#804 聖輝龍王の試練
俺たちは試練に挑む準備を終えるとリリーに声を掛ける。
「覚悟はいいか? リリー」
「うん! 早く強くなって、タクトやみんなを助けないといけないから早くやろう! タクト」
気合い十分だな。
「それじゃあ、行くぞ」
「うん!」
俺が聖輝龍王の試練を実行するとリリーからとんでもない閃光が放たれ、一瞬で世界が変わった。そこはアフラ・マズターがいた世界と似ていた。
「ここ、来たことあるよね? タクト」
「あぁ…でも俺たちが行ったことがある世界とは多分違う世界なんだろうな」
俺の答えに雲海から現れた聖輝龍王ドォーンドラゴンが答える。
『その通りです。ここは私が住んでいる神域。選ばれた者しか立ち入ることが出来ない場所です』
「聖輝龍王様…」
『よくぞここまで来ましたね…リリー。それにリリーの召喚師様。あなたが究極の召喚師となり、ここまでリリーを育ててくれたことを感謝します』
なんか含みがある言い方だな。
『では、最後の試練を始めます』
聖輝龍王様がそう言うと俺とリリーの間に見えない壁が作られる。突然のことでリリーが驚き、壁を叩いて口を動かしているが声が聞こえない。
『その壁は声やシンクロなどの通信まで遮断するものです。ここからはリリー、あなたが全て自分の意思で決断しなくてはいけません』
「リリーの意思?」
『そうです。まずあなたの進化の道は二通りあります。それを自分の意思で決めなくてはいけません』
俺では決めれないのか…EOのゲームの事を知ってしまっているから、理解出来るな。自分の意思で道を選ぶでこその成長もある。俺の意志は既にみんなには伝えている。俺はリリーが選んだ道を指示しよう。ただその二つの道は今のリリーにとって、残酷な物だった。
『一つ目の道はドラゴニュートのまま強くなる道。もう一つは私と同じ領域である神龍になる道です』
「え…」
リリーが絶句している中、聖輝龍王様は説明を続ける。
『ドラゴニュートのままならあなたは今の幸せを続けることが出来るでしょう。ただし、私と同じドラゴンとなればドラゴニュートより召喚師の役に立つことができるはずです。敢えてはっきりと伝えます。リリー、あなたはドラゴニュートのまま幸せを選びますか? それとも今の幸せを捨てて、強大な力を選びますか?』
「え…え…そんなのリリーには分からないよ~…タクト~」
『召喚師に頼るのではなく、あなたが決めるのです。リリー…それがあなたへの試練なんですよ』
「そ…そんな~…」
リリーがいつにない情けない顔で俺を見る。俺はリリーを信じて黙って見守るとそれを見たリリーが悩みだした。
「今のままタクトと冒険をしたい…でも、敵がどんどん強くなってタクトを守れなくなってきっちゃった…ど、どうすればいいの~!」
リリーが頭を抱えたり、転がったりして一生懸命自分の答えを探す。
「タクトのことが大好き…そんなタクトの役に立ちたい。でもドラゴンになっちゃったら、リリーは…うぅ~! うぅうううう~!」
かなり悩んだリリーだが、偶然目に左手にあるエンゲージリングが映った。そして起き上げると俺の近くに近づいて来た。
「タクト…ごめん! 聖輝龍王様!」
『答えは決まりましたか?』
「うん! リリーはドラゴニュートのままがいい!」
これがリリーの決断だった。
『本当にいいんですね? もう神龍になれるチャンスは来ませんよ?』
「う、うん! リリーはタクトのことが大好き! 神龍の強さよりもこの気持ちを大切にしたい!」
『そうですか』
聖輝龍王様が優しい母親のような顔をした気がした。
『それでは盟約に従い、リリーを進化させましょう!』
リリーに神界の光が集まり、進化が始まる。
『あなたの決意と決断が世界の終焉に抗う力となることを信じてこの名を贈ります。リリー、あなたは今日からドラゴニュート・バースです』
リリーが進化した。そしてインフォが来る。
『リリーがドラゴニュート・バースに進化しました。大剣【天涯両断】を取得しました』
『二刀流、天鎖、指揮、空間跳躍、光速激突、空振、虚空切断、黄金障壁、竜鱗装甲、竜気、英気、時空魔法、守護結界、ガンマ線、天域、烈日、日光、星芒、聖療、残像、迷彩、光閃、変光、光圧操作、光化を獲得しました』
『惑星魔法【ヴィーナス】を取得しました』
『竜化のデメリットが一日となりました』
名前 リリー ドラゴニュート・ホープLv30→ドラゴニュート・バースLv1
生命力 210→260
魔力 236→286
筋力 430→480
防御力 150→200
俊敏性 192→242
器用値 159→209
スキル
星拳Lv31→天拳Lv31 飛翔Lv44 片手剣Lv50 二刀流Lv30 大剣Lv47
鎚Lv24 天鎖Lv1 指揮Lv1 空間跳躍Lv1 光速激突Lv1
空振Lv1 危険予知Lv37→第六感Lv37 超感覚Lv39→神感覚Lv39 竜眼Lv33→天竜眼Lv33 他心通Lv1
星読みLv41→天言Lv41 物理破壊Lv36→万物破壊Lv36 虚空切断Lv1 星鎧Lv33→天鎧Lv33 星壁Lv23→天壁Lv23
黄金障壁Lv1 竜鱗装甲Lv1 星雨Lv22→天雨Lv33 聖櫃Lv8 星光Lv14→天光Lv14
