#714 着物クエスト
俺は和狐と共に平安の都にやってきた。
「に、賑やかどすな」
「そうだな~ん?」
和狐が尻尾をくっ付けてきた。和狐を見ると何も言わないが顔が赤くなっている気がする。二人っきりはなかなかないし、エンゲージリングを渡す順番が次は和狐となる。
必死にアピールしているんだろう。俺は和狐の手を触れると和狐は理解して、手を繋いでくる。
「「…」」
き、気まずい!いや、恥ずかしいのか?なんだ!この時間は!
「そ、そういえば服屋の場所ってどこなんだろうな?」
「え、えーっと…あっちのほうちゃいますか?」
「行ってみるか」
俺たちはとんでもない道を選んでしまった。
「強そうなお兄さん。私と遊んでいかない?」
「私とよ! ねぇ? そうよね? お兄さん?」
町中の女の人から誘われる。ここはまさか遊廓エリアなんだろうか?しかし彼女たちが遊女だったら、完全にアウトだぞ。俺が焦っていると和狐の思いが爆発する。
「今はタクトはんと二人っきりの大切な時間なんどす! 邪魔せんといて下さい! タクトはん! こっちどす!」
「あ、あぁ!」
和狐に手を引かれて、なんとか脱出した。あの場所に行くのはカジノ並みに危険だな。
「きゃあああ~!? 手! やっぱり無理! 手! 手! 手!」
目の前のお店からミュウさんが飛び出してきた。手?
「お…終わり…散々どす」
落ち込んでいるなぁ。よし。
「この後、二人でゆっくり町を回るか?」
「ほんまどす?」
「あぁ。大切な時間なんだろう?」
「あ…うぅ~」
和狐は顔を赤くして、小さく頷く。恋火がいたら、絶対見せない姿だなぁ。さて、ミュウさんに話を聞こう。
「クエストが発生したんだけど、服から出てくる手のお化けを解決するクエストで…めちゃくちゃ怖い! 死ぬ!」
そこまで言うか。しかしこのまま手を拒んでいてもしょうがない。
「行くぞ」
「はいな!」
俺たちはお店の中に入ると色とりどりの和服があった。
「わぁ! どれも綺麗どす!」
「いらっしゃいませ! 服をお求めですか?」
若い女店主だな。
「あ、いえ。この服の染め方を知りたくて」
「あぁ~…勉強会なら今は中止しているんです」
「何故ですか?」
「実は…お化けが出るんです」
ミュウさんが言っていた通りだな。
「そのお化けをなんとか出来れば服の染め方を教えていただきますか?」
「え!? も、もちろんです! あのお化けをなんとかしてくれると言うなら私に教えられることはなんでも教えますし、必要な物も差し上げます!」
太っ腹だね。インフォが来る。
依頼クエスト『服屋のお化けを成仏させよ』:難易度E
報酬:後染めスキル、染め道具一式、染料一式
服屋の着物に取り付いたお化けを成仏させよ。
報酬の割に難易度は低いな。これだと戦闘は無さそうだな。俺たちはお化けが出るという和室に案内された。
「この部屋にあるあそこの着物にお化けが出るんです」
「凄く綺麗な服どす!」
「ありがとうございます。うちでも高価な物だったんですけど、お化けが出るんじゃ売り物に出来なくて、処分しても呪われそうで困っているです。それではよろしくお願いします」
さて、お化けが出るまで待つか。するとすぐに現れた。着物の袖から手が出てくる。
「ヒッ!?」
和狐が抱きついてくる。これは怖いな。
「は、祓いますか! タクトはん!」
「落ち着け。和狐。もう少し様子をみよう」
「え? は、はいな」
恐らくこのお化けというか妖怪は小袖の手だろう。昔、妖怪の絵本で見たことがある。
だとしたら、別の解決法がある。何せ元々は生産職のクエストだ。ここは普通の攻略法を見てみよう。しばらく気味が悪い動く手を見ていると声がする。
『服…この服が欲しい』
「え?」
和狐が驚く。俺は質問をする。
「その服が欲しいのか?」
『はい。ずっと…ずっと…着たかった。この服を着るために一生懸命男の人と遊んでお金を稼いだ。でも男の人に騙されてお金を取られた私は死ぬしかなかった』
小袖の手の話は複数あり、その中に遊女が小袖を着飾りたかったが結局願いは叶わず、その怨みが小袖の手になったという話がある。流石に男に騙された話はゲームオリジナルだろう。
「そんな…酷いどす!」
俺は和狐の頭に手を乗せる。
