#790 解放された究極スキル
俺はホームに戻ったのだが、一度ログアウトすることにした。正直、頭が大混乱をしている。夕飯時ということもあり、先にお風呂をいれてから夕飯を作る。そうは言っても今日は冷凍チャーハンで済ました。いつもならひと手間掛けたりするのだが、そんな余裕は今の俺にはなかった。
ご飯を食べてからお風呂に入り、鏡を見ると酷い顔をしていた。ベッドに寝転がる。両親や爺さんのことの他にもうすぐゲームが終わるという事実に流石にダメージを受けた。
社長もかなり難しい立場のはずだ。もし人体実験だとすれば父さんたちは話を聞いた感じだと同意の上で実験に参加している。これでは罪にならないと思う。ただ正当性があるのかないのかは微妙だし、証拠もどうなっているのか分からない。
正当性については俺の立場からすれば素直に嬉しく感じるが第三者からすればどう見えるかわからないといった感じかな?人間の死への冒涜だとか思われるかも知れない。それでも俺はあの社長が罪になって、刑務所に入ることにはなって欲しくないな。
「ふぅ…ごちゃごちゃ考えていてもしょうがないか」
気持ちを切り替えて、ゲームにログインするとリリーの顔のどアップだった。
「わぁ!?」
リリーがびっくりして、ベッドから転がり落ちる。
「「「きゃあ!?」」」
恋火、和狐の声が追加された。またベッドの下に隠れていて、尻尾の上にリリーが落下したようだ。
「リビナとブラン、アリナは隠れているつもりだったりするか?」
天井にへばりついている。普通に寝ているんだからバレバレだ。そして起き上がるとベッドの布団からイオンとリアンの尻尾が出ている。更に視線を反らすと床に丸まっているユウィルに隠れる気がないイクスとファリーダがいた。
セチア、ノワとセフォネはベッドの下にいて、全員集合。
「みんなしてどうやって入ったんだよ」
「部屋のドア、開いてたよ? タクト」
そういえばちゃんと鍵を閉めた記憶がない。やっちまった。無防備すぎるだろう…俺。
「これはマスターが誘っていると判断しました」
「鍵を閉めてないないんだから仕方ないよね? タクト」
「そんなことはない」
ただの鍵の閉め忘れでそう解釈されたら、たまらない。
「しかも遊んでいただけだろう?」
「だって、タクトの様子が変だったんだもん…」
「また何かあったことはバレバレです。話してください。タクトさん」
リリーたちのなりの元気の付け方だったみたいだな。さっきの話を聞いて本当にリリーたちは人工知能なのか疑問に思ってしまう。人間としか見えないんだよな…マジで。さて、どこまで説明したものか。
「試練が大変だったこととちょっと教えられたことがショックなことだっただけだよ」
「どんなことを教えられたんですか?」
「烏魔天狗を覚えているか? イオン」
「もちろん覚えていますよ。負けっぱなしなのでいつか勝ちたいと思っている敵です」
二回戦って負けているからな。覚えているのは当然か。
「烏魔天狗がどうかしたの? タクト」
「その烏魔天狗が俺の恩人であり、剣を教えてくれた師匠らしいんだ」
「「「「へー…えぇ!?」」」」
戦ったことがあるリリー、イオン、セチア、恋火が驚く。
「どういうことでしょうか?」
「タクトお兄ちゃんは烏魔天狗さんの弟子ということですか?」
「俺にもわからない。声や戦闘、気配とかも違っていたから気づかなかったんだ。だから色々混乱していてね」
これは事実。わざと御剣流を使わなかったり、気配を変える工夫はしていたんだと思う。しかしあそこまで気配が変化するということは爺さんが完全にこのゲームに染まっている証拠だと思う。それでも爺さんのような敵だとは感じたから無意識の内に爺さんだと感じていたんだろうな。
「タクトさんの師匠ならあの強さがわかる気がしますね」
「はい! でもタクトお兄ちゃんはどうするんですか?」
「聞きたいこともあるし、戦うことになるだろうな」
これでリリーたちは納得してくれた。流石に別れの話はリリーたちにはきつすぎるだろう。いつかは話さないといけない日が来るだろうがその日が来るまで、黙っておくことを決めた。
