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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
希望の国エステル
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#743 ダークエルフの村と犯人探し

俺たちは案内役のダークエルフの人に頼み、門番と話をしてもらったがやはり入れてもらえない。


「どうするんですか? これ?」


ここはあれの出番だな。


「ダークエルフの女王様に伝言を頼んでいいですか?」


「まぁ、それぐらいならよかろう。なんだ? 言ってみろ」


「イヴリーフ様が食べていた物を超える物を用意しましたとお伝えください」


「? なんだかわからんか…少し待っていろ」


俺の言葉に事情を知っているシフォンたちはケーキでダークエルフの女王に許可をもらうつもりだと察する。知らない人たちは意味不明だろうな。もう一人の門番をしているダークエルフは不思議そうにこちらを見ている。


待っている間に俺たちは犯人について話す。ヒントはある程度、揃っている。犯人はダークエルフに変身して侵入したかもしくは洗脳などでダークエルフを操った可能性が高い。そいつが盗んだのはダークエルフの宝。この条件に当てはまる悪魔は二人既に出会っている。


「タクト君が出会ったバルバトスがここにいるのかな?」


「そいつがキルケーの変身薬を使ってこの村に侵入することはたぶん可能なんでしょうけど、このイベントはネビロス、サルガタナスの運営イベントよ。出てくるとは思えないわ」


あの事件を知っているのは俺たちだけだしな。しかしそれを考えると犯人は一人しかいなくなる。


「たぶん俺たちが一度倒したウァレフォルって悪魔だろうな。一瞬の出来事でほぼ記憶にないけど」


ゾンビイベントの時にスカーレットリングを盗もうとした不届き者だ。


「セチアたちが倒したんだよな?」


「そうでしたか? 全く記憶にないです」


初めてのシンクロバーストでボコボコにした悪魔を忘れるはずがないと思うんだけどな。ミランダが聞いてくる。


「あなたたち、似てるわね。ウァレフォルはサルガタナスの配下で盗賊に関係が深い悪魔だったかしら?」


「そうね。盗みを働くように誘惑する悪魔。イベントのことを考えるとこいつ以外に考えられないわね」


俺たちの時は直接盗みに来たが本来は自分で盗みをする悪魔じゃないんだよね。


「多分森の中に隠れていて、見つけてからダークエルフの村に入れるようになるんじゃないかな?」


シフォンの言う通りだとすれば、ケーキを用意する必要無かったんじゃないかという話になる。悲しい。


「でもそれだと見つけるのが大変よ」


「あの大量の蜘蛛もいるしなぁ」


「確かに蜘蛛退治は面倒だけど見つけるのは簡単だぞ?」


「「「「はい?」」」」


全員がわかってない。俺が説明すると全員が納得した。


「なるほど。その手があったわね」


「随分前に使ってから一度も使ってないから忘れてたわ」


「でもこれでシフォンの言った流れが本来のイベントの流れであることは間違いなさそうね」


「その流れをタクトがぶっ壊したということだな!」


まだ流れが壊れたわけじゃ…門番さんがやってきて、監視付きでダークエルフの村に入ることが許可されました。


中に入った俺たちの前に明るい森が広がった。一気にダークエルフのイメージが壊されたな。ただ周りの木々が黒く変色している木ばかりでやはり俺が知っているエルフの村とは異なっている。


「凄く睨まれていないか? 俺たち」


「俺たちが宝を盗んだ犯人かも知れないんだ。この反応は当然だろう」


「門番さんなんて凄いタクト君を睨んでいたよ。エルフの村も最初はこんな感じだったの?」


「あぁ。結局助けている内に今の関係になった。今回も同じだろう」


疑いがあるなら犯人を見つけて、疑いを晴らせばいい。奪われた宝を俺たちが奪い返したら、きっとダークエルフたちは協力してくれるはずだ。ダークエルフの女王に謁見するために俺たちはその場で待たされる。その間に作戦を決める。


そして俺だけがダークエルフの女王と謁見する。俺が歩いてたどり着いた場所は巨大な金の木と銀の木がある場所だった。そこでここがなぜ明るいのか理由がわかった。この金の木から光が放たれているんだ。


すると急に俺の周囲が暗闇になると足音が聞こえる。そちらを見るとダークドレスに身を包んだ褐色のエルフが現れた。


「私がダークエルフの女王ラプエル。貴様がイヴリーフが言っていた召喚師だな?」


あ、知られているんだ。


「はい。召喚師のタクトと申します」


「話はイヴリーフから聞いている。エルフたちの食糧危機から助け、ユグドラシルを守ったそうだな?」


「俺は少し手助けしただけです」


俺の答えにラプエル様は笑む。


「謙遜するな。イヴリーフが人間相手にここまで関係を持つことは私が知る限りでは記憶にないことだ。誇っていいぞ」


そうなんだ。


「それであのアップルパイを超える物を用意したという話は誠であろうな?」


「もちろんです。どうぞご覧下さい」


俺は一番出来栄えが良かったケーキを取り出す。するとラプエル様が超反応する。


「おぉ! なんという甘い香りだ! 見栄えも素晴らしいものだな。うむうむ、これならばあいつも悔しがるだろう…くくく」


絶対仕返しするつもりだ!この人!


