#705 スケベ仙人と瓜坊
昼食を食べた俺はログインする。お昼は森にいるという仙人探し。ただ闇雲に森を探すのは無理がある。俺は恋火、和狐、狐子、千影に聞く。
「仙人を見付けられないか…どすか」
「お姉ちゃん、出来ますか?」
「九尾様クラスなら見付けられると思いますけど、うちらでは無理どす。千影はんはどうどす?」
「あたしは術は得意では…」
詰んだな。こうなると都で情報集めをするしかない。ということで都で聞き込みをする。
「森にいる仙人? そんなのいるはず無いだろう? 仙人は山にいるものだぞ」
俺も思ったよ!
「森に仙人? いやいや。あそこには若い女を追いかけ回す妖怪が出るって噂だ」
そんな妖怪いたか?日本の妖怪は面白いのが多いからな。すると若い女性を中心に被害報告が続出する。
「川で服を洗濯していたら、いきなり太ももを触られたわ!」
「太ももを引っ張ってきて、川に引きずり込まれそうになりました」
「太ももを触らせるのじゃ~! と声が聞こえて…追いかけられました」
そして町の看板にも注意書きが書かれていた。
『妖怪太もも河童、森に出現中』
そんな河童は聞いたことがない。まぁ、川に引きずり込む話はあるかも知れないが何故太ももをピックアップするのか謎だ。川に引きずり込むなら高い位置にある太ももではなく足首を狙うだろうに。
とにかくその川に向かってみるか…ヒントがないし。メンバーはイオン、恋火、和狐、ダーレー、千影。一応事前に話しておく。
『え…』
まぁ、嫌な顔をするだろうな。そしてイオンがメンバーを見て、察する。
「あ…あの? タクトさん? 私を呼んだのはまさか川に入れということじゃないですよね?」
「イオンなら襲われても返り討ちに出来るだろう?」
「出来ますけど否定させて下さい!」
『頑張って下さい!』
その後、誰の太ももがいいのかで揉めて、俺に聞いてくる。
「バカなこと聞いていないで行くぞ~」
『逃げた!』
だって、選んだら俺がスケベみたいになるじゃん。ここは逃げの一手だ。そして森に流れる川に到着した。
「で…結局私が入るんですね…」
「恋火と和狐の二重結界を貼っているんだ。もし壊されたら、逃げていいから」
「はぁ~…わかりました。攻撃してもいいんですか?」
「まぁ…いいだろう」
事が事だ。それぐらいは許していいだろう。
イオンが川に入ると恋火と和狐が結界を貼り、千影がミスリルのロープを準備する。しかし時間が経過しても現れない。
「来ないですね…タクトお兄ちゃん」
「タクトはん…魔力が」
魔力切れを狙ってきたか…ダーレーが譲渡を使い、俺がエントラストで二人を回復させる。
これで持たないならイオンを川から出すしかない。流石にイオンの安全第一じゃないとね。
すると俺は背後に気配を感じ、咄嗟に蹴りを放つ。
「ぬ!?」
『え?』
俺の蹴りが何かに決まる。
「何かいるであります!」
「イオン! 川から出ろ! 姿を見せたらどうだ?」
「く…わしともあろうものが巫女の太ももを触り損ねるとは不覚じゃわい」
「「え…」」
透明になっていた爺さんが現れると恋火と和狐が俺の背中に隠れた。するとイオンが来る。
「大丈夫ですか! タクトさん! 皆さん!」
「うひょ! いい太ももじゃのう…娘っ子。そっちの鞍馬天狗の娘もいい太ももじゃ」
イオンと千影も俺の後ろに隠れた。この爺さん、イオンたちの天敵だな。
「あんたがこの森にいる仙人か?」
「む? わしのことは河童ということになっておるはずじゃがのう…バレておるなら仕方がない。わしの名は久米仙人と言う」
知らない名前だ。どんな仙人なんだろう?
