#713 新イベント会議と死後の世界
夕飯を食べ終えた俺はギルドに向かうと話は次のイベント対策についてだ。最初に聞いたのはソーマ酒についてだ。
「私たちもすぐに出酒の瓢箪を試したんだけどね。結果はダメだったわ。あれは酒とか名前が付いているけど薬扱いということでしょうね」
やはりダメか。ほぼ無限にソーマ酒が使えたら、俺たちは必殺技ラッシュだったんだけどな。流石に運営は許さなかった。話を切り替えて次はネビロス対策についてだ。
「敵がネビロスならイベント報酬にあったムーンサイトとミスリルが注目でしょうね」
「それについては俺たちに考えがある。ムーンサイトとミスリルの合金作製だ。ミスリルの浄化効果でムーンサイトのデメリットをうまく打ち消せる武器が作製出来るかも知れない」
「その可能性は高そうですね。ではその線で武器生産を頼みます」
「おう! ただミスリルがどうしても足りねぇんだよ。だから攻略組にはミスリルかミスリル鉱石の調達をして貰いたい」
やはり集めないとダメか。
「そうなると確実にあるのがアンナプルナかぁ。タクト君でも結構苦戦したんだよね?」
「全然先に進まないまま、逃げ帰ったな。まぁ、みんななら余裕だろう」
『逃げ出そうとしてもダメだよ(だぞ)』
ダメか…俺は改めて話をする。
「話を聞いた感じだと、採掘したあとすぐに逃げるのはありみたいだね」
「その場合はアイテムを持ち歩くのが前提だろうな。インベントリから出していたら、その前に首が跳ぶぞ」
『…』
全員が黙る。しかしこれが事実だ。するとミライが案を出す。
「転移クリスタルをネックレスに出来れば手に持つ必要は無くならないかな?」
「おー! ナイスアイデアじゃないかな? ナオさん」
「出来ると思います。お金はかかりますが」
まぁ、無料のわけないよね。俺も含めて、色々な人がナオさんに依頼をした。イベントの話に戻す。
「次回のイベントは戦争イベントならまた砦とか必要だと思います」
「あぁ…タクトは掲示板の情報をまだ聞いていないんだな。俺たち、鍛冶職は帝釈天の情報が違っていて、防衛のために鉱石を集めるように言われたんだよ」
「私たち、普通の生産職は食料について言われたわ。どうやら次回のイベントはこちらの食料を事前に用意することが必須みたいね」
初耳だね。アーレイを見ると言い忘れた顔をしていて、顔を逸らした。
「そうなんですね。ということはいつも通り役割分担が必要か」
まずメルたちはアンナプルナに行くことが決まる。ただし、夜に雪山は挑むべきじゃないことから夜は暗黒大陸に行くことになった。
ハヌマーンのことがあったからな。あのままじゃ終われない気持ちはわかる。ルークたちもハヌマーン狙い。そもそもチロルたちのエクスマキナのために攻略しているからな。そして俺の話になる。
「タクト君はお昼の船旅はストップなんだよね?」
「あぁ。とりあえず俺もミスリル鉱石狙いでアンナプルナに行ってみるよ」
「他に候補は無いかしら?」
ルインさんに言われて俺は考える。
「九尾に急に送られた場所は自然豊かな場所でした。仙人系統の森らしいので、蓬莱の玉の枝の説明にあった優曇華が見つかる可能性がありますね。ただレベル的にはベガス島かその先になるかといきなり玄武に遭遇しましたから」
全員がご愁傷様という感じだ。
「鉱石というより木材、薬の素材に期待が持てるってことね?」
「はい。山だと…俺が荒神と戦った山とブリュンヒルデさんがいた山、今回のイベントの山がありますね」
「イエローオッサ山の先はどうなっているのかな?」
メルに言われて初めて気がついた。そういえば知らないな。後で九尾に聞いてみよう。
「全員がまだ進んでいないところだと後はアクアスの町の先だね」
「それならどうやらこの大陸最大の湖に行けるようですよ。ただしレベル的には未知数です。情報に寄るとこの湖はエリクサーラピス、パラディンロード、ウィザードオーブと接している湖らしいので、アンナプルナを超えてくる可能性が十分にあります」
「イエローオッサ山の先もそれぐらいの強さあるかも知れません。ボスがめちゃくちゃ強かったですから」
となると他の国の攻略も考えさせられる。
「鉱石ならやっぱり桜花か? わざわざイベントで行けるようにしたわけだし」
「そこはヴェインリーフと言ってくれ」
そこは譲れないよね。ただヴェインリーフの攻略は今からするのはかなりきついから俺たちだと桜花に期待してしまうだろう。俺はアーサー王から聞いた話をする。
「アーサー王の話ではパラディンロードの外でアダマンタイトなどが手に入るみたいですよ。アーサー王の軍隊が命懸けレベルらしいですが」
全員が悩む中、もう一つの手がサバ缶さんから言われる。
「ギルドクエストという手がありますね」
「何かいいのがありました?」
「いいのがありますよ。ちょっと待ってください」
