#755 悪意の鬼王討伐戦
ヴァインたちが援軍として来たころ、住処の中ではマールス・オーガロードとその部下たちとの激戦が繰り広げられていた。
「くそ! あのマールス・オーガロードの両肩にいるゴブリンサモナーが激しくうざいぞ!」
「銃で狙ってもイビルガーゴイルを召喚して盾にしてくる上にこちらが敵を減らしても召喚魔術で増やしてくる。更に回復魔法まで使ってくるとは…まずはあの両肩のゴブリンサモナーを倒さないと活路がないですね」
「しかし敵の数が多すぎます! どうしますか? く…マグラスさん!」
マグラスは考える。そして作戦案を出す。
「…敵を必殺技で一時的に減らして、肉薄するしかないな…リープリングの忍者、倒せるか?」
「やってみるよん!」
「よし! 前衛重装歩兵! エンブレムブラスターだ! 他の前衛は援護してくれ!」
「「「「おぉ!」」」」
重装歩兵が下がり、盾を構える。その間に剣士たちが敵と敵対し、チャージの時間を稼ぐ。
「チャージ完了!」
「エンブレムブラスター撃てーい!」
「「「「エンブレムブラスター!」」」」
一斉に放たれたエンブレムブラスターは正面にいた雑魚を消し飛ばし、イビルオーガにもダメージを与えた。そして正面に出来た道を銀が迅雷を持ち、走る。
「グォオオ!」
「よ!」
イビルオーガの振り抜かれた拳に銀は飛び乗り、踏み台にしてマールス・オーガロードの右肩にいるゴブリンサモナー目掛けて、跳躍した。
「貰ったよん!」
銀はゴブリンサモナーの一体を迅雷で斬り裂いた。更に空脚を使い、左肩にいるゴブリンサモナーまで斬り裂いた。
「おぉ!」
「やったぞ!」
「待て! 何か変だ」
銀の攻撃に対してマールス・オーガロードは一切動こうとしなかったことに違和感を覚えるとマールス・オーガロードの目が赤く光ると死んだゴブリンサモナーが蘇生する。
「く…! おぉ! 練気刀刃!」
侍のプレイヤーがすかさず飛び出し、刀に宿った練気を刃に変える技でマールス・オーガロードの首を跳ねようとした瞬間、マールス・オーガロードは魔素化し、姿が無くなる。
「何!? どこに消え…ぐ!?」
「きゃ!?」
消えたマールス・オーガロードは上空に現れ、銀と斬りかかった侍を踏み潰した。
「銀ちゃ~ん!」
「危なかったよん…変わり身間に合った~」
「私の心配を返せ! 後、恥をかいた分も謝って!」
「えぇ~!? なんでそうなるのん!? ギリギリの脱出だったのにん!」
銀たちがじゃれている時にマールス・オーガロードは容赦なく青白い炎を口から吐き出した。それをマグラスさんたちがガードをする。
「ぐ…戦闘に集中してくれ」
「「ごめんなさい」」
青白い炎が終わるとマールス・オーガロードの角に黒い稲妻が走る。
「黒雷が来るぞ! ガードは無理だ! 魔法耐性を付与して受けろ!」
「「「「レジスト!」」」」
「「「「エレメントアーマー! 強制!」」」」
マールス・オーガロードの黒雷を魔法使いたちが重装歩兵の魔法耐性を強化し、重装歩兵たちも自らのスキルで属性攻撃の防御力を上げることで黒雷を受けた。しかしダメージは大きい。
「ヒーリングサンクチュアリ!」
聖職者が全体生命力回復魔法をしようすることで戦闘参加者は死んだ者以外、生命力が全回復する。しかし敵はマールス・オーガロードだけではない。イビルオーガたちが斧やハンマーを振り下ろしてくる。
「「「「グォオオ!」」」」」
「ベルセルクを俺たちに頼む!」
「! わかりました! どうなっても知りませんよ!」
「「「「ベルセルク!」」」」
暗黒魔法ベルセルクは味方を狂戦士化される魔法。この結果、付与した勇者たちは攻撃をガードすることができなくなったが、攻撃に対して攻撃をぶつけることは許されている。
「「「「バスターセイバー!」」」」
「「「「グォオオ!」」」」」
勇者たちの武技とイビルオーガたちの武技が激突し、これにはプレイヤーたちが勝利した。しかし追撃しようとしたその時、イビルガーゴイルたちが爪を突き立てて来た。
