃とロコモコの攻撃がマールス・ドラグーンを襲うがマールス・ドラグーンは黒霧でダメージを抑えた。やはり強いな。するとマールス・ドラグーンがリビナの金縛りを強引に解くと大剣を構える。狙いはセチアか!
「コノハ!」
「ホー!」
迅雷にディメンションフォールトが宿る。するとマールス・ドラグーンはハーベラスを倒した同じ斬撃を放ってくる。
「結界!」
「精霊結界!」
和狐とセチアが結界を張るがマールス・ドラグーンの斬撃はあっさり結界を斬り裂いてセチアとすっかりセチアのペットになっているリオーネに斬撃が迫る。
「きゅ!?」
「な…これは激突!?」
「居合い斬り!」
「タクト様!」
俺は斬撃に合わせて迅雷を抜刀し、斬撃を止める。
「やらせるか!」
俺は斬撃をなんとか弾き飛ばした。危なかった…かなりギリギリだったぞ。するとまたマールス・ドラグーンが大剣を構えてくる。
「きゅ!」
セチアから飛び上がったリオーネが光線を放ち、攻撃の阻止に動いたが黒霧で弾かれる。するとリオーネが俺の肩に乗ってきた。
「きゅきゅ!」
やる気満々だな。ならこれに答えてこその召喚師だろう。
「コノハ! アテナの加護を俺とリオーネに頼む!」
「ホー!」
俺は迅雷を鞘に収めて居合い斬りの構えを取る。すると力を貯め終わり、マールス・ドラグーンが大剣を上に上げる。
「居合い斬り」
「きゅ! きゅ! きゅ!」
俺の転瞬をしながらの居合い斬りが決まり、万雷が発動するとリオーネが追撃で光線を連射するが倒せない。しかし既にみんなが俺の攻撃を信じて準備を整えてくれていた。
「精霊魔法アースフォース!」
「星波動!」
「聖波動!」
セチアのアースフォースとリアンの星波動、ブランの聖波動がマールス・ドラグーンに直撃するが生きている。しぶといな。そう思っているとまたリビナが雷竜の鞭で縛り上げる。セフォネがハルペーで襲いかかった。
「とどめをさしちゃいなよ! セフォネ!」
「任せよ! チャージスライサーなのじゃ!」
渾身のハルペーのチャージスライサーがマールス・ドラグーンを貫いて消えた。
「倒したか…いつつ」
流石に転瞬を使ってからの居合い斬りはやばかったか…相手が鎧であることも影響して、手首を痛めた。
「きゅ~」
リオーネが心配して舐めてくれた。リオーネがデレたよ!俺がそう思うとリオーネはセチアの元に向かった。さっきの心配はなんだったの!?む?第六感が地面に反応した。なんだ?
俺が地面を見ると複数の影がこちらに向かってきてた。やばい!?手首がいかれている!
「…影呪縛」
ノワが影の動きを止める。
「…にぃの影はノワの住処。忍び込もうとするなんて絶対に許せない。影操作!」
動いていた影から影の棘が発生し、中に潜んでいた敵が棘に貫かれて影から強引に飛び出す。
ゴブリンハイアサシン?
? ? ?
こいつがメルたちが言っていた奴か。すると爆弾を投げてきた。
「かまくら!」
ルミがかまくらでガードする。
影移動や影潜伏を使えるとは正しく暗殺者だが、俺の影に潜り込もうとしたことがノワの怒りに触れた。
「…魔眼、黒死病、死の宣告。ただじゃ殺さない。沢山苦しんで二度とにぃの影に手出ししないようにしてあげる」
ゴブリンハイアサシンたちは決してやってはいけないことに手を出してしまったようだ。魔眼で動けなくなり、黒死病と死の宣告を受ける。これにはマヤさんもドン引きだ。
「うわ~…普段床をゴロゴロばかりしているノワちゃんだけど、ひょっとしてギルマスの召喚獣の中で一番怖いのかな?」
「んん~…どうだろう? みんな、怒らせるとわりと」
「「「「タクト(様、先輩、はん)?」」」」
「いや、みんな怖くないぞ」
「あはは~…ギルマスも大変だね~」
マヤさんに同情された。するとリリーたちがやってきた。
「全滅させたよ! タクト!」
「敵は残っていますか! タクトさん」
「あ、ファリーダが戦っているところ」
ファリーダを見るとちょうど勝負を決めるところだった。チェスとクリュスが共同でマールス・ドラグーンの大剣を受け止めており、ミールが寄生木と森林操作で縛り付けている。
「「氷結波動!」」
「聖剣解放! やぁああ!」
「なかなか楽しめたわ! これはそのお礼よ! 魔王技イフリータダンス!」
伊雪とルミの氷結波動とルーナの聖剣解放が直撃して吹っ飛ばされた先にファリーダが待ち構えており、イフリータダンスでマールス・ドラグーンを倒した。
「終わったみたいだな…残りは黒鉄たちに任せよう」
「「「「はーい」」」」
「…ん。罪人処理終了」
ノワも終わったみたいだ。俺たちが待っている間にも戦況が動く。城壁の方では爆発が次々、発生する。これで外の戦闘も始めるはずだ。するとメルたちがやってきた。グレイたちは全員無事だ。流石だね。
「お待たせ!」
「マールス・ドラグーンに手こずったわ」
「俺たちもだよ。もうここら辺の敵はボロボロだろう。先に進もう」
「「「「おぉ!」」」」
こうして俺たちは菅原道真がいる建物に向かった。