連撃Lv35→多連撃Lv35 集束Lv20→超集束Lv20 超再生Lv27→瞬間再生Lv27 竜気Lv1 星気Lv43→神気Lv43
英気Lv1 神聖魔法Lv1 時空魔法Lv35 守護結界Lv1 星波動Lv24→天波動Lv24
星間雲Lv10 流星Lv10→流星群Lv10 虹光Lv6→星虹Lv6 反射Lv12→全反射Lv12 乱反射Lv12
ガンマ線Lv1 天域Lv1 烈日Lv1 日光Lv1 星芒Lv1 聖療Lv1
残像Lv1 迷彩Lv1 光閃Lv1 変光Lv1 光圧操作Lv1
光化Lv1 逆鱗Lv7 諸刃の一撃Lv1 覇撃Lv1 竜技Lv35
竜魔法Lv13 惑星魔法Lv3 竜化Lv13 ドラゴンブレスLv22 起死回生Lv5
星竜の加護Lv25→天竜の加護Lv25
俺の目の前には俺の背丈よりやや低いリリーの姿があった。服装は鎧の色が金色に変化した。なんとなく美人になるとは思っていたがシルフィ姫様に全然負けていないほどの美人にリリーはなっていた。
壁がなくなり、改めて言葉を交わすが進化したリリーの最初の言葉は謝罪だった。
「ごめん! タクト! リリーは」
「リリーの決断した言葉は全部聞こえていたから謝らなくていいよ」
「へ? 全部?」
「そう。全部」
実は悩んでいる時の声は聞こえなかったが、リリーの答えだけは聞こえていた。 聖輝龍王様が配慮してくれたんだろう。
「せ、聖輝龍王様~!?」
どうやら俺の心を読んで自分の恥ずかしい告白が俺に聞こえていたことを知ったようだ。
「あぁ~!? ダメ! タクト! 思い出さないで~!」
「忘れるのはちょっと無理かな~」
「タクト~!」
リリーに身体を揺さぶられる。うん…大人になってもリリーはリリーのままだな。
「え? どういう意味?」
「なんでもないよ」
「あぁ~! タクトだけ誤魔化した! 教えてくれないならリリーにも考えがあるよ」
リリーはそう言うと何故か抱きついてきた。大人版のリリーにこれをされるのは流石に問題がある気がする。
「え…? あ」
リリーが何を察して、身体をチェックすると聞いてきた。
「へ…変かな? タクト?」
く…いちいち仕草が可愛く感じ…しまった!?
リリーが顔を真っ赤にしてモジモジする。ちょっと待って…そんな反応されると俺も困るんだけど!
『初々しいですね』
「聖輝龍王様!」
リリーが聖輝龍王様に怒る。それを優しい笑みで受け流す聖輝龍王様は流石だな。
「むぅ~」
『ふふ。さて、実はまだ試練は終わっていません。最後のあなたたちの覚悟を私に見せてください』
「覚悟ですか?」
『はい。今から私が本気のドラゴンブレスを放ちます。それをあなたたち二人の力で勝ってみてください。もちろんどんなことをしても現実のあなたたちには影響がありませんので、安心して本気を出して下さい』
良かった…本気で戦うことになると思ってた。
『これは試練ですから本気で戦うことはありえません。私たちが戦うべきところは別にあります。それがどこかはもう知っていますね?』
ドラゴンの試練の上位クエストだな。シルフィ姫様でもクリア出来なかったクエストだ。そこで各龍王と戦うことになるのか…嫌だけど、素材は間違いなく最強クラスの物だろうし…悩ましい。気持ちを切り替えよう。聖輝龍王様の本気のドラゴンブレスがどれだけ凄い攻撃か分からないがやれと言われたら、やるしかない。
「わかりました。リリー、進化した俺たちの強さを聖輝龍王様に見せて上げよう!」
「うん! タクト! 本気で行くよ! 聖輝龍王様!」
『えぇ。今のあなたたちの全力を私に見せてください』
「「エンゲージバースト!」」
リリーが黄金の光となり、俺の指輪に宿るとエンゲージバーストが発動する。進化したリリーとのエンゲージバーストは黄金の竜騎士なのは変わらないが関節や胸にはイエローダイヤモンドがあるデザインとなっていた。
『では、参ります!』
聖輝龍王様が息を吸い込むとまるで世界中の光が聖輝龍王様の口に集まるようだった。こちらもドラゴニュートとのエンゲージバーストでのみ可能とする切り札を切ろう。
『「竜化!」』
『ッ!? ここで使って来ますか!』
これが俺たちの覚悟だ。俺たちは聖輝龍王様に負けない黄金のドラゴンとなる。
『「全宝玉解放! 魔法剣技アルティメットシャリオ、集束!」』
俺たちの意思に答えるように武器たちの力が俺たちの口に集まる。
『「ドラゴンブレス!」』
『ドラゴンブレス!』
お互いのドラゴンブレスがぶつかり合うとやはり押される。するとリリーが叫ぶ。
『タクトと一緒なら例え聖輝龍王様が相手でも負けない!』
「あぁ…行くぞ! リリー! ブリューナク! 神威解放!」
なんでも使っていいと言ったのは聖輝龍王様だ。ならば遠慮はしない!ブリューナクが真の姿を解放すると世界がブリューナクの光に包まれ、その光が俺たちに集まるとドラゴンブレスの火力が急増した
『「いけぇえええ!」』
『ふふ…見事です』
お互いのドラゴンブレスが拮抗し、超爆発する。あ、死んだな。そう思っていると真っ白な世界で聖輝龍王様の声が聞こえた。
『あなたたちの結婚式、楽しみにしていますね』
何故知っているんだ!?俺は驚きと共に転移した。
 




