#794 シルフィ姫様の勉強会
お城に行くと早速用件を伝えるとシルフィ姫様の自室に呼ばれる。するとシルフィ姫様は何故か眼鏡をつけて、部屋にはホワイトボートが用意されていた。完全に先生モードなのは伝わったが、わざわざこのためだけに買ったのだろうか?
「用件は伺いました。タクト様のお席はこちらなので、ご着席ください」
「はーい」
「うんうん。いい返事です!」
ここは波風立てずに話を合わせることにした。
「それではまずはおめでとうございます。究極の召喚師になることは非常に難しいので、タクト様にははなまるをなんと五つもあげちゃいます」
久しぶりに出たな。シルフィ姫様の謎の評価基準であるはなまる。深く追求せず、お礼を言おう。
「ありがとうございます」
「うんうん。素直にお礼を言えることはとてもいいことです。それでは究極の召喚師についてご説明しますね。ボードオープンです!」
ホワイトボードが自動でひっくり返る。無駄に高性能だな!
「まずは肝であるマリッジについて、ご説明しますね。もうお気づきだと思いますがマリッジスキルは召喚獣にマリッジリングを装備させることで初めて使えるようになるスキルです。獣魔ギルドでは結婚式を挙げるクエストがありますがこれは亜人や妖精のみで獣系の召喚獣は残念ながらすることが出来ません」
それについては疑問に思っていたが、やっぱり結婚式は必須じゃないみたいだ。ま、グレイたちと結婚式を挙げろというのは無理がある。
「因みに亜人種でも必ず結婚式を挙げなければいけないということもありません。能力的な差も発生しませんが召喚獣たちにとって、永遠の思い出となることは間違いありませんので、個人的には挙げて欲しいです」
これもそういうことだとは思っていた。だって、同性のケースとかあるから結婚式を挙げたくない人もいるだろう。そこに能力的な差を与えることはしないと思っていた。シルフィ姫様の話からするとステータスにはない好感度は上げると思っていいだろう。
補足で同性でも結婚式を挙げることもできるみたいだ。シルフィ姫様も妖精ちゃんと結婚式を挙げたらしい。微笑ましい限りだ。因みに写真とかは見せてくれなかった。
「私のウェディングドレス姿を先に見られたら、感動が半減しちゃうじゃないですか」
「なるほど。それじゃあ、リリーたちと結婚式を挙げるときはシルフィ姫様は呼ばないほうがいいですね」
「それとこれとは話が別です」
同じだろう…だって、俺の姿も多分タキシードになるはずだ。それを見られるんだからシルフィ姫様の言い分と同じとなるはず…待てよ。
「というか見に来る気満々ですか…」
「もちろんです。既にカインさんには話を通してありますから家族総出で見に行きますよ」
手を回すのが早すぎだ!今日知ったはずだぞ。まぁ、いいや。ネタバレになるのはシルフィ姫様だからな。次はいよいよマリッジバーストの話だ。シルフィ姫様がボートの後ろに回り説明を書く。そして自動でひっくり返す。ずっとこれを繰り返すのは大変だぞ。
「いよいよマリッジバーストの説明ですが基本的にはエンゲージバーストと同じです。ただしマリッジバーストには追加で強化が発生します。更にマリッジを結んだ召喚獣なら何体でも力を合わせることが出来ます。その際に組み合わせによっては特別な力を発揮するものがあります。私がドラゴンの全種類を集めているのもこのためでもあるんですよ」
つまり同じ種族の属性違いを組み合わせることで特殊なマリッジバーストが発動するのか…俺の場合はやっぱりドラゴニュートになるんだろうな。既に風、土、水、光、闇が揃っていて、残りは火のみだ。これはえげつないマリッジバーストになる気がする。
後は悪魔系でリビナ、セフォネ、ファリーダの組み合わせがどうなるかだな。ここにはノワも入るかも知れない。真逆で神関係ではリアンとブランがいる。ここにコノハや伊雪が入るのかな?ちょっとよくわからない。
獣繋がりなら恋火と和狐、ここにグレイたちを合わせれば何か起きそうな気がする。特に恋火と虎徹の組み合わせはやばい気がするな。もしくは千影との組み合わせも何か起きそうな気がする。
妖精繋がりならセチア、ルーナ、ミール…もしかしたら伊雪がここに入るかも知れないがもう一つの進化ルートの気がするな。あっちなら確実に入ると思う。
「(なら揃えちまえよ~。召喚獣の数を増やせるようになったんだからさ~)」
悪魔の囁きが聞こえた!いや、これはきっと運営の罠だ!落ち着け~…俺。食費のことを考えるんだ!
