#748 ドワーフの住処攻略会議
夕飯を食べ終えた俺はログインすると作戦司令室にサバ缶さんとルインさんがいてくれた。早速作戦会議を開く。まずは俺たちが戦った新しい敵の情報を話して、対処法を確立する。
その後、香子さんからドワーフの住処の情報をもたらされる。
「これが周辺の地図と敵の主な陣形です」
「凄い見やすいですね」
「紙とペンを提供されましたからね。これくらいはさせて貰いますよ」
素直に凄いな。俺には出来ない芸当だ。素直に羨ましい。香子さんが説明してくれる。
「まず確認された敵は各種ゴブリン、コボルト、オーク、悪鬼、餓鬼、邪鬼、レッドキャップ、イビルオーガを確認しました。特徴は召喚師が召喚する彼らより巨大となっていることです」
「イビルオーガは恐らくイベント武器対象モンスターでしょうね」
今まで強い奴は地獄の加護を持ってきたな。俺はドワーフの人たちに聞く。
「この編成で敵はどうやって攻めてきたんですか?」
「ドワーフたちの話では突然敵が現れたそうです」
突然ねぇ…俺が考えているとルークが可能性を話す。
「もしかしたら、敵の中にゴブリンダークマージがいるかも知れません」
「シャーマン系の第四進化だったか?」
ゴブリンはシーフ、ファイター、シャーマン、アーチャーの四つに分岐し、ファイターのみ第三進化でライダーとウォーリアに分岐することがルークによって判明している。
シャーマンは魔法使いタイプで魔法とデバフが非常に厄介な奴だ。それの第四進化がダークマージ。黒魔術師という意味だが、能力をルークが解説する。
「はい。ダークマージはより多くの魔法を覚えるんですが、その魔法の中には時空魔法もあります」
するとレッカが言う。
「転移で移動したってこと? それはないと思うよ。テレポーテーションは一度行ったところにしか転移出来ないはず。ゴブリンたちに攻められたことは今回が初めてなのかな?」
レッカの質問にドワーフが答える。
「いや、昔はあるが少なくともここ百年は記録にないはずじゃ。テレポーテーションの転移は不可能だと思うのう」
レッカとドワーフに指摘を言われてルーク沈黙。仕方ないので、俺の予想を話そう。
「レッカ、それならシャドールームならどうだ?」
魔法版の影潜伏と言えるシャドールームなら可能性はある。
「なるほど! それなら可能…いや、一度に大部隊を影に入れることは無理だよ。タクト」
確かに一度に影の中に入れる数は限られている。しかし俺はこの魔法には裏ワザがあると思っている。
「ダークマージが複数いたならどうだ? 一人のダークマージが部隊を影に忍ばせているダークマージの運搬役をしたなら一瞬で敵の大部隊を展開させることが可能だと思うんだが?」
まぁ、一瞬は言い過ぎかも知れない。どうしても運搬役の影から出てから自分の影に潜んでいる部隊を解放する手順になるからな。俺の案にレッカが答える。
「それは…たぶん可能だね」
「ほら! ほら!」
ルークは喜ぶが俺が言ったことだぞ。しかもこれは可能性に過ぎない。するとルインさんが聞いてくる。
「そんなことよくすぐに思いついたわね。タクト君」
「二つの住処を攻略するときにどうやってみんなを移動させればいいか考えていたら、思いついた作戦なんですよ」
思いついたきっかけは昨日ノワたちが俺の影から飛び出したときだったりする。
「敵と同じ目的なら同じ作戦を思いつくことはありますからね」
帝さんが口を開く。
「話が変わってしまったがこれで攻略部隊を派遣する方法の目星はついたな。だが問題は砦の攻略だ。上には魔法使いタイプのゴブリンと弓使いのゴブリンが陣取り、大砲もある。地上には鬼とゴブリン、コボルトだらけだ。城門を壊すのは我々は慣れているがどう攻略する?」
「攻城兵器はあるけど…たぶん真っ先に狙われるよね」
「召喚獣たちで兵器防衛、上の奴らを牽制するのがいいかな?」
俺も最初はメルと同じ考え方だったが、真っ向勝負で落とすとなるとそれは敵も運営もわかっているはずだ。最高難易度である以上、敵にも必ず複数の手があり、真っ向勝負の対策は講じているはず。こちらはそれを上回らないといけない。爆撃での失敗をするのはもうごめんだ。
