#750 金狐の陰陽師
俺はレギオン召喚でリリー、イオン、セチア、恋火、イクス、ノワ、リビナ、リアン、和狐、ブラン、セフォネ、ファリーダ、ユウェル、コノハ、ゲイル、白夜、ロコモコ、ダーレー、ルーナ、ヒクス、ストラ、スピカ、サフィ、クリュス、蒼穹、コーラル、ジーク、千影を呼ぶ。
俺は和狐とダーレーに乗り、リアンはサフィ。ヒクスにセチア、スピカにファリーダ、ジークにユウェル、残りはストラに乗る。イクスは既にミア、ディオを呼び出しており、リアンの装備はスターマリンでファリーダはルナティックバトルアックスだ。
他のみんなも強気に飛行召喚獣やテイムモンスターを呼び出し、対策を講じて敵飛行部隊の撃破に向かった。
『マスター、敵部隊補足。左右上下に分散していますがどうしますか?』
イクスにシンクロビジョンを使い、敵を確認する。
スカルワイバーンLv36
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ゴブリンライダーLv38
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ゴブリンボマーLv40
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
そこまでの驚異は感じないな。まぁ、砦を攻撃範囲に入れてしまうと厄介な敵って感じかな。いずれにしても俺たちの防衛作戦にとってこいつらは邪魔だ。排除しないとね。
『俺とタクマ、烈空さんの部隊は正面からぶつかる。左はドラゴンテイマー部隊、右はアロマの部隊、アルさんの部隊は上から行こう。ルーク、マヤさんの部隊は後方待機で俺たちが突破された奴を処理を頼む』
『『『『了解!』』』』
俺たちは武器を構えると最後に注意事項を話す。
『全員地上に攻撃が及ぶ攻撃は控えるように徹底してくれ』
『『『『はい!』』』』
『行くぞ! 遠距離攻撃開始!』
空でブレスや波動、火球の撃ち合いが始まる。コノハはセイントを魔力操作で操り、複雑怪奇な動きをした光線は見事に敵であるスカルワイバーンたちに命中する。
敵を何体か撃破したところでこちらに呪滅撃は発動していない。どうやら安全みたいだな。
『白夜、霊化で接近。千影、鏡幻で飛んで敵を混乱させてくれ。敵の攻撃が止んだら、接近戦を挑む!』
『ガウ!』
『了解であります! 黒竜解放! 空間歪曲!』
最初に千影が敵のスカルワイバーンの背に乗っているゴブリンライダーの首を飛ばす。
「影分身! 鎌鼬!」
更に千影は影分身で増えると鏡幻を連続で振るうと鎌鼬が周辺のスカルワイバーンたちに命中し、更に別のところでは白夜など霊化を使える召喚獣たちが敵を襲撃していた。これで敵は遠距離攻撃どころではない。
『全員突撃!』
『おぉ!』
やはり現時点では空中戦力はこちらのほうが遥かに上だ。
「冷凍光線!」
「はぁ! ん~…やっぱりしっくりこないわね。荷重操作! はぁ! これなら行けるわね!」
早速リアンはスターマインの性能を試しており、ファリーダはルナティックバトルアックスの扱い方を研究しているようだ。
俺の召喚獣たちは接近戦で生き生きしている。蒼穹はスカルワイバーンに巻き付き、ゴブリンライダーに噛み付いてた。コーラルは炎化を使用し、無双状態だ。
早めに対処したおかげで戦闘は敵部隊の上空で行われている。この利点は敵が持っている爆薬が地面に落ちた際に俺たちには呪滅撃が発動しないということだ。
逆にデメリットは地上から攻撃を受けるという点、ただこちらはそこまで影響はない。岩が飛んで来れば敵部隊に落とせばいいし、矢が飛んできたら、防風壁で対処が可能だ。魔法も発動してくるがセチアとリビナ、ブラン、セフォネなどが魔法阻害、魔法侵食で魔法を阻止している。
寧ろ警戒すべきはいきなり現れるマールス・ゲニウスと地面にいるゴブリンアサシンだ。俺はコノハにシンクロビジョンを使い、確認していると偶然透明になっている部隊を発見した。
ナイトメアワイバーンLv40
