#753 ドワーフの住処潜入作戦
今日の学校の帰りはスーパーに立ち寄る。作戦開始時間には余裕があるし、明日には海斗たちが遊びに来るから色々買い物を済まさないといけない。
家に帰り、明日の準備を済ましてからログインする。そこでお昼の敵襲の報告を受けた。
「イビルワームというドラゴニュートから報告があったという地面を進む蛇タイプのドラゴンの襲撃に会いました」
「被害はどうですか?」
「事前に教えてもらいましたし、対策法も確立されていたので被害はありませんでした。事前に情報がなかったらと思うとぞっとしますね。敵は少数ながらも三つの砦に同時進行して来ましたから」
「つまりドラゴニュートたちの住処から砦三つに攻撃を仕掛けてきたってことか」
厄介ではあるが、アースクェイクで地面から出すことが出来ることが証明されたから比較的楽だな。出現兆候に出現報告が絞れるなら対処可能だ。俺はクロウさんに質問する。
「砦の生産職の様子はどうですか?」
「不安はあるみたいだが、やる気は上がっているな。やはり宴にはステータスにはない影響があるらしい。第三砦が完成したことも影響しているかも知れないが第四砦は予想より早いペースだ。突貫作業だけどよ」
なんとか持ち直すことが出来たらしい。その後、最終作戦会議を開くとそこにはなんとヴァインとヴィオレがやってきた。
「ドワーフの住処の解放に我々も手を貸すことが決まった。ただし条件として我々の住処の奪還には協力して貰う。この話を飲むか? ドワーフの長」
「いいじゃろう。戦力は多いに越したことはないからな」
「決まりだな。というわけで悪いが一から作戦を聞かせてくれ」
「分かりました。では最終作戦会議を開始します」
その後、作戦会議が終わるとリリーたちがヴァインに言う。
「足を引っ張らないでね!」
「誰に言っているんだ? クロウ・クルワッハ様にみせるついでだ。ドラゴニュートの本当の戦闘を見せてやるよ」
「ふーんだ。リリーのほうが敵を倒すもんね」
「おもしれぇ…どっちが敵を多く倒すか勝負しようじゃねーか」
君たちは作戦を聞いていたのかな?
「ヴァイン…我々の役目は敵の気を引く囮役だ。敵を倒しすぎると潜入する味方が敵に見つかるリスクが高くなることを理解しているのか?」
「リリーもだぞ。競争や戦闘がしたいなら全て片付いてからすればいい。その機会は用意してやるから、今は作戦に集中してくれ」
「わかった!」
「言ったな? 今の言葉忘れるなよ? 行くぞ! お前ら!」
「「「「おぉ!」」」」
血気盛んなドラゴニュートたちがヴァインの後について行く。
「では、我々も」
「あぁ。行くぞ」
「「「「はっ!」」」」
ヴィオレについて行くのは冷静な雰囲気を持つドラゴニュートたちだ。こうして見ると面白いな。
「俺たちも行こうか」
「「「「「うん(はい)!」」」」」
こうして俺たちはドワーフの住処目指して、進軍を開始した。
俺の編成はリリー、イオン、セチア、恋火、イクス、ノワ、リビナ、リアン、和狐、ブラン、セフォネ、ファリーダ、ユウェル、グレイ、虎徹、チェス、優牙、ロコモコ、エアリー、ルーナ、伊雪、ミール、ヒクス、ストラ、スピカ、コーラル、ハーベラス、ジークだ。
一応攻略ガチで攻め込ませて貰うつもりだ。手抜きが過ぎると怪しまれるからな。俺たちは敵襲もなく順調に進んでいき、ドワーフの住処の山を目視で捉えた。それと同時に敵の識別に成功する
悪鬼Lv34
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
餓鬼Lv36
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
邪鬼Lv38
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
これとゴブリン、コボルト、オークたちだ。そして攻撃の合図を出し、ドワーフの住処への攻撃が始まった。まずは空中部隊からの遠距離攻撃を敵に浴びせる。俺の場合は魔法攻撃を指示した。というのも今回本気で戦う必要はないから育っていないスキルを育てたほうが得だと判断した。
これで敵部隊を混乱させている間に地上部隊を降ろす。後はストラの上から適当に魔法で地上部隊を援護する感じだ。
俺はブリッツを連射する。広範囲技を使うと呪滅撃で死に戻る。それならもうすぐ新しい魔法が解放される雷魔法で素早く単体を狙えるブリッツがダメージコントロールがしやすい。回復も出来るからね。