「敵の城門はずっと閉めっぱなしなんでしょうか?」
「いいえ。六時間ごとに城門が開いて、見張りを交代させているわ。私たちもその隙に潜入しようか考えたんだけど、危険予知が反応してね。大量のゴブリンアサシンが潜んでいるみたいなのよ」
やはり潜入をするように運営は誘っているな。砦攻略を正攻法以外で考えるならやはり味方を潜入させるがいいだろう。どれだけ屈強な城門だろうとも敵を中に入れてしまったら、終わりだ。それはトロイヤ戦争などが証明している。
ただ当然簡単には潜入出来そうにない。しかしこれはゴブリンアサシンたちを突破出来れば潜入可能を意味している。トロイの木馬を敵が砦の中に入れてくれたら、いいんだけどな。ここは確実な手段を取ろう。
「敵の編成で少ないのは…レッドキャップか」
「も、もしかしてギルマス。レッドキャップに変化して砦に潜入しろとか言わないよねん?」
「よくわかったな」
「「「無理無理!」」」
忍者たちから大反対だ。
「絶対バレるでござる!」
「…流石に敵を舐めすぎではないですか?」
「俺はいけると思うぞ。これを使えばな」
「「「「あ…」」」」
俺が取り出したのはキルケーの変身薬だ。これの性能はキルケーが証明している。知らない人たちもいるから説明する。
「流石は攻略の最前線のギルド。便利アイテムを持っているな」
「神様のお墨付きなら私たちも安心です。ただレッドキャップに変身しただけでは気づかれると思います」
「でしょうね。変身したレッドキャップと遭遇したら、終わりですからそれを封じようと思います」
「明るいうちに一度戦闘をして、レッドキャップを仕留めるわけですね?」
それが一番安全で確実な手段だろう。
「明日の夕方六時前までに集まれる召喚師と猛獣使いたちで襲撃を行います。その際にレッドキャップをわざと遠くにぶっ飛ばして、香子さんたちが敵から見えないところで仕留めて、レッドキャップに変身する。これでどうでしょうか?」
「行けると思います」
「それならワシらの中から一人連れて行ってくれ。砦の中の迷路じゃ。案内役は必要だと思うぞ?」
「そうですね…ただドワーフをずっと庇うのは難しいです」
ドワーフは鍛冶職だからな。それでも土潜伏や逃走スキルがあるからそこまで邪魔にならないと思う。しかし沢山連れて行くことは出来ないな。目立つのは避けない。
「それならキルケーの変身薬も届けないといけないし、私たちが襲撃した時に数人連れていくのがいいかな?」
「だな。レッドキャップに変身することになりますがいいですか?」
「住処を奴らから取り戻せるならどんなことでもしてやるわい」
これで潜入の段取りは決まった。次は本格的な攻略の話だ。
「今回は敵拠点攻略と防衛に分かれないといけません。どうしましょうか?」
「我が儘言って、すみませんが俺はドラゴンの住処の攻略をさせて貰いませんか?」
「リリーちゃんたちにお願いされたのかしら?」
「…はい」
ヴァインをどれだけ嫌っていても同じドラゴニュートが住処を奪われたことは許せない。リリーたちははっきり俺に告げたことで俺の心は決まっていた。
「恐らく一番難易度が高い攻略だ。それをホストギルドが引き受けるのはある意味道理と言える」
「全体のレベルから見てもそれが一番でしょう」
「まだ敵の戦力がわからぬでござるが、反対するわけないでござるよ」
「ありがとうございます」
これでドワーフの住処を攻略するときは俺たちが防衛を担当することになった。その後、エステルの軍師、ダークエルフ、ヴィオレたちを呼んでドワーフの住処攻略の詳細を決めていると緊急報告が来る。
「防衛部隊より緊急報告! 第三砦に新種の幽霊タイプの敵、多数出現!」
「偵察部隊より緊急報告! 敵砦に動きあり! 敵の大規模進行です!」
横槍が結構が入るな。
「向かおう!」
「「「「おぉ!」」」」
俺たちは完成間近の第三砦に向かった。