サバ缶がいくつか持ってきた。
ギルドクエスト『竜の巣穴を破壊』:難易度A
報酬:ミスリル
村の近くの山にドラゴンが巣穴を作ったので、巣穴にいるドラゴンたちを討伐してほしい。
ギルドクエスト『鉱山の遺跡調査』:難易度A
報酬:ミスリル
太古の遺跡が新しく発見されました。調査をお願いします。
ギルドクエスト『廃墟の研究所調査』:難易度B+
報酬:謎の部品
廃墟された研究所を調査するのが怖いので、代わりに調査をお願いします。
まぁ、難易度はこの際おいておこう。上二つは報酬がミスリルだし、山や遺跡なら鉱石とかのチャンスはあるだろう。しかし一番下の内容はダメだ。自分たちで調査しようよ…サバ缶さん。沈黙をメルが破る。
「えーっと…選択肢として覚えておこう! とりあえずタクト君は暗黒大陸の遺跡を見てくれないかな?」
「何か見つけるのはギルマスの得意分野やからな」
「お願いします! タクトさん」
「一応調べてみるが期待するなよ」
全員が無かったことにした。
「スルーって結構ダメージ来るんですよ…」
「悪ふざけするからでしょ。天の衣に緋緋色金の問題があるんだから話を続けるわよ」
まずは天の衣についてミュウさんが話す。
「天の衣は和服の他には中国の歴史ものドラマで出てくる服に適正があるみたいだよ」
「それって、漢服のことかしら?」
「たぶんそれ! 流石ルイン姉! ドラマは詳しいね」
ここにルインさん、中国歴史ものドラマ大好き疑惑が発生した。
「普通の知識でしょ。それで普通に作れるのかしら?」
「作れはするけど…色がね。私たちは色がある糸を使って服に色を与えているんだけど、その工程を考えるとスキルを使ってもとてもじゃないけど間に合わない感じ」
和狐とアラネアの苦悩を今、知った。それは大変な作業だぞ。
「私の予想だと服に直接色付けるする後染めの技術がイベントの都にあると思う! これでだいぶ色鮮やかな服が作れるようになると思うし、スピードも上がるはず! 欲を言えば機織り機が欲しい!」
「機織り機があるんですか?」
「生産ギルドで売られているよ。かなり高いけどね」
まぁ、ギルマスが機織り機で有名なアークライトさんなら売られてて当たり前だし、ギルマスが作った商品なら高いのも納得かな?俺はミュウさんの視線を逃れるようにルインさんを見る。
「そうね…次のイベントに天の衣の防具は必要みたいだし、数台買ったほうがいいかしら」
「やった! これで手作業から解放される! デザインにもやっと凝れるよ!」
かなり苦労していたようだ。他の防具職人たちも喜んでいる。俺も一台注文しておこう。
それでも色染め問題は解決していないから和狐の悩み解決のために桜花には行かないとダメみたいだな。次は緋緋色金についてだ。
「緋緋色金についてヘーパイストスはなんと言っているんだ?」
「自分では手に負えないらしいです。なので迅雷を作ってくれた安綱さんを訪ねることになっています」
「そうか。邪魔しちゃ悪いし、ミスリル武器の話もあるからそっちは任せるがいいか?」
「大丈夫です。ただ事情が事情なので、天の衣を優先させて下さい。恐らく明日の夜までには行くことになると思います」
そして今まではクエストの攻略や対策について話していたがここからは気になる内容について、考える。
「帝釈天が言っていたことで気になるワードは『今回の魔王の一人』と『地獄』ですね」
「わざわざ、魔王の一人と言っているということはネビロスの他にも魔王がいるってことだよね」
「可能性としてはネビロスと同じで我々が戦ってきた悪魔が魔王として登場するか魔王の誰かが復活する、初登場の魔王が出てくるパターンの三つがありますね。個人的には初登場の魔王の可能性が高いと思います」
「私たちは魔神を倒しているからその下の魔王たちがもう一度、私たちの前に出てくる可能性は低いし、バエルには聖櫝の話があったから私もその可能性が高いと思うわ。ネビロス以外に私たちが倒した悪魔で魔王となりそうな悪魔はいないと思うしね」
一応魔王になりそうな悪魔ならアモンがいるが恐らく奴らは今回登場しないだろう。関係性がないからね。こうなると登場する魔王はある程度、絞られる。
「ネビロスと関わりがある魔王クラスとして名前が出てくる魔王はアスタロト、サルガタナスの二人です。アスタロトはこの二人の王なので、登場するとしたらサルガタナスの可能性が高いでしょう」
「ネビロスはその二人とアメリカに住んでいる話もあるからね。それにサルガタナスの階級は旅団長。『大奥義書』に登場する六人の上位精霊の内、ネビロスの次に強いのがサルガタナスだからここで登場するのに不思議はないかな」
「もうルキフゲ・ロフォカレとサタナキアが出てきたからここからは順番通りの戦闘は有り得そうよね?」
