#767 海神の神官戦士VS醜悪のキマイラ
一番最初に敵部隊で捉えたのは一際目立つ空飛ぶ巨体だった。
アグリィ・キマイラ?
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アグリィ・キマイラはイビルオーガの顔にデビルドラゴンの翼が八枚。腕は四本あり、上二つはクリミナル・トロール、下二つはグレーターデーモンの腕となっている。
更に足は巨大になっているがコンビクト・ワーウルフ。尻尾はイビルワーム、腰にはタタリドラゴンの顔、胸には骨が飛び出ているからスカルドラゴンだろうか?なんとも今回のイベントモンスターを片っ端からくっつけたような敵だ。
『作戦通りまずはリープリングの召喚師たちで初撃を加える! あのでか物の相手は俺たちがするから周りの雑魚を頼む!』
『『『『はい!』』』』
俺はブリューナクを持って、イオン、セチア、リアン、和狐と共にサフィに乗って、敵に向かおうとした時だ。アグリィ・キマイラの目から光線が放たれる。俺たちは回避し、防衛部隊がファランクスガードで守った。
「危ないな…おら!」
ブリューナクを投げるとアグリィ・キマイラは障壁を展開するがブリューナクは一瞬で貫き、アグリィ・キマイラ胸を貫通した。本来ならこれで終わりだが、アグリィ・キマイラは生命力が全損するとすぐに全回復する。
「こい! ブリューナク。やっぱりディザスター・キマイラの時と同じ、何回も倒さないといけない相手みたいだな」
「そのようですね。タクト様、私は予定通りに?」
「あぁ。頼む。やるぞ! リアン!」
「はい!」
俺とリアンがエンゲージリングを掲げる。
「「エンゲージバースト!」」
リアンが青色の光となり、俺の指輪に吸い込まれると水の竜巻が発生し、それを吹き飛ばすと俺はリアンの耳となり、青を基準とした神官服にみずがめ座が描かれたプレートアーマーを装備した神官戦士の姿となった。
『これが私と先輩のエンゲージバーストなんですね』
「あぁ…空を飛んでいるのはリアンの人魚のペンダントの効果だな。おっと、狙われているな」
リアンの未来予知が発動し、ディザスター・キマイラの攻撃より先にブリューナクを投げると手を前に向ける。
「『津波!』」
ブリューナクが投げるとアグリィ・キマイラは黒炎を吐いていく。ブリューナクは炎を貫くとアグリィ・キマイラを貫通し、生命力を全損させると再び全回復する。そして黒炎は津波とぶつかり、津波は黒炎を押していく。
なるほど、そう来ますか。俺は上空に退避する。アグリィ・キマイラは翼から津波に向けて竜巻をぶつけて消し飛ばしてくる。本来なら空にいる俺たちも狙った攻撃だが、既に俺たちはいない。そして上空で再びブリューナクを手元に戻した俺は再び投擲して、アグリィ・キマイラの生命力を削る。
まだ行くぜ!俺がナパーム、リアンがダイヤモンドダストの獣魔魔法がファミーユとスコーゲンタクトを使って発動する。
『『『『獣魔魔法ダイヤモンドナパーム』』』』
連続詠唱も加わり、敵部隊の上空から無数のダイヤモンドダストが集まった物が落下していく。
「こい! ブリューナク」
今のうちにブリューナクを回収しておくと敵や地面にダイヤモンドナパームが触れると大爆発し、爆発に巻き込んだ全てを氷結させる。本来ならこれで俺に呪滅撃が発動して死に戻るがブリューナクがある限り俺には通用しない!
当然アグリィ・キマイラも氷結するが未来予知では破壊されるな。ならブリューナクを投げましょう。体を燃え上がさせて氷結を解除して、雄叫びを上げるアグリィ・キマイラの顔面をブリューナクが貫く。
するとリアンの未来予知で良からぬ未来を見る。おいおい、砦を攻撃するなよ。お前の相手は俺たちだっつーの。俺たちにも制限時間があるし、そんなに死にたいならすぐに終わらせてやるよ!魔法系のエンゲージバーストとブリューナクの組み合わせの凶悪さを教えてやる!
