#817 谷の砦での偵察
昼食を食べてからゲームにログインする。リリーたちのご飯を作っていると次の敵砦の情報がもたらされた。
「この地図では不明だった左右の黒い箇所は谷底ではなく溶岩だったのか…」
「落ちたら、水上歩行か水中行動以上のスキルと耐熱…いやそれの上位スキルがないと即死でしょうね」
「だな…」
俺にはイオンの加護と称号があるから恐らく無事だと思うが、飛び込む訳にはたぶん行かないだろうな。
「溶岩の中に敵の姿は確認出来ましたか?」
「出来ませんでした…ただあの一本道を見ると絶対に敵が潜んでいると思います」
「偵察で確認出来たのは谷は飛行禁止エリアということと谷の砦に設置された大砲ぐらいですね」
まぁ、飛行は封じてくるよな。溶岩の中で戦闘した経験がないからリスクがありすぎる。
「やはりここは内から崩すしかないかな…」
「潜入ですか? でも普通にさせてくれるでしょうか?」
「無理だろうな。でも試す価値はある。そのためには探りを入れる必要があるな」
「お! 暇だし、やるなら付き合うぞ。タクト」
暇をしているのはアーレイたちも一緒だ。寧ろ俺より遥かに退屈だろう。
「ちょっと待ってください。まさか皆さんだけで潜入するつもりですか!?」
「流石にしないよ。ただこの一本道を通って、敵がどう動くのか見てみたいんだ」
「確かにそれが知れたら、敵の戦略や戦力を知ることが出来ると思いますけど、大丈夫ですか?」
まぁ、危険な任務だからな。心配は当然か。
「大丈夫だ。昨日はみんなに結構攻略を任せちゃったからな。俺たちも砦の情報集めをして、昨日の分のお返しをしないとな」
「あ、命の心配じゃなくて、一人で砦を潰してしまう心配をしているんです」
そっちの心配ね。
「確かにタクトならリリーちゃんたちと砦を一人で落としそうだな。」
「菅原道真を相手にするかも知れない状態で出来るわけないだろう。どんな罠があるかもわからないし、無茶するつもりはないからから安心してくれ。俺も恨まれるのはごめんだ」
流石に黙って砦を潰したら、みんな怒るだろう。
「それならいいですけど…一応俺たちも同行していいですか?」
「お願いしようと思ってたよ。もし俺たちが死に戻ったら、情報を砦に伝えてくれないと困るからな。アーレイ、参加者を集めてくれるか? 移動は俺が担当するよ」
「おう!」
ということで俺たちとシフォンたちに希望者と共に敵の砦を探ることにした。
「あれか…実際に見ると想像以上に長い一本道だな。イクス」
「溶岩の中に無数の魔力あり。大型から小型まで様々です。マスター」
「砦の中は分かるか?」
「妨害されて分かりません」
ま、ダメだよな。今回は敵の動きを見るための戦いだ。よって、スピード重視でリリー、イオン、恋火、アリナ、グレイ、虎徹、ゲイル、白夜、優牙、ヒクス、スピカ、ハーベラスで挑む。
俺たちが堂々と一本道に立つが攻撃も砦の動きもない。
「来るなら来いって感じだな…今回は敵情視察だ。敵を倒すのはいいけど、深入りしすぎないようにな。特にリリー」
「わかっているよ~。タクト~」
「それならいい。みんなも準備はいいか?」
「「「「はい(おう)!」」」」
俺はアリナとスピカに乗って、通常の速度で一本道を渡って行く。すると中間地点で敵が一斉に動いた。
「左右の溶岩の中からたくさん来るの!」
アリナには音での探知を担当してもらっている。溶岩から出てくるなら水の音がするはずだし、大砲や城門の動きがあるなら音は発生するから今回の敵情視察には最適と判断した。
「来るぞ!」
全員が構えると溶岩から無数の敵が出てきた。
ラーヴァ・デビル?
? ? ?
ラーヴァ・デーモン?
? ? ?
