#796 プリズムケルビム討伐戦
俺がやってきたのは島ではなく、エデンの園に来た。ここで一度全力でプリズムケルビムと戦闘してみたかったのだ。結果次第では、レベル上げにプリズムケルビムを使うことになるかも知れない。ということでメンバーはリリー、イオン、グレイ、コノハ、虎徹で挑む。
「あれと戦うの? タクト?」
「強いんですか? あれ?」
「一応は天昇を使ったブランレベルだと思ってくれ。エンゲージバーストでは倒れることは無くなったから、ある程度敵のことがわかったら、遠慮なく使うからそのつもりでいてくれ」
「「わかった(わかりました)!」」
全員が戦闘体勢になったことを確認して、最初の攻撃はリリーが担当した。
「大切断!」
リリーの攻撃に反応したプリズムケルビムの姿が消える。その瞬間、第六感が反応する。これはやばい!俺は躱せるけど、イオンでは躱せない!
「イオン! 虎徹の近くに逃げ込め!」
「は、はい!」
「うそ!? 星鎧!」
リリーも未来を見て、ガードを固める。空に現れたプリズムケルビムは次の瞬間、身体から光線を放つと光線が空間歪曲に吸い込まれ、新たな空間歪曲があちこちに展開されるとそこから光線が俺たちを狙い、飛んできた。
「きゃー!?」
「ホー!」
「ガウ!」
リリーは直撃し、コノハは光線を全て躱し、虎徹は全方位から飛んできた光線を全て刀で弾いている。やはり第五進化は強い。すると攻撃を躱していたコノハに光線が命中する。見ると光線が不自然に曲がっている。反射のような曲げり方じゃないな…寧ろ屈折か?また厄介なスキルだな。
曲がった光線がコノハに殺到し、コノハの生命力が無くなるとコノハの呪滅殺と呪滅封陣が発動する。しかしこれは当然のようにかき消される。やはりケルビムレベルに即死攻撃などは通用しないか。
それでもコノハは無傷で蘇生するとプリズムケルビムにお返しの冷凍光線を放つ。するとプリズムケルビムは反射で弾き返して来るとコノハも反射で返す。次はプリズムケルビムは空間歪曲を使ってくるがコノハは空間歪曲を読んで、自分の空間歪曲で再びプリズムケルビムに返すとやっと命中した。
「ガァ!」
そこにグレイが毛針を飛ばすとプリズムケルビムは普通に受けた。すると空の明かりが強くなる。まずい!天罰だ!
「逃げろ!」
俺、イオン、グレイ、虎徹がその場から離れると天罰が落ちる。その隙にコノハがプリズムケルビムに襲いかかるがプリズムケルビムはなんと光速激突中のコノハを空間歪曲で吸い込ませて、自分の攻撃を躱した。そしてコノハが転移させられたところはイオンの前の地面だった。
「ホー!?」
「きゃ!? え? コノハさ…ッ!?」
コノハもなんとかしたかったんだろうが、光速激突中ではどうしようもなく地面にぶつかり、跳ねると走っていたイオンにぶつかる。すると更にイオンとコノハの周辺の空間から鎖が飛び出し、二人は拘束されると電撃を受ける。
「やぁああ!」
「待て! リリー! 虎徹に任せ」
リリーが鎖の破壊に動いたが、壊すことが出来なかった。
「そんな…きゃあああ!?」
リリーまで電撃を受けてしまった。第六感で分かっていたのにこうなると実力不足を認識してしまうな。それにしても厄介な鎖だ!
「グレイ! 虎徹!」
「「ガウ!」」
グレイと虎徹が鎖を破壊して、三人を救出するがリリーの動揺はかなりの物のようだ。フォローしてやりたいがそんなことを許して貰える相手じゃない。
俺は転瞬を使うと一瞬でプリズムケルビムの前に移動する。縮地より遥かに早いな。これではまるで瞬間移動みたいだ。
「居合い斬り!」
迅雷の攻撃をプリズムケルビムは受けるとすぐさま光線を撃ってきた。俺は慧眼を使うと光線の攻撃をギリギリのところで回避する。更に光線を連射してくるが全てギリギリのところで回避する。これが見切りの上位スキルである慧眼の効果。
相手の攻撃の種類を見抜き、攻撃を回避するスキルだ。見切りは一回限りの回避だが、慧眼は連続回避が出来、十回までは必ず回避し、それ以降の回避は徐々に確率が下がるようになっていく。そのためどこかで慧眼を止めて、攻撃に切り替える必要が出てくる。因みに鎖の効果がわかったのもこのスキルのおかげだ。
ある程度、回避した俺は転瞬で背後に回り込むと再び斬りかかる。するとやはりノーガードで光線を使ってくる。俺は予測し、完璧に躱した。すると俺を狙った光線が空間歪曲に吸い込まれ、再び斬りかかる俺の頭上から落ちてきた。それを慧眼で躱した。今のはやばかった。
俺が攻撃を引きつけたことでグレイがプリズムケルビムに光速激突で襲いかかり、決まったと思った瞬間、俺がグレイの光速激突を諸に受けた。
