#813 黒の城門の仕掛けと黒の砦内戦闘
ゲームにログインすると和狐が着物を着て、待っていた。
「あ…タクトはん。え、えーっと…ど、どうどすか?」
「…あ。ごめん。いきなりちょっと思考が止まった」
「ふふ。タクトはんもそういう顔をするんどすな。待ってた甲斐がありました。それでどうどすか?」
和狐の着物は薄いピンクの生地に桜が描かれた着物だった。和狐とはちょっとイメージが合わないけど、冒険したのが伝わってくる。そして俺は気づいてしまった。
「もしかしてその桜は」
「…はい。タクトはんとエンゲージした時に見た桜をイメージして作りました」
やっぱりそうなんだ。これは照れるな。
「「…」」
なんだ!この沈黙は!小っ恥ずかしい!するとドアからブランが顔だけ見せて来た。
「あの…私はどうしたら、いいでしょうか? 私も着物にきがえたんですけど…」
「あ! そうでした! ブランはんの着物も完成したんどす」
お、遂に一日二着作れるようになったんだな。
「それじゃあ、見せてくれるか?」
「は、はい…」
ブランが着物を見せる。ブランの着物は桜色の着物に天使の羽がデザインされている。
「ど、どうでしょうか? 主」
「おぉ~! 思ったとおり、可愛い!」
俺の発言にブランが反応する。
「思ったとおりということはこのデザインを考えたのは主ですか!」
「そうだぞ。ブランはあまりピンクとか可愛い色は避けているだろう?」
「ぐ…それをわかっていて、このデザインをしたんですか…」
む?これはミスったかな?
「嫌だったか?」
「いえ、嫌というか私には似合わないのではと」
「それなら問題ないよ。さっきも言ったけど、可愛いと思うし、今までと違うブランの魅力が際立っていると思うぞ」
「そ、そうなんですか?」
ブランが自分の服を確認する。するとリビナが茶化しにやってきた。
「ぷぷ…似合ってるよ。ブラン」
「く…主! リビナにもこの着物を着させてください!」
「ボクが天使の羽がある服を着るのはどう考えても変だよね!?」
リビナとブランと言い争いを始めたので、鑑定する。
桜の着物:レア度9 防具 品質S-
重さ:5 耐久値:1000 防御力:30
効果:魔素攻撃無効、精神攻撃無効、天の加護
天の衣から作製した女物の着物。薄桃色の布地に桜がデザインとなっているおり、可愛さが際立つ着物となっている。天の衣の効果で精神攻撃と魔素から身を守り、天の加護で全ての武器に神聖属性を付与することが出来る。
天使の着物:レア度9 防具 品質S-
重さ:5 耐久値:1000 防御力:30
効果:魔素攻撃無効、精神攻撃無効、天の加護
天の衣から作製した女物の着物。桜色の布地に天使の羽がデザインされており、可愛さが際立つ着物となっている。天の衣の効果で精神攻撃と魔素から身を守り、天の加護で全ての武器に神聖属性を付与することが出来る。
完璧な出来だな。次はセフォネとファリーダか。
「魔王っぽいかっこいいのを頼むぞ」
「あたしも可愛い服なんて作ったら、本気で怒るわ」
「だろうな」
二人の着物を決めた俺は作戦司令部に入るとメルたちから遅いと怒られた。実際に遅れたので、素直に謝るしかない。そして俺は現状をサバ缶さんたちから聞いた。
「結論から言うと最初の砦は攻略の真っ最中よ」
「今日の流れを説明しますね。まず我々は午前中に敵砦の攻略に動きました。そこで敵砦の城門に対してカタパルト、アーバレスト、ゴーレム、上級魔法で攻撃を仕掛けた結果、敵砦の城門の効果で攻撃が反射。これらの攻撃に我々が晒されることになりました」
うわ~…悲惨だ。城門にそんなギミックを仕掛けるとかありなのか。
「被害はどのくらい出たんですか?」
「カタパルトやアーバレストの殆どは壊されたわ…無事だったのはタクトが提供してくれたゴフェルの木で作ったもののみよ」
「びっくりしたよ。アーバレストの矢やカタパルトの大岩を食らってもびくともしなかったからね。掲示板では無敵カタパルトとか言われてる」
俺はそんなものを伐採したのか…凄くない?