これは予想通り。溶岩の中から出てくる敵で敵が魔王軍なら溶岩の悪魔が出てくるだろう。こいつらは火山弾と炎魔法、爆魔法を使ってきた。地味に強いというのが感想だ。後、溶岩から攻撃してくるのが嫌らしい。プレイヤーの殆どが溶岩に対応できないことを知っているようだ。
しかしイオンは例外だ。迷うわず飛び降りたイオンは溶岩の上に着地するとラーヴァ・デビルとラーヴァ・デーモンに襲いかかる。するとラーヴァ・デビルたちは溶岩の手を伸ばして爪で攻撃して来る。普通ならかなりやばい攻撃な気がするがイオンは全ての攻撃を躱して、間合いを詰める。
「氷雪刃」
イオンが走りながら斬り裂くとラーヴァ・デビルたちが凍り付く。するとラーヴァ・デーモンは溶岩の斧を取り出す。そしてイオンに攻撃をするがあっさり斬られて凍り付く。するとラーヴァ・デーモンは全身から炎を滾らせて、氷結を解除した。
「簡単には倒させてくれませんか…」
イオンが奮闘してくれたおかげで俺たちへの攻撃が緩くなり、退路確保のために一部隊を残して前進する。出来れば敵の砦の動きまで見てみたい。するとアリナが反応する。
「城門の大砲が動いたの! 後、また溶岩から何か来るの!」
この位置が城門の大砲の攻撃範囲か…すると溶岩の中から新しい敵が現れた。
ラーヴァ・サーペント?
? ? ?
ドラゴンがここで来るか…しかも左右から二体。こいつらが襲いかかってきた。
「天壁!」
「ガァ!」
リリーが天壁、グレイが神障壁でラーヴァ・サーペントの攻撃を止めるとゲイル、白夜、優牙、ヒクスが攻撃をする。そして砦からの攻撃はハーベラスが撃ち落とした。ここまでは順調だ。
「リリーにみんな、ここで少し粘ってくれ。もう少し行ってみたい」
「わかった! 気をつけてね? タクト。アリナちゃん、虎徹、スピカ。タクトをお願い」
「自信が全くないけど、やれるだけ頑張って見るの」
「きっと大丈夫だよ。ここは任せて」
俺は虎徹を引き連れて更に前に進むとアリナが察知する。
「左右の溶岩から巨大な音が聞こえるの! それと砦が開くの! お兄様!」
俺たちは立ち止まると溶岩の中から完全武装した溶岩の巨人が現れた。
ラーヴァ・ゴライアス?
? ? ?
これはダメな敵だ!ゴライアスは旧約聖書で登場するゴリアテというペリシテ人の巨人兵士の英語読みなのだが、巨人というより盾と槍を装備した巨人型のゴーレムって感じだ。
これはただの感覚だが、セグラントの試練で戦ったアリマスポイと同格かそれ以上な気がする。そして砦からもやばい敵が姿を見せた。
ラーヴァ・ドレイク?
? ? ?
マールス・ドラグーン?
? ? ?
溶岩の身体を持つ翼がないドラゴンに漆黒の鎧を着た竜騎士が現れた。
「撤退するぞ!」
俺たちが急いで来た道を引き返すと逃げ道を塞ぐように一本道の入口にラーヴァ・ゴライアスが左右に二体ずつ現れて、更にラーヴァ・サーペント、ラーヴァ・デーモンが追加させる。完全に殺す気満々だな!だが、こちらも舐めて貰ったら、困る。
「来い! ブリューナク!」
今日は平日だから俺が持っている伝説の武器は全て俺が持っている。ブリューナクの狙いはラーヴァ・ゴライアスだ!俺がブリューナクを投げるとラーヴァ・ゴライアスは盾から絶対防御を使い、ブリューナクを弾く。だが、俺は投擲操作でブリューナクを操り、弾かれたブリューナクは再度ラーヴァ・ゴライアスに襲いかかると五枚の障壁を突破し、倒したと思ったがラーヴァ・ゴライアスは蘇生する。
これはもう逃げるが勝ちか。リリーたちと合流して、空間歪曲を使うとラーヴァ・ゴライアスの先に空間歪曲を作れない。うざったい!
「タクト! 危ない!」
何!?