「ま、仙人と言っても洗濯しておる娘っ子の太ももに興奮して、仙術や神通力を使えなくなった仙人じゃがの」
『最低です!』
これって実話なのかな?しかしこの人が仙術や神通力を失ったことは問題じゃない。この人が蓬莱の玉の枝を持っているかが重要なんだ。
「俺たちは蓬莱の玉の枝というものをあなたがお持ちと聞き、ここに来ました」
「うむ。これのことかの?」
久米仙人が取り出した物を鑑定する。
蓬莱の玉の枝:イベントアイテム
竹取物語に登場する宝の一つ。七色の真珠のような木の実が実っている優曇華に木の枝。優曇華は穢れを栄養とする木で本来は月や人がいない神聖な山で育つ木とされる。
そういうものだったんだ。知らなかった。
「それを頂けないでしょうか?」
「後ろの娘っ子の太ももを堪能させてくれたら、考えてしまうのぅ」
穢れだらけのこのスケベ仙人から栄養全て吸い尽くせばいいのに。
「そうか…ならさっきの話は無しだ。都に帰って河童の正体があんただってことを伝えさせて貰う」
『賛成です!』
俺たちが歩き出すと久米仙人が慌てて止める。
「ま、待て待て! 待つんじゃ! そんなことをしたら、わしは娘たちに晒し首にされてしまう!」
悪いことをしている自覚はあるんだな。
「晒し首ってなんですか? タクトさん?」
「罪を犯した人を斬首して、見せしめに晒すことだ。これで罪を犯した人はこうなりますよって人に教えていたんだ」
「…されるべきだと思うんですが?」
『うんうん』
容赦がないイオンたちに久米仙人は慌てる。
「うおぉい! 容赦がない娘っ子たちじゃな!? わかった! わしもさっきのを取り消そう! だから待て!」
やれやれだ。これでまともなクエストが発生するかな?
「そうじゃのう…都周辺の所々に祠があることを知っておるか?」
やはりあれをクエストに使うか。
「知っています。山の湖にあったものですよね?」
「それじゃ。それと同じ物が都周辺に十個ある。時期は十五夜。その祠全てに月見団子を奉納したら、これをくれてやるわい」
インフォが来る。
イベントクエスト『全ての祠に月見団子を奉納せよ』:難易度D
報酬:蓬莱の玉の枝
平安の都周辺にある全ての祠に月見団子を奉納せよ。
よし。これでやっと先に進んだ。このクエスト内容だと先に祠の場所を確認したほうがいいかな?七草を集めてから月見団子ときび団子を作らないと数の調整が出来ないからな。
俺が見つけている祠は全部で三つ。遊兎の話を合わせると四つだ。そこで俺は気がついてしまった。遊兎が饅頭を食べたという祠は山にあると言っていた。夜の山には驪竜が出るからこの祠に月見団子を奉納するチャンスは朝と昼にしかないということになる。
驪竜の対戦条件が四つの宝を集めることだから明日の昼までに山の祠に月見団子を納めないと詰みになるということじゃないか?こわ。
俺はダーレーを戻し、ジークを召喚するとまず山に向かうことにした。すると山では飛行禁止のインフォが来たので、またダーレーを呼ぶと誰が俺と乗るかじゃんけんでイオンたちが決めると勝利したのが和狐。
和狐とダーレーに乗り、二人っきりで山道を登る。
「空気が美味しいどすな。タクトはん」
「そうだな。景色もいいし、のんびり行くか」
「賛成どす!」
和狐と二人っきりは中々ないからか結構尻尾を絡めて来て甘えてきた。リアンの次は和狐だからそれを意識しているのかもな。控えめなのは和狐らしいところだろう。俺が尻尾を撫でると嬉しそうだ。
そんなことをしていると祠を発見した。場所は山の山頂と中腹の間ぐらいだろうか。俺は昨日作った月見団子を納めて、和狐と二人で祈りを捧げる。
「山を降りるか」
「タクトはん!」
俺がそう言うと和狐が突然、警戒する。まさか猪神か!現れたのがこちら。
瓜坊?
? ? ?
猪の子供だ。
「可愛いどす!」
和狐さーん。さっきの切羽詰まった警戒した声はなんだったの?
「フゴフゴ!」
飛び跳ねて何かを主張している。
「お腹、空いているんと違います?」
「それならそこにある月見団子を…まさか奉納している物は食べれないのか?」
「フゴ!」
く…なんていい瓜坊なんだ!この瞬間、遊兎は瓜坊以下であることが確定した。しかし月見団子は納めちゃったんだよね。
「きび団子ならあるんだが、食べるか?」
「フゴ!」
俺が出したきび団子に瓜坊は飛びつくと美味しそうに食べる。
「美味しそうに食べますな~…あ」
可愛らしいお腹の虫が鳴いた。和狐の顔は真っ赤だ。
「食べる?」
「…いただきます」
その後、瓜坊はきび団子を食べると満足したのか消えていなくなった。
「立派な猪神になって、悪い兎を懲らしめるようになるんだぞ~!」
「タクトはん…」
苦笑いを浮かべる和狐と共に気持ちよく下山した。
名前 ダーレー 騅Lv20
生命力 96
魔力 150
筋力 135
防御力 66
俊敏性 272
器用値 140
スキル
蹴り技Lv11 激突Lv27 灼熱Lv25 火炎操作Lv28 騎乗Lv34→Lv35
疾駆Lv29 防御無効Lv18 物理破壊Lv16 騎手強化Lv33 連撃Lv16
英気Lv25 練気Lv27 覇気Lv21 蒼炎Lv18 放電Lv8
衝撃波Lv7 譲渡Lv8 連携Lv13 覇馬の加護Lv25




