#768 天魔雄神と太陽神のチャリオット出陣
俺たちが逃げ出すとヘル・グリフォンたちが追ってくる。
「和狐!」
「はい! 力を貸してください! 式神【天魔雄神】」
俺たちの後方に和狐が式神を投げる。そして式神から青い雷が発生し、天魔雄神が現れる。
「「「「ロリじゃない!?」」」」
『…全員帰ったら、ちょっと話がある』
『『『『いや、戦闘中だから…』』』』』
戦闘が終わればいいんだな?覚えたぞ。俺たちが下らないやり取りから目線を天魔雄神に向けると普通に空を浮いている天魔雄神が刀を抜くところだった。
すると雷鳴と共に天魔雄神の姿が消える。一瞬の静寂の後、後方にいた敵部隊が感電し、突如発生した暴風で敵が吹き飛ぶと消えていなくなる。
「タ、タクトはん?」
和狐があまりの強さに困惑している。そうなっても仕方ないだろう。
「…荒神より断然強いな」
正直、勝てる気がしない。すると天魔雄神は地上を見る。あ、地上にいる奴ら終わったな。
天魔雄神の角と刀に蒼い稲妻が発生すると天魔雄神は刀を天に掲げる。すると凄まじい蒼雷が刀に落ちると刀の刀身が蒼く発光する。そして地面に向けて振ると刀に合わせて蒼い閃光が雷鳴と共に放たれた。
イビルバリアタートルやマレフィカが結界を展開するが蒼い閃光はあっさり結界やバリアを焼き斬り、そのまま敵部隊を横一閃に焼き滅ぼす。これで天魔雄神は式神に戻る。
「「…」」
和狐と視線を合わせる。やっちゃったなぁ…これは。二人でお叱りを受けることが決まったかな?
天魔雄神は流石に強すぎたためか再召喚には三日のインターバルが発生していた。三日で天魔雄神を召喚出来るようになるのは嬉しいな。
俺たちが完全に敵部隊から逃げ切った頃、敵部隊は天魔雄神が地面に作った溶岩をマレフィカなどが水魔法で冷やして、進行を再び開始した。それに合わせてお次は太陽神のチャリオットが出陣する。
「行くで!」
太陽神のチャリオットがレイジさんの合図すると出撃する。すると一瞬で敵部隊を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされたゴブリンたちは空で燃えかすとなる。強激突、光速激突、紅炎、浄化があればこうなるだろう。
あまりのスピードで慌てて太陽神のチャリオットを止めるとそこは敵部隊のど真ん中。当然敵部隊は太陽神のチャリオットの破壊に動くが、飛びかかってきた者はチャリオットの車体から放たれる太陽光線に貫かれて炎上する。更に太陽神のチャリオットを引いているオピリンクスたちとレイジさんたちの攻撃で太陽神のチャリオットへの攻撃を阻止される。
その間に太陽神のチャリオットは光を放ち始める。危険を感じたイビルオーガたちが攻撃を食らわせるが守護結界で攻撃を防ぐと烈日が敵部隊のど真ん中で発動し、周囲の敵を消し飛ばした。
「「うひゃ~」」
「いや、強すぎやろ…これ」
アグリィ・キマイラの討伐に天魔雄神と太陽神のチャリオットでの大規模殺戮で敵の動きが完全に乱れる。
『全軍突撃!』
「「「「おぉ!」」」」
サバ缶さんは好機と捉えて、地上戦闘部隊に攻撃を指示する。俺たちは砦で待機だ。もうすぐ獲物が来るはずだ。みんなが戦っていると砦に揺れが発生する。先に地面から来るか。
「「「「アースクェイク!」」」」
「砲撃、放て!」
魔法使いたちがイビルワームたちを飛び出させると砦から大砲が放たれ、爆発するとグレイたちが襲いかかった。ここでユウェルが見せる。
「地割れ! 地脈操作!」
本来なら地面を進むイビルワームに地割れが効くとは思えないがユウェルは地割れで発生した左右の壁に地脈操作を使うことでただの壁に隆起した岩を作ることで地割れに落ちたイビルワームたちを串刺しにして、倒して見せた。
更にファリーダが新しい魔将技を見せる。
「引力操作! 魔将技デモンクラッシャー!」
地面に潜ろうとしたイビルワームを引き寄せ、美しいルナティックバトルアックスに紫のオーラが宿り、紫電が迸るとファリーダの一撃がイビルワームを消し飛ばす。隙は発生するが一撃の破壊力はかなりあるな。諸刃の一撃ぐらいはあるかも知れない。それでいてデメリットが無いんだから流石は魔将技と言ったところか。
それを見ていたリリーがいつもどおり情けない声を出す。
「タクト~」
「行っちゃダメ。ドラゴンたちを助けたいんだろう?」
「う…うん。でも~」
「そんなに心配しなくてもすぐ来るさ」
恐らく敵はアグリィ・キマイラが俺たちと戦闘しているところにドラゴンたちを参加させたかったはずなんだ。その計画を一瞬で壊したから、普通に奇襲をするしか無くなってしまった。イビルワームたちが来たなら、そろそろ来るはず。するとイクスが捕捉する。
「マスター、上空に大軍の敵影を捉えました。大きさから考えてドラゴンで間違いないと思われます」
俺は作戦本部に通信を送る。
『イクスがドラゴンを捕捉しました』
『了解。砦防衛班に伝えます。ギルマスは部隊の指揮をお願いします』
『わかりました』
リリーたちはチロルたちと共にドラゴン退治に向かった。ここではスピカに騎乗したミランダと竜騎士隊のリーダーがアスカロンと聖剣グラムで大暴れしている。流石竜殺しの聖剣、面白いように闇属性のドラゴンたちの硬い鱗を斬っている。
相手は昨日の邪竜の住処での戦闘でタタリドラゴンたち以前の戦闘で出てきた奴らだ。ネクロドラゴンは幽霊のためか戦闘には不参加。これは今までの戦闘でも幽霊系は夜にしか登場していない。
昨日の夜は戦力を分散させたから数の差が生まれてしまったが、今回は逆に数で優っている。一応砦の人たちが上空を守っているが必要ないかな?
