#766 契約の式神と謎のスキルの正体
俺が生産作業をしようとすると和狐が次の生産について聞いてくる。次はリアンの着物だが、間に合わない。そこでお願いしたのが霊符、式神、護符作製だ。
「急にどうしたんどす?」
「いや、ミライたちの情報で予想外に使えるみたいだからスキルを上げて欲しいんだ」
護符は事実上の強化アイテムだ。部隊全員に配れたらそれだけ部隊の火力を上げることが出来るし、護符の中に状態異常を一つ防ぐという護符があるらしい。紙は既に生産態勢が整っているから沢山この護符を配れば状態異常は怖くなくなる。これを知った時にもっと早くに育てれば良かったと後悔した。
次に式神、これは現在はチビ和狐を作り出して偵察とかが出来るものだが、どうやらそれ以外に俺たちが倒したことがある妖怪や神様と契約して時間限定の召喚することが出来るらしいのだ。
あまり妖怪はそこまで強いのとは戦っていないが神様が出来るならワンチャン荒神と契約出来る可能性があるんじゃないかと思った。もしダメならなまはげとか行けるのかな?
霊符も和狐の貴重な攻撃手段だ。エンゲージバーストをしてみて、育てたほうがいいと実感したし、銀たちの情報で爆発の霊符の存在もある。とはいえ爆発の霊符に該当するペンや墨がないから別の物をテストする。出来たのがこちら。
霊符:レア度7 紙 品質B+
効果:神聖属性ダメージ(極)、風属性ダメージ(大)
ホークマンの筆ペンの効果で神聖属性の風属性ダメージが発生する霊符。
霊符:レア度7 紙 品質B+
効果:暗黒属性ダメージ(極)、雷属性ダメージ(大)
レイブンの筆ペンの効果で暗黒属性の雷ダメージが発生する霊符。猛毒や麻痺の状態異常を与えることがある。
まぁ、使うかどうか謎だな。すると次はセチアが聞いてきた。
「タクト様、最終チェックをお願いします」
「あぁ」
セチアに言われて、ゴールデンイーグル改の銃弾の最終確認をする。
「…問題なしだな」
「そのようですね。次は何を作ったら、よろしいですか?」
「セチアには石ころを渡すから力のルーンと速さのルーンを仕込んでくれるか?」
「わかりました。ふふ」
セチアにいきなり笑われた。
「なんだよ。いきなり笑ったりして」
「いえ。武器ばかりだったタクト様が変わってきたなと思っただけですよ」
「それはうちも思いました」
「確かに武器ばかりに重点を置いてきたことは認めるし、そのせいでみんなの他のスキルが育たなかったのは俺も反省しているところさ。まだここでの戦いは続くがこれからはみんなのスキル上げも考えようと思うよ」
なんだかんだで武器もほぼ一式揃ってきたし、ユウェルとパンドラのおかげで生産速度が跳ね上がった。何より今回のイベントで敵の強さも多面性が出てきたように思う。これに対応するためにはみんなのスキル上げが重要だと思い知った。
俺の今後の予定を聞くとみんなは嬉しそうに生産作業をする。不満を持たせていたのかビビる俺だが、単純に俺がみんなことを考えていたことが嬉しかったみたいだ。
そんなこんなでインフォが来る。
『ルーン魔術のレベルが40に到達しました。ルーン魔術【剣のルーン】、【盾のルーン】を取得しました』
『セチアのルーン魔術のレベルが20に到達しました。ルーン魔術【水のルーン】、【土のルーン】を取得しました』
『和狐の式神のレベルが10に到達しました。式神【式神契約】を取得しました』
『契約式神は一覧から契約出来る式神を一体選ぶことが出来ます』
『和狐の護符のレベルが10に到達しました。護符【防災の護符】、【除災の護符】を取得しました』
お!剣のルーンを覚えた!杖から魔力の刃を発生させていた奴だ。盾のルーンはどうやら防具や盾に仕込むルーンで攻撃を一度防ぐルーンみたいだ。ルーン魔術の絶対防御スキルみたいなものか。これは嬉しいな。
「「覚えました!」」
「よく頑張ったな~。だけどこの小さな和狐たちをなんとかしてくれないか?」