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ナイトメアワイバーンに乗っている奴らはスカルワイバーンと同じだ。俺は自分の部隊に指示を出す。
『ナイトメアワイバーンは俺たちの獲物だ。シンクロビジョンを切らすなよ』
『『『『はい! ギルマス』』』』
俺はコノハにシンクロビジョンを使い、敵を正確に捉えて部隊の人たちと一緒に落としていく。
『ギルマス! 上空に黒い靄が発生!』
ちゃんとマールス・ゲニウスの出現兆候があったのか。
『全軍! マールス・ゲニウスが来るぞ! アルさん、ポジション交代をお願いします! アロマのマールス・ゲニウス部隊は俺と一緒に上に! タクマと烈空さんはアロマとポジション交代! 索敵班はこのポジションを維持して、アルさんと合流してくれ』
『『『『了解!』』』』
俺はリリーたちに指示を出す。
『マールス・ゲニウス退治をする者、上に! 残りはここでナイトメアワイバーンを叩いてくれ! 指揮はイクスに任せる』
『『『『了解!』』』』
俺たちがアルさんたちの部隊とすれ違い、ポジションを入れ替える。鳥系の召喚獣はマールス・ゲニウスに弱いことが判明しているからな。そして俺にはアンデッドモンスターに強く頼りになる狐巫女がいる。
「和狐、行けるな?」
「はいな!」
敵が悪霊なら祓って清めるのが巫女だ!今日の俺の戦闘はここまで。地上での出番はない。なら存分に戦わせてもらう。
「「エンゲージバースト!」」
和狐が橙色の光となり、俺の指輪に宿るとエンゲージバーストが発動する。和狐とのエンゲージバーストで俺は金髪の狐のセリアンビーストの姿となり、服装は陰陽師のような青い服となった。恋火と同じと思っていたがだいぶ変わったな。
武器は腰に迅雷、手には紅蓮の鉄扇がある。俺がダーレーに分かれて戦うように指示を出すと和狐が心配する。
『こ、こんなんですみまへん』
『謝る必要なんてないさ。刀と鉄扇を使うなんて久方振りだ』
鉄扇を上手く使えず爺さんに鉄扇で叩かれた思い出が過る。
『嬉しそうどすな? タクトはん』
『あぁ。接近戦は俺が引き受けた。サポート頼むぞ。和狐!』
『はいな!』
さっきまでとは違うぞ!俺と共にアロマたちもエンゲージバーストを使い、マールス・ゲニウスの部隊とぶつかる。
マールス・ゲニウスは俺たちに手を伸ばしてくる。それはもう見た!俺が紅蓮の鉄扇を振るうと炎輪が発生し、マールス・ゲニウスの手を切断して、そのままマールス・ゲニウスを切断する。更に燃えているマールス・ゲニウスに接近したところで和狐の初スキルを発動する。
『大祓!』
俺たちを中心とした巨大な祓いの領域が展開されて、その範囲にいるマールス・ゲニウスは次々消えていく。目の前にいる奴は悪足掻きで俺たちに状態異常を仕掛けてくるがエンゲージバーストで服装は変わっても装備の効果は継承されるから通用しない。
するとマールス・ゲニウスたちは完全に狙いを俺に変えて、俺たちに魔素弾を撃ってくる。
『結界!』
和狐が結界を張る、マールス・ゲニウスたちが俺たちに攻撃を集中した結果、他のみんながフリーとなる。
「タクトたちをいじめる悪い幽霊はリリーたちが退治しちゃうよ! みんな突撃!」
「空だと少し不安だけど、新しい武器の性能、試させてもらうわ! はぁ!」
「無視するというならグリフォンの神様から頂いたこの剣の斬れ味、たっぷり試させて貰います!」
リリーたちと一緒にアロマの堕天使ちゃんたちが飛び込んで敵を倒していく。このままで十分勝てると思うが折角だ。ここで和狐の闇と対峙しておこう。
「いいな? 和狐」
『は、はいな。その~…よろしくお願いします』
「任せてとけ。約束は守るさ。行くぞ!」
「『血醒!』」
俺の景色が暗赤色の景色に変化する。そして恋火の時とは違った多数の悲痛な声が聞こえてきた。
『悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲悲』
『怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒』
『憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎』
『怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨』
人間に痛みつけられ悲しみ、怒り、憎んで最後には怨みとなる。これら全てを俺は受け止めないといけない。これは和狐の血に刻まれてしまったものだからだ。そして…俺の目の前に俺が見たことがある獣の目が現れた。
『殺せ…殺せ殺せ殺せ殺せ!』
そいつは殺意の獣だった。こいつの目は和狐が暴走した時に見ることが出来た目と同じ目だった。
「お前は…俺にそっくりだな」
『…何?』
「神様を怨んで普通に生活をしている人間を怨んで世界を怨む。そして最後はこんな世界なんて滅べばいいのにと思うようになる」
もし俺に血醒が使えたら、きっとこいつのような存在がいるんだろうな。
「人間も神様も悪魔も世界もなんでも怨んでいい。だがな…殺しだけはなんでもというわけにはいかない」
『なぜだ! 全員殺して何が悪い!』
「悪いさ。お前が一番わかっているはずだ。俺がただ人間を怨みだけで殺した結果、殺された奴の関係者の中にまたお前という存在が生まれる。お前はお前という存在が生まれることを肯定するのか? お前がこんなにも苦しんでいるのに…」
『な、ならばどうしろと言うんだ! この湧き上がって来る感情を!』
俺は決意を込めて言う。
「俺が消してやる。お前の殺意、俺が引き受けよう。その代わりにお前の力を俺たちに貸してくれ」
『…出来ると思うのか?』
「あぁ。俺たちは似ているからな」
『…面白い! 俺の殺意、引き受けて、消せるものなら消してみろ!』
俺の景色が戻ると結界が破られるところだった。魔素弾が飛んでくる。それを俺は躱して、一瞬で敵の懐に移動すると迅雷で斬り裂く。俺たちのエンゲージバーストは金色の燃えるオーラとなっていた。そして遅れてインフォが来る。
『和狐の血醒の呪いを解除しました。血醒のデメリットが無くなりました』
和狐の声が聞こえた。
『これ…タクトはん』
「約束したからな。みんなには悪いが一気に終わらせるぞ! 和狐!」
『は、はいな!』
和狐に恋火の真似をしてもらい、迅雷に聖火を宿し、次々マールス・ゲニウスを倒していく。和狐のサポートは完璧だ。俺が慣れていない空中浮遊の飛行。鬼火と火炎操作を合わせた攻撃でのサポート。こんなことをされたら、俺も頑張らないといけない。
マールス・ゲニウスが手や剣で攻撃してくると俺は紅蓮の鉄扇でガードし、迅雷を抜刀する。遠くにいる敵は紅蓮の鉄扇を振るい、炎輪が発生すると和狐が俺の魔力操作を使い、炎輪を操ると次々敵を切断していく。
「こいつで」
『終わりどす! ハーミットブレス!』
至近距離のハーミットブレスが決まり、俺たちのところに現れたマールス・ゲニウスは全滅した。
『『『『倒しすぎ!』』』』
リリーたちや部隊のみんなから怒られた。仕方ないさ…殺意を引き受けた以上、倒していい敵は倒さないと約束に反してしまう。
ダーレーに乗り、エンゲージバーストを解除すると和狐が背中に抱きついて来た。
「ありがとうございます。タクトはん」
「どういたしまして」
「「「「「むー」」」」」
リリーたちの視線が痛いが、和狐は離れようとしない。リリーたちの視線から逃れるように戦況を確認すると砦の方ではチロルたちがオピニンクスのビーストバーストで大暴れしていた。一方こちらはやはり一部の召喚獣が混乱を起こしているようだ。頃合だな。
俺は軍扇を取り出し、振ると全部隊のデバフが一つ解除された。その結果、二つデバフを受けた者以外は正常状態になる。効果ありだな。これから軍扇の需要は増加しそうだ。
地上部隊はゴブリンアサシンたちとコンビクト・ワーウルフと戦闘中、そろそろとっておきの作戦が発動する頃合か。
「俺たちは砦に帰るぞ」
「「「「「…はーい」」」」」
ずっとリリーたちからの視線攻撃を受けつつ、俺は砦に帰っているといよいよ俺たちの呪滅撃対策の作戦が発動しようとしていた。
経験値は明日に持ち越します。