「…それでお話をしたいんですが」


「奪われた宝についてだな?」


「はい。確証はありませんが犯人に心当たりがあります。犯人を捕まえるのに協力してくださりませんか?」


「…なんだと?」


俺は敵の正体、侵入方法、見つけた方、作戦を説明する。


「どうでしょうか?」


「うむ…いいだろう。これがもし違っていても我々には損はないからな。お前が考えた作戦に乗ってやる」


「ありがとうございます」


俺はみんなの元に帰るとセチアが駆け寄ってくる。


「大丈夫でしたか? タクト様」


「あぁ。大丈夫だったよ。服に臭いは付いてないだろう」


セチアが確認する。信用ないな。するとシフォンが聞いてくる。


「どうだった?」


「ダメだった。アップルパイを超えるお菓子を要求されて帰らされたよ」


「そ、そうなんだ~」


『シフォン…あなた致命的に顔芸が出来てないわよ』


やはり委員長はこういう嘘の演技は向かないな。みんなから指摘されて、リアクションを取るのもアウトなのを理解しているのだろうか?


「俺は今からご注文の料理を作るからみんなも手伝ってくれ」


「話は聞いている。不本意だが、家に案内しよう」


「お願いします」


その後、俺たちは部屋の中で待機しているとダークエルフが入ってくる。


「準備が出来たぞ」


「わかりました」


みんなが部屋を出て行く。さて、裏切り者を見つけるとしましょうか。ここで取り出すのは追跡の風見鶏。本当に梅雨の村でのイベントアイテムにはお世話になるよ。このアイテムは追跡する者の名前を登録することで発動する。


さて、俺たちの推理は正解かな?


「ウァレフォルを登録っと」


すると追跡の風見鶏が一人のダークエルフを指し占めした。そのダークエルフは結界の外で門番をしていたダークエルフだ。凄い俺を睨んでいたのは、俺たちがあいつを倒したからか?


流石に会話が聞こえていたとは思えない。それなら逃げるだろうし、中の様子を伺うような馬鹿な行動はしないだろう。門番のダークエルフは突然の謎の光に戸惑う。


「な、なんだ? この光?」


「そこ! バインドショット!」


トリスタンさんは一瞬で結界の外に出るとミスリル製のワイヤーが付いたバリスタを放った。そしてダークエルフに化けたウァレフォルを拘束した。更にダークエルフたちがそいつに精霊結界を使い、閉じ込める。


「な、何をする! 人間!」


「今更演技しても無駄よ。悪魔ウァレフォル。ダークエルフを洗脳したはいいけど、外には出すことが出来なくなって、ここでずっと待っていたってところかしら?」


「何を言っている! 私は何も知らない! は! わかったぞ! これは人間たちの罠だな? 私に指輪泥棒の罪を押し付けるつもりだろう!」


この発言にダークエルフの戦士が目を細める。


「ほぅ…なぜ盗まれものをお前が知っている? あれの存在は高位のダークエルフしか知らないはずだが?」


「そ、それぐらい村に住んでいれば耳にする!」


知らないはずと相手が言っているのにその言い訳はないな。


「見苦しい言い訳を聞いているのも面白いけど、そろそろ化けの皮を剥がしましょうか?」


「そうだな。頼む。精霊結界を広域にも貼れ! こいつを逃がすな」


トリスタンさんが魔術殺しの魔導書を取り出すとウァレフォルの変身が解かれ、以前より巨大なウァレフォルとなる。


ヘル・ウァレフォル?

? ? ?