チビ和狐たちが俺の頭の上で寝てたり、肩や膝で寝ていたりして、身動きが取れない。
「す、すみまへん! えい!」
チビ和狐たちが紙に戻る。やっと解放されたので、早速契約出来る式神の一覧を見てみよう。
件
牛頭鬼
牛鬼
鉄鼠
窮鼠
ムジナ
狒々
猩々
因幡の白兎
なまはげ
天魔雄神
一反木綿
火子
火鼠
磯女
結構いるんだな。召喚獣でいるものと牛魔将、マント狒々、驪竜などは対象じゃないだな。驪竜はいいと思うんだけどな。
さて、この中に荒神の姿がなく、新たなモンスターの名前がある。それが天魔雄神。恐らくこれがあの時、戦った荒神の正式名なんだろう。あの時は暴走していたからな。
天魔雄神はスサノオの孫の名前だ。成長した天魔雄神は九天の王となり、荒ぶる神や逆らう神は彼に属したとされている。つまり成長すれば魔神クラスになる神様ということだ。そんな若かりし頃の神様と戦わせないで欲しい。
強さで選ぶなら文句無しで天魔雄神。地上戦力ではなまはげ、猩々の順番で強いかな?猩々は絶対に選ぶことはないけどね。
水中戦が出来るのだと牛鬼と磯女。役に立ちそうなのが件、一反木綿、火鼠。可愛さで選ぶなら因幡の白兎。面白いのがムジナといった感じか。
まぁ、ここは当然即戦力の天魔雄神だろうな。ということで和狐が式神に天魔雄神の名前を書いて呼び出す。
現れたのは荒神の時のように危険なオーラを出していない青髪の短髪の少年。腰には刀、頭からは鬼の角が二本ある。これは恐らく雷神の側面があるからかな?さて、これは話しかけていいんだろうか?
「えーっと…俺のことを覚えているか? この姿では戦っていないんだが」
天魔雄神は頷く。これは話せない感じかな?
「そっか…覚えてくれていたんだな。実は君と式神の契約をしたいんだが…俺たちに力を貸してくれないかな?」
すると天魔雄神は腰の鞘を地面に置いたまま、動かない。侍が主に誓いを立てるポーズだな。実際にあったかは知らない。するとインフォが来る。
『和狐が天魔雄神と式神の契約の結びました。式神【天魔雄神】を取得しました』
「これからよろしくお願いします。天魔雄神はん」
天魔雄神は鞘を手に持ち、頷くと姿が消えた。これで戦力は凄まじく増大したな。そして遂にへーパイストス以来の男の仲間が加わった!二人とも少年なのはロリコンの影響なのだろうか?天魔雄神がぶっちゃけ俺たちの中で一番強い気がしているから和狐が一気に強さでみんなを抜き去った感を受けてしまう。
この後、防災の護符と除災の護符を作って貰った。防災の護符がミライが言っていた状態異常を一つ防ぐという護符だ。除災の護符は状態異常を治す護符らしい。
一見すると防災の護符だけでいいんじゃんと思うが和狐の話ではこれは御札だから人間が持つ意外に地面や物と設置出来るそうだ。
つまり毒沼の侵食を防ぐのは防災の護符で毒沼を治すのが除災の護符という使い分けが成り立つ。これを聞いた俺は頭を抱える。
「もっと早くに覚えさせていたら、塩害とか防げたってことだよな…」
「そう…なりはりますね」
本当にこんなのばっかりだ。後でサバ缶さんにちょっと効率的なスキルの上げ方とか相談しよう。俺たちが生産作業をせっせとしているとへーパイストスが来た。石窯が完成したらしい。
俺は暖鉱石を持って、石窯に向かうと薪を入れるところに暖鉱石を入れていく。落とした衝撃で暖鉱石は赤くなり、熱を発生する。暖鉱石を次々入れていくとそれに合わせて石窯の温度がどんどん上がっていく。
予想通りだ。これなら石窯の温度を下げたかったら、暖鉱石を取ればいいし、薪と比べて火加減で温度が作用されないからかなり温度調整が楽になった。後はケーキに最適な温度を暖鉱石の数で調整すればいい。
ということで準備してケーキを作りましょう。俺がユウナさんに注文すると沢山のプレイヤーが付いてきた。殆どが女性でかなり怖いです。すると早速コックたちが石窯に目をつけた。