「後、技のリスクですが二日間動けなくなります。これは一人でマリッジバーストを使っても、十人と使っても同じです」
「ということは少人数の場合などはエンゲージバーストを使う方がいいということですね」
「そうなります。エンゲージバーストではどうにもならない敵に使うといいと思いますよ」
結局はボス戦に使って、メンテナンス期間を利用する使い方になりそうだ。というか運営は完全にそのつもりで設定しているだろうな。次は謎のユニゾンバーストだ。
「ユニゾンバーストは集束スキルのようなものですね。今までは色々なスキルを使っては力を集めていたと思いますが、ユニゾンバーストは召喚獣たちの力を召喚師に集めて、放つ必殺技です。これを使うと召喚獣たちは全員戦闘不能になっちゃいますが、召喚獣のレベル、数の多さ、スキルレベルで威力が決定するので、召喚獣が複数神々の領域に至っているなら一発のダメージの大きさは神様の攻撃を遥かに超えます。それでも通用しない神様がいると思いますけどね…アンラ・マンユやアテナ様にはまず通用しなかったでしょう」
アンラ・マンユは主神クラスだからな。アテナ様は世界中の神話の中でも最強と呼び声が高い盾を持っている。それぐらいはガードして見せるだろう。
「(ほら! 数がいると火力が上がるってよ。新しい召喚獣を呼んじゃえYO!)」
また悪魔の囁きが聞こえた!しかもなんか滅茶苦茶軽いノリの囁きだった気がする!そ、そんなことより気になることがあるので、シルフィ姫様のノリに合わせて質問しよう。
「先生、質問いいですか?」
「はい! どうぞ! タクト様!」
そこはタクト様なんだ。ま、嬉しそうだし、いいか。
「このユニゾンバーストは召喚師が使ったら、召喚獣たちには強制的に発動するものなんでしょうか?」
「いい質問ですね。ユニゾンバーストは強制的に召喚している召喚獣たちに発動してしまいます。もちろん召喚獣たちはシンクロスキルでそれを察知しますが、戦闘中だった場合はかなりのリスクとなるでしょう」
やっぱりそういうことが起きるよな。これは使いどころが結構難しそうだぞ。特にグレイやコノハの加護に依存した戦闘を繰り広げていると使うのがかなりきつくなる。部隊への影響が出てしまうからな。その辺りは説明しないといけないところだな。
「ありがとうございます」
「いえいえ~。ふふ~ん」
ノリノリでシルフィ姫様はボードを消していく。どうやら暗黒大陸のことはそこまで引きずっていないみたいだな。
「最後に神召喚ですが、これは召喚魔術の最高峰の魔術です。これは使うためには神様がいる領地を訪れて契約を結ぶ必要があります」
「契約にはもしかして試練が必要だったりしますか?」
「そうですね。内容は神様によって、様々です。アイテムを要求してきたり、魔物の討伐、神様との真剣勝負などですね。私の場合は勝負でした」
フレイに勝ったってことか…シルフィ姫様恐るべしだ。
「神召喚を一度使うと五日間使用できなくなりますので、ご注意ください」
それぐらいのリスクはあるだろうな。なんといっても限定的にだが神様を呼び出すのだ。それぐらいはあって当然だろう。更に神様との契約についてだが、上限は三柱で神様が契約するのは一人しかすることはないらしい。
つまりフレイとは既に契約することが出来ず、他の神様との契約は早い者勝ちということになった。これは大変だぞ。俺の第一候補はやはりアテナ様になるだろう。かなり良くして貰っているし、コノハとの接点もある。強さでも疑いようがないからな。
次はスサノオなどの桜花の神様にポセイドンたちも候補になるのかな?他にも神様だと稲荷様やダゴンなどがいる。どうやら契約を結べるのは召喚師だけではないらしいから厳選して契約を結ぶとしよう。
最後にスキルについてだが、これはシルフィ姫様でも分からないスキルが多かった。理由は召喚師だから。凄い今更な壁にぶち当たった。ただ分かるものもあった。
まずは指揮スキル。これが予想外の代物だった。
「指揮スキルは指揮下にある人たち全てをスキルレベルに応じて、強化するものです。更に召喚獣がこれを覚えているとその召喚獣は召喚師の元をある程度離れて戦闘を行うことが可能となります」
「それってつまり召喚師が戦っていない戦闘に参加できるってことですか?」
「そういうことですね。更に自分と同じ系統の召喚獣なら一緒に連れ出すことも可能です」
