#722 イベント月武器と変身の神様
昼食を食べ終わってからログインする。ドアを開けようとした瞬間、ドアの向こうに気配を感じてそっと開けるとユウェルとパンドラがいた。
「どうして勢いよく開けてくれないんだ! タク!」
「ずっと待っていたんだよ! おじ様!」
「俺が勢いよく開けたら、タックルしようとしていただろう」
「「…」」
黙らないでくれよ。
「はぁ…折角新しい金属手に入ったのにな…残念だ」
「何!? ま、待ってくれ! タク! 頼まれていた武器を作ったぞ!」
「私も! 頑張って作ったよ! おじ様!」
この二人は本当に似ているな。では、二人の自信作を見てみよう。
ルナティックミスリルアロー:レア度9 矢 品質S
重さ:20 耐久値:750 攻撃力:650
効果:悪魔特攻(究)、万物貫通、浄化、魔素吸収、冥界の加護無効化
ムーンサイトとミスリルの合金で作られた矢。ムーンサイトの魔素吸収能力とミスリルの浄化能力が合わさることで魔素吸収でのデメリットを消すことに成功している。死後の世界の力を宿した存在に極めて強力な能力を誇っている。
ルナティックミスリルソード:レア度9 剣 品質S
重さ:50 耐久値:750 攻撃力:850
効果:悪魔特攻(究)、万物切断、浄化、魔素吸収、地獄の加護無効化
ムーンサイトとミスリルの合金で作られた片手剣。ミスリルの浄化能力のおかげで魔素を取り除く時間なく戦うことを可能にした。死後の世界の力を宿した存在に極めて強力な能力を誇っている。
うん。完璧な出来だな。褒めてあげる。
「「金属は?」」
そうなるよな。
「後でへーパイストスに見せるからその時にな。頑張ったご褒美はちゃんと用意するから期待してていいぞ」
「「本当!?」」
そのご褒美はへーパイストスの手料理なわけだが、言わないでおこう。パンドラに新たに同じ武器を二本頼み、アンナプルナに向かうことにした。
選んだメンバーはセチア、恋火、イクス、セフォネ、ユウェル。最初は洞窟の入口でミスリル鉱石を集めようと思ったのだが、ここで問題発生。ミスリル鉱石の採掘ポイントが変化していた。
これはつまりどこでミスリルゴーレムのトラップが発動するか分からないということだ。
「どうするんだ? タク」
「危ないから先に施設の調査をしよう」
ということでミスリルゴーレムと戦った所に転移すると出口はしっかりあった。俺が通路をそっと確認するとみんなも俺の真似をする。
「完全に人工的な通路です。マスター」
「あぁ。敵がどんなのか分からないからここは慎重に調査しよう。セチアはウッドウォーリアー。ノワは影召喚をしてくれ」
「分かりました! ウッドウォーリア!」
「…ん。影召喚」
木の兵士たちとチビノワたちが調査に向かう。何気にウッドウォーリアを初めてまともに使った気がするな。さて、どんな結果になるかな。
「…にぃ。限界」
「何もいないんでしょうか?」
「そうとは思えないが行ってみるか」
俺たちは廊下を少しずつ歩いていく。すると恋火が反応する。
「上に何かいます!」
俺たちが一斉に後ろに下がると上から銀色の液体が落ちてきた。
トランススライム?
? ? ?
『スライム!?』
ユウェル以外が俺の後ろに避難する。君たちね。
「どうしたんだ? みんな? 銀色のぷよ助だぞ?」
ユウェルの純粋さが眩しい!するとトランススライムが動く。
「ユウェル! スライムが動いてます!」
「逃げてください!」
「む? 嫌だぞ! わたしはタクを守る!」
なんていい子なんだ!後でユウェル用の料理を作ってあげよう。へーパイストスからお願いされているからな。そんな間にもトランススライムは姿を変化させていき、ユウェルになった。
「「わたしにそっくりだ!」」
「「む!?」」
凄い…姿だけでなく声まで全く同じだ。しかも動きまでシンクロしている。ユウェルが色々動き回るが完全にトランススライムは同じ動きをする。
「「なんだこいつ!」」
「「わたしがユウェルだぞ!」」
「「タク~!」」
あーあー。結局隠れちゃった。するとまた姿が変わり、俺になる。
「今度はタクになったぞ!」
「どうするんですか? タクト様」
「どうするもこうするも」
するとイクスが容赦なくヘッドショットを決めた。俺の顔が~!?
「マスターに姿を変えるなど、万死に値します」
いや、嬉しいんだけどさ。自分のヘッドショット見るのは複雑だ。俺がそんなことを思っていると大量のトランススライムが天井から落ちてきた。だが、俺たちの目の前に落ちるだけど攻撃の意志を感じない。なんだこいつは?