「ギルマス、この石窯は?」
「へーパイストスにケーキ用の石窯を作って貰ったんだよ」
「鍛冶の神様になんて物を作らせているんですか…」
まぁ、普通なら失礼極まりない。だが、この石窯は料理の失敗を無くす画期的な石窯になると思っている。その必要性を俺が示すとしよう。
最初は小さなマフィンを作り、石窯の様子を見る。折角なのでイベントで使えそうなチョコチップマフィンを沢山作ってみた。
チョコチップマフィン:レア度8 料理 品質A
効果:満腹度25%回復、魔力150回復、30分間魔力自動回復(中)
細かいチョコレートが沢山入っているカップケーキ状の焼き菓子。軽い軽食やプレゼントとして贈られることが多く、ケーキの中でも大量生産に向いている。
失敗していない。これが俺が考案した石窯の力だ!暖鉱石の数も調整出来たし、いよいよ本番のケーキ作りだ。因みにリリーたちは完成したチョコチップマフィンを巡ってじゃんけん大会をしている。
そんなことをしている間にケーキのスポンジが焼けた。焦げ目なし。完璧だ!デコレーションをして、完成したのがこちら。
苺のショートケーキ:レア度9 料理 品質A+
効果:満腹度100%回復、魔力200回復、一時間魔力自動回復(大)
ふわふわのスポンジに苺と甘い生クリームでデコレーションしたケーキ。ケーキの中でも特に有名なケーキで子供や女性に大人気。
しゃー!遂に俺は完璧なケーキの作製に成功した!失敗した物と比べると回復量がだいぶ違っているぞ!見たか!運営!これがバイトに魂を売った男の力だ!いかん、変なテンションになってしまった。俺は振り返ると現実に戻る。
「「「「…」」」」
リリーたちに加わり、女性プレイヤーたちの視線攻撃。だが、これは俺が素材を買って、石窯も考えて、やっとの思いで完成された料理だ。俺は石窯とケーキをインベントリにしまうと走って逃げ出した。
「「「「逃げたー!」」」」
「これは俺が素材を買って、色々苦労して作ったんだ! 最初のケーキぐらい一番に食べる権利を貰う!」
これは正当な権利だ。物凄く怖い思いを乗り越えて、自室で食べたショートケーキはとても美味しかった。外に出るのは怖いからこのままログアウトするとしよう。
昼食を食べていると海斗が掲示板を見せてくる。どうせさっきのことが書かれているんだろう。海斗の奴が滅茶苦茶笑っている。
俺が外に誰かがいるかも知れない心配をしていると姫委員長がもういないことを教えてくれた。
「みんな、面白がっていたところがあるからね。流石に引き際は理解しているよ」
「それにしては目がマジだったし、引くなら追いかける前だと思うが?」
「あ、あはは~」
目を逸らさないでくれよ。昼食を食べ終えた後は文化祭の話し合いをして、作戦会議の時間にログインする。シフォンの言ったとおりプレイヤーの姿はなく、ホッとして作戦司令室に向かう。
「「「「大変だったな」」」」
みんなの第一声がこれだよ。
「そう思うなら誰か助けてくださいよ」
「いや、流石にあれは止めれる気がしない」
満月さんがそう言っちゃうの!?すると帝さんが真剣に言う。
「むしろ彼女たちをモンスターたちにぶつければ案外簡単に勝てるんじゃないかとさっき男だけで話していたところだ」
それは俺も思う。モンスターの大軍よりよっぽど怖かった。するとルインさんたちが入ってくる。
「大変だったみたいね。タクト君」
「パン専門のコックたちがタクト君とへーパイストス君が作った石窯を使いたいと言っているから調理場に置いてくれないかな?」
「それで解放されるなら喜んでおいてきます」
俺が戻ってくると作戦会議を始める。
「早速ですがタクトさんが経験した謎のスキルの正体が冒険者ギルドからの情報で判明しました。スキル名は浪費。攻撃してきた敵の攻撃に使用する魔力や満腹度などを二倍消費させるというスキルでした」
