#815 九尾の召喚師VS天夜叉
俺が驚いているとインフォが来る。
『飛行制限が解除されました』
建物が壊されているし、天夜叉は浮遊しているから空中戦をこなせるんだろうな。
天夜叉は夜叉の種類の一つとして知られている。そもそも夜叉はインド神話で鬼神として扱われ、日本では毘沙門天の眷属と言われている。同じ眷属である羅刹はこのゲームでは邪鬼の進化として登場しているのが、名前から見ても第五進化レベルだろう。
「生命力が回復しているぞ!?」
「一気に仕留めるよ! みんな!」
メルたちが飛び出したがリリーたちは俺を守るように武器を構えている。いつもなら対抗心を出して、飛び出すのにリリーたちは成長したな。というかこのままはやばいな。がしゃどくろをまだ倒してない。
「せ、先輩…結界が…きゃ!?」
「…にぃ、止められない」
リアンたちの声を聞いて俺ががしゃどくろを見ると巨大化しており、俺たちに向けて巨大な骨の手を振り下ろして来る。さっきより攻撃が速い!しかも激突の効果で躱せない。あの手のサイズは空間歪曲では無理だ。
「コノハ! 激突の解除を頼む! イオン、時間遅延だ」
「ホー!」
「はい! 時間遅延!」
コノハが影分身でがしゃどくろの手に当たることで激突の効果を解除し、イオンが時間遅延で逃げる時間を稼いでくれたおかげで俺たちは全員がしゃどくろの攻撃範囲から逃げた。
すると外れた攻撃からとんでもない衝撃波を受ける。いやいや、今のでこの建物全壊しているだろう。しかしこの状況ならこちらもある程度、追加召喚出来そうだ。
「レギオン召喚! 来い! 黒鉄、ヒクス、ストラ、月輝夜、蒼穹、コーラル、ジーク!」
ディアンと夕凪は残りのスペース的に召喚出来なかった。これで戦力を分けれる。
「グレイたちはしゃどくろを倒してくれ! 俺たちが天夜叉をやる!」
「「「「ガウ!」」」」
俺が指示している間に状況は動く。攻勢に出たメルたちに対して、天夜叉はメルたちの動きを念動力で止めると壁にぶつけると天夜叉の周囲に鬼火と謎の気弾が周囲に展開され、メルたちに当たると爆発した。これにすぐさまミライが回復させるがこの結果、天夜叉に狙われる。
「やらせない! 光閃!」
ミライを狙った天夜叉とリリーが薙刀とレガメファミリアでぶつかり合う。
「はぁ!」
すぐさま背後からイオンが襲いかかると衝撃波でリリーとイオンが吹っ飛ばされる。そして天夜叉が薙刀の石突で床を叩くと俺たち全員に木の根が絡みついて来た。
「「「紅炎!」」」
「ヒヒーン!」
すぐさま恋火と和狐、ファリーダ、ダーレーが木の根を焼き払い、俺たちを助けてくれるとがしゃどくろのパンチが俺に飛んで来ていた。手を握ってくれて助かった!あのサイズなら行ける!
「空間歪曲!」
がしゃどくろのパンチが空間に吸い込まれる。そして俺は天夜叉に向けて、がしゃどくろのパンチをいくようにする。すると天夜叉は片手でがしゃどくろのパンチを止めた。
うん。こいつはエンゲージバースト案件だね。俺がそう思っているとリリーとイオンが反応する。
「「やらせない!」」
イオンが神速で襲いかかると天夜叉はイオンを殴り飛ばし、光速激突で迫るリリーの顎をピンポイントで蹴り上げた。この二人のスピードを完全に見切るのか。流石は毘沙門天の眷属と言うべきだな。俺の第六感が反応すると天夜叉が薙刀を空に掲げる。必殺技か!