ここでセチアがダークエルフから教わったことを試す。
「「「「フォレストウォーリアー!」」」」
『『『『フォレストウォーリアー』』』』
大量の木の戦士が出現するとゴブリンたちと戦い始めた。すると呪滅撃がセチアではなく、フォレストウォーリアーに発動する。これがダークエルフに教わったエルフの呪滅撃対策。フォレストウォーリアーはオートマタと同じ扱いらしいんだよね。
「さぁ、思いっきり暴れましょうか!」
「行くぞ!」
「「「「「ガァアア!」」」」」
地上部隊はファリーダとユウェルが中心となって、ドワーフの住処の砦に向けて進軍する。この隙にチロルはこっそり潜入するドワーフを潜入班と合流させる。
「いっくよー!」
「は!」
「あ~!?」
リリーがヴァインに抜かれる。この二人はどうしようもないな。すると俺の視界に青い影。
「最初の攻撃は俺がもら」
「遅いです」
イオンがヴァインの獲物を横取りした。
「てめ!」
ヴァインの文句を無視してイオンは敵を次々倒していく。スピード特化に獲物を取られるのは大剣持ちの宿命だな。
「イオンちゃん! リリーの分も残して~」
「待てよ! こら! てめぇ!」
「…みんな元気」
「ふふ。ここまでムキになるヴァインは初めて見る気がするな。お前たちはヴァインと暴れてこい。作戦は我々がする」
何気にいいコンビなのかも知れない。俺がそう思っていると山から大砲が飛んできた。使っているのはゴブリンボンバーか。
「大砲を潰せ!」
召喚獣たちの一斉攻撃が降り注ぐと攻撃が謎の結界で防がれた。最初の攻撃やドワーフたちの報告にはこんなものは無かった。住処の中に何かいるな。やはり潜入したほうが良さそうだ。
俺は合図を出すと召喚師たちはゴーレムやオーガなどを召喚する。俺も黒鉄を召喚した。そして砦と結界に攻撃を開始した。一方でリリーは俺の指示通りにレッドキャップを見つけていた。
「赤いの見つけた! 飛んでっちゃえ~!」
リリーがレッドキャップを潜入班がいる方向にぶっ飛ばした。ちょっと遠いかな。まぁ、方向が合っているから後で褒めてあげよう。
「来たわよ! ユウェル!」
「任せろ! ルナティックハルバード!」
あ、完成してたんだ。急いでいたから見せる時間が無かったんだな。この場で鑑定しよう。
ルナティックハルバード:レア度9 槍 品質S
重さ:45 耐久値:700 攻撃力:900
効果:悪魔特攻(究)、万物破壊、浄化、魔素吸収、地獄の加護無効化
ルーンサイトとミスリルの合金で作られた槍斧。ミスリルの浄化能力のおかげで魔素を取り除く時間なく戦うことを可能にした。死後の世界の力を宿した存在に極めて強力な能力を誇っている。
ふむ。いい出来だな。するとファリーダが手をレッドキャップに向ける。
「引力操作!」
「荷重操作! 重力操作! いっけぇえええ!」
ファリーダの引力でレッドキャップ二体を引き寄せ、宙に浮いているレッドキャップたちをユウェルがルナティックハルバードでぶっ飛ばした。
他にもパワー自慢の花火ちゃんやマヤさんのドラゴニュート、ヴァインたちがレッドキャップをぶっ飛ばしていく。
流石に全部同じだと怪しまれるからそれぞれダミーの飛ばす方向を指示してある。なんだかんだで作戦通りに動いてくれているからヴァインたちは優秀だな。
暫く攻撃を続けているとドワーフの砦に動きがあった。砦の門が開いていく。次の瞬間、黒鉄たちに青白い炎が放たれるが黒鉄たちは耐えた。そして俺は目視で敵の主力を捉えた。
イビルオーガ?
? ? ?
通常のオーガと違い不気味な青いオーガだ。こいつが次々出現し、そしてドワーフの住処を守っていた結界がこちらに向けて移動してきた。その結果、全員が距離を取ると結界を張っている奴とその上に初見のゴブリンがいた。
イビルバリアタートル?
? ? ?
ゴブリンサモナー?
? ? ?
まさかのゴブリンの召喚師!?じゃあ、まさか敵を出現させた方法って召喚魔術だったのか!?やばい…シャドールームの話は違ったみたいだ。だって、敵に召喚師がいるなんて聞いてないもん。現時点でゴブリンサモナーは確認されていない。第五進化とは思えないから多分召喚モンスターではないと思う。
するとゴブリンサモナーは魔石を周囲にばら蒔くと召喚魔術を発動する。
イビルガーゴイルLv38
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
グレーターデーモン?
? ? ?