「なるほど…大技や一度に多数の敵に攻撃したからその分一気に魔力と満腹度が消費されたのか」
「そういうことになりますね。このスキルの厄介な点はデバフの扱いにならないことだそうです。スキルの魔力や満腹度消費幅を上げるスキルですから弱体化ではないと言いたい訳ですね」
これで防災の護符でこれは防げないことは確定か。
「対処法については何か教えてくれましたか?」
「神クラスの加護があると流石に防ぐことが出来るみたいです。ただ現状では防ぐのはかなり厳しいですね。あ、聖人の加護では防げると言ってました」
確かに神クラスの加護は恐らく第五進化やクラスチェンジの領域だ。例外でグラウクスやケルベロスとかいるけど、ハーベラスはスキルの影響を受けていたから冥府神の加護や女神の加護は完全な物ではないんだろう。
現状では伝説の武器などに頼るしかない感じを受けてしまう。
「どうしようか? これだとどうしても後手になっちゃうけど」
「いや、そうでもない」
全員が俺を見る。スキルの詳細さえわかれば対処は可能だ。俺は直接魔力や満腹度を減らしてくるスキルだと思っていたから予想は外れたけど、対処法はそこまで変わってない。
「相手が消費を大きくしてくるならこちらは消費ギリギリで能力を使えばマイナスはない。そしてゼロになったら、回復すればいい。違いますか?」
「なるほど! 大技を使った後に魔力や満腹度が空ならスキルの意味がないってことですね。そして敵のスキルが発動してから魔力と満腹度を回復すれば確かにそこまでの影響は出ないと思います」
「つまりジュースを飲みながら魔法を連射しろってことだよね?」
レッカに言われて考える。
「まぁ、それが一番いいか…俺はチョコチップマフィンを使うつもりでいたけど」
満腹度の回復はそこまで重要じゃないからジュースが一番いい選択な気がする。するとユウナさんがいう。
「ジュースのことなら私に任せて! ギルマスが先駆者だけど、ジュースはずっと研究してきたから味と効果は保証するよ!」
これは楽しみだ。これで夜の作戦はある程度、決まった。俺がやるべきことはチョコチップマフィンの生産とジュースの準備だ。流石にユウナさんたちだけでは召喚獣までの準備は追いつかないからな。
そしてへーパイストスとパンドラに新たな石窯の依頼がコックたちから来た。どうしても石窯一つでは流石に量産は不可能だからだ。
次に防衛の話をする。太陽神のチャリオットに乗る人や伝説の武器を使う人の決定、アイテムの分配、作戦を詰めていると敵襲の知らせが来る。
「砦偵察隊より入電! 敵襲です! 編成は昨日の昼の敵襲とほぼ同じ。新たに追加された敵はアグリィキマイラ。飛行する巨大な二足歩行の合成モンスターとのことです」
サバ缶の予想的中だな。さて、楽しい防衛戦と行きますか。
「本当に俺がブリューナクとか使っていいんですね?」
「あぁ。元々君の持ち物だ。君が使う機会はこれが最後だろうし、全員の総意だよ」
それなら暴れさせてもらおう。俺たちが戦いの準備をしていると更に入電が来る。
『邪竜の住処偵察隊より入電! ドラゴンの群れの飛翔と地面の揺れを感知とのことです』
おーおー。どんどん来るね。だが、敢えて言おう…望むところだ。昨日は色々我慢していたがそれも全て今日のためだ。昨日の俺たちとは違うところを見せてやる!
砦に着くと作業しているクロウさんに声をかけられた。
「ここで砦に攻撃を受けると完成出来ないかも知れない。頼んだぞ」
「任せてください」
俺は陣形を整えたところでみんなに言う。
「今日が一番敵の数が多いという報告もあった! 今日が最後のポイントと経験値のゲットチャンスだ! 加減は不要! 俺たちの本当の力をあいつらに教えてやろう!」
「「「「おぉ!!」」」」
さぁ…俺はこのイベント最後の防衛戦となるだろう。リリーたちと一緒に思いっきり暴れさせてもらう!