「ガァアア!」
俺の背後から第六感すら反応しない見えない斬撃が飛ばされ、それを虎徹が防いでくれた。使ったのは背後から迫っているマールス・ドラグーンだ。さっきの攻撃で虎徹が後ろに下がらせられた。こいつも強いな。
「よくもタクトを狙ったな~!」
「待て! リリー! ここで戦ったら、全滅だ! イオンと一緒にラーヴァ・ゴライアスをなんとかしてくれ!」
「わ、わかった!」
リリーが空間跳躍でイオンの元に向かうと二人が出口のラーヴァ・ゴライアスとぶつかる。
「虎徹はマールス・ドラグーンの対処を頼む。グレイは先行して撤退を援護してくれ。なんとしても逃げ切るぞ!」
グレイが一本道に上がってきたラーヴァ・デーモンたちを吹き飛ばし、道を開ると俺たちを狙ってくるラーヴァ・サーペントたちに仲間と共に神雷を降らせて足止めしてくれる。
一方虎徹は背後からの謎の攻撃を完璧に対処してくれており、足止めも兼ねて神鎌鼬で攻撃するがマールス・ドラグーンは装備している大剣で弾く。その間に虎徹は少しずつ下がる。
みんなが援護のおかげで俺たちは最後の難関であるラーヴァ・ゴライアスだ。
「リリー! イオン!」
「任せて! タクト! 覇撃!」
「例え溶岩でも凍らせて見せます! 氷獄!」
イオンは宣言通り溶岩ごと凍らせてしまった。長続きはしないだろうが撤退の時間稼ぎには十分だ。問題はリリーにあった。
「倒した~! あつ!? 何? あ」
ラーヴァ・ゴライアスを吹き飛ばした結果、空から溶岩が降ってきた。
「「「「リリー(お姉ちゃん、お姉様)!!」」」」
「わわ!? ごめんなさ~い! え~っと…え~っと…どうしよう!」
ここで混乱するのか!?というかこれはまずい!
「頭に当たったら、禿げちゃうの!」
「安心しろ。その時はきっと頭ごと溶けてる」
「冷静なの!」
「ほら」
俺はアリナにいつも愛用していた金羊毛のローブを被せる。これで少しはガードになるだろう。するとここでアリナが見せる。
「気流操作なの!」
突如突風が吹き、溶岩が僅かに通路からズレる。
「これが限界なの…あ」
するとハーベラスが溶岩が降ってきているところで止まる。傘になってくれたみたいだ。
「アリナはこのまま続けてくれ!」
「わかったの!」
「今の内だ! 全員、突っ込むぞ!」
「「「「おぉ!」」」」
俺たちは一本道を抜けるとハーベラスもこちらに来て、撤退が完了する。
「よくやった…ハーベ」
「ガウ!」
俺とアリナ、スピカが虎徹に弾き飛ばされるとハーベラスが真っ二つに斬られ、召喚石に戻る。マールス・ドラグーンの仕業だ。
「あいつ!」
「天波動!」
「極寒波動!」
「ハーミットブレス!」
「ドラゴンブレスなの!」
俺の怒りに答えるようにリリー、イオン、恋火、アリナが攻撃が放つが魔素がマールス・ドラグーンたちの周囲を覆い、三人の攻撃をガードする。黒霧の上位スキルか!すると大剣をこちらに向けて、軽く動かす。かかってこいと言いたいわけだな。
「タクト!」
「俺も今すぐあいつを倒したいが、ここで戦ってたら、頑張ってくれたハーベラスに申し訳がない。このまま引くぞ」
「…わかった」
俺たちが安全圏に脱出すると偵察隊が来てくれた。
「お疲れ様です。その…大丈夫ですか?」
「ふぅ~…大丈夫だ。敵にあの後、動きはありましたか?」
「追撃の気配はありませんでした。あのマールス・ドラグーンも砦の中に帰っていきましたよ」
「そうか…俺たちはこの結果をみんなに伝えに砦に戻ります。引き続き、監視をお願い出来ますか?」
「もちろんです!」
俺たちは砦に帰る途中でジークの背中で俺はリリーたちにだけ聞こえる声で言う。
「…あのマールス・ドラグーンは絶対に倒すぞ」
「「「「もちろん(です、なの)!」」」」
ハーベラスが一撃だったことを見るとあいつの大剣かスキルには不死殺しか加護を封じる能力があるんだろうがそんなこと知らん!ハーベラスを倒した報いは必ず支払って貰う。




