#749 古代ローマの悪霊
俺たちが転移した瞬間、空から魔力弾が降ってきた。
「分かれて回避しろ!」
満月さんの声に俺たちはそれぞれ分散して逃げると敵を確認する。
マールス・ゲニウス?
? ? ?
死神のようなボロボロのマント姿の敵が空にたくさんいた。すると防衛部隊の召喚獣たちが攻撃をする。すると黒い霧になって消えると瞬時に攻撃した召喚獣の正面に現れる。その瞬間、召喚獣は暴れだし、召喚師が落下してしまう。
俺は空脚で落下した召喚師を掴まえて、助ける。
「大丈夫か?」
「ギルマス、助かりまーー後ろ!」
俺が振り返るとマールス・ゲニウスはボロマントから手を伸ばしてきていた。危険察知が反応しなかっただと!?ええい!手には蹴り!
俺が回し蹴りをするとマールス・ゲニウスは俺の足を掴んできた。マジで!?
俺を引っ張るとそのまま壁にぶつけて来た。更に振り回し、別のマールス・ゲニウスが手から長い爪を出し、構える。
すると俺の足を掴んでいた手が狙撃され、解放されると空脚を使い、長い爪を回避する。危なかった。俺が銃撃のほうを見るとブルーフリーダムの銃士ちゃんがいた。相変わらず見事なピンポイント射撃だ。
俺が視線をマールス・ゲニウスに戻そうとしたそのとき、他のマールス・ゲニウスたちが俺目がかけて手を伸ばして来ていた。滅茶苦茶ホラー!
俺が空脚で逃げると無数の手が追尾してきた。
「嘘だろ~! というかなんで俺だけ!」
「なんか今回のイベント、タクト君が狙われるのが多くない?」
「「「「そういえばそうかも」」」」
「ネビロスを倒したのがリリーさんたちですからそれで狙われているのでは?」
ふざけんな!でも否定出来る要素が見当たらない。俺は迅雷とファミーユを展開する。
『『『『アクセラレーション』』』』
「狙ってくるなら上等だ! その手全部斬り落としてやる!」
俺は伸びてくる手を躱して手首から斬り落とす。斬れる幽霊なんざ怖くないんだよ!
俺はある程度、手を斬り落とすとマールス・ゲニウスに襲いかかる。その瞬間、ボロマントに隠れていた恐ろしい顔と目が合う。その瞬間、俺の着物が何らかの状態異常を無効化し、俺はマールス・ゲニウスを斬り裂いた。
今のが召喚獣が暴れた原因でこのイベント防具が必須と言われる所以か。恐らくこいつが持っている能力はリビナの精神誘導に近い能力だろう。
俺がマールス・ゲニウスを睨むとマールス・ゲニウスが消える。次の瞬間、下が騒がしくなる。俺が下を見ると俺が斬り落とした手首にみんなが襲われていた。手首だけ残して、自分たちは霊化出来るのか。
俺がリリーたちを召喚しようとした時、マールス・ゲニウスが現れる。そしてボロマントから出た手には剣が握られていた。俺はそれを受け止めるとまた謎のスキルを受けるが効かん!すると左右からマールス・ゲニウスが襲いかかって来る。
俺は受けている剣を弾き、後ろに下がることで左右の敵の攻撃を躱す。すると俺に剣を弾かれた奴が姿を消すが俺は背後から襲ってきたマールス・ゲニウスの攻撃を読んで敵の剣を迅雷で受け止め、顔面に裏拳を放つと命中する。まだ行くぞ!