一度倒しているからか名前の前にヘルがついているな。それでも追跡の風見鶏はウァレフォルを指してくれて良かった。突然変身が解かれたことにウァレフォルは驚く。


「な、なんだその本は!?」


「これは魔法や術を破ることが出来る魔導書よ」


「な、なんだと!?」


トリスタンさんはそう言うと魔術殺しの魔導書をしまうと再度精霊結界が貼られる。ここは面倒臭いところだな。


驚くウァレフォルにダークエルフたちは宝石を取り出すと精霊結界の中に宝石を投げ入れる。カーバンクルがいたら、飛び付く光景だな。


「ま、待て! これはその魔導書の効果で」


「我々を見くびるな。くそ悪魔。この魔導書がどういうものか見ればわかる。我々がお互い警戒し合っている姿は笑えたか?」


ダークエルフたちが魔法剣を取り出し、詠唱を始めた。凄いな…みんな魔法剣や魔法杖を持っているのか。そしてこれは俺が知らない魔法が来るな。


「ま、待て! 私を殺せばどうなるかわかっているのか?」


「魔王どもと戦争になるとでも言いたいのか? ならば答えてやる。望むところだ。我々の宝を盗み、疑心に陥れた罪、貴様程度の命で償えるものだと思うな!」


「そうか…ふふ、その言葉忘れるな」


急に余裕を出してきたな。これはあれだな。そしてダークエルフの戦士の一人がこちらを見る。


「あなたたちを疑ったことを謝罪しよう。自分勝手で申し訳ないがこいつの処分は我々に任せてくれないだろうか?」


俺はみんなを見ると頷く。トリスタンたちが攻撃を加えているから俺たちにも経験値が入るから問題はない。イベントに参加している人たちにはクエストはスピード重視でクリア出来る人がクリアすることになっている。


「構いませんが…その前にお前は地獄の加護を持っているな?」


「な、なんだその加護は?」


名前であることがばれているし、詰まった時点で負けだ。ま、違っていても攻撃を加えればいいだけの話なんだけどね。俺は事情をダークエルフに説明する。


「なるほどな。貴様の余裕はその加護のせいか…だが、貴様は我々を舐めすぎだ」


そういうとダークエルフたちは銀色の木の槍を取り出す。あれはラプエル様のところで見た銀の木か?


「なんだ? その木は?」


「やれ」


『は!』


ダークエルフたちから銀色の木の槍が投げられ、ウァレフォルの体中に刺さる。するとイベント武器と同じ効果が発動する。


「な、なんだ!? この木は!?」


「これでお前の切り札は封じた。覚悟はいいな?」


「や、やめ」


「「「「宝石魔法! ベフライウング・エーデルシュタイン」」」」


投げ込まれた宝石がそれぞれ閃光を放ち、七色の光りが周囲を照らす。綺麗だな。すると光が無くなる。あれ?


「ふはは! なんだ? 不発」


次の瞬間、超爆発が発生し、ウァレフォルを消し飛んだ。


「不発の訳ないだろう…こいつを仕留めさせて頂いたことに感謝する」


これでダークエルフの村でのクエストは終わりかな。その後、俺は再びラプエル様に面会する。


「此度は世話になったな。お陰で宝を奪ったダークエルフたちの洗脳も解けて、宝も戻ってきた。これでやっと一息付けるわ」


「そこまで重要なものだったのですか?」


「あぁ。既に指輪のことは聞いていると思うが、その指輪には上位精霊たちの力が宿っていてな。魔法の威力を格段に上げる効果がある。一つの指輪の効果だけで町を一撃で滅ぼすぐらいの力はある」


もはや兵器ですね。わかります。


「これからどうするおつもりですか?」


「人間たちにも疑いの目を向けたからな。その侘びをせねばならん。悪魔どもにも罪を償わせねばならんし…一先ず、魔王ネビロスとの戦いには参戦しよう。それと回復薬が必要なら我々が用意しよう。ただ今回のことで魔王たちと敵対することになった。ここを手薄にはできん。悪いが欲しければここに取りに来てくれないか?」


インフォが来る。


『ダークエルフの事件を解決しました』

『運営イベント『希望の国エステル』にこれからダークエルフが参戦します』

『ダークエルフの森で回復薬を手に入れることが出来るようになりました』


よし。取り敢えずこれで一歩前進だ。そして帝釈天が言ってた意味が理解出来たよ。そりゃ回復アイテムがただで手に入るのは大きい。


実際に見せてもらうと普通の回復薬だった。ただ薬の味がするのが難点かな…回復薬だからそれが普通なんだろうけどね。


これでハルさんたちは大量の回復薬の作業から解放される。代わりに料理や武器に塗る薬、火薬の作製に力を向けることが出来るのはかなり大きい。


初日にクリア出来たのはかなりいいペースじゃないかな?


「ありがとうございます。では俺たちは一先ず町に戻ります」


「それがいいだろうな。人間の国王にはお前から我々が参戦することを伝えてくれ」


「わかりました」


たぶんみんなにもインフォはいっていると思うが俺たちは一先ず成果報告をする。


『今、ダークエルフのクエストが終わりました』


『こちらでもインフォを確認しました。流石ですね』


『こちらの情報は帰って国王様に説明からで大丈夫ですか?』


『はい。ゴブリンアサシンたちはメルさんたちと防衛部隊に討伐されました。ただ状況はあまり良くありません。奇襲を受けたことで砦を建設していたNPCたちに危機感が生まれたみたいです』


それはまずいな。名残惜しいが急いで帰るとしよう。

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