「ブリューナクの操作は俺がする。魔法は頼んだぞ。リアン」
『は、はい! ふ、二人の共同作業ですね!』
「…そ、そうだな」
『その反応は私に大ダメージですよ!? 先輩! 恥ずかしさを我慢して言ったのに!』
それは悪かった。でもいきなりそんなことを言われて、対処出来るイケメンじゃないんだよ。
「無駄話はここまでだな。やるぞ」
『はい!』
俺が投擲したブリューナクを操作して、連続でアグリィ・キマイラを貫いていく。そしてリアンが二つの魔導書を使って、ダイヤモンドダストで攻撃していく。そらそら、体の一部が崩れ出したぞ。後、どのくらいで死ぬんだ?
するとアグリィ・キメラとヘル・グリフォンが襲いかかって来る。しかしリリーたちとチロルたちが俺の守りに入る。
「タクトの邪魔はさせないよ! やぁ!」
「タクトさんの無双タイムの邪魔するとはいけないグリフォンちゃんだね! お仕置きしちゃうよ」
「俺たちが相手してやるよ! 死にたい奴からかかってこい!」
「お前らはボスが何も出来ないまま、ボコボコにされるのを見とけ!」
頼もしい限りだ。
『先輩、魔力が無くなりそうです』
「はいはい」
『魔力を回復するから雫ちゃん、足止め頼む』
『はい!』
砦の魔法使いたちから氷魔法が次々放たれる。今の内にブリューナクを一度手元に戻して、MPポーションで魔力を全回復させると再び投擲攻撃を再開する。
途中でアグリィ・キマイラは逆鱗を発動させ、雄叫びを上げてくる。恐らくマールス・ゲニウスの能力の上位スキルだろうか?フィールドの全員が恐怖状態になる。
俺には蒼天の着物があるから通用せず、イベント防具を持っていない人も鉄心さんが軍扇を使用して元通りとなる。少しビビったが怒っても何もさせてやらねーよ。逆鱗で防御を捨てたこいつはなぶり殺しが加速する。
胸の骨が崩れ、上の腕が無くなり、翼が次々落ちると地面に落下する。そして尻尾、両手、両足を失い、遂に追い詰めた。
「ま、実験にはいい相手だったよ」
『どうか安らかに眠ってください』
「『天罰!』」
ブリューナクから放たれる通常より遥かに大きな天罰がアグリィ・キマイラを飲み込み、周囲にいた雑魚諸共消し飛ばした。これでエンゲージバーストが切れる。すると落下していた俺をサフィに騎乗してくれているイオンが迎えに来てくれた。
「お疲れ様、リアン」
「お疲れ様です! 先輩!」
「イオンもお迎えありがとな」
「いいえ。ところでタクトさん、私も魔導書が欲しくなりました」
さっきの無双にイオンが悪影響を受けてしまった!するとリアンが慌てる。
「ダメです! あれは私と先輩だけの必殺技なんです!」
「私も可能ですよ? リアン」
セチアの言葉にリアンは絶句する。この無双コンボに必要なのはまずエンゲージバースト。一人ではどうしてもブリューナクの操作と魔法の両立は不可能だった。
後は俺が槍と投擲操作、魔法を持っているから魔導書さえあれば可能。途中で杖を試したが出来そうにない。俺ではブリューナクを操作しながら手に何か持っていると集中が乱れてしまう。たぶん霞ちゃんなら出来そう。訓練の必要性を感じた。さて、撤退の指示を出そう。
『敵の親玉は倒した! 一度砦に撤退する!』
『『『『了解!』』』』
俺の防衛での仕事はこれで終わりだ。後はリリーたちとみんなにお任せだ。