たくさん召喚したな…ここが引き時だな。情報になかった敵の情報が手に入ったんだ。十分だろう。
『全軍撤退!』
地上部隊を召喚石に戻して、俺たちは撤退する。そして潜入部隊に敵の情報を伝えて、俺たちは砦に帰った。これで俺たちの戦闘は一旦終わりだ。やっと待ちわびたインフォが来る。
『セチアが樹魔法のレベルが30に到達しました。樹魔法【ファントムフォレスト】、【ルートスクイズ】を取得しました』
ダークエルフにセチアの樹魔法のことを教えると呆れられたんだよね。
「エルフにとって、樹魔法は切り札の一つだ。時間はかかるが自然を守るための強力な魔法だ。他の魔法の大切さも理解出来るが、ホーリーエルフなら50ぐらいにはなっておいたほうがいいぞ」
「だそうです。タクト様」
「…善処します」
こんなやり取りがあったことと呪滅撃対策でセチアにフォレストウォーリアーを頼んだんだ。
今回覚えた魔法の詳細はダークエルフから聞いている。まずファントムフォレストはエルフィーナたちが使っていた魔法だ。魔法の霧で相手を惑わす魔法で大規模な物になると敵部隊の分断が出来るようになる。
単体で使うと幻影のような効果となるらしい。相手に幻を見せてスキルを無駄打ちさせたり、隙を作ることで相手に魔法を浴びせるような使い方をするみたい。
セチアの場合だと杖でファントムフォレスト、スコーゲンタクトで攻撃という形か味方が攻撃を担当する使い方になるだろう。
ルートスクイズは木の根で相手を拘束する魔法だ。一見するとギルティーソーンより弱く見えるがギルティーソーンより破壊することが困難で拘束中は相手の筋力を下げるデバフに生命力、魔力を減少させ、その分を自分に回復させる効果がある。
しかも拘束時間に応じてどんどん拘束がきつくなり、生命力と魔力を減少するスピードが上がっていくそうだ。つまり拘束と攻撃、回復を兼ね揃えた魔法ということだな。弱点は発動中動けないということだ。これは仕方ないだろうな。
俺たちが帰った後、潜入班は予定通りレッドキャップとなり、敵の防衛部隊に忍び込むことに成功する。
『気づかれてないっすね』
『流石キルケーお墨付きの変身薬だねん!』
『…モンスターに化けるなんて新鮮』
『どうせならドラゴンに化けて町を破壊したかったな~』
銀たちが呑気に会話していると時間通りドワーフの砦の門が開き、周囲のゴブリンやレッドキャップが移動を始める。銀たちも普通に入っていく。
すると砦の入口にいたゴブリンサモナーが暁に声を掛けた。当然ゴブリン語などわかるはずがない。
「ギャギャ!」
「ケ…ケーーーーー!!」
「ギャ!? ギャギャ!」
話しかけて来たゴブリンサモナーにいきなり怒鳴った結果、ゴブリンサモナーは驚き、中に入れていくれた。
『今のなんて言ったのん?』
『そんなの知らないよ!』
『…レッドキャップはゴブリンより残虐とか言われているからあまり歯向かえないのかも知れない』
『じゃあ、バレそうになったらさっきの真似をして暴れてみるとしますか』
謎の評価を貰った暁だが、なんとかドワーフの住処に潜入に成功する。すると中ではオーガたちが酒を飲みながら、大騒ぎしていた。どうやら先ほどの勝ちを祝っているようだ。
『ギルマスに見せたら、どうなるのかなん?』
『ブチギレて、全滅させちゃうんじゃない?』
『…案外、敵の料理をこっそり食べたりしそうだよ』
『『あ~…なんかわかる』』
後で聞かれた俺は味見した後、毒を盛ると答えました。潜入任務だからそんなことをしたら、ダメだけどね。雑談しているとドワーフが話す。
『会話ばかりしとらんでさっさと仕事をしてくれんか?』
『そうっすね。俺たちの最大の狙いはイビルバリアタートル。後は砦の門の破壊、砦の大砲の無効化、敵の攪乱となってますが』
『お香の案はやっぱり無理だねん。ゴブリンアサシンは睡眠無効があるし、使ったらすぐバレると思うよん』
『イビルバリアタートルの周囲にはイビルオーガたちに甲羅の上にはゴブリンサモナーがべったり状態。どうしようか?』
潜入部隊が作戦を決める。
『ゴブリンアサシンに罠が発見されるならそこを暗殺するしかないっすね』
『だねん。イビルバリアタートルは最後かな?』
『…最悪結界を貼らせなければ問題ないと思う』
『それじゃあ、攻略部隊に文句言われないように頑張るとしますか』
潜入部隊は罠を餌にゴブリンアサシンをおびき出し、暗殺していく。そして罠の安全を確保して、無事に罠を設置していった。
『そろそろ時間だねん』
『残すはイビルバリアタートルと門の破壊。これはもうバレるの覚悟で飛び込むしかないっすね』
『…私たちは門に向かいます』
『こっちは頼んだからね。銀ちゃん、ファイト!』
そして作戦実行時間を迎えた。




