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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
希望の国エステル
787/1718

#751 迷宮城壁防衛戦

サバ缶さんから防衛部隊に連絡を入れる。


『空中戦力撃破を確認。迷宮城壁作戦、始動!』


『了解! 全員作戦通りにランパード使用開始!』


『『『『『ランパード!』』』』』


次々魔法使いたちがランパードを使用していき、城壁同士が複雑にくっつき合い、巨大な城壁の迷路が完成する。その結果第四クラスの魔法使いたちはほとんどが魔力切れでダウンしてしまうがMPポーションがあるから大丈夫。


この迷宮は左右の山から直線に作ることで敵の地上部隊はこの迷宮を突破するしか砦に到達出来ないようになっている。迷宮への入口は六つ作成させており、攻略方法は自由だ。


その結果、ゴブリンアサシンたちは壁を走って登ってくる。忍者などが持っている壁移動スキルだ。しかしそんなもので突破を許す迷宮じゃない。


「「「「「フリーズ!」」」」」


ただの岩の壁が凍り付き、更に強度が増す。そして凍り付いたことで当然足を滑られ、ゴブリンアサシンたちは落下。そこを城壁の上にいる弓部隊が狙う。


さぁ、ここで敵の選択肢は二つだ。数を頼りに迷宮に飛び込むか。迷宮を物理的に破壊出来る可能性があるクリミナル・トロールの到着を持つかだ。


コンビクト・ワーウルフたちは意を決してそれぞれの入口に飛び込む。偵察部隊の苦労を察するよ。折角迷宮に飛び込んでくれたんだ。歓迎しないと失礼だよね。


まず入口四つのうち、二つは曲がると行き止まり。外れだ。


「「壁錬成!」」


「リープリング産の特性臭い玉だ。たっぷり味わえ。狼男ども」


「「「フリーズ!」」」


「ランパード!」


錬金術師が敵部隊の後ろを金属の壁で逃げ道を塞ぐ。その後、プレイヤーたちが謎の玉を投げ入れ、周囲のランパードにフリーズをかけて、天井を封鎖する。これで密封、逃げ場はない。


暗闇となった迷宮の中で臭い玉が炸裂する。これにはアイテムで手に入ったラフレシアが使われており、それはもう強烈な死臭を放つ。


誰が実験するか揉めた結果、タクマが餌食となり、一時期花火ちゃんを始め、他の召喚獣と距離を置かれるという事件が起きた大問題兵器だ。


その効果は事前に確認された通りの効果を発揮し、ここまで聞いたことがない悲痛な叫びが砦まで聞こえてきた。


「「ガゥ…」」


「よしよし…」


そのあまりな状況にグレイと優牙も同情しているようだ。同じ狼だもんな。


他の四つは当たりでプレイヤーの部隊が展開している。ただ正面から相手するわけではない。


「「壁錬成!」」


敵の部隊を壁錬成で遮断し、数が減ったところに一番前にいたプレイヤーたちが敵に襲いかかる。敵を全滅させたら、部隊の後方に移動し、ヒーラーが回復を担当する。これなら呪滅撃のダメージをコントロールすることが出来る。


この作戦の元はバエルイベントの鍾乳洞で行った作戦がモデルとなっている。想像以上に大掛かりなものになってしまったが、効果は絶大だ。


「全員構え! 撃て!」


「「「「ファランクスプレス!」」」」


「波動技、やっちゃえー!」


「「「サウザンドアロー!」」」


この通り、迷宮で広さが失われた結果、回避がかなり困難となっている。そして今回、初めての兵器も投入されている。それがサバ缶さんたちが作っているオートマタたちだ。


アサルトライフルを装備されている彼らはここでは大活躍だ。しかも彼らは呪滅撃対策としても有効。何せダメージは全て攻撃しているオートマタにいくのだ。研究員が傷つくことはない。