「プレイヤーの被害は満月さんたちがある程度、守ってくれるんですが…その後、攻城兵器の使用と皆さんの頑張りで城門の破壊には成功しました。ただ、最初の攻撃で後衛職がほぼ全滅した影響でダメージが蓄積されており、城門の破壊と同時に敵軍の攻撃を受けて、敗走することになりました。これが午前中の戦闘です」
「滅茶苦茶大変だったんだよ? 上から油や火矢、爆弾、武器や防具を腐蝕させる液体とか投げ込まれてね…」
「おかげで午後から修復依頼が殺到して俺たちは大忙しだったぜ」
ここで俺はある疑問を持った。
「召喚師たちはどうしたんですか? 飛行召喚獣やオーガなどが入ればそこまで苦戦するとは思いませんが」
「タクトさんならもうわかっていると思いますが新たな敵が現れました」
現場にいたメルたちが説明してくれる。
「まず召喚獣を襲ったのがフォールン・キューピット。このキューピットが放つ矢で召喚獣たちが魅了の状態異常になっちゃったんだよ。天人の布を装備しているプレイヤーは効果がなかったんだけどね」
召喚獣ではどうすることも出来なかったか~。完全に召喚獣を狙った敵だな。因みに炎化中の朱雀、物理攻撃に強いゴーレムでも魅了になり、動くことが出来なくなったそうだ。俺も気を付けないといけない敵だな。
「もう一体がデザートデビル。蛹姿の悪魔でこいつが土潜伏と土の中を泳ぐように移動する謎のスキル、魔眼、触手からの放電を持っている敵で流砂と砂嵐で私たちの敗走を邪魔して来たの。こいつのせいでかなりのプレイヤーに犠牲が出ちゃったんだ」
流砂は水分を含んだもろい地盤に重みや圧力がかかって崩壊する現象だ。砂漠では地盤が砂だからアニメや映画では人が砂に沈んでいくシーンが描かれている。実際は人が完全に沈むような流砂は滅多に起きないらしいが、ゲームでは当然動きを鈍くされて、沈むそうだ。
みんなも空を飛んで救出やロープを使う方法など考えたみたいだが、空を飛んで助けようとした者にはに魔眼で流砂に落とし、ロープを使った者は体当たりや触手攻撃で流砂に落とされることになったみたいだ。
「つまり待ち伏せされたわけか…」
「うん。戦う前にしっかり探知系スキルを総動員したから私たちが砦破壊に集中している時に動いたみたいだよ」
また厄介な敵だな。午前中だけでかなりのプレイヤーが死に戻ったことは想像出来る。参加しなかったことは申し訳ない。
「次は午後の攻略ですが戦闘開始は夕刻で一度壊した城門はどうやら修復されない仕様のようで、砦の中の攻略を開始しました」
「砦の中はある程度は予想通り。短い路地で剣は使いにくくて格闘家や槍使い、大盾持ちが活躍した感じになったんだ」
「兄ちゃんに見せてあげたかったよ! 私の大活躍!」
リサが敵を殴りまくっている姿を想像するのは難しくない。
ただすんなり攻略させて貰えるはずがなかった。予想通り、建物からは爆弾や火炎瓶、岩が落とされたようだ。一番懸念していた汚物はなかった。これにはみんなホッとしていることだろう。
「この砦の中では今までの敵の装備が変わっていたりしたんだけど、やっぱり新しい敵もいたんだ。それがゴブリンハイアサシン。こいつが糸で首を吊ってきたり、罠を発動されたりして結構なプレイヤーが犠牲になったんだよ」
暗殺者の上位になるとそれぐらいの芸当はしてくるか。判明している能力は気配遮断に影潜伏、影移動、壁移動、空脚、投擲操作、吹き矢。厄介な奴だが、こいつの存在が忍者たちのプライドに触れて、砦を舞台に激しい暗殺戦になったそうだ。普通に見てみたかった。
「その後、敵を広場に追い込んで挟み撃ちにしたんだけど、広場で戦闘中にボスがいる建物から必殺技が放たれてね。敵ごと吹っ飛ばされたんだ」
容赦ねー。あの広場は確かにボスがいると予想していた建物からは遮蔽物がない大きな一本道となっている。狙撃はやり放題だろうな。
「必殺技はどんなのだったんだ?」
「巨大な雷の矢だったね。これでボスはほぼ確定と言っていいと思うよ」
菅原道真だろうな。
「その後はどうなったんだ?」
「ブルーフリーダムのイーナちゃんが魔導銃で飛んでくる雷の矢を撃ち落としてくれて、無事にボスがいる建物に到着。そこで休憩ポイントがあって、ログアウトした感じだね」
「凄かったみたいですよ。お互いに跳弾を含めた読み合いでの撃ち合いだったらしく、それを見ていた銃士たちが援護することが逆に邪魔になると考えて、手出し出来ないレベルの撃ち合いだったみたいです」
イーナちゃんはブルーフリーダムの天才銃士の名前だ。因みにリーダーの名前はマコト。沖田総司のファンで名前を決めたらしく、二人は時々会って、戦っているそうだ。
イーナちゃんと菅原道真の撃ち合いは見ごたえあっただろうな。悔しい!
「もうみんな攻略を始めているよな?」
「もちろんだよ」
「先にボスを倒されたら兄ちゃんのせいだからね!」
「はいはい。って何時から攻略を始めているんです? 結構遅れちゃいましたけど」
みんなが時間を確認する。
「明らかに遅いわね」
「一階に松倉勝家、二階に月見イベントで出てきた中納言たちまでの報告は受けましたがその後の報告は来ませんね」
「ボスの建物は四階までだから中ボスにやばい敵がいる可能性が高いか…」
俺たちが考え混んでいると研究員のプレイヤーが走ってやって来た。
「掲示板で敵の情報が書かれていました! 中ボスは滝夜叉姫とがしゃどくろです! 滝夜叉姫は武器は薙刀で黒炎や妖術を使ってくると書き込まれてました!」
あぁ…これは苦戦しそうだ。滝夜叉姫は平将門の娘とされる伝説上の妖術使いとして知られている。少し説明すると将門の一族は滅ぼされることになるのだが、滝夜叉姫だけは生き残り、怨念を募らせることになる。そして滝夜叉姫は妖術を貴船明神の荒御霊から授かり、朝廷転覆の反乱を起こしたとされている。結局は朝廷の勅命で討伐隊が送り込まれて、最後は討伐隊に倒されることになる。
この戦闘で滝夜叉姫が呼び出したとされているのが、がしゃどくろだ。がしゃどくろは巨大な骸骨の姿の妖怪として知られている。戦死者や野垂れ死にした者などの怨念が集まった妖怪とされており、メルたちの話では妖怪の中でもかなり強い部類の妖怪だという話だ。確かに怨念の強さならトップクラスの存在だろうな。
「考えていても仕方ない! 当たって砕けろの精神だよ! 兄ちゃん!」
リサよ。当たって砕けるとポイントマイナスになることを忘れてないか?しかしここで考え込んでいても仕方ないのは、事実だ。
「それじゃあ、行ってきます」
俺はリリーたちと共に敵の砦に向かった。