メルが言った『大奥義書』に登場する六人の上位精霊はそれぞれ階級が存在し、一番上から説明すると宰相ルキフゲ・ロフォカレ、大将サタナキア、司令官アガリアレプト、中将フルーレティ、旅団長サルガタナス、少将もしくは総監督官ネビロスとなる。
ネビロスは地獄の軍勢を監視している悪魔でそこまでの強さは無いと思っていたが、まさか魔王となって俺たちの前に再登場するのは予想外だった。階級から見たら、全然弱くないからあれで終わるほうが不思議と思うべきだったのかも知れない。トリスタンさんが言った通り、ここからは順番通り悪魔たちと戦う流れは十分にあるだろう。
そしてもう一つ重要なワードである地獄だ。これについてはNPCに聞くしかない。俺たちは一度別れて情報を集めることにした。
俺は当然のようにお城担当。聞きたいことがあると話すといつものようにシルフィ姫様の所に案内された。
「聞きたいことというのはなんでしょうか?」
「実は桜花でちょっとした行事に参加して来まして」
「桜花の行事ですか…楽しそうですね。私、桜花には行ったことないんです」
しまった…シルフィ姫様の何かに触れてしまった。スルーして、話を進めよう。
「そこで神様から気になることを言われたんです。地獄というのがどんなものが聞かせてくれませんか?」
「地獄というのは桜花における死後の世界の言葉ですね。教えるのはいいですが、その前に桜花の行事について詳しく聞かせて下さい。聞かせてくれないと教えてあげません」
スルー失敗!こうなると聞くまで絶対に教えてくれないよな。別にみんなが情報を集めてくるから帰ってもいいんだが、シルフィ姫様のことだから何をするか分からない。ここは簡単に説明しよう。ネビロスのことも話さないといけないからな。
「楽しそうな行事ですね。タクト様」
「いや、かなり大変でしたよ」
「私も参加したかったです」
ほら~…こんなこと言い出す。
「今は大変な時期ですからシルフィ姫様がここを離れる訳にはいかないでしょう」
「それぐらいはわかっています! でも、息抜きは必要です!」
「はいはい。わかりました。また桜花に行く予定なので、お土産買って来ますからそれで勘弁してください」
「本当ですか!? 絶対ですよ? 約束しましたからね!」
どれだけ飢えているんだ。まぁ、姫様という立場上、知らない苦労があるんだろう。不思議とシルフィ姫様からは感じられないけどね。お城の人たちを振りまわしていそう。
「今、何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「いいえ。これっぽちも」
「本当ですか? まぁ、いいです。あ、一応家族みんなの分もお願いします。私だけ貰うとすねちゃうので。主にサラが」
アンリ姫様じゃないんだ。
「わかりました。それで地獄についてなんですが」
「そうでした。まず死後の世界は私たちがいる世界の地下にあると言われています。もちろん穴を掘ってたどり着ける世界ではありません。この世界に行く方法は生きたままだと二つ知られています。そこを統治している神様の手を借りるかこの世界のあちこちに存在しているヘルズゲートと呼ばれる門を潜る方法です」
天国と同じで地獄にも行けるんだな。シルフィ姫様の話では世界中にあるらしく地域によって呼び方が違うらしい。
「このヘルズゲートは暗黒大陸に私たちが知る限り三つあります。それを管理している魔王がルシファー、ベルゼブブ、アスタロトと呼ばれる上位悪魔たちです」
「今回そのヘルズゲートをアスタロトが開けるということですか?」
「そういうことになるんだと思います。しかし悪魔たちのヘルズゲートの解放を天使たちが見過ごすとも思えません。もし解放されれば悪魔たちと天使たちの全面戦争となるでしょう」
それってハルマゲドンじゃん。そんな戦争に飛び込むとかごめんしたい。
「しかしそんなことになると天使たちも私たちに働きかけてくるはずです。何かからくりがあるのかも知れません」
からくりね。そこは今、考え無くてもいいだろう。重要なのは敵の強さだ。
「死後の世界にいる悪魔たちと言うのはどのくらい強いのでしょうか?」
「私も死後の世界には行ったことが無いので、なんとも言えませんがかなり強くなると言われています。あそこは魔素の世界であり、悪魔たちが大好きな負の感情が集まり、蓄積する場所。一説では悪魔たちが生まれたところだという話もありますね。強さは二倍どころでは済まないと思います」
全体のレベルが二倍以上となるとかなりきつそうだが、俺たちもゾンビイベントの頃と比べると大部強くなっている。また勝てるように頑張るとしますか。
「お話、ありがとうございます。それでは失礼します」
「お土産楽しみにしてますね」
「分かってますよ」
やれやれだ。それじゃあ、天の衣で作る着物を求めて平安の都に向かおう。