そういう点では召喚獣と似ていると思うかも知れないけど、決定的な違いはオートマタが倒した敵の経験値はオートマタには加わらず、全て研究員の物になるということ。


そうなるとオートマタのレベルが気になるがこれは作成時に使った部品で決定することが判明している。ただ使い捨てのような使い方は推奨されていない。機能が停止したオートマタを治すには当然お金が要る。しかも心臓部分のコアだ。お金は馬鹿にならない。


もしそんな使い方をされた時はルインさんの研究費凍結命令という怒りの鉄槌が落ちることになるのでサバ缶さんたちは活躍の嬉しさ半分、恐怖半分の気持ちだろう。


ここで敵の本体が接近してくる。まずはクリミナル・トロールが岩を投げつけてくるが召喚獣たちが霊力で操り、岩をお返しする。岩が無理だと判断すると今度は強引に迷宮を破壊しようと接近してくる。


木の棍棒や手や足でクリミナル・トロールは壁を破壊しようとした瞬間、壁の上にいる錬金術師たちがフラスコを取り出し、壁に掛けると壁に錬金術を発動する。


「「「「物質変換! 鋼鉄!」」」」


物質を指定した金属に変換してしまう錬金術だ。フラスコには錬金術師が錬金術の魔力軽減、強度上昇などの効果がある錬金液という物が入っているらしい。大規模錬金術には必須アイテムという話だ。


これで迷宮の入口の城壁は鋼鉄の城壁に早変わりした。そこに生身でパンチや蹴りを思っきりするとどうなるか…考えなくてもこれは痛い。


痛がるクリミナル・トロールに封印魔術がかけられ、空と壁から攻撃が容赦なく降り注ぐ。大魔法や爆撃を使いたいところだが下にいる雑魚が怖くて使えないため、一点集中だ。


木の棍棒を鋼鉄の城壁にぶつけたクリミナル・トロールは木の棍棒が破壊されたのも見て、迷宮に進んでいく。すると上に張り巡らされたミスリルの鋼線に引っかかり、簡単には迷宮を進ませない。


というのもここで足止めをして呪滅撃を持っている雑魚の数を減らさないといけないのだ。まぁ、リリーたちは元気よく足止めせずに倒しに向かっている。


またリリーたちは普通に倒しているだけなのだが、リビナたちは酷い。ミールが花蜜でリビナが罠設置した淫夢結界に誘い込み、クリュスや他の悪魔系召喚獣たちと共に血吸い大会を開催していた。


しかし何事も上手く行かないことが起きるものだ。予期せぬ報告が来る。


『緊急報告! クリミナル・トロールが死臭を閉じ込めていた壁を破壊してしまいました!』


『周辺部隊、入口部隊は一時砦まで撤退! 息をすると死ぬぞ!』


『『『『は、はい!』』』』


『近くの風魔法使いは臭いを入口方面に飛ばせ! 召喚獣たちもだ! 絶対に臭いを砦に向かわせるな! そうしないと生産NPCたちがいなくなるぞ!』


必死に臭いを飛ばす作業をする。戦っている部隊に臭いがいかないようにしないといけないから大変な作業だ。因みにクリミナル・トロールは臭いを嗅いで気絶。リリーたちは慌てて俺のところに帰ってきた。作業手伝おうな。


「「「「…」」」」


全員涙目で首を振って拒否体制だ。臭いのやばさを知っているからな。それならちょっと早いが動くとするか。


「俺は今から敵の退路を断ちますね」


「はい! 指揮は任せてください!」


「お願いします」


俺は動けないからダーレーに乗せてもらい、飛行部隊以外のみんなを一度召喚石に戻して迷宮の外に向かう。臭いの対処が終わり、その後の戦況は安定する。


『入口A! 雑魚討伐完了! クリミナル・トロールを通してくれ』


『こちら入口A足止め班! 了解! クリミナル・トロールを通します!』


『来るぞ! 全員必殺技用意! 拘束班! 熱鉄の黒縄を頼む!』


『『『『いっけぇえええ!』』』』


クリミナル・トロールが左右の壁の上から投げられた熱鉄の黒縄で拘束される。


『全員、撃て!』


必殺技を構えていたみんなの一斉攻撃で仕留められた。他にも罠があったんだが、今回は出番がなさそうだ。


さて、最後の仕上げは俺たちだ。敵が迷宮の外に逃げ出し始めたところに召喚師たちが全召喚獣を召喚して待ち受けていた。


「やれ。黒鉄、ディアン」


黒鉄をはじめとするゴーレム部隊が一斉に光線を放ち、ディアンをはじめとするヒュドラ部隊が一斉にブレス攻撃を開始する。残りは雑魚だ。数が少ない呪滅撃など怖くはない。リアンやルーナなどのサポートがしっかりしているしね。