「横蹴り! 回し蹴り!」
更に蹴り武技の連続技。これは偶然テレビで見た刑事ドラマのアクションを見て、出来るんじゃないかとやってみた。回し蹴りでぶっ飛ばした奴に俺は最後に迅雷で斬り裂いた。迅雷の攻撃に反応したのは見事だが、速さは俺のほうが上だ。俺は迅雷を左右から攻撃してきた奴らに構えるとその二体は同時に襲い掛かってきた。
俺は迅雷を片手に構えて、迎え撃つ。
「居合い斬り!」
二人のマールス・ゲニウスは俺の居合い斬りを剣で受け止める。それは見事だが、俺はフリーの拳をマールス・ゲニウスの顔面に放ち、一人をぶっ飛ばすともう一人のほうは迅雷の力を緩めてバランスを崩すと裏拳、横蹴り、回し蹴りコンボからの居合い斬りで倒した。
いかん、このコンボを気に入ってしまったかも知れない。すると俺が殴った奴が再び斬り掛かってくる。俺は剣の攻撃を受けては相手を殴ったり、蹴ったりする。そして怯んだところでマールス・ゲニウスの首を飛ばす。これぞ御剣流の神髄だ。
俺が久々の感覚に酔っていると上からマールス・ゲニウス三人が剣を下ろして来ていた。集団で一人をいじめるのは良くないな。
『テレポート』
俺がテレポートで攻撃を躱すと敵は俺一人を狙った結果、一箇所に集まる。これは美味しい場面だ。
「百花繚乱!」
花びらの斬撃が集まっている三人のマールス・ゲニウスに炸裂して消え去る。すると和服の鉄心さんが俺の武技の隙をつこうとしたマールス・ゲニウスを斬り裂いて俺と背中合わせになる。
「それがタクト君本来の剣術かい?」
「結構遊んでいますが、大筋はこんな感じです…あまり人に見せられる剣術ではないんですよね」
剣には剣で拳なら拳で正々堂々戦うのが普通。剣道の試合でいきなり顔面パンチを放ったら、即反則負けで最悪除籍処分になる問題行動だ。だけど御剣流はこれをむしろ推奨している。殺し合いにルールなどありはしない。あるのは死んだ奴が敗者で生き残った者が勝者という事実のみ。だったら、何をしてでも勝ちにいく。それが御剣流だ。
「確かにな。現代の剣術にはない荒々しさと人を斬ることに特化した剣術と言ったところか。まさかゲームでこんな剣術に出会えるとは思っても見なかった」
「…楽しそうですね。鉄心さん」
鉄心さんの声から興奮してくるのが伝われってきた。
「あぁ…侍や歴史が大好きな私としてはタクト君は奇跡のような人間だ。このイベントが終わったら、君のその剣術をたっぷり味わわせてくれ」
「…後悔しないでくださいよ。金的攻撃ぐらい普通にしますからね。俺が習った剣術は」
「それは対…策を考えないといけないな。私が召喚を援護しよう」
「ありがとうございます。魔石召喚! 来い! リリー、イオン、セチア、恋火、ブラン!」
着物装備のみんなと霊には強いブランだ。
「何? タクト? ッ! 星拳!」
いきなり現れたマールス・ゲニウスにリリーの星拳が決まり、他のマールス・ゲニウスを巻き込み、壁に激突する。この砦の壁、大丈夫かな?
「たくさん飛んでますね」
「さっきは突然現れたみたいでした」
「あぁ。どうにも危険察知が効かない敵らしくて、しかもずっと狙われて召喚出来なかった」
イオンが現れたマールス・ゲニウスをルナティックミスリルソードで斬り裂き、別のマールス・ゲニウスは恋火の恋煌に斬り裂かれ、燃えかすとなる。
「タクト!? 苛められたの!? 許せない!」
「これはお仕置きが必要ですね…」
「そうですね。タクト様は休憩しててください。ここは私たちだけで十分です。恋火、ブラン、タクト様をお願いします」
「「はい!」」
みんなが取り出すと一気に戦況が変わる。まずリリーだが、マールス・ゲニウスの行動を完全に星読みで見切り、ボコボコにしてる。
イオンは持ち前の反射神経とスピードでマールス・ゲニウスを葬っていく。しかし俺と同じで霊化するマールス・ゲニウスに苦戦をしていると思ったが、セチアのウルイチイボウから放たれたルナティックミスリルアローが霊化しているマールス・ゲニウスに命中し、姿を晒すことになった挙句寄生木に拘束される。
「そこです! ミーティアエッジ!」
その千載一遇のチャンスを逃すイオンではなく、ミーティアエッジで仕留めた。その間にセチアは次々弓矢を放ち、マールス・ゲニウスを捕らえていく。当然、マールス・ゲニウスはセチアと俺を狙いに動くが俺、恋火、ブラン、鉄心さんがいるここに飛び込んできた瞬間ボコボコだ。
そして拘束されたマールス・ゲニウスはプレイヤーからしたら、ただの経験値だ。少しするとインフォが来た。
『格闘のレベルが40に到達しました。格闘【クロスカウンター】を取得しました』
『蹴り技のレベルが40に到達しました。蹴り技【旋風脚】を取得しました』
おぉ!クロスカウンターは大好き!超感覚があるからやり放題な予感がする!旋風脚は逆さまになって回転蹴りを放つ技。自分に群がっている敵全てに攻撃出来るから一見すると便利でかっこいい技だが俺は使わないかな?