「あなたの望みはその服が欲しいだけなのか?」
『はい。私を騙した男は処罰を受けました。私の未練はこの服を着ることだけです』
「わかった」
俺は女店主さんに事情を説明して服を買うことを伝えた。すると格安で売ってくれた。まぁ、スキルや道具とかの値段と考えると滅茶苦茶安い代金だろう。
俺は和狐と和室に戻ると小袖の手に告げる。
「その服は俺が買わせて貰った。その服はあなたに差し上げます」
『…いいの?』
「はい」
するとボロい服を着た遊女の幽霊が現れ、着物を着る。
『…ありがとう』
幽霊が消えていく。すると幽霊が和狐を見る。
『おしとやかなのはいいことだけどたまには大胆に攻めないと男は落とせないから頑張ってね』
「よ、余計なお世話どす!」
幽霊は満足な様子で消えていった。その後、成仏したことを女店主に報告してクエストクリア。和狐はその後、後染めの技術を学び、インフォが来る。
『和狐が裁縫【後染め】を取得しました』
俺たちは部屋を出ると待っていたミュウさんにクエストの攻略法を伝える。
「あれに耐えないといけないんだ…」
「頑張って下さい」
「はぁ…和狐ちゃんはいいよね。私なんて一人だよ…ふ」
そういうとお店に入っていった。誰か誘えばいいんじゃん。すると和狐が腕を組んでくる。
「ゆ、幽霊はんに…言われてしもうたから…」
「このまま町を回るか」
「はいな!」
俺は和狐と町を回り、シルフィ姫様たちのお土産の葛餅を買って、ホームに帰る。すると姫様たちが勢ぞろいしていた。
「お帰りなさいませ。待ちきれなくてお土産を貰いに来ちゃいました!」
「シルフィお姉様!? わ、私は違うぞ。訓練が終わったところをシルフィお姉様に誘われただけで」
「一緒にお城から抜け出した時点で罪は同じだと思いますよ? サラお姉様」
そんな姫様たちに葛餅を渡しているとリリーたちがやってきた。
『お土産って聞こえた!』
「はいはい。ちゃんとあるぞ」
『わーい!』
リリーたちがお土産を持っていく。
「楽しそうですね」
「たぶん今だけですよ」
リリーたちが葛餅を既に食べているからな。ヘーパイストスに明日桜花に行くことを告げたのち、ダイニングを見ると葛餅を見て、固まるリリーたちの姿があった。やっぱり飽きたか。
そんなリリーたちに俺は新しいはちみつをかける食べ方を教えて上げると喜んで食べるリリーたちである。美味しそうに食べるリリーたちを見ながら、俺はシルフィ姫様からの情報をサバ缶さんに伝えると早速機織り機を買ったそうなので、受け取りに行く。
ホームに帰り、二階に行くと俺の部屋の前にパジャマ姿の和狐がいた。どうやら葛餅を食べるのを我慢して、待っていたらしい。
「きょ、今日はうちに権利があるはずどす!」
「そっか。でも寝る前に和狐にプレゼントだ」
「え? これはなんどす?」
知らないか…まぁ、人間が作ったものだから当然ではあるな。
「機織り機って言う糸を織りあげて、織物を作る機械だ。これを使えば簡単に早く織物を作れるはずだ。詳しい使い方はミュウさんに聞いてくれ」
「こんなのあるんどすな…でも…」
「どうかしたのか?」
「我が儘言ってしまいますけど、タクトはんの服は手縫いで作っていいどすか?」
むぐ…そう言われたらこういうしかないだろう。
「よろしくお願いします」
俺がそう言うと和狐は嬉しそうに機織り機を部屋に持っていくと急いで戻って来た。
「え~っと…寝はりますよね?」
「あぁ。どうぞ」
こうして和狐と一緒に寝て、ログアウトした。
名前 和狐 ハーミットビーストLv19
生命力 168
魔力 328
筋力 145
防御力 106
俊敏性 241
器用値 238
スキル
扇Lv14 神楽Lv17 投擲操作Lv10 黒炎Lv23 聖火Lv28
火炎操作Lv8 天耳通Lv24 他心通Lv16 神足通Lv17 危険察知Lv29
封印魔術Lv20 幻影Lv17 炎魔法Lv11 神聖魔法Lv13 神道魔術Lv34
妖術Lv17 霊符Lv10 式神Lv5 護符Lv6 仙気Lv18
仙術Lv14 飯綱Lv17 金縛Lv4 鬼火Lv5 裁縫Lv32→Lv33
革細工Lv25 料理Lv27 血醒Lv9 ハーミットブレスLv14 狐技Lv15
神降ろしLv2 獣化Lv9