更には空から次々ブレスや魔法が降り注ぐ。それでも彼らは逃げ出すためにゴーレム部隊とヒュドラ部隊に飛び込むしかない。


「ワオーン!」


「「「「ガァアア!」」」」


最も接近戦に持ち込めてもグレイを中心にした獣部隊と月輝夜たち大型召喚獣部隊、ファリーダなどの空を飛べない亜人種部隊がいる。それらを掻い潜るゴブリンアサシンたちは流石だ。しかしゴーレムとヒュドラたちの隙間を抜けようとしたゴブリンアサシンたちは立ち止まる。


やはり気が付くか…つまらない。ゴーレムたちの隙間には擬態で隠れているスライムたちが待ち受けていた。それを知っても飛び越えるしか生き残る道はない。ゴブリンアサシンたちは気付かれないように飛び越える。


「「「「ホー!」」」」


「「「「キィー!」」」」


コノハたちフクロウとスクリームバットたちはそれをゴーレムたちの上で持っており、跳躍したゴブリンアサシンたちを容赦なくスライム地獄に落とした。


敵に救いなど不要である。敵軍が全滅したところでインフォが来る。


『ファリーダの斧のレベルが30に到達しました。斧【グランドスマッシュ】を取得しました』


ファリーダも遂にグランド技を取得したか。これでより一発の火力が上がった。恐ろしい限りだ。


それにしてもこれだけ倒しても俺のレベルアップが来ないって問題だよな。まぁ、みんな結構レベルアップしているから明日には来ると思うけど。


みんなで勝鬨を上げる。その後、リリーたちが楽しみにしている宴だ。へーパイストスや他の砦にいるランスロットさんたちも誘って盛大にするとしよう。


「タクト~! お肉貰ってきたよ~」


「皆さんの分も貰ってましたよ」


たくさん貰ってきたな。するとギルドメンバーがやってくる。


「今回もギルマスの作戦ドンピシャでしたね」


「流石に臭い玉のトラブルは予想して無かったな」


「「「「あれは焦った…」」」」


みんなタクマがどうなったか知っているからな。


「ぷは~! 仕事終わりのビールがうめ~!」


「こっち、おつまみ頼む~!」


「ランスロット! どっちがこの酒多く飲めるか! 勝負しろ!」


「受けて立ちましょう!」


完全などんちゃん騒ぎになっている。これには色々な理由があるようだ。


「健康診断に引っかかってもここなら酒が飲める!」


「五月蝿い嫁もない!」


「迷惑がる近所もいない!」


「怖い上司もいない!」


みんな色々な理由で思う存分飲めないんだね。大人は大変だ。すると昨日のヴァインのお姉さんが来た。


「私たちまでこんなことに誘うとはな」


「頑張っている人にはご褒美を用意する。当然のことじゃないんですか?」


「我々の場合はよくやったとか言うぐらいだ…ヴァインの奴も来れれば良かったんだが」


「嫌がりましたか?」


俺が聞くとヴァインのお姉さんが困ったように言う。


「誘ったんだが、今日は部屋から出てこないんだ。あいつも戦士だから敵が来たなら戦うのが使命だと言うのに…困った奴さ」


俺はヴァインに同情する。きっと今頃ベッドで頭を抱えているに違いない。


「良ければ好きそうな物を持って行ってあげてください。腹ペコでは戦闘に影響するでしょう?」


「悪いな…ありがたく頂こう。っとそういえば自己紹介がまだだったな。私の名はヴィオレという。弟のヴァイン共々よろしく頼む」


「こちらこそよろしくお願いします。俺は召喚師のタクト。こちらは俺の召喚獣で」


「リリーだよ!」


みんなが自己紹介するとヴィオレさんが感想言う。


「随分ドラゴニュートを召喚しているんだな」


「「「「やっぱりそこが気になるんだ」」」」


みんなは黙ってお酒やご飯で飲み食いしていようね。


「はい。俺以外にもドラゴニュートを召喚した召喚師がいますよ」