「止めろ!」
「はい! ペネトレイトアロー!」
「炎輪!」
「エネルギーキャノン! 撃ちます!」
みんなの攻撃は障壁で防がれた。ダメだ…止められない。
「怨嗟の炎よ。渦巻きて敵を滅せよ! 天魔怨炎転!」
天夜叉の下から紫炎の竜巻が発生し、空に飛ばされたリリーに直撃する。リリーは必死にガードを固めていたから多分大丈夫だ。すると竜巻がどんどん大きくなる。あぁ…建物の外に出れないからこれは逃げ場がない攻撃だな。
「タクトさん! 私とエンゲージバーストを!」
「いや、恋火と和狐と行く。いけるな? 二人共」
「行けます! ひ!?」
「イオンはん、そんな睨まれると怖いどす」
俺はイオンに言う。
「あいつは間違いなく今までの敵の中でもトップクラスの敵だ。ずるいが複数で戦ったほうがいい。今のイオンとリリーなら俺たちに動きを合わせられるだろう? 悪いが手を貸してくれ」
「そ、そういうことなら仕方ないですね」
イオンを除く全員がちょろいと思った。
「俺たちがあの必殺技を破る! 行くぞ! 二人共!」
「「はい!」」
俺たちはエンゲージリングを掲げる。
「「「エンゲージバースト!」」」
俺は九尾の姿となる。手には迅雷と恋煌。腰には紅蓮の鉄扇と恋月があり、尻尾にグランアルヴリング、スカーレットリング、コールドアイロンソード、ルナティックミスリルソード、黄龍の杖、水樹の杖、千魔悪龍の封印杖がある。まさかの虎徹スタイルだ。ここにファミーユが加わる。
「行くぞ!」
俺たちが紫炎の竜巻に飛び込む。この中は炎と怨念が渦巻くだけで竜巻としての風の効果はなかった。それならリリーとイオンの加護に加えて、称号や武器の効果もある俺たちには通じない。
『『大祓!』』
「シュトルムエッジ!」
恋火と和狐が呪いを消し去り、俺がシュトルムエッジと魔力切断の効果で消し飛ばした。この瞬間にイオンが天夜叉に新しい武技を使う。
「流水乱舞!」
流水乱舞は海錬刃を使用している状態での全十四連撃の攻撃を放つ。これを天夜叉は受け切れないと判断し、障壁でガードする。
「はぁああああ! そこ!」
イオンが見事に障壁を破った。
「時間遅延!」
『タクトさん!』
イオンはサポートまで完璧だな。流石だ。
「雷竜解放!」
『炎竜解放!』
『式神! 天魔雄神!』
『『『『アクセラレーション』』』』
俺、恋火が切り札を切り、ファミーユでアクセラレーションを使う一方で和狐は天魔雄神を呼び出した。こいつが相手なら使うべきと判断した。
連携が発動すると雷竜と炎竜が合わさり、一瞬で天夜叉に直撃する。更に天魔雄神が雷化して、連続で斬りかかると万雷の追撃が発動する。これで天魔雄神が消えるが時間を稼いでくれたことに感謝したい。
「あちち…あ! はぁああ! 天涯両断!」
防ぎ切ったリリーがすぐに状況を察知して、俺たちの攻撃に合わせて光の巨剣が振り下ろす。天夜叉は麻痺を直し、リリーの攻撃を受け止めたが落下する。
「まだだ! 畳みかけろ!」
「天雨!」
「氷柱!」
「マジックブラスト!」
地面に落下したところをメルたちが狙うが薙刀のひと振り吹っ飛ばされてしまう。そして俺とリリーとイオンの攻撃に対して天夜叉は薙刀を回転させる。
「炎熱地獄車!」
炎を発生させると薙刀が炎の盾となり、俺たちの攻撃を弾いた。そしてそのまま俺を狙って突進してくる。
「日光! ガンマレイバースト!」
「冷凍光線! 極寒波動!」
リリーたちがなんとか止めようとするが止まらない。
「やらせない! 光速激突! ドラゴンダイブ!」
リリーが光速のドラゴンダイブでぶつかると弾かれる。
「それなら大海波動!」
イオンの大海波動でも勢いは止まらない。激突効果があるみたいだから逃げれないな。
「な…く! 氷旋風! 瀑布! ダメ! 止められない! タクトさん! タクトさん?」
今のイオンなら俺の考えが分かるはずだ。
「分かりました!」
イオンがグレイたちのところに向かった。後は俺次第だ。
「ふぅ…やるぞ」
『『はい!』』
『荒魂!』
『血醒どす!』
俺たちの力が解放される。するとコノハが来て、シャイニングを両方の刀に宿してくれた。
『ありがとうございます! コノハさん! 聖火!』
『蒼炎! 攻撃の護符!』
これで準備は出来た。俺たちは天夜叉とぶつかる瞬間を狙う。
「空間歪曲!」
天夜叉は吸い込まれて、月輝夜のレージングルに拘束されていたがしゃどくろの顔面にぶつかる。リリーと違って、ノリが悪くて申し訳ない。
「今です!」
「光鎖!」
「任せろ! いっけー!」
「きゅ!」
ブランの光鎖、ユウェルの熱鉄の黒縄、ジークの聖鎖でがしゃどくろごと天夜叉を拘束した。これで逃げ場はない。
「「「「ドラゴンブレス!」」」」
「天罰!」
「「暗黒波動!」」
「「「「ガァアア!!」」」」
「魔王技! デモンクラッシャー!」
みんなの大技が天夜叉とがしゃどくろに降り注ぎ、メルたちもチャンスと理解して必殺技を放つ。俺たちはその間に転瞬で天夜叉の背後に回った。
『『「狐技! 火炎車!」』』
俺たちの突進技を天夜叉は薙刀で受けるが今度は俺たちが薙刀を弾き飛ばし、火炎車が天夜叉とがしゃどくろに決まる。
『やりました!』
天夜叉を倒した手応えを感じて、恋火が喜びの声を上げた瞬間、第六感が発動する。
「起死回生」
俺は咄嗟に迅雷を振るうが起死回生で蘇生した天夜叉に躱され、懐に入られた。
「慧眼!」
『見切り!』
『幻影!』
俺たちは咄嗟に回避スキルと幻影を使うが天夜叉の手が俺たちの心臓に置かれた。躱せない!?