烏魔天狗は恐らく千影の進化で戦うことになるとは思うが、居そうな場所にも心当たりがある。稲荷様の領域の森だ。あそこならいてもおかしくはないだろう。ただ今の状態では勝ち目がないことは明らかだ。やるからにはとことん強さを極める人だからね。それに対抗するためにはこちらも強さを極めるしかない。
ということで解放されたスキルを確認する。まずは禁呪スキル。これはそれぞれの属性に禁呪が設定されており、疾魔法などの基礎魔法はLv40以上が必要で雷魔法などの複合魔法はLv80以上が必要らしい。
恐らくこのレベルが魔法スキルの上限でもあるだろう。つまり今の俺では禁呪を覚えられない。しかもこの禁呪は召喚師は一つしか覚えられないからまだどんな魔法か名前が公開されていない状況では中々選べそうにない。必要スキルポイントは100pt。それだけのぶっ壊れ魔法ということだろう。
他に解放されたスキルだと太刀、第六感、転瞬、魔力支配、念動力、超連携などがスキルが進化するもの。これもスキルポイントが要求された。30ptと割高だ。第六感、転瞬、魔力支配、念動力、超連携が気になっている。
指揮、障壁、慧眼、空間跳躍、空間歪曲、遮断結界、英気などの新たなに追加されるスキルもあった。必要なスキルポイントは同じく30pt。
どうせシルフィ姫様から色々説明して貰えるだろうし、それを聞いてから、何を取るか判断するとしよう。
時間を確認するとギルドの会議まで時間があるな。するとユウェルが思い出したように新しい装備を出す。
「言い忘れていたけど、モーニングスターが完成したぞ! タク!」
「お! どれどれ」
鑑定する。
ルナティックモーニングスター:レア度9 鎖 品質S
重さ:80 耐久値:1000 攻撃力:1200
効果:悪魔特攻(究)、万物破壊、浄化、魔素吸収、地獄の加護無効化、伸縮、拘束
ミスリルの棒にミスリル、ムーンストーン、伸縮鉱石の合金した鎖、ミスリル、ムーンストーン、タングステンを合金した星球から出来ているモーニングスター。鎖が自在に伸縮するので、遠距離の敵に星球で攻撃することができ、また鎖で相手を縛ることもできる。
予定通り重くなっているし、攻撃力も上がっている。伸縮に拘束の効果も追加されているし、俺の想像した通りの出来栄えだ。
「完璧な出来だな。偉いぞ。ユウェル」
「むっふー! 次は何を作ればいいんだ? タク」
「それについてなんだが、新しい素材が手に入ったからへーパイストスたちと一緒に桜花の安綱さんのところに行こうと思う。恋火と和狐もついて来てくれ」
「「「はい(わかった)!」」」
俺たちはへーパイストスのところに向かうとパンドラが武器を完成させて、寝ていた。
コールドアイロンソード:レア度8 片手剣 品質A
重さ:50 耐久値:80 攻撃力:20
効果:退魔、魔素祓い
妖精や幽霊、悪魔を退ける力を持った魔除け剣。持っているだけで魔素を寄せ付けないことで魔素対策の武器として使われる。
これを見ると次の敵は魔素攻撃をしてくるみたいだな。
「大切に使わせて貰うな」
「ん…」
「これからこの素材のことを聞きに安綱さんのところに行くんだが、へーパイストスはどうする?」
「僕も行きます! 刀の素材になるのかわかりませんし、もしなった時にどう鍛冶をするべきか聞きたいと思いますから」
やはりへーパイストスでも難しい素材みたいだ。
「それじゃあ、行くか」
「はい!」
「パンドラも行く!」
「か!?」
へーパイストスのお尻にパンドラの頭突きが決まり、俺の方に飛んできたへーパイストスの顔を俺は掴むことで止めた。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですけど…止め方が色々変だと思います」
確かにそうかも?最近飛んできた物を咄嗟に攻撃する癖が付いているのかも知れない。ということでみんなで八岐大蛟の素材とミカドシルクについて知るために桜花に向かった。