つまりグレイは優牙を連れて、他の戦場に参加することが可能になったのか…これは凄いな。というかイクスはかなり前からそれが出来たのか…後で聞いてみた答えがこちら。
「マスターがあの国を滅ぼせと命令してくださるならそれを実行するのがわたしたちです。マスターの手を汚すことなく滅ぼしてみせますよ」
「自慢げに言わないでくれ」
完全にバトルシップで攻め落とす気満々の発言だった。指揮下がどの程度のラインなのかはっきりしないが少なくともリリーたちの強化に役立つことは間違いないみたいだし、これは取得しておこう。30ptだな。
次は遮断結界。
「確か最強の結界でしたよね?」
「はい。あらゆる攻撃やスキルの効果を一切受け付けない最強の結界です。ただ結界を張るのに時間がかかりますから戦闘タイプのタクト様には不向きかもしれませんね」
確かに俺には障壁のほうが向いているかも知れないな。う~ん…保留!それよりも慧眼、第六感、転瞬を優先した。これで90ptだから全部で120pt使ったな。まとめるとこんな感じ。
名前 タクト 究極の召喚師Lv1
生命力 186
魔力 442
筋力 300
防御力 110
俊敏性 261
器用値 287
スキル
格闘Lv40 蹴り技Lv40 杖Lv43 片手剣Lv50 槍Lv37
刀Lv45 二刀流Lv15 指揮Lv1 投擲操作Lv26 詠唱破棄Lv39
魔力操作Lv22 魔力切断Lv29 危険予知Lv6→第六感Lv6 超感覚Lv30 召喚魔術Lv43
封印魔術Lv41 ルーン魔術Lv40 阻害無効Lv15 騎手Lv45 錬金Lv27
採掘Lv38 伐採Lv42 解体Lv52 鑑定Lv47 識別Lv55
疾魔法Lv16 炎魔法Lv12 地魔法Lv18 海魔法Lv14 暗黒魔法Lv14
神聖魔法Lv27 雷魔法Lv50 爆魔法Lv56 木魔法Lv37 氷魔法Lv42
時空魔法Lv58 獣魔魔法Lv12 遅延魔法Lv19 連続詠唱Lv44 水中行動Lv31
空脚Lv7→転瞬Lv7 慧眼Lv1 読書Lv20 料理Lv49 釣りLv23
シンクロLv35 エンゲージLv17 マリッジLv1 連携Lv30
これで残りスキルポイントは114pt。100ptはなんとか維持した。
そして指揮スキルのレベルは1なんだね。結構指示とかしてきたから一気に30ぐらいは言ってると思ったがそんなに甘くないらしい。
「色々教えてくださり、ありがとうございました」
「いえいえ。授業料はこっそり私を暗黒大陸に連れて行ってくれるだけで結構ですよ」
酷い授業料の取り方があったものだ。
「アンリ姫様から事情を聴いていますが…あれで納得していないんですか?」
「当たり前です! アンリは私の妹なんですよ? もちろんアンリの強さは認めていますし、タクト様たちがいると分かっているんですが…心配なものは心配なんです。それに私が行くことでたくさんの人間や亜人種の助けになるはず…それが出来ないことがとても悔しいんです」
シルフィ姫様の辛い気持ちが伝わってくる。
「お気持ちはわかりました。ただシルフィ姫様はここにいるだけでフリーティアの国民の心の助けになっています。シルフィ姫様や騎士団がこの国からいなくなるということはフリーティアの国民が不安になってしまうことはお分かりですよね?」
「…はい」
「厳しい現実ですが人一人が助けられる数は決まっています。だからこそ人は自分以外の人の助けを借りてより多くの人間の助けとなるように協力し、発展してきました。今回も同じです。シルフィ姫様が助けられない人たちは俺たちが全力で守ってみせます。その代わりに俺には出来ないフリーティアの国民を安心させることをしてくれませんか?」
「むぅ…タクト様はずるいですね。そんなことを言われたら、納得するしかないじゃないですか」
確かに酷い言い分かも知れない。でもこれが国と国民を支える王族の仕事なんだよな。
「わかりました。でも魔王との戦いをするときは絶対に参加しますからね!」
「わかっていますよ。シルフィ姫様やシルフィ姫様の召喚獣たちと共闘出来るように頑張ります」
「はい!」
こうして俺はお城を後にした。歩いているとサラ姫様からメールが来た
『シルフィお姉様を納得させられるならもっと早くにしてくれ』
悲痛なメッセージだなぁ…なんかごめんなさい。