「鬼気発勁!」
「が!?」
とんでもない爆発音と共に衝撃波が俺の心臓を襲うと俺は思わず、刀を手放してしまい、吹っ飛ばされる。地面に激突し、生命力が全損する。
「…兄様だけは絶対に死なせない! リヴァイブ!」
ミライの蘇生魔法で復活する。
「けほ! ぐ…」
『タクトお兄ちゃん!? 大丈夫ですか!?』
『自己再生どす!』
『あ、あたしも自己再生!』
和狐も咄嗟の判断でなんとか立て直す。一方天夜叉は薙刀を自分の手に戻し、俺たちに薙刀を振り下ろして来た。
「な…めるな!」
俺は薙刀の攻撃を紅蓮の鉄扇で受け止める。
『蒼炎!』
『聖火!』
「居合い斬り! 炎輪!」
蒼炎と聖火が宿った恋月を抜刀し、天夜叉の腹を斬り裂くと紅炎が発動する。そして薙刀を紅蓮の鉄扇で弾くと紅蓮の鉄扇を振って炎輪が天夜叉を襲う。これを天夜叉は気を集中させた腕でガードし、炎輪を弾くが天夜叉は地面で息を吸っている俺たちの姿を見る。
『『「ハーミットブレス!」』』
渾身のハーミットブレスが天夜叉に直撃した。すると俺たちを守るようにリリーたちとグレイと虎徹がやってきた。がしゃどくろを仕留めたみたいだな。
天夜叉の姿が見えると滝夜叉姫の姿に戻っており、光を放ち消えようとしていた。すると薙刀を横に差し出すように持つ。
「私の怨念が晴れるほどのいい戦いでした…薙刀『鬼夜叉』、あなたたちに使って欲しい」
俺が受け取る滝夜叉姫は優しい笑顔を浮かべて光となって消えた。俺が黄泉の国で平将門に会える事を祈っているとインフォが来る。
『おめでとうございます! 黒の砦を攻略しました!』
『黒の砦で防衛することが可能となります』
『アリナのレベルが10に到達しました。気流操作、加速を取得しました』
『風刃が鎌鼬に進化しました』
名前 アリナ ドラゴニュート・ストラトスフィアLv6→Lv10
生命力 138→140
魔力 219→231
筋力 100→102
防御力 85
俊敏性 289→305
器用値 140→144
スキル
高飛翔Lv4→Lv6 投擲操作Lv4→Lv5 気流操作Lv1 回転角Lv2 激突Lv2
超感覚Lv4→Lv6 竜眼Lv4→Lv5 音響探知Lv1 疾駆Lv4 加速Lv1
旋風Lv2 風刃Lv1→鎌鼬Lv3 連撃Lv5→Lv6 充電Lv3 放電Lv3
閃電Lv2→Lv3 超低周波Lv3 防風壁Lv1 空気弾Lv3 風魔法Lv8
雷魔法Lv5 衝撃波Lv2 集束Lv1 風波動Lv4→Lv5 逆鱗Lv1
竜魔法Lv2 竜技Lv3 竜化Lv1 ドラゴンブレスLv2→Lv3 起死回生Lv1
空竜の加護Lv3
勝ったか…アリナも強くなって良かった。
俺は手放してしまった迅雷と恋煌を回収する。刀を手放してしまうとはまだまだ修行が足りないな。するとエンゲージバーストが解除されて、倒れる。
「疲れたな…」
「はい…滅茶苦茶強い人でした」
「今でも勝てたのが信じられまへん」
するとみんなが集まる。
「…お疲れ様。兄様」
「ミライ、助かったよ」
「…うん。えへへ~」
俺がミライの頭を撫でても今回ばかりは誰も文句は言わない。するとリサが言う。
「結局、最後は兄ちゃんかぁ~」
「がしゃどくろに止めをさせたのが一応の成果かしら?」
「その止めを刺したメルちゃんは死んじゃったけどね…」