「そうか…後で挨拶するとしよう。それにしてもお前たちは料理をするんだな」


元々料理スキルをドラゴニュートは覚えないから以外のようだ。


「そうですよ。魚の解体はタクトさん並です!」


「…ノワはじっくり料理担当」


「リリーは! リリーは…えーっと…タクトの料理担当!」


リリーには料理スキルを覚えさせたほうがいいのかも知れない。そうしないと俺の命が危ない。


因みにノワの言うじっくり料理は漬物や燻製料理のこと。普通なら時間がかかるこういう料理は面倒臭く感じるものだが、何もしないで待つ料理はノワにとって、苦ではないらしい。仕込みは俺が教えて、今では一人で作っているほどの腕前だ。


「そうか…我々も料理という物を考えるべきかも知れないな。黒くない肉がこんなに美味とは知らなかったぞ」


きっとお肉が手に入ったら、黒炎で焼いているんだろうな。それではどれだけ上手くやっても黒焦げだろう。それをずっと食べてきていたら、料理という概念は生まれないのかも知れないな。


「タクトもケーキを焦がしていたから仕方ないよ」


「「「「ケーキ?」」」」


リリーの言葉に女性プレイヤーたちが一斉に俺を見てきた。こわ!?


「俺はエンゲージバーストで動けな」


「「「「これをどうぞ!」」」」


ソーマ酒まで渡してまで俺にケーキを作らせるのか!?


「待て待て。それは貴重なアイテムだから使わないでくれ。素材ならユウナさんたちが持っているし、コックたちなら作れるはずだ」


「「「「責任転嫁!」」」」


女性プレイヤーたちがコックたちに殺到した。


「作り方、分からない! 俺は麺担当なんだよ~」


「俺は寿司職人だ!」


「「「「回転寿司にはケーキも回ってる!」」」」


「ぐ…」


確かに魚とは関係ないのがたくさん回ってるよね。寿司なら寿司。デザートならデザートで分ければいいと思うんだが、寿司食べた後にデザート食べたい人がたくさんいるんだろうな。


デザート担当のコックたちの最後の言い訳はこれだ。


「「「オーブンがないから作るの無理!」」」


これが一番の難関なんだ。それでもピザ用の石窯で作らせられることになった。俺を睨まないでくれ。元凶はそこでケーキを楽しみにしているリリーだ。


すると案の定、失敗する。俺より遥かに腕前が立つコックでこれだ。やはり問題は石窯にある。理想は焦がさない為に直火は避けて熱のみで料理をしたい。そして温度調節も簡単に出来る石窯を作らないとケーキは上手く作れそうにない。


「そんな石窯どうやって作ればいいんだ…」


「…だ~」


ノワが乗っかってきた。


「仲がいいな」


「…ん」


これで布団を被せたら、炬燵(こたつ)に見えそうだ。


「あ…」


そうだ!あれがあった!あれを使えばある程度、熱のコントロールが出来るんじゃないか?脳内でイメージする。うんうん、これならいけそうだぞ。


「…にぃ、何か思いついた?」


俺が周囲を確認するとメルたちとシフォンたちと目があった。


「「「「…」」」」


笑顔で返された。笑顔が怖い!寒気がしたぞ!これは気づかれたな。


「…さぁな」


「…にぃはリリーレベルで嘘が下手」


そんな馬鹿な!?ノワの容赦ない一言で俺は落ち込んだ。とはいえいつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。今日こそはブランに指輪を渡さないといけないからだ。あ、その為にはソーマ酒飲まないとダメじゃん。さっき渡された時に飲めばよかったと後悔した。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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