「「「「ドラゴンダイブ!」」」」
イビルガーゴイルたちにヴィオレ率いるドラゴニュートたちのドラゴンダイブが命中した。
「いけ!」
「「「「お、おう! ロードカリバー!」」」」
ベルセルクで強化されたロードカリバーがイビルオーガたちを斬り裂き、倒した。
「作戦はどうなっている? ドワーフたちは?」
「えーっと…ねん。一応準備出来たって」
「よし! っ!? 召喚魔術だ! 誰か止めろ!」
「全員撃て!」
ゴブリンサモナーは召喚魔術で倒されたイビルオーガを召喚しようとする。銃士や狩人たちは攻撃するがやはりイビルガーゴイルが盾になる。召喚されそうになったその時、ゴブリンサモナーの背後にいるイビルガーゴイルを摺り抜けて、爆破の霊符が付けられた苦無がゴブリンサモナーの首に刺さると起爆する。
「忍法! ミスリル手裏剣!」
暁がイベント武器である手裏剣をただマールス・オーガロードに投げる。これもイビルガーゴイルを摺り抜けてマールス・オーガロードに当たることで蘇生を封じた。そして爆発で落下しているゴブリンサモナーを銀が迅雷で仕留めた。
「「「「「グッジョブ!」」」」」
「はぁ…はぁ…上手くいった…」
「流石だよ! 霞! ナイス投擲操作!」
霞ちゃんは投擲操作で最大四つの苦無を操れるようになっていた。ただし物凄い集中力が要求されるため、二人の会話に参加する余裕など無かったのだ。ゴブリンサモナーがやられた事をマールス・オーガロードが逆鱗を発動する。
「グォオオオオ~!!」
マールス・オーガロードの雄叫びを受けて状態異常無効のバフを強制的に解除し、全員が恐怖の状態異常になる。しかしプレイヤーの殆どはイベント防具で無効化できた。だが持っていないドラゴニュートとドワーフは影響を受けてしまう。
「大変だよん! ドワーフたちが止められた!」
「グオォオオオ~!」
「く、来るぞ! 迎え撃て! ヒーラーは状態異常を直し」
「いや、これで治す! 軍扇!」
俺が侍のパーティーのリーダーの人に預けた軍扇が振るわれた瞬間、全員の恐怖の状態異常が治る。これでドワーフたちは動けるようになった。手に持っているのはプレイヤーたちから渡された熱鉄の黒縄だ。
「「「「どっせぇいいい!」」」」
ドワーフたちによって投げられた熱鉄の黒縄は逆鱗状態のマールス・オーガロードを拘束すると炎上する。この熱鉄の黒縄はある程度自動で巻きついてくれるのだが、拘束する箇所は自分で上手く投げないと狙ったところには巻き付かないことが昨日の夜の戦闘で判明している。
この結果、より効果的に拘束するためには四方に分かれて拘束するのが有効ということになった。更に他にも問題がある。
「ガァアアアアア!? グ…グォオオオオ!」
「ぬうぅ! なんつー馬鹿力じゃ! こいつ!」
「わしらが十人がかりで引いておるのに引きづられるとはの!」
「じゃが、鍛冶で鍛えたこの筋力! そう簡単には負けんぞ!」
拘束しても鎖を持っているのが人なら純粋にパワー勝負となってしまうんだよな。それでも巻き付き続けるから火のダメージは発生し続けるんだけどね。
「グォオオ!」
マールス・オーガロードが叫ぶと新たにイビルオーガが追加され、鎖の破壊に動いた。するとここで別のドワーフたちが切り札を使う。それは熱鉄の黒縄とは別の鎖でイビルオーガに投げつけられるとイビルオーガたちに巻き付き、動きを完全に止めてしまう。
ドワーフたちはこれで鎖の扱いに慣れていて、パワーもあるから熱鉄の黒縄役をお願いしたのだ。激痛を耐えながらこれを見たマールス・オーガロードはプレイヤーたちにブレスを吐こうとする。
「こい! ブリューナク! やるぞ」
「いつでも行けるぜ」
マグラスさんの手にブリューナクが現れる。更にマグラスさんのパーティーメンバーの剣豪が聖剣グラムを取り出す。マグラスはタクトとの会話を思い出す。
「これを持って行ってください」