事情を聞くとがしゃどくろを倒したと思ったら、いきなり地面からがしゃどくろの手が現れて、メルが捕まると地面に引きずり込まれて死んでしまったそうだ。
「呪滅殺とは違うみたいだな」
「見た目から見て、道連れって感じだったわ」
なるほど。それを聞くと納得してしまうな。しかし呪滅撃と違いが分からないと思ったら、ミライが蘇生させることが出来なかった。これは危険なスキルだな。ここでケーゴが聞いてくる。
「それでその薙刀、どうするんだ? タクト?」
鑑定する。
鬼夜叉:レア度9 薙刀 品質S
重さ:120 耐久値:60 攻撃力:500
効果:万物切断、衝撃波、魔力切断、人特攻(究)、炎輪、鬼神化
和泉守兼定が作ったとされる名薙刀。美しさと切れ味、使いやささを兼ね備えた薙刀で夜叉の力が宿っているとされている。
偃月刀より薙刀は刃が細く、軽いことが分かるな。注目は鬼神化。夜叉は鬼神と言われているから夜叉になるスキルってことになるのかな?恐らく槍で使えると思うが、なんか合わないな。一番可能性があるのは千影だろうか?
「イベントアイテムと交換してもいいぜ?」
「それだと意味ないと思うよ? 多分イベントでドロップしたアイテムはポイント交換対象だろうからね。その薙刀も和泉守兼定が作った薙刀っていう設定みたいだし、こういうのは何本あっても不思議じゃない」
レッカの言うとおり、刀工が作った刀なんて沢山あるのが当たり前だ。同じ名前の刀が現実に沢山あったりするものだが、少なくともこの薙刀は直接、滝夜叉姫から受け取ったものだから、これを差し出すのはちょっと抵抗があるな。
「んん~…保留」
明らかにみんなラストアタックを狙っていたし、特殊な伝説の武器だ。即決はできないな。するとノワが提案する。
「…イオンが持てばいいと思う」
「えぇ~、イオンちゃんばかりずるいよ。ノワちゃん」
「…鬼神化すると鬼イオンになる」
それはやばいな。勝てる気がしない。
「ノワ、タクトさん、リリー、ちょっとお説教をしましょうか」
「俺もか!?」
「リリーも!?」
「二人共、馬鹿なことを考えていたことはわかってます! ほら! こっちに来て正座です!」
その後、シフォンたちがサバ缶たちに報告して生産職がやってきた。最初は研究員の人から謝罪を受けた。
どうやら天夜叉のことが掲示板に書かれていたらしいのだが、滝夜叉姫の登場とボスが菅原道真と思っていたことが原因で天夜叉の話題が出る前に俺たちに報告してしまったらしい。気づいた時にはネビロスの通信妨害範囲に俺たちが入ったことで連絡不能になったそうだ。
確かに驚いたし、情報があれば対策を練れたのだろうが、結果的には攻略出来たし、彼は一刻も早く情報を俺たちに届けようとしてくれただけだ。結果的には失敗してしまったことになったけど、俺たちはそこまで怒ることじゃないと考えて許した。気持ちを切り替えて、状況を説明する。
「敵が攻め込んでくる城門が無傷で助かるな…第五、第四砦の修復しないといけないからよ」
鍛冶職や石工の人たちは大変みたいだ。どうやら砦が無事の数もボーナス対象みたいだから、ドワーフとエステルの職人総出で修復を急いでいるみたいだ。
「砦の内部は私たちが捜索するわね。タクト君たちは疲れているでしょう? 今日は休んで大丈夫よ」
「ありがとうございます。それじゃあ、俺たちは帰るか」
ルインさんたちはテキパキ動いていく。俺たちは後を任せてログアウトすることにした。
 