そう思っているとドラゴンライダーたちが連携で強引に砦に突っ込んで来た。命懸けの特攻のような攻撃をイクスがスナイパーエネルギーライフルでドラゴンライダーたちに容赦なくヘッドショットを食らわして、連携を強制解除した。
それでも残ったドラゴンたちは砦への突進を試みるが俺の護衛をしているセチア、黒鉄、ぷよ助、伊雪、ミール、ディアンが対処に動いた。
黒鉄はレールガンロケットパンチでぶっ飛ばし、ぷよ助は水圧切断でドラゴンの羽を斬り裂きドラゴンを墜落させ、伊雪も氷結波動で凍らせる。それでも数匹のドラゴンたちが黒炎を俺たちに向けて放ってきた。
「惜しかったな。ディアン」
「「「「シャー!」」」」
擬態で隠れていたディアンが黒炎を受けるとそのまま飛び込んで来ていたドラゴンたちに噛み付いた。こうなってはもうディアンは敵を逃すことはない。そして下に落ちたドラゴンたちも追撃を受ける。
「ルートスクイズ!」
「植物召喚! いでよ! 噛み付き草!」
「雪だるまさん!」
セチアのルートスクイズで締めつけられ、そのままドラゴンを倒してしまった。他にも翼を斬られたためか動きが鈍くなったドラゴンが噛み付き草に頭から噛み付かれ、凍って動けないドラゴンの頭上に巨大雪だるまが落下してきて、潰したりしていた。
その後も特攻を挑む者がちょくちょくいたが、全て対処し、残りが少なくなると一部のドラゴンが撤退を始める。それを見たミランダが最後に決める。
「聖剣解放! 聖剣技! セイント・ドラゴンスレイヤー!」
聖剣の閃光がドラゴンたちを飲み込み、消滅させてしまった。作戦通り、少し撤退させてくれたのは流石仕事が出来るミランダだ。こうしてドラゴンたちとの戦闘が終わり、みんなが砦に帰るとまだ地上戦は続いていた。
『空中からの軽い支援攻撃をお願いします』
『了解です』
「味方が戦闘している後方に空中支援を行う。呪滅撃がある敵もまだいるかも知れないからなるべく複数の敵に当たる攻撃は控えてくれ」
「「「「了解!」」」」
俺たちが空中支援をすることになり、踏みとどまっていた敵が再び動揺し、その隙を地上部隊は逃さない。その後も魔法使いたちと狩人たちと共に交互に空中支援を行う。呪滅撃があるから攻撃しては回復を繰り返す作業になるんだよね。
まぁ、これは既に勝敗が決していた。粘っていた敵部隊も撤退を選択したが召喚獣たちとシャドールームで砦にいた防衛部隊を敵の後方に運んでおり、詰みだ。勝利を知らせるインフォが来る。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント2ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント2ptを獲得しました』
『イオンの水魔法のレベルが30に到達しました。水魔法【ブレスレイン】、【サブマリージ
】を取得しました』
『イオンの水魔法が海魔法に進化しました。海魔法【 カーレントラピッズ】、【ウォーターワールド】を取得しました』
ブリューナクとリアンのおかげでアグリィ・キマイラの強さをそこまで感じなかったが経験値を見るとやはり多かったみたいだ。前回の偵察戦分の経験値があるとはいえ、プレイヤーがほぼ全員参加の昼での戦いで俺たち全員がレベルアップするんだからな。
「俺たちの勝ちだ~!」
「「「「おぉ~!」」」」
勝鬨を上げるが俺たちは気持ちをすぐに切り替えて、さっさとステータス操作をする。俺のステータスポイントは筋力で残りスキルポイントは135ptとなった。
これでもし明日あのフォールンエルダードラゴンを倒せたら、俺はクラスチェンジすることが出来るかも知れない。そして今までの進化の流れを考えると32レベルで進化が来るはず。無事にクリア出来たら、ほぼ間違いなくグレイはレベル32に到達するはずだ。
俺はわくわくを抑えながら砦に帰ると夜の戦闘の準備をする。リリーたちと共にチョコチップマフィンを作り、ユウェルは砲弾や銃弾を食べさせる。戦闘準備を完全に整えた俺は最終決戦に備えて早めにログアウトした。