「ブリューナクに聖剣グラムじゃないか…いいのか? 防衛に使うと聞いていたが」
「流石にボス戦は例外ですよ。どれだけ強いボスが出てくるか分からない以上、伝説の武器はボス戦に使うべきです」
「…なぜ俺に渡すんだ? 帝たちのほうが君には接点があるだろう」
俺ははっきりと答える。
「そうですね。マグラスさんたちとは色々ありました。だからこそこれをマグラスさんにお預けしようと思います。信頼の証とでも思ってください。帝さんたちには話してあります」
「…うちの元ギルマスよりタチが悪いな…そこまで手を回されては受け取るしかないだろう」
「そうなんですか? ぶっちゃけほとんど記憶にないんですが」
「酷いな…まぁ、そういう手を回すことが苦手な奴だったよ。鍛冶師や生産職を敵に回すほど人付き合いが苦手な奴だったからな」
マグラスはそう言うとタクトが差し出していた武器を握る。
「今回はありがたく使わせて貰う。この礼は」
「いりませんよ。ポイントは共通なんですから。その代わりボスは必ず倒してくださいね」
「受け取ってからプレッシャーを掛けるなよ」
マグラスは笑みを浮かべて、プリューナクの投擲態勢となる。
「ガァアア!」
「聖剣グラム! 伝説開放! シュトルムヴァータン!」
「これで終わりだ! ファランクスペネトレーター!」
暗赤色の炎のブレスとシュトルムヴァータンがぶつかり合い、そのぶつかり合っている中をプリューナクは光速で貫き、そのままマールス・オーガロードの顔面を貫いた。その結果、マールス・オーガロードはシュトルムヴァータンに飲み込まれて消滅した。
「「「「よっしゃ~! 倒し」」」」
「「「「ギャアア~!!」」」」
「「「「うお!? マジか!?」」」」
マールス・オーガロードを倒した瞬間、周囲にいるモンスターが逆鱗を発動させ、プレイヤーたちに襲いかかってきた。
「怯むな! 迎え撃て! こい! ブリューナク!」
「空の奴は我々が対処する! 行くぞ!」
「ここまで来て死んでたまるかよ! マグラスに続け!」
「「「「おぉ!」」」」
最後は酷い乱戦になったが、無事に戦闘終了を告げるインフォがくる。
『ドワーフの住処の敵を全滅に成功しました。これによりドワーフの住処が敵の支配から開放されます』
『ドワーフのイベント参加が決まりました』
インフォが来たことで全員が疲れてその場に座り込む。
「約束は…守れたか…ふ」
マグラスがブリューナクを見て、笑みを浮かべているとドワーフたちがマグラスを取り囲んだ。
「その武器はなんじゃ?」
「凄まじい武器じゃの~」
「ちょっとハンマーで打たせてくれんか?」
「なーに。悪いようにはせんよ」
ドワーフたちは未知の強力な武器に興味を持ってしまったようだ。
「何ぃ!? ちょ、ちょっと待ってく。これは預かり物でだな…」
帝さんが聖剣グラムを持っているプレイヤーに話しかける。
「こんなマグラスは見たことがないな…」
「あぁ…俺もこんな気持ちはこのゲームでは初めてだ。俺たちが失敗した根本的な原因は心にゆとりがなかったせいなんだろうな」
「そうか…それで今後どうするんだ?」
「まだわからんが…多分やり直すことになるだろうな」
マグラスの様子を見て、そう確信するのだった。
「そうか…残念だな」
「よく言うぜ。リープリングのギルマスにこいつらを俺たちに貸し出すようにお願いしたのはお前だろう?」
「ふ…さぁな。それよりドワーフたちに囲まれているがいいのか?」
「いぃ!?」
ライヒの元トッププレイヤーたちが慌てている様子を見ていた銀たちが言う。
「こっちは任務完了だねん。ギルマスたちは戦闘中かな?」
「…通信が繋がらないから多分そうだと思う。大丈夫かな?」
「あのギルマスに心配は無用でしょ。私たちが抜けた穴を埋めるために召喚獣総出で戦うって言ってたし、きっと酷いことになっていると思うよ。私は攻め込むモンスターたちに同情するよ」
暁の言葉に二人は深く頷くのだった。