「スライムとは最強の生物だ。そうは思わないかね? 召喚師君」
背後から声だと!?俺が振り返るとそこには白衣の研究服を着た男がいた。イクスが銃を構える。
「よしたまえ。そんなものでは私は殺せない」
「イクス、銃を下ろしてくれ」
「…イエス、マスター」
いい子だ。俺は研究員に聞く。
「俺もスライムを召喚しているからスライムの凄さを知っているつもりだが」
「素晴らしい!」
話の途中だって…まぁ、いいや。向こうに合わせよう。
「君からは私と同じスライム愛好家の気配を感じていたが、私の勘に間違いないはなかった!」
誰がスライム愛好家だ。そういうのはうちのギルドでスライムマスターの称号を手に入れている人に言ってくれ。
『そうなんですか?』
「まぁ、否定はしない。ぷよ助をつついて遊ぶくらいはしているからな」
「そういえばタクトお兄ちゃんしてましたね!」
「震えて面白いのじゃ」
そうそう。しかもぷよ助は冷たいから夏場では結構みんなお世話になっていた。特に黒鉄は熱くなりやすいからぷよ助がいつもくっついていたな。因みにリリーたちはお世話にならず、暑さを我慢していた。
「召喚師というのはやはり面白い。おっと、自己紹介がまだだったな。私の名はバルトアンデルス。かつてはプローテウスという神をしていた者だ」
プローテウス!?確かギリシャ神話の神様だったか?バルトアンデルスという名前も聞いたことがあるが詳しくは知らない。確か悪魔っぽい姿の幻獣だったと思うが…後で調べよう。それよりも気になることを言ったな。
「神をしていたってことは今はしていないのか?」
「その通り。何せ今の私はスライムだからね」
…はい?セチアが俺の疑問をぶつけてくれた。
「ちょっと待ってください。あなたは神様をやめてスライムになったんですか?」
「そうだ」
全員絶句。流石にこんな神様は実在しないはずだ。そうじゃ無かったら、人間はスライムを神様として崇めることになってしまう。するとバルトアンデルスが語りだす。
「神様だった頃の私は変身が得意でね。なんにでも変身出来るというのが誇りだったんだが、ある日私はなんにでも変身するこのトランススライムに出会ってしまった。そこで勝負をしたんだが、私は完膚なきまでに敗北してしまったんだ。何故だかわかるかね?」
「それは神様だったあなたに変身出来ないものがあったからなのでは?」
「その通りだ! では、それはなんだと思う?」
神様が変身出来ないものなんてあるのか?
「すみません。ちょっとわかりません」
「そうか…ならば答えよう。私は女になることが出来なかったのだ」
あ…そうですか。でも変身ではないが男の神様が女装した話や侍女に化けた話は北欧神話にあるぞ。有名なのがトールがフレイヤに女装してロキが侍女に化ける話だ。まぁ、別系統の神話を持ち出すのはよそう。
「男性の神様である私はどうしてもプライドが邪魔をしてしまったのだ」
あまり触れないほうがいいじゃないのか?この話題。しかしバルトアンデルスの暴走は止まらない。
「そして私はどんな女性にもなれるスライムを見てこう思った。羨ましいと!」
「この元神様、絶対ダメな神様ですよ! タクト様!」
うん。セチアの意見に全面的に同意する。
「それでスライムになったのか?」
「その通り。しかし変身ばかりしていると今度はどうやってスライムたちは完璧な変身をしているのか興味を持ち、ここで研究をしているというわけだ」
かなりの変わり者であることは間違いないらしい。
「じゃあ、ここはあなたの研究所なのか?」
「今はそうだが、ここを作った者は私ではない。君たちが戦ったミスリルゴーレムを設置したのはとある錬金術師だ」
錬金術師だと?また有名な人っぽいな。聞いてみた。
「彼の名前はカリオストロ。この山に眠っている古代兵器を復活させようとした人間だ」
たぶんマリー・アントワネットを巻き込んだ有名な詐欺事件で首謀者として告発されてしまった人だ。最もこれは無実で彼自身は富裕層からまき上げたお金を貧民層に分け与えていたと言われている。日本では国民的アニメの映画で知られているね。
「気になるならこの研究所を調べているといい。ただし、封印されている古代兵器を起こすのだけはやめてくれ」
「その古代兵器というのはなんなんですか?」
「古代兵器の名はゴグマゴグという。かつてはパラディンロードに住んでいた巨人だが、人間に敗北してね。この地に逃げてきた彼は人間に復讐するために自分の肉体を捨てて、兵器として人間に復讐する日をじっと待っているんだ」
ゴグマゴグは太古のブリテン島に住んでいたと言われる巨人の名前だ。恐らくゴライアスと同じパターンということだろう。
「強いんですか?」
「少なくともミスリルゴーレムよりは強いね。因みにここのボスではないから安心してくれたまえ」
あ、ボスじゃないんだ。それなら触れずにそっとしておこう。これはたぶんダゴンと同じトラップクエストということだと思うからな。みんなにも注意喚起しておかないとね。
「ここのボスをご存じなのですか?」
「あぁ。何せ私が実験の過程で偶然作ってしまったスライムだからね。色々なスライムをくっつけたらどうなるか実験したんだが、軽く魔王を超えたスライムを作ってしまったというわけだ。ははは!」
笑い事じゃない!セチアたちを見ろ!
『魔王を超えているスライム…』
ほら!絶望的な顔をしている。とにかくスライムの事は忘れて、研究所の捜索をしよう。
名前 ユウェル ドラゴニュート・コアLv18
生命力 164
魔力 124
筋力 250
防御力 334
俊敏性 94
器用値 118
スキル
鉄拳Lv2 万物武装Lv16 採掘Lv6 鍛治Lv15→Lv16 堅牢Lv15
強制Lv8 竜角Lv5 激突Lv10 超感覚Lv12 竜眼Lv10
高速再生Lv10 格納Lv7 練気Lv18 荷重操作Lv18 金属装甲Lv10
金属壁Lv10 宝石投擲Lv3 重力操作Lv17 土魔法Lv10 土潜伏Lv13
集束Lv5 石波動Lv10 投擲操作Lv3 地脈操作Lv3 逆鱗Lv3
竜魔法Lv6 竜技Lv10 竜化Lv6 ドラゴンブレスLv7 起死回生Lv4
星核竜の加護Lv6
 