これはシフトチェンジのようなスキルか!俺とプリズムケルビムの位置を入れ替えて、光速激突の効果から上手く外したようだ。シフトチェンジや空間歪曲の使い方の勉強になるな。
「ガゥ!?」
「大丈夫だ…まだ来るぞ。グレイ…頼む!」
「ガウ!」
プリズムケルビムの周囲に紫の氷柱が無数に作られるとそれが俺たちに降り注いだ。それをグレイは群狼で仲間を呼ぶと仲間と共に全ての氷柱を餓狼で吸い込む。虎徹も全ての氷柱を見事に破壊する。
この間にプリズムケルビムは生命力を回復し、更に魔力が全然減っていない。恐らくは光合成の効果で回復しているんだろう。天気を変える手を考えるが他のプリズムケルビムまで戦闘に参加させるのは確実にまずい。
「グレイ、エンゲージバーストを使うから援護してくれ」
「ガウ!」
俺がグレイの援護を受けてリリーたちと合流する。
「タクト~…」
いつになく情けない声のリリーと何も言わないイオンの頭に手を置く。
「エンゲージバーストを使うぞ」
「で、でも勝てるのかな?」
「とんでもなく強いですよ…あの変なの」
「そうだな…俺たち三人じゃ恐らく勝てないだろう。でもだからこそのエンゲージバーストだろう?」
二人が俺を見上げて来る。その目にはしっかり火が灯っていた。
「いけるな?」
「「うん(はい)!」」
「「「エンゲージバースト!」」」
竜騎士となった俺たちはまずリリーの星鎧とイオンの星氷装甲でガードを固めて、氷柱が飛び交う空を飛んで行き、プリズムケルビムの上を取る。
「『グランドスラッシュ!』」
グランアルヴリングとレガメファミリアの同時攻撃をプリズムケルビムは受ける。やはりこいつは俺たちの攻撃よりグレイたちの攻撃を恐れている。だからこそ生まれる隙がある!
「『『はぁああ!』』」
俺たちの攻撃でプリズムケルビムはぶっ飛んだ。俺にはコノハの巨人の加護も追加されている。俺だけでは通用しなかったがリリーとイオンの筋力が合わさればぶっ飛ばすことが出来た。そしてこの隙を虎徹は見逃さない。
一瞬で空に現れた虎徹はプリズムケルビムは横一閃に斬り裂く。だが、これで終わるプリズムケルビムではない。斬られたプリズムケルビムたちは生命力を半分に分け、二体に分かれた。分裂だ。このままだとより激しい攻撃にさらされると思ったが、ここは虎徹が見せた。
「ガァアア!」
虎徹の気がプリズムケルビムたちに流れるとプリズムケルビムたちは虎徹の間合いに自ら近づいて来る。自分の気で相手を操れるのか…これが虎徹の気力支配の力だった。
そして近づいてきたプリズムケルビムたちを五月雨斬りでバラバラに斬り裂く。それでもプリズムケルビムたちは無数に分裂して、生き残った。そして虎徹の間合いから逃げようとするが突然の重力のような攻撃で全てのプリズムケルビムたちが地面に落下する。
これが虎徹の重圧スキル。自分が放つ気の圧力で周囲の敵を押し潰し、動きを封じるスキル。このスキルにはダメージ効果はないが効果は絶大だ。
「ホー!」
コノハが氷獄でプリズムケルビムたちを地面ごと残らず凍らせるとこちらに飛んでくる。これで決めよう!
『『宝玉全解放!』』
「ホー!」
俺がグランアルヴリングとレガメファミリアの能力が解放され、コノハが使ったエクスプロージョンが二つの剣に宿る。これで全部まとめて消し飛ばしたら、分裂は出来ないだろう!
「『『魔法剣技! アルティメットシャリオ!』』」
地面に直撃したアルティメットシャリオは大爆発と共に全てのプリズムケルビムを消し飛ばした。これでリリーたちのレベルアップが来た。これでレベル1しか上がらないのか…これは大変だな。
エンゲージバーストが解除される。
「滅茶苦茶疲れたな…」
「「うん(はい)…」」
今回の戦いでわかったことは完全に俺たちがお荷物にだったということだ。それでも今の俺たちの実力がどの程度のものなのか知れたのは収穫だと思う。後は解体だな。
智天使の羽:レア度10 素材 品質S
ケルビムの羽。天使の羽の中でも上位の素材で極めて強力な火と光の力を持っている。
フローライト:レア度9 素材 品質A+
色とりどりな色彩なる石。破片を火にくべると蛍のように発光することで知られている。全ての属性を宿すが衝撃には弱く、主に魔力の燃料として使用される。
エクスマキナの素材キター!ワンチャン来るかなと思っていたが、来てくれて良かった。智天使の羽は羽ペンだな。最近は爆破の霊符とかあるし、魔導書の更新もそろそろしたいからいい物が手に入ったと思う。
それじゃあ、レベル上げ計画が無くなったことだし、大人しく島で因幡の白兎でレベル上げをするとしよう。
 