なぜなら俺は挑発とか持っていないからだ。しかもこの技、隙だらけだ。足で弓とか弾ければいいんだろうけどね。後、逆さまで回転するから慣れないと気分が悪くなる。戦闘でこれは致命傷だ。するとリリーたちが帰ってきた。
「ざっとこんなもんです」
「リリーもタクトを苛めた悪い奴らをたくさん倒したよ!」
「ありがとな。みんな」
今回、判明したことはマールス・ゲニウスにとって、リリーとセチアが天敵であるということだ。それはみんなも同じ認識みたい。
「タクト君が狙われる理由はリリーちゃんたちを召喚させないためなんじゃないかな?」
「「「「うんうん」」」」
無双したリリーたちを見るとそれも否定出来ない俺である。するとサバ缶さんが話す。
「これで戦闘終わりじゃないですよ。皆さん。敵の大部隊が接近中です。急いで例の作戦を準備をしないと間に合いませんよ」
そうだった。俺たちはマールス・ゲニウスの情報交換をしながら、昨日協議した防衛作戦の陣形を整える。
『マールス・ゲニウスは突然現れたのか』
『はい。いきなり襲われたので、対処が遅れました。すみません』
『それは仕方ないさ。俺も苦戦したしな。砦はどうですか?』
『砦自体のダメージはほぼないが、生産NPCのダメージは深刻だな』
敵の今回の狙いはこれではっきりした。砦を作っている生産職やNPCたちを狙って来たんだろう。俺が言うのもなんだが、嫌らしい手を使って来るもんだ。
『対策を取らないとまずいかも知れないな』
『それなら終わった後に宴を砦で行いますか。NPCたちのモチベーション上げにはこれが一番効果的だと実証されていますし』
そうなの?でも思い返してみるとみんなでご飯を食べると沈んでいた気持ちが少し上がっているような気がするな。これには全員が賛成する。みんな宴が好きだもんね。話をマールス・ゲニウスに戻す。
『マールス・ゲニウス対策としては占い師でしょうか?』
『リリーさんの様子からしても恐らく察知可能でしょう。ノストラさんたちには私から話をしておきます。ただイベント防具必須の敵みたいなんですよね』
マールス・ゲニウスがしてくる状態異常は恐怖と混乱であることが判明した。更には俺が単体で殴れたのは蒼天の着物に天の加護があるからだ。ここで厄介なのが対応出来ない召喚獣やテイムモンスターたちということになる。
『敵の狙いは空中戦力の減少も入るでしょうね』
『ズメイやドラゴンたち、大型の召喚獣を使うのも怖くなりましたからね』
オピニンクスやペガサスなどは効果を受け付けないことは証明されたがドラゴンテイマーが乗っているドラゴンやズメイは恐らく効果を受けてしまう。ドラゴンブレスを砦に放たれたら、堪らない。
『状態異常は直せるみたいですがさっきみたいな状態になると流石に怖いですね』
『対策をするなら料理バフか事前に状態異常無効化のバフをかけておくぐらいですか?』
『そうなりますね』
他に何か対策がないものか…こういう時は軍扇を取り出して考えてみよう。俺が勘兵衛さんの真似をしていると手元に目が行く。
「…軍扇?」
これ、使えるんじゃね?
『偵察部隊より緊急報告! 敵砦より飛行部隊出現! 敵編成はスカルワイバーンとゴブリンライダー、ゴブリンボマー! 爆薬を搭載している模様です!』
こちらの飛行部隊を封じた後にそう来るかよ。
『チロルはオピニンクス、ペガサスがいる召喚師と共に砦の防衛を頼む。他の空中戦力がいる召喚師と各テイマーたちは俺と共に先行して飛行部隊を叩く! 防衛部隊の作戦の邪魔と砦への攻撃を阻止するぞ!』
『『『『『はい!』』』』』
こうして俺たちの夜の本格的な防衛戦が始まった。




