#777 お喋り大好きドラゴニュート
グレイの代わりにリリーたちを呼び、獣魔ギルドに行くとそこら中ドラゴニュートとエルフだらけだ。するとドラゴニュートたちが俺たちに気が付くと一斉に召喚師の背中に隠れてしまった。
「「「「あ、あれ?」」」」
召喚師たちが困惑している中、イオンが話す。
「多分私たちが強すぎるのが原因です」
「あぁ…流石にレベル差がありすぎるとこうなるか」
レベル1でいきなりレベル70ぐらいの人がいたら、怯えられて当然かも知れない。ここは気にせず、獣魔ギルドに入るとネフィさんがいた。
「「「「こんにちは~」」」」
「いらっしゃい。タクトさんもドラゴニュートの召喚ですか?」
「はい」
まぁ、これだけ一斉に召喚すればこういうリアクションになるだろうな。ということで久々に召喚の間に入り、魔石召喚を行う。ドラゴニュートの召喚石をセットして準備完了。
「どんな子が来るかな~」
「水のドラゴニュート以外でお願いします」
「…お昼寝仲間希望」
「私は誰でもいいぞ! それより召喚は初めて見るからドキドキだ!」
あぁ、ユウェルは初体験になるのか。それだと多分驚くかもな。ここはユウェルのリアクションにも注目したいな。それでは行ってみよう!
「魔石召喚!」
ドラゴニュートの召喚石が魔法陣に吸い込まれると緑の風が発生すると魔法陣から新たなドラゴニュートの女の子が現れた。やっぱり女の子か…まぁ、ここで男の子を召喚してもきっと肩身が狭くなると思うから良かったと思うとしよう。
さて、新たなドラゴニュートは綺麗な銀髪に三つ編みを後ろに一本している髪型の女の子だ。目を開くと金色だった。そして記念すべき第一声がこちら。
「ふわ~…眠いの…」
「…流石にぃ。わかっている」
ノワは自分の仲間が出来たと確信した。すると女の子はふわっと宙に浮く。最初の段階で空を飛べるのか。凄いな。というかこれは風のドラゴニュートで確定かな。
「後ろにゴミが付いてるの」
「え? 俺の後ろか?」
「うん」
俺が後ろを向くと女の子は見事な肩車をしてくる。
「お休みなさいなの」
「え!? この状態で寝るのか!? 名前もまだ決めてないんだが」
「なら名前を決めるまで寝るの」
この子はノワを超えているかも知れない。離れそうにないので、このまま名前を考えよう。しかし実は何も考えてないんだよ。どうするか。
「うーん…ん?」
「タクト! 上! 上!」
「寝てませんよ! この子!」
なんだと?
「寝てないのか?」
「バレたの。もう…折角試しているのに空気を読めないドラゴニュートたちなの」
そう言うと肩車から降りる。
「まずはごめんなさいなの。私を召喚した人が優しい人なのか試したの」
し、しっかりしているのな…この子。む!閃いた!
「嫌いになっちゃったの?」
「あ、いや、大丈夫だよ。さっき君の名前を閃いたんだ」
「さっきので閃いたの? 教えて欲しいの」
「アリナなんてどうかな?」
アリナはロシアで多い女性の名前で気高き小さい者という意味がある。俺をいきなり試す色白なこの子を見ていたら、浮かんでしまった。
「アリナ…いい名前なの! 素敵な名前をありがとなの! お兄様」
あ、ミライの呼び方を掠めた。恋火とはライバルになるのかな?まぁ、気に入って貰えてよかった。
「そういえば俺の名前がまだだったな。俺の名前は」
「タクトなの」
「そう。タク…なんでわかったんだ?」
「後ろのドラゴニュートたちがそう呼んでいたの。他の人たちには幼女サモナーやギルマスとか呼ばれているけど、どういう意味なの?」
怒る前に困惑。だって、確実にそんな声はここまで聞こえていない。そもそもここの部屋には中の声が聞こえない作りになっている話だったはずだ。するとアリナは自慢げに話す。
「アリナには聞こえるの。それが聞き耳スキルなの」
おぉ!忍者たちが覚えるスキルだ。
「確か聞こえない音が聞こえるようになるスキルだったか?」
「そうなの! アリナはどんな秘密話も聞いてそれを話すのが大好きなの!」
「こらこら。秘密の話を他人に話すことはダメだぞ」
「仲間の秘密をお兄様に話すのはいけないの? アリナは話してないと死んでしまうの」
絶対嘘だ。でも好きなのは本当だろうな。
「わかった。俺のことは話していい。仲間のことは俺は許可出せない。それぞれ許可を貰ってくれ」
「お~。しっかりしていて優しい人なの! わかったの!」
それじゃあ、ステータスを見てみよう。
名前 アリナ ドラゴニュートLv1
生命力 5
魔力 10
筋力 3
防御力 2
俊敏性 30
器用値 5
スキル
浮遊Lv1 聞き耳Lv1 風魔法Lv1
初期でこの俊敏値か。流石風のドラゴニュート。速さではイオンを越えそうだ。ただ他のステータスが酷いな。空を飛んで風魔法で攻撃する遠距離攻撃タイプだと思うけど、初回だったら苦労したかも知れない。
ホームに帰っている途中にイオンから風のドラゴニュートの説明を受ける。
「風のドラゴニュートは空での戦いではドラゴニュートの中で最強と言われてます。とにかく機動力が圧倒的で風を使った妨害などが得意らしいです」
「えっへんなの」
「自慢気なのは良いですけど、いつまでタクトさんに肩車して貰っているんですか」
「子供の特権なの。大人の女性なら余裕を見せるべきなの」
イオンが言葉で負けた。すると頬を膨らませたイオンが肩を組んでくる。
「大人げないイオンお姉様なの」
「…」
「イオンちゃん、どうどう」
「…ん。怒ったら、負け」
こんな調子でホームに帰るとみんなを紹介する。
「ボクは秘密なんてないから別に話していいよ」
「夜にしていることとか話してもいいのなの?」
「別に何もしてないし、いいよ」
おぉ~。リビナが余裕を見せた。リリーたちはこれを言われて秘密を話すのをダメにした。おかげで凄く何をしているのか気になってしまった。しかし知ることは出来そうない。
「やったの! 寝言で話したこととか全部お兄様に話しちゃうの!」
「ちょっと待てみようか。それは流石に反則! というか秘密じゃないじゃん!」
「却下なの」
「なんでアリナが却下してるさ!」
仲良くしていけそうで良かった。その後、俺はアリナ歓迎用の料理を作っているとグレイで寝る権利を巡って戦争が勃発したりしたが、みんな仲良く寝ていた。
『ご褒美を用意するからもう少し我慢してくれ。グレイ』
『ガウ~』
俺は起こさないようにログアウトすることにした